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135話 変わった勇者

今回はエレンの視点です

それと今回も少し長いです

 ユキさんたちと別れ、わたくしたちはガーディアンの工場を破壊しに来たのですが……。


「なんなんですの、これ……」


 目の前には瓦礫の山がありました。

 おかしいですわ、ほんの数十分前の映像では、ここに大きな工場があったはずなのに。しかもガーディアンと思わしき機械の残骸までありますわ。


「僕たちよりも先に誰かがやったみたいだね」

「でも誰なんですー? ここまで破壊できるのって、お嬢様やエレン様くらいじゃないと厳しいんじゃ? あとはオマケでレイジ君辺り?」

「ノエルさんの言う通りですわね。わたくしたちと同程度の力がないと、ここまで破壊するのは無理ですわ」


 見たところ工場もガーディアンも、ちょっとやそっとじゃ壊れない感じですし。

 これは間違いなく、わたくしたちに匹敵する何者かの仕業、ですわね。





 とりあえず警戒しながら瓦礫の中を探索してみます。運が良ければ、誰がやったかの手がかりがあるはずですわ。


「それにしてもこの状態、重力系の魔法で押しつぶしたと見た方が良いですわね」

「確かに溶けた後や切り刻まれた後ってないですもんねー」

「重力、重力か……」

「あら? どうしましたのレイジ、何か深刻そうな顔をしてますわ」

「あ、あぁ。エレン様、もしかしたら今回は予想以上に危険かもしれないですよ」


 妙ですわ、レイジが少し冷や汗をかいてますわ。

 つまり、この状況を作り出した相手に目星があり、しかもレイジより強いか、同等ということですわね。

 ふふっ、そう考えると、ちょっとおもしろそうですわ!


「エレンさまー、戦闘狂みたいな感じが出てますよー?」

「あら、いけませんわ。わたくし、淑女としてはまだまだ未熟ですわね」


 竜族という種族特性ゆえ、強い方と戦うのを想像すると、自然と気持ちが昂ってしまいます。

 とはいえ意識すれば完全に抑えることができるので、むやみやたらと誰かに挑むことは無いですわ。


 それに戦闘狂になってしまったら、きっとユキさんに嫌われてしまいますわ。ユキさんとの模擬戦が楽しいのも事実ですが、嫌われたら意味ないですもの。





 引き続き瓦礫の中を探索してますが、この状況を作り出した者に繋がる手掛かりが一切ないですわ。


「情報が無くてまいりましたわぁ」

「ですねー……。おや? エレンさまー、何か聞こえませんか?」

「何か……ですの?」


 さすが狼族、ノエルさんは耳が良いですわ。ではわたくしも竜装を顕現させ、少し精神を集中してと。


「……かすかに人の声が、それも煽っているような?」

「行ってみますー?」

「危険な気がしますわね。レイジ、あなたはどう思います?」

「そうですね……危険なのは確かですが、おそらく向こうはこちらの状況を既に把握しています。あくまで『僕が予想した相手』がここに居る場合ですけど」

「やはり知り合いですのね?」

「えぇ、前の世界の勇者にこういった感じの魔法を得意とした者が居たので、おそらくそいつかと」


 レイジと同じ世界の居た勇者、ですのね。

 どのような方なのでしょう? 興味が湧きますわぁ。


「それじゃぁ慎重に進んでみますかー?」

「それは少し面倒ですわ。なので、あぶりだしますわ!」

「ちょ、エレン様!?」


 レイジが察したようですが、遅いですわ!

 竜魔法で周囲を一気に破壊し、隠れる場所を無くしてしまいますわー!


「消し飛びなさい、ドラゴンフレア!!!」


 前に繰り出した両掌から、強烈な炎の塊を発射する。さながらドラゴンのブレスですわね。

 威力はお墨付き、一気に目の前が焦土になりましたわー。


 さてと、ここまですれば……あぁ、あの方ですわね。


「ちょっと―! 今の危ないじゃない! ボクが黒焦げになるところだったんだけど!」


 そう怒りながらこちらに飛んでくる少女。

 見た目はドレス姿、お若いけれど歳はレイジより上でしょうか。


「あー! ボクのスカートが焦げてるじゃんか! どうしてくれるんだよ!」

「あら、それは申し訳ないことをしましたわ」

「このドレス高かったのに、あーも―!」


 なんだか弁償した方が良いような気がしてきましたわぁ。


「ねーレイジ君、このフリフリのドレスを着た只人族のお嬢さんって友達なんですかー?」

「レイジだって!?」

「うひゃぁ、急に飛びかかってこないでくださいよー」


 レイジの名を出した途端、一気にノエルさんに詰め寄りましたわね。

 もしや、この方がレイジの想い人だった方ですの!?


「あーえっと、久しぶりだねコルト」

「その喋り方、もしかしてレイジクン? 見た目は少し違う気がするけど、うん、特徴は変わってない! いやー久しぶりだね、元気にしてたかな? って、ちっがーう! ボクの名前は〝コレット〟だって何度も言ってるでしょ!」

「いや、だって君……」

「コレットなんだよ!」


 おやおや、レイジが一方的に押されてますわ。可愛い方に迫れて、しどろもどろってことですわね。


「まぁまぁレイジ、女性との秘めた話は後にしてくださいな」

「トカゲモドキのくせに分かってるじゃん! そうなんだよ、ボクとレイジクンは深い関係なんだよ!」


 トカゲモドキ、ですって!? これはもう穏便に話を聞くのをやめて良いかもしれませんわね。


「エレン様、二つ間違ってますよ。まず〝彼〟とはただの戦友です」

「あら、深い関係じゃないのです? というか、彼?」

「それが二つ目、男ですよ、コルトは」

「「えぇぇぇぇぇぇぇ!!!」」


 思わずわたくしとノエルさんは叫んでしまいましたが、どう見ても女の子ですわよ? なのに、まさかまさかですの?


「異世界ってすごいんですねー……」

「ですわね……」

「二人とも、だいぶ誤解してないかな……」


 だってここまで女性にしか見えない男性なんて、見たことが無いですもの……。





「それで、コルトはどうしてここに居るんだい? それに昔と違って、ちょっと口調が子供っぽい気もするし」

「だからコレットだって! まぁそうだね、せっかくだから教えてあげる、ボクとレイジクンの仲だもんね!」

「その言い方は誤解を招くから、ほんと止めてもらいたいんだけど……」


 レイジにしては珍しく、すっごい嫌そうな顔をしてますわね。

 やはりノエルさんとの仲が良い感じだから、誤解されたくないのかもしれませんわ。


「今日は姫様の付き添いできたんだけど、待機がてら探索したらガーディアンの工場があるのを発見してね! だから思わず破壊しちゃった!」

「破壊って、君はあの王様に仕えてるはずじゃ?」

「まっさかぁ。ボクが今仕えてるのは世界で一番可愛いお姫様だよ! ちなみにボクがこんなになったのも姫様の影響だよ!」

「「「世界で一番可愛いお姫様?」」」


 わたくしが思う世界で一番可愛いお姫様はユキさんのこと、王女様でしたらシエラ様なのですけど。

 ですので、その『世界一可愛い』発言は撤回していただきたいですわ! まぁそれは後にしましょう。


「つまりコルト、失礼、コレットさんは、そのお姫様の命令でわたくしたちと戦う気なんですの?」


 睨まれてしまったので、つい名前を言い直してしまいましたわ。


「戦う予定はないよ! ただ、姫様がすこーし話したい相手と遭遇しているから、その邪魔をさせないだけだよ!」

「話したい相手、ですの?」

「ようやく会うことができる! って凄いはしゃいでいたから、少し時間がかかるんじゃないかな?」

「そんなに、ですの?」


 おそらくそのお相手はユキさんかアリサさんでしょう。となると心配ですわね、わたくしたちも向かった方が良いかもしれませんわ。


「おっとトカゲモドキ、ボクをほっといて向かおうとしてるけど無理だよ!」

「トカゲモドキとまた言いましたわね!」

「エレン様、ここは少し落ち着いて。それでコルト、足止めってことは、邪魔をせず争いもしなければ、この場は穏便に解決できるのかな?」

「そうだよ! さっすがボクのレイジクン、わかってるじゃなーい」

「なるほど。ところで、君たちがこのダンジョンに来た方法とか、もう少し詳しく教えてくれないかな?」

「どうしよっかなー、レイジクンの頼みだからなぁ」


 レイジに頼られたのがよほどうれしいようで、くねくねしてますわ。

 対するレイジは若干遠い目を、この方とはそういう関係には絶対になりたくないということですわね。


「えっとね、ボクたちが来た方法だけどぉ」

「コレットや、何をしておるかの」


 音もなく、突如一人の老人が現れましたわ。

 転移魔法を使ったと思いますが、空間の揺らぎすら感じないとか、いったい何者なんですの?


「「し、師匠!?」」

「おぉレイジもおるのか。久しぶりじゃのう、元気にしておったかの?」

「え、えぇ、おかげさまで……。ですが、師匠がここに居るということは」

「おぬしの読み通り、ワシもコレットも召喚されての。今じゃとある王国に仕える執事とメイドという立場じゃ」

「とある王国、ですか?」

「すまぬが箝口令が敷かれてての。まぁおぬしたちなら自力で辿りつくこともできるじゃろう」


 むぅ、また謎が増えましたわ。

 できれば全て暴きたいのですけど、たぶん無理ですわね。コルトさんと違い、このご老人は口が堅そうですわ。


「さてコレットよ、そろそろ姫様を迎えに行くぞい」

「ちぇー、せっかくレイジクンとイチャイチャできそうだったのに。でも師匠を怒らせるのは怖いからなー」

「待ってくれ師匠! このガーディアンを持ち込んだり工場を建設したりしたのは、師匠たちなんですか?」

「そう思うのも無理ないが、違うぞい。ワシらとあの王はもう無関係じゃ」

「安心してよレイジクン、ボクたちも魔物の定義は君に近くなったからさ! だって姫様たちが」

「コレット、そこまでじゃ。本当は弟子の成長を見るため一戦したいところじゃが、遅くなると姫様が怒られてしまうからの。ここらで下がらせてもらうぞい」


 そう言うと二人の足元に魔法陣らしきものが現れましたわ。

 転移魔法のはずですが、見たことが無い形式ですわ。もしや転移ができる勇者能力ですの?


「最後にもう一つだけ教えてください。師匠たちは敵なんですか?」

「今はどちらでもないぞい。じゃが姫様が敵と判断したならば、ワシらは命を奪い合う相手となるわけじゃ。そうならんことを祈っとるがの。では、さらばじゃ」

「またねーレイジクン、チュッ!」


 そう言って二人は転移してしまいました。

 コルトさんは最後に投げキッスをレイジにされましたが、そのレイジは凄く嫌そうな顔をしてますわ。


「なんとも個性的な人たちでしたねー」

「ですわね。それと敵なのか味方のか、よくわからないのが厄介ですわね」

「救いだったのは戦いにならなかったことですね。コルトの重力魔法もそうですが、師匠の勇者能力の一つ、ワープって言うんですが、あれは相当厄介なので。もしも戦っていたら、僕たちも無傷じゃなかったですよ」

「怖いですねー。とりあえずどうしますかー?」

「まずはこのフロアのガーディアン関係の部品はすべて消滅させましょう。師匠たちじゃない別勢力が再利用すると危険ですから」

「ですわね。ではその後にユキさんたちと合流しましょう」


 色々ありすぎて、なんだかどっと疲れてしまいましたわ。

 これは後でユキさんに癒してもらう必要がありますわ!

勇者って個性的なんです、いろいろと

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