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132話 指名依頼入ってます

 ガーディアン問題はひとまず置いておき、今日はひさびさにみんなでダンジョンに潜る。

 もちろんギルドで依頼を受けている状態。遊びがてらお金稼ぎ、これ重要です!


「うはー、すっごくさぶい」

「ですわね。防寒装備をしっかりしているのにこれとは、すさまじいですわ」


 今日潜っているのは〝極寒のダンジョン〟と呼ばれる少し難しいダンジョン。

 難しいだけあって報酬も高いし、手に入れる素材も高品質。それに訓練にも良いんだよねぇ。


 だけど名前の通り極寒。まさに氷と雪の世界って感じで、ちょくちょく吹雪いてたりもする。防寒装備が無かったらすぐに凍死するレベル。


「この外套を使っても結構冷えてきますね」


 アリサが言うように、防寒の術式を付与した外套は結構な品質の物だけど、それをもってしても寒い。

 しかも人一倍寒さに弱いわたしは結構きつい。だけど依頼のためには耐えるしかないのだ。


 そもそもこの依頼、わたしへの指名依頼だったのがね。

 銀級以上の冒険者には指名依頼を出すことができるけど、まさかわたしに指名が来るとは思わなかったよ。


「ところでその〝白銀の桜〟ってこんなに寒いところに咲くのかい? 僕の感覚だと桜って春の印象が強いんだけど」

「普通に考えたら花をつけるどころか、枯れちゃってそうですよねー」

「ですけど、もし存在するのならば神秘的ですわ」


 みんなが疑問に思うのもわかるわ。 

 今回のターゲットは〝白銀の桜〟という、極寒のダンジョンの上級層に存在する珍しい桜の花びらを取ってくること。お使い依頼ですね。

 その〝白銀の桜〟というのは極寒のダンジョンのような、生命が凍死するような過酷な環境で咲く珍しい花。

 しかもただ珍しいだけではなく、特殊な薬の材料にもなっている。


 その薬は効能がすごくいい反面、〝白銀の桜の花びら〟を使っていることもあり、非常に高価。国によって多少金額が違うけど、平均価格が大金貨10枚以上。

 逆に花びらをどうにか入手できれば、費用を金貨1枚以下に抑えることができる。それだけ貴重な素材ってことだけど。


「でもお嬢様、本当に請けてよかったのですか? 依頼内容と報酬を考えた場合、銀級のお嬢様に依頼するなどもってのほか、鉄級冒険者にでも依頼し直してください、という感じだったのですが」

「んー、たしかにそうなんだけど、ちょっと依頼主の子が顔見知りだったから、ついね」


 今回の依頼主は、むかーしわたしが助けたことがある家族の子供。助けたといっても、スタンピードの後処理をしていたら偶然襲われていた一家を見つけたので、なんとなく流れで助けただけ。

 あのとき『困ったことがあったら、遠慮なく依頼を出してねー』なんて言ったけど、まさか本当に依頼を出してくるとはね。


 そんな接点のある子からの依頼だけど、報酬は相場の1割程度。これは鉄級冒険者ですら請けるか怪しいくらい低い報酬。

 普通なら迷うことなくあっさり蹴っちゃう。わたし、安請け合いする気は皆無なので!


 だけどなぁ、今回のは子供が小遣いをかき集めて依頼してきたっぽいんだよねぇ。しかも薬の材料からして、きっと親が病で動けない状態なんだろう。

 依頼票には事情とかは書かれていなかったけど、わたしへの依頼が受理されたところを見ると、たぶんこの推測は正しい。だってろくでもない理由だった場合、フローラさんが受理しないで棄却してるもの。


 確かに不幸な目にあった人とか、不憫な人はこの世界にもいっぱいいる。その多くが『自分を救ってくれ』って感じになってるのも知ってる。

 そんな人に対しても少しは同情するけど、それを助けたいとは思わない。自分は何もせず『待っていれば誰かが助けてくれる』という他人任せでお花畑な思考、大っ嫌いだもの。


 だけど無償ではなく、対価を用意するのなら別。というか気持ちの問題だね。

 今回の依頼だって相場からかけ離れた報酬だけど、ちょろまかそうとか、安い賃金で働かせようとしての額じゃない、これがあの子たちの精一杯だってのがよくわかる。こういう気持ちがわかる報酬、結構好きです。

 だからだね、蹴らないで請けようって思ったのは。


 まぁそれに、報酬だけでなくこっちにも利点がある。

 〝白銀の桜〟は実と花が同時に生る珍しい植物で、その実がすっごく甘くておいしい。となれば採れたて新鮮な実を大量に確保したくなる。

 寒さに弱いのもあってめったに潜らないし、今日は思いっきりがんばっちゃう!





 そんな極寒のダンジョンをどんどん進む。

 もちろんショージ君たちの訓練も兼ねている。基本的にわたしたちはアドバイスをするだけで、ショージ君たち三人に敵を倒させてる。

 三人を鍛えることもあり、今回はカイルとルーヴィちゃんも参加してるけど。


 そもそもミスト君に関してはカイルに全任せしてるけど、だからって完全放置するというわけじゃない。

 ショージ君たちはパーティだから、ダンジョンに潜る場合はできるだけ一緒に行動させる必要がある。連携ってすっごく重要だからね。


 それにしても


「ねーカイル、もしかしてミスト君に精霊の試練を受けさせたの?」


 ミスト君がちょっとボロボロなのが気になった。

 しかも傷跡を見る限り、どうも精霊に攻撃された跡っぽいし。


「その通りだ。俺としては正直、精霊魔術は諦めて身体強化の方が良いと思ったんだが、コイツがどうしても精霊に拘ってな」

「でも試練受けるだけであそこまでボロボロになるの?」

「あぁそれはだな、反撃も防御もせず攻撃を受け続けろって言うとんでもない試練だったからな……」


 カイルが苦笑いしてるけど、うん、気持ちはすっごいわかる。

 無謀というか無茶というか、とんでもない試練内容だね。おそらく精霊側が嫌っているから、それ相応にきつい内容になったんだろうなぁ。


「まぁ予想外だったのは、そんな試練でもクリアしたんだよ。なよなよしてる感じがするが、根性だけはあるようだぜ」

「なるほどねぇ。先は長そうだけど、一歩前進したってとこね」


 関係の完全修復にはおそらく数年から数十年、もしかしたら数百年かかるかもしれない。

 だけどミスト君自身が選んだ道だから、ほどほどに頑張ってもらいたいわ。





「そろそろ休憩しよっか。近くに安全な場所があったはずだし」

「ですね。私たちは平気ですが、三人はそろそろ限界に近いようですし」


 ショージ君たち三人が結構息切れしてるからねぇ。

 普通のダンジョンなら疲れとかお構いなしに進ませるけど、ここは極寒のダンジョンだからそうもいかない。ほんとあっけないくらい凍死するからなぁ。


 ちょっと意外だったのはルーヴィちゃんもすっごい余裕なところだね。

 3年前はヨワヨワだったのに、今ではなかなか良い具合強くなっている。普通の魔兎以上にはなってるんじゃないかな?


 同時に分かるのは、カイルは鍛える場合は結構ガチに鍛えるってことだね。ある程度じゃなくしっかり鍛えるのは良いことです。

 とゆーか、そういう真面目なところは普段からだしておきなさいよ……。なーんでわたしが絡むといつもバカになるのやら。


「や、やっとか、正直死にそうだぜ……」

「お恥ずかしいですけど、私も、もう魔力が……」


 ショージ君とアンジーさん、本当に限界近いみたいね、脂汗かいてるよ。少し無理させ過ぎたかな?

 それに対してミスト君は、なんだろ、きついけど我慢してるのかな?


「ねーカイル、ミスト君のあれって」

「あぁ、ただの痩せ我慢だな。きついときはきついと言えって教えてるんだが、この状況じゃ無理なんだろ」

「どういうこと?」

「その顔、マジでわからないっぽいな」


 はい、全然わかりません!

 でもカイルだけでなく、レイジも分かってるみたい? もしかして男だとわかる何かなのかな。


「簡単に言うとだ、ユキの前でカッコつけてるだけだ」

「はい~?」

「そんな嫌そうな顔すんなよ。たぶんあれだ、最初はただの憧れだったはずだが、今のユキに会ったせいで惚れたんだろ」

「うげー、マジかぁ」

「……本当に嫌そうにしてるな」


 あら、相当顔に出ちゃってたみたいね。

 でもしょうがないのです。理想の男はお父様やお兄様なのでなので! 残念ながらミスト君はかけ離れているので、眼中にないのです!

 まぁそれに、どっちかって言うと女の子同士の方が、ってなにバカなことを考えてるんですかね。


「なんともめんどくさいことになったなぁ。ミスト君に対する評価が変わりそうだわ」

「カッコつけるだけなら良いんだが、さすがにな。俺も正直呆れている」

「んー、わたしが注意すると逆効果だろうし、カイルの方で何とかしてあげて」

「しゃーねーなぁ、まぁそれなりにやっておくさ」


 ミスト君問題、ほんと終わりがみえなくてつらいわ……。

依頼よりも果実採取の方に全力を出しそうな雰囲気

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