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13話 術のお勉強をしてみましょう

少し長めの説明回です。

 さぁさぁアリサをどんどん強化しましょう。


 正直なとこ、ダンジョンの初級層でも最初は苦労するかな~って思ってたのに、体に合ったちょっと強い槍を持たせ使い方もすこーし教えただけで、その日のうちに初級層が攻略できたのは驚いたわ。


 攻略できたのは武器の力もあるにはあったけど、それ以上にアリサの動きがよかった。

 教えたことをすぐに活かすことができたし、ひょっとしたら天性の才能でもあるのかな? まぁ才能の有無に関係なく、色々と教えていくつもりだけど。


 アリサに教えたいことはいっぱいある。やっぱね、教えたことをどんどん吸収して成長する状態を見ちゃうと、教える方もどんどん教えたくなっちゃうんだよね。


 というわけで、今日はダンジョンではなく屋敷でのお勉強。実際の戦闘以外にもいろいろと教えたいものがあるのです。

 まぁあのロリコン勇者が境内でお父様と何かしているため、バレずに外に出ることができないからだけど。勝手に連れ出すとあの勇者がうるさいからなぁ。





「はい、今日はアリサにわたしたちの使う術式を覚えてもらいます!」


 お勉強はお勉強でも、うちでしかできない特別なお勉強をするのだ。強化するためには出し惜しみなんてしないよー。


「あのユキ様、毎回唐突にとんでもないことをさらっと仰るのは」

「大丈夫、お父様もお母様も、うちの人全員の許可は取りました!」


 ビシッと指差し、この癖抜けないわ。とりあえずアリサ、そんなジト目で見るのはヤメテー。


「まずはそうね、魔法や術に対する基本知識のおさらいね。この世界の大気には特殊な力が含まれているんだけど、どういう力か知ってる?」

「えっと、魔力の素である〝魔素〟、精霊の力の残滓である〝霊素〟、あとは呪われた土地などにある〝呪素〟でしょうか」

「せいかーい。なでなで」


 頭をなでなで。ちょっと照れるとか可愛い奴め。


 それにしてもアリサって神聖王国の奴隷なのに、もともとの知識がそれなりにあるよね。ちゃんとした教育受けてたのかな?


「魔法や術には魔力を使う。でも発動する際、この大気中の魔素の影響で威力や効果が変化しちゃう。その影響を最小限にするため魔法や術では陣を形成する、ここまでは良い?」

「はい、大丈夫です」

「んじゃ続けるね。魔力を使い陣を形成して発動する魔法と術だけど、この二つは大きな違いがあります。魔法の陣は魔素の影響を緩和するために、術の陣は魔素を取り込むためだね」


 魔法には魔法の利点が、術には術の利点がある。状況に応じて使い分けた方が良いんだけど、わたしは術だけだからなぁ。問題はないけどちょっと使いたい。


「それと、魔法は媒体が無くても発動できるけど、術には術札という媒体が必要になるの。術札無しでも発動できなくはないけど、その場合も狐族の尻尾の毛のような別の媒体が必要になるよ」

「媒体ですか」

「魔力を増強するためとか、精度を上げるためとか、ちょっとかっこよく説明してる本もあるけどね。それと媒体が必要な魔法とかもあるけど、説明が少し長くなるのでいったん忘れてね」


 媒体が必要な魔法って呪いや毒といった負の物が多いから、時間よりも深く説明したくないって気持ちが強いからだけど。最初に学んだのが呪いの魔法ですとか、最悪すぎるからねぇ。


「他にも細かい違いはあるけど、魔法と術はだいたいそんなとこ。次に術式についてだけど、簡単に言うと魔法詠唱文字のことを指してます。術では術詠唱文字と言わないで術式って言いかえてるだけだよ」

「なるほど。ちなみにユキ様が使っている『術式展開』というのは?」

「これも簡単に言っちゃうと、魔法で言うところの事前詠唱に近い物になるんだ。だけど魔法と違うのは術札に術式、つまり詠唱するための文字を書き込んでおくの。書き込める範囲は個人の能力によるけど、長い詠唱を半分くらいに短縮する程度ならだれでもできるよ」


 特に術の場合、繰り返し詠唱する部分が多いので魔法よりも発動までの時間が長くなることが多い。めっちゃ長い詠唱を10回繰り返すバカみたいな術もあるからなぁ。

 しかもぼそぼそって感じに唱えないとダメなものが多いから、ちょっと暗いんだよねぇ。まぁ魔法の詠唱も中二っぽいのが多いから微妙だけど。





 魔法と術との事前説明も済んだし、本格的に術式の方に入りましょー。


「それじゃ術式について細かく教えていくね。まずこれが術式に使う術札になります。はいどーぞ」

「ありがとうございます。あれ? ユキ様、これって世間で言う術札とは全くの別物のようですけど。術札自体に魔力が込められているのでしょうか?」


 アリサに普段使っている術札を手渡したけど、へぇ、術札に関する予習もしていたとはさすがだね。でもどこで調べ……あーそっか、あの辞典に書いてあったか。


 先日こっそりアリサの泊まっている宿の部屋に不法侵入し、暇つぶし用の漫画や小説を大量に、それと勉強にも役立つ辞典や辞書も置いてきた。

 辞書や辞典についてはなんとなーく興味を持ってくれたらいいなぁって軽い考えで置いてきた物だっただけに、まさか読んでくれていたとはねぇ。ちょっと嬉しいですね。


 まぁ不法侵入はさすがにまずかったようで、たっぷりお説教されっちゃったけど。ちゃんと許可を貰ってから不法侵入するべきだったね!


「この術札はちょっと特殊で、魔力を込めた墨が要らないのです。墨の代わりに自分の魔力を使って術式を書いていきます」


 一般的のはまず魔力が浸透しやすい紙でできた術札を用意、そこに魔力を込めた墨を用意、最後に魔力を通しやすい筆を用いて術式を書いていくという、ちょっとめんどくて時間のかかる手順。


 時間をかけても問題にならない儀式とかならいいんだろうけど、戦闘中に術札出して、墨出して、そして筆に墨付けて術式を書くとか絶対に無理。術式を手早く書けるとしても、札、墨、筆、この三つの準備が要る時点でダメダメ。

 そもそも敵が術札に術式書く時間を待ってくれるわけないし、そんな心の広い奴ならまず戦いません。


「強い相手との戦いだと墨を出して書く時間なんて皆無だからね。なのでこのお札は墨と筆の準備を省き、さらに墨の代わりに魔力を流せば文字が浮かび上がる構造にしてあるの」

「魔力を線のように流して、術式の文字列などを書くようなものでしょうか」

「だいたいそんな感じであってるよー」


 さすがアリサ、ふわっとした説明でも理解してるわ。

 前々から思ってたけど、この子ってすっごく頭が良い。それに向上心も非常によろしい。今だって渡した術札片手に魔力をどう流そうか自分で試行錯誤してるし、頑張り屋さんだなぁ。


「というわけで今から密着して術式の書きかたと、術の発動方法なんかを教えてきます。それじゃ、ぴたり」

「きゃっ!? あの、ユキ様? えっと、密着って本当にくっつかないでください……」

「えー、ちょっとした愛情表現なのに」


 ほんと面白いなぁこの子。ちょっとくっついたら真っ赤になるとか、からかいがいのある感じがいいね。あ、やめて、からかったの謝るから、ジト目で頬っぺた引っ張らないでー









「おー、簡単な術式なら問題なく発動できそうだね。魔力での術式記載もかなり早くなってるし」


 アリサに術式を教えて数日、もう使えるのかぁ。普通の人なら1ヶ月以上かかるのに、これは術の才能あるね。やる気も凄いある。


「はい! 憧れだったんです、日常生活で魔法とか術を使うのに。なので覚えていくのがとっても楽しくて」

「なーるほど。でも術とかってそんなに憧れるものなの? 確かに使えない人も多いけど、日常生活なら道具でカバー出来るから」


 転生者が多いからか、前世にあったような便利アイテムが結構充実しており、魔法や術が使えなくても生活に困ることは一切ない。

 それに科学が超発展した世界からの転生者も結構いるので、道具によっては魔法や術よりも使いやすい物もあるくらい。


 まぁ転生者が多いということは、異世界からの新人転生者君のほとんどが知識チートできないということになるけど。転生ボーナスも知識チート見越しての物をえらんでたら、完全にお先真っ暗になる気もする。


「その、私の家は小さいころから貧乏でして。道具買うお金もあまりなくて、魔法で水や火が出せたら生活が楽になるかな~って」


 あぅ、定番だけど実際に聞くと辛いわ。又聞きするのと違って非常に重く感じる。


「あ、あのユキ様、なぜ急に抱きしめて私の頭をなでているのです?」

「したくなったから! わたしが満足するまで受け入れてもらいます! なでなで」


 本人は暗くなっていないけど、何となくこうしたくなる。もうあれね、アリサはわたしが幸せにします! 将来の旦那様はわたしが見つけます!





「術式を習うことで分かったのですが、ユキ様って術名すら詠唱していませんよね?」


 おやまぁ、そこに気が付いたとは。アリサの前で術を頻繁に使ってたわけじゃないのに気が付くとか、大したものだわ。ほんと将来が楽しみな子ですね!


「あーそうだね。そもそもうちで使ってる術の場合、ちょっと術式の書き方が特殊なんだ。召喚系は別だけど、ほとんどの術は術式展開だけで行けるようになってるかな」

「特殊ってどのような物なのです?」


 興味があるのか、正面にいたアリサが凄い近くに寄ってくる、ぐいぐい来ますね。アリサの方から接近してるのに、こういう時は照れないのね。わたしがもう少し前に行ったら事故になりますよ?


「本来の術式は<対象><動作><影響>といった何をしたいのかの行動を順番に立てていって、最後の締めに対象となる術を詠唱するのはわかるよね」

「はい、魔法についても同じですね」

「でもうちで使っているのはそれをまとめたものなんだ。たとえば火の術を直線に飛ばしたい場合、本来ならば<直線に><飛べ><火の術>と順々に詠唱していたものを、<火が直線に飛ぶ術>に作りかえてるの。こうすれば同じ内容でも1文だけの詠唱で済むし、詠唱時間の短縮にもつながるんだ」

「考えられてますね。あれ? でも、それだとユキ様が術名すら詠唱していないことの理由にはならないような?」


 うん、やっぱり気が付いたね。これはちょっとヒントを与えればすぐに答えにたどり着きそうだね。


「実はもう一つ利点があるんだ。術自体書き換えるということは、術名も書き換えることができるの」

「ということは、術名称無しの術として書き換えるのですね」

「せいかーい、よくできました、いい子いい子」


 思った通り正解にたどり着いたね。これはちゃんと褒めないと、なでなで。


 術名の書き換えって単純なようだけど、名称が<紅蓮の炎>という術があれば、名称を<>のようにきれいさっぱり消すという、割ととんでもない方法なんだよねぇ。しかも術を構成するための式も含めてきれいさっぱりだし。


「でもこれは術自体の理解度が相当高くないと無理なのと、結界術の様に術名が書き換えれない術もあるの。ちなみにうちの人達の半分くらいは術名無しができるから、アリサも頑張ればできるよー」

「ユキ様だけが特別というわけではないのですね」

「そうだよー。それにわたしだけのは別にあるからね!」


 ビシッと。あ、そんな呆れないでー。自分専用とかカッコイイし憧れるじゃん、ね?

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