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126話 勇者と勇者

今回はレイジの視点です

それと少し長いです

「すまんなぁレイジ君、買い物を手伝って貰って」

「いえ、気にしないでください料理長。僕もお世話になってますし、このくらいでしたらいつでも任せてください」


 エレン様の実家に勤めている料理長と買い出しに来たけど、想像以上に買いこむね。

 確か今日も大勢の方が集まって、また打ち合わせをするとか言ってたかな。そりゃ僕ら男衆が買い出し部隊に抜擢されるわけだ。


 しかし親族の方もしつこいな。竜槍はエレン様が所持したままで納得すればいいのに、あろうことか弟君以外の候補まで上げてくるとは。

 よっぽどエレン様が妬ましいんだろうなぁ。見た目良し、才能良し、天魔にもなっている、これだけでも凄いのに最近ではユキ様の友達……というにはもっと深い関係に見えるけど、まぁあのユキ様やサユリ様との親交まであるからね。妬む者はどうしたって現れるか。





「ところでレイジ君、その包みはもしかして」

「これですか? ノエルに頼まれた紅茶ですよ」

「なんだ、プレゼントじゃないのか。二人ともいい感じだから、てっきり付き合ってるのかと思ったんだが、私の勘違いかな?」

「はは、確かに仲はいいですけど、まだそういう関係じゃありませんよ」


 ユキ様とエレン様が、僕とノエルをくっつけようとしてくるけどね。

 たしかにノエルも可愛いから気にはなるけど、僕って前の世界から数えると結構なオッサンだからなぁ。この世界じゃ関係ないのに、なんとなくロリコンになったみたいで抵抗感がある。とはいえ、いつかはこの気持ちもはっきりさせないと駄目かな。


「他に買うものはって、ちょっとすみません」


 魔道具が新規メッセージの着信を知らせてきたけど、誰からだろ。

 ふむ、これはユキ様からか。なにな……に!?


「うそだろ!?」

「ど、どうしたんだいレイジ君、そんな慌てた声を出して」


 さすがにこんなメッセージを見たら驚くよ。だって『前の世界の軍服勇者が向かってる』って見たらさ……。

 メッセージには詳細が書いてあるけど、どうやら彼がこっちの世界に来たのか。

 それにしてもユキ様、やっぱり『彼』の転生なんじゃないかな? 僕が居た世界からの勇者なんて、普通は知らないはずだしね。だからってなにも変わらないけど気になるのは事実、今度聞いてみようか。


「すみません、ちょっと急用ができまして。残りは他の者にお願いできますか?」

「かまわないけど、大丈夫なのかい?」

「えぇ、それでは行ってきます」


 料理長にそう告げて、僕は飛行魔法を使い人気の無い場所へ向かう。おそらく戦闘は避けられないだろうし、被害は出したくない。


 しかしどうやってこの世界に来たんだ。

 ユキ様の推測では転移門を使ったとみているけど、僕が知る限り転移門はすべて破壊されており、修復もできなかったはずなんだが。


 それと『ジジイ』と呼ばれる存在。

 思いつくのは〝王〟と〝仙人〟と呼ばれる勇者召喚を行っていた人物の二人。

 確か二人は一部の勇者に対し、絶対命令できる妙な特殊能力を持っていたはず。僕には効かなかったけど、彼、プロイエットには効いていた気がするから、今回はどちらかに命令された可能性が高いか。


 そんなことを考えながら、町はずれの開けた場所に来た。ここならば誰かを巻き込んだり、怪我を負わせたりすることも無いか。


 ユキ様のメッセージを見る限り転送装置を使ったようだから、おそらく転送を繰り返して僕のところまで来るはず。あの装置は距離の制限があるから、どうしても繰り返すことになる。

 もっとも僕の居場所を探知できているあたり、転送可能距離も改善されてそうだけど。





 時間にして5分程度か、待機していたら目の前に転送装置特有の光が出現した。

 そして光は像を作り出し、僕の知っている者が現れる。


「久しぶりだね、プロイエット」

「今まで何してやがったレイジ! てめぇのせいで俺様はこんな魔物だらけの世界に来る羽目になったんだぞ!」


 すごい剣幕で叫んでるなぁ、よっぽど気に食わない命令だったわけだ。僕としては一応仲間だったこともあり、特に敵対したいとかは無いんだけど。

 それにしてもおかしなことを言うな。確かに魔物は多いけど、だらけというほどかなぁ。ダンジョンの中で生活しているのなら別だけど。


「そんなに魔物と遭遇していたのかい?」

「そんなにって、おいおい、お前の目はおかしくなったのか? 俺様の罠で釣られる奴といい、さっき見た町の中といい、魔物だらけじゃねーか」


 町の中にも? いやいや、闘技場以外はそこまで溢れ……あぁそうか、あの世界だと只人以外はみんな魔物扱いだった。僕もこの世界の住人として馴染んでるのもあってか、そんな意識が微塵もないから分からなかったよ。


「納得顔でなに頷いてやがる!」

「あぁごめん、君の言う魔物の定義が僕の定義と合わなくて。そうだよね、あの世界だと人族以外は魔物扱いだったからね」


 世界が変われば人も価値観も変わる。できれば彼にもこの世界の価値観に合わせた生き方をしてもらいたいんだけど、無理だろうな。

 そもそもあの世界、僕のような考えの人族は皆無だったからな。彼にも生き残りを探す旅について話したけど、思いっきり笑われたのを今でも覚えてる。


「というかレイジ、その姿はどういうことだ! なんで若返ってるんだよ!」

「そういえば僕と君って同い年だったか。見たところ、あれから数年経ったのかな? 少し皴が増えたね」


 っと、いかんいかん、変に挑発しそうになったよ。案の定、ちょっと怒ってるようだし。

 だけど気になるな。てっきりこの世界の時間に合わせて4倍の歳をとってると思ったんだけど、そうでもない様子。だけど僕がこの世界に来てからの年月より時間が経っているようだ。時間の流れがよくわからないな。


「この世界に召喚されたとき、ちょっとあってね。勇者召喚じゃなかったから、その影響なのかもしれないけど」

「若返ってるのは誤算だが、まぁいい。さっさと帰るぞ」

「帰るって、もしかして僕を連れ戻しに来たのかい?」

「あったりめーだ。ジジイの命令が無ければ俺様は反対したが、命令がある限りどうにもできねーしな」


 忌々しく語ってる、確かに僕と彼は仲があまりよくないからな。


 しかし今の発言で理解した。

 どうやらユキ様の推測通り、これは勇者自体を再結集するためだね。


 ということは


「一つ聞きたいんだけど、もしかしてどこかに攻め込もうとしてるのかい?」

「お、少しはやる気になったのか? 気に食わないお前だが、これも命令だから教えてやる。どこの世界か知らねーが、資源が豊富な世界が見つかったらしくてな。そこへ進出しようとしたんだが、どうやら魔物が多いようだ。だが勇者召喚機能はどっかの馬鹿が完全に破壊したせいで不可、そこでお前のような負け犬まで再度集める必要ができたわけだ」


 負け犬って、僕はあの世界の実戦では負けたことないんだけどな……。『彼』とは引き分けに近かったけど、それ以外は引き分けすらないんだけどなぁ。

 むしろ負け犬って、プロイエットについたあだ名だった気がするんだけど。毎回ボロボロになったり、瀕死になったりするから、いつしかそう呼ばれていたのを覚えてるよ。


 しかし別の世界、ねぇ。ほんとどうしようもないな、あの王様。他者から奪うことしか頭にないからしょうがないとは思うが。





「わざわざ来てもらって申し訳ないけど、僕は遠慮しておくよ。この世界での生活がすごく充実していてね、もしもどこかに召喚されても、必ずここに帰ってきたいって思うくらいになってるんだ」

「こんな魔物だらけのところにかよ!? たしかにあの狐の魔物のように、ペットとして可愛がったら面白そうなのは居るには居たが」


 ペットって、勇者だなぁ、職業じゃなく別の意味でだけど。

 あのユキ様の前でそういう発言してたと思うと、ほんとよく生きていたな。おそらく他のトラブルを抱えていたか、もしくは情報引き出すためにあえて抑えたってとこか。そうでなければ今頃、キレて完全消滅させられてたろうし。


「しかも気に食わねーが、あいつもお前を待ってるんだぞ!」

「あいつって、あぁ、彼女のことか。待ってるって言われても、僕としては関係ない話なんだけど」

「関係ないだとぉ!? ふざけんなよ!」


 ふざけるも何も、そこまで親しい間柄でもなかったんだけど……。

 確かに彼女から一方的に好意を寄せられてはいたけど、僕としてはあまり、というかちょっと苦手だったんだよね。我が強いだけならまだしも、他人を蹴り落してでも手に入れようとする姿勢はだめだよ。


「しょうがねぇ、こうなりゃ力ずくだ! 怪我は後でヒーラーに治してもらうから安心しろよ!」


 そう言って武装を展開したけど、おや? 装備がすべて修復途中のようだね。あれじゃ本来の7割程度の力しか出せないだろうに。

 というかこれ、ユキ様がやったんだろうなぁ。おそらく情報収集のために装備だけ破壊した結果だと思うけど、徹底的にやったみたいだね。


「あー、プロイエット君、正直言ってやめたほうが良いと思うよ? 今の僕ってあのころとは違うから」

「そうだろうな! なんせ今はガキの状態だ、命乞いしたくなるのもわかるぜ。安心しろ、命までは奪わねーよ」


 いや、そうじゃないんだけど……。

 今の僕ってほんと強くなりすぎて、最近だとユキ様やエレン様との模擬戦でもほぼ互角に持ち込めてる。まだまだ上の方が大勢いるから自惚れとかは無いけど、それでも普通の人と比較するとちょっとね。


 それにしても、種族が違うのにほぼ互角の三つ巴って感じなのはちょっとおもしろい。

 最近はアリサとノエル、それにカイルも食い込んでるからさらに面白い。なにより自分だけじゃなく、みんなで強くなるのは青春って感じがして、ほんと良い。


 まぁそんな強さになったからだろうなぁ


「悪く思うなよ? 俺様は最初から全力だぜ!」


 プロイエットがそんなセリフを言いながら攻撃してきたけど……。





「ど、どういうことだ……、なんで、なんで俺様の攻撃が当たらない!」


 時間にして5分くらいかな、一斉射してきたけど掠ることなく全部避けた。

 おかしいな、プロイエットってここまで弱かったかな? 僕が強くなったからなんて自惚れはしたくないけど、ここまで差があると気になる。


 まぁそれは置いといて、聞きたいことはいろいろあるし


「せっかくだ、君もこの世界を少し満喫したらどうかな? というわけで」


 地面を蹴りに背後に回り込む。

 そしてがら空きの首元に腕を回し、一気に締め付ける!


「な、が、ぐ……」

「悪いプロイエット、僕って昏睡系の魔法を覚えてないから、こんな方法で意識を失わせてって、聞こえてないか」


 プロイエットは意識を完全に失ったようだ。これは捕獲ミッション完了ってとこかな。

 それにしても勇者による侵略、か。あの世界はもう、どうにもならないのかな……。

ちなみに全快状態であってもレイジの圧勝

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