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122話 狐の少女VS軍服の勇者・・・1

 目の前にはレイジと同じ世界で勇者だった男が居るけど、どうも気になることがある。確かさっき『どうやらこの世界はお前らのような魔物が多い様子』って言ってたけど、もしかして……


「一つ聞きたいことがあるの。わたしたち以外の人にも会ったことあるようだけど、どういうことなの?」

「あぁん? んなの当たり前だ、お前らみたいな馬鹿な魔物か俺様の〝心言〟で誘い出してんだからな。ったく、こんな場所ですら魔物が溢れてんだ、外はもっと酷いんだろうな。勇者の俺様が居ないとほんと駄目な世界だな」


 いやいや、さも当然だろって感じにドヤられましても、普通はわからないものだよ? しかも自分の発言に酔ってるようでキモイし!

 ほんとあの世界の勇者って、自分の思ってることはすべて相手に通じてるって勘違いしてる屑ばかりで嫌になるわ。レイジだけだよ、まともな勇者って。


 それはさておき、えーっと、たしか〝心言〟って指定した相手に言葉を届けるって能力だったかな? 単純な能力だけど、こういう使い方をしてきたとはね。どうしようもない屑だけど、頭は回るようで。


 でも今の会話で大体想像できたけど、どうやらこいつは召喚されたのではなく、転移門か何かでこの世界、しかもこのダンジョンに直接転移してきたで間違いない。

 召喚の方ならまだよかったけど、転移の方はほんとマズイ。やりようによってはあの世界の兵器を大量に持ち込んで侵略、不足したら戻って補充、危なくなったら退避が容易にできるということ。友好的な相手じゃないからほんと厄介だわ。


 ただ悪いことだらけでもない。

 召喚されたのではなく転移であれば、この世界に来ても特殊能力の追加や身体能力の強化などは起こらない。

 つまりレイジみたいな化け物にはなってない、前の世界の強さそのままってことだね。もっともガーディアンはその特性上、この世界でも脅威になるんだけど。


 ガーディアンは脅威だけどやりようはある。魔法や術以外の強力な物理攻撃で一気に粉砕するか、吸収できない圧倒的な魔力を使っての魔法や術をぶちかませがばいいだけ。前の世界じゃそのどっちも難しかったけど、今のわたしなら余裕。でもミスト君じゃきついかな?

 となるとそうね、まずはこの勇者を動けないようにして、そのあとガーディアンを倒すってとこかな。それまではミスト君の訓練相手として活用しましょう。


 ではでは


「えっと、最初に警告しておくとわたしってすっごい強いから、何もしないで元の世界に帰るなら追わないよ? でもこの世界に残って悪さをするなら容赦しないけど、いいの?」

「はあ? お前のようなガキの魔物が強いだと? おいおい、この世界ってそんなにレベルが低いのかよ。そこの犬モドキもそうだが、俺様に誘い出される奴が特別弱いだけかと思ったが、こんなガキが強いとか笑えるな!」


 いやらしい感じで笑い出したけど、これはもう完全に見た目で判断してるね。

 まぁわたしって年齢の割には小さい(発育は良いけど!)のと、どこかのお嬢様(実際にお嬢様だけど!)が着るちょっとおしゃれなリボン付きブラウスにスカートだからなぁ。戦闘力皆無って感じの見た目なのは認めるよ。


 でもさぁ、そんな格好の子供がこんなダンジョンに来てるとか、逆におかしいと思わないのかな? わたしだったら警戒するんだけどなぁ。むしろゴテゴテ装備してる奴の方をざーこざーこって思っちゃう。だって本人が弱いのを装備の力で補ってるわけだもん。

 実際この勇者も結構ゴテゴテ装備。軍服だけど腰や肩、背中に腕などのほぼ全身に銃を装備している。ぱっと見は強そうだけど実際は弱い。

 そもそもこいつ『前世の私』ですら1対4の劣勢状態でもぼっこぼこの瀕死状態にできたし。レイジみたいに強化されてたらまずかったけど、それも無いしなぁ。


 まぁいいや、さってと


「笑うのはいいけど、敵が目の前に居るっての、忘れてない?」


 右手に魔力を溜めながら一気に接近し、そのまま顎に向かって突き上げるように掌打!

 勇者は防御も何もしてなかったからか、天井に向かって思い切りふっとんだ。情報収集したいから手を抜いたけど、それでも天井にぶつかってバシーンって大きな音がしたわ。

 むぅ、この部屋の天井もそこそこ高いのに、力を抜いた掌打ですら天井にぶつかるほどの威力とは思わなかった。もっと力の制御がうまくならないとダメだねぇ。


 さてさて、死んでないだろうけど、そこそこなダメージにはなったんじゃ?

 あー、うん、予想以上に雑魚だったかも。天井にぶつかった後、そのまま受け身も取れずに地面にドカーンって落ちてきたよ。まさかもう終わり?





「キサマァァァァァァ、よくも、よくもやってくれたな! 汚い手を使いやがって、もう容赦しねぇ!」


 曲がりなりにも勇者だけあってタフだなぁ。でもご立腹のようで、赤くなってプルプルしてるね。というか


「汚い手って、訳の分からないことなんだけど。ひょっとして『今から攻撃しますよー』とか言ってから攻撃しろってことですか? まさか敵対してるのにそんな合図があるとか、本気で思ってたんですか?」

「ぐっ」


 図星ですって言う感じの苦々しい顔つきになるとか、これはマジで思ってたみたいね。とんだお花畑な思考の持ち主だねぇ……。


「くそっ、こっちが下手に出てればいい気になりやがって! もうやめだ、本気で行く!」

「下手って、いつそんな気を使ったんですかね……」


 突拍子もない言動に唖然としたけど、ふむ、両手に構えた銃に魔力のようなものを込め始めたわね。これが勇者力ってやつなのかな? 魔力に近いけど性質は精霊力に近い感じだね。


「必殺! フォールンショットォォォォォォ!」


 天井めがけて両手の銃から無数の弾丸を放ったと思ったら、その弾丸は天井に届く前に空中で静止、そして向きを変えてこっちに向かって一斉に落ちてきた! フォールン、つまり落ちる弾丸ってことね。

 弾丸の数はおよそ20、余裕で対処できるけど念には念、ここはヒトガタを使って対処しよう。叩き落すのも考えたけど、触るのはまずい気がするんだよね。


 ポーチからヒトガタを取り出し、そのまま頭上に投げて一気に展開! 瞬く間にわたしの周囲には20体のヒトガタが待機状態になる。

 それじゃ10体のヒトガタを操作してっと


「あたれ!」


 弾丸めがけて魔力弾を一斉発射して相殺させる。ヒトガタ1体につき弾丸2発、余裕だね。

 勇者の放った弾丸はわたしに触れるどころかかすりもせず空中で消滅。しかも魔力弾の方が強かったからか、対消滅せずに魔力弾が貫通して天井に20個もの穴を開けた。むぅ、火力調整に失敗した感じがしてちょっと悔しい。


「な、なんなんだよそれはっ!? そんな紙人形が何で魔法を使えるんだよ!」


 はて? なんかすっごい驚いてるけど、前の世界にはヒトガタ使う術者っていなかったのかな? 確かにヒトガタどころかお札使っての術すら見たことはなかったけど、勇者側にも居ないとは思わなかったわ。

 でも前の、というか地球で言うところの『陰陽師』とかが使ってる印象なんだけど、この驚きっぷりからして地球の人じゃないのかな? それとも単純に知らないだけかしら。


「驚いてるところ悪いけど、さくっと捕獲させてもらうねー」

「そうはいくかよ! まさかこんなところで使うとは思わなかったが、仕方あるまい。刮目せよ! 俺様のデストロイモードの力を!!」


 ですとろいもーど?

 えーっと、たしか破壊っていう意味の単語だっけ? ということは殲滅形態にでもなるってことかしら。なんとなく想像の範疇にしかならない気もするけど。


 とかなんか思ってたら、ガッシャンガッシャンと凄い機械音を立てながら、奴が体中に身に付けている銃の形が変形していく。右肩にはミサイルがいっぱい入った箱が、左肩には巨大なレールガンっぽいものが現れた。

 背中には機械でできた巨大な羽が現れ、そこにもミサイルやらガトリングとか言う砲身が回る銃がいくつも付いている。ガトリングは腕や腰にも付いており、脚部には肩にあるミサイルのいっぱい入った箱みたいな物が付いている。

 なんというか、いかにも重火器を全身に装備しましたって感じの見た目だね。


 ただなぁ、その形態って『前世の私』が倒してるんだよねぇ。あの時はデストロイモードとか叫ばなかったけど、完全に同じ形態。なので対処方法もわかっているけど、同じ戦法で行くのもなぁ……。


 前の世界で使った戦法はすごく単純、撃たれた弾丸をすべて跳ね返して逆にハチの巣にしただけ。それに跳ね返したミサイルを使い、発射前のミサイルと誘爆させて装備も破壊し尽くしたっけ。レイジの使うようなビーム兵器も無かったからすっごい楽だった記憶。


 でも同じことをするのは面白くないし、どうせなら今のわたしにしかできないことをしたい。となるとここはヒトガタを使っての全方位攻撃、これっきゃないね!

 それじゃちょっとだけがんばっちゃうよー!

少しバトルっぽいものが続きます

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