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119話 罠が発動した後は注意しましょう

 二人が宝箱を開けた途端、宝箱に仕掛けられていた転送オーブが起動した。

 強制的に止めることはできるけど、まぁここは三人に付き合うとしますか。





 目の前が光ってまぶしっ、って思ったのも束の間、妙な浮遊感がでてきたね。上下左右の方向感覚がなくなってくるあたり、普通の転送魔法とも違うみたい。

 しかもこれ、どっちが上でどっちが下か完全にわからなくなってきた。う~ん、ちゃんと着地できるか心配になってくるなぁ。


 そんなことを考えてたら、ふっと目の前の光景が切り替わる。どうやら転送が終わったみた……あっ、おちるぅぅぅぅぅぅぅ。

 むぅ、定番ネタだけど、このまま落ちると変なトラップにはまるとか、誰かの上に尻もちつくんだろうなぁ。

 そんなのはごめんなので、さくっと浮遊の術式を使っちゃいましょー。とゆーわけで、ポーチからサクッと術札出して術式展開っと。


 術式を調整し、ゆっくり下降してるけど結構深い、いや天井が高いのか。壁もさっきまでとは違う材質っぽいなぁ。こりゃぁ他のダンジョンに転送されたかな。

 しかもアリサの魔力を一切感じないから、たぶんはぐれちゃったね。前もってはぐれる可能性は伝えておいたけど、ちょっと心配だなぁ。


 ……違うな、わたしが心細いんだ。だって一人ぼっちは嫌だもの。

 うん、さっさと帰還の魔道具を使って、アリサと合流しま


「あ、あの~」

「へ? 下の方でなにか声がしたよーな……」


 小さかったし、気のせいかもしれない。でも念には念、敵の声かもしれないので、慎重に足元の方を確認し……


「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」


 なんで真下に居るのよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!





「もうヤダ、お家に帰りたい」

「あ、あのユキさん、その、あまり気にしない方が……」


 なんでこんな目に合わないといけないのよ。アリサとは離れ離れだし、びっくりして帰還の魔道具を壊しちゃったから、すぐに帰ることが無理になっちゃったし。

 それに、どうしてミスト君が真下に居るんですか! もっと離れた場所にいるとかじゃないんですか!


「えっと、その、僕も忘れますので」

「つまりバッチリ見たってことじゃない! もうやだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 そりゃね、お母様の影響もあってエレンほどじゃないけど、そこそこ大人びた物を履いてますよ、万が一見られても恥ずかしくない物ですよ。

 でもね、だからって見られていい物じゃないんだよ……。なのに、なのに! ほんとやだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!


 ……でもさすがにこのままはまずい。仲間とはぐれ、しかもすぐに帰還できない状態だって言うのに、ミスト君は赤くなってオロオロしたままだから、そろそろ気持ちを切り替えさせて先に進ませないと。

 本来なら落ち着いて状況を把握し、脱出に向けて動き出さないとダメだし。


 それにさっさと帰って、アリサにいっぱい甘えて慰めてもらうの、いっぱい尻尾をモフモフしてもらうの。なのでちょっとだけがんばる!

 そのために、まずはしんこきゅーしてー、気を落ちつけてー、よし!


「えっと、とりあえず現状ってどういう認識をしてるかな?」

「あ、はい、宝箱の罠が発動してどこかに飛ばされた、というところまでは。でも罠は無かったはずなのに、何が起こったのでしょうか?」

「そうね、確かにわたしは『致命傷となる罠は無い』って言ったけど、それ以外の罠については何も言ってないよね? ということは、どうすればよかったかわかるよね?」


 そう、本来であれば他に罠が無いのか聞いたり調べたりする必要がある。

 でもそれをせずに三人、いや、アンジーさんは何か言いたげだったけど二人がそのまま開けちゃったから、二人のせいでこうなったと。


 だけど、これで次回からはどのように行動すればいいのかわかったはず。同じミスを繰り返したら救えないけど、まぁ大丈夫でしょう。

 説明したらミスト君も反省したのか、すっごい申し訳なさそうにしてたし。


 おそらくマクレン先生が転送の罠を仕掛けたとは思うけど、転送先をこのダンジョンにするとは考えにくい。だってこのダンジョン、ちょっと厄介だもの。

 たぶん別の何かのせいで飛ばされたんだろうね。


「軽く説明しとくね。ここは狭間のダンジョンって言われるところだよ。ダンジョンの構成自体は遺跡のダンジョンに似ているけど、出てくるのが太古の魔物だったり、未来の魔物だったりするの。内容としては太古の魔物は超強くて、未来の魔物は戦い方が試行錯誤ってとこかな」


 狭間のダンジョンはその名の通り、時の狭間にあるからねぇ。過去未来現在、いろんな時間が混ざり合ってる不思議なダンジョン。


 出てくる魔物のうち、太古の魔物はまだ強いだけだから良いけど、未来の魔物は厄介。弱点どころか攻撃方法も不明な魔物ばかりだし。

 今までの戦闘経験からの応用で何とかなることが多いけど、経験の浅い冒険者にとっては危険極まりない。遭遇したら戦わずに逃げたほうが無難な場合もある。


 と言っても所詮はダンジョン、初級であればそこまで強い魔物は居ないので、未知の敵との戦いは良い経験になる。

 特に魔物が科学兵器を所持してるあたり、見知らぬ武器を持った敵への対応力がメキメキ上がる。こういう戦闘経験はホント役に立つことが多いからねぇ。


 注意点も当然ある。

 それは学園ダンジョンではないということ。『死んでも復活することはないので注意するように』ってミスト君に伝えたら、少し気合を入れなおしたね。無茶もしないだろうし、大丈夫かな?





「そこだ! 貫け、ファイアアロー!」


 少しダンジョンを進んで見てわかったけど、油断しなければミスト君でも対処可能みたい。

 今も未来のオークに対し、貫通力のある術を使って簡単に葬ってたし。なかなか良い感じに強くなってるようでなによりです。


 しっかしオークが機械仕掛けのヘルメットにスーツを着込んで、さらにビームとかが出る銃を持ってるとか、オークに対するイメージを完全に破壊してるよね。

 というか未来のゴブリンやオークって、こんな感じの装備をしてるってことなんでしょ? 厄介な世界になってるものだねぇ。まぁこいつらがわたしたちの未来の敵とは限らないけど。


 狭間のダンジョンの謎な部分は魔物の時代もあるけれど、異世界とも繋がっているっぽいのが摩訶不思議。

 だからと言って別の世界に飛べるわけではなく、あくまでダンジョン内で再現した魔物っぽいからさらに謎。ほんとダンジョンってどういう構造してるんだろ?


「うん、問題なく倒せてるね。とりあえずこの辺りは少し安全そうだし、少し休憩しよっか。わたしも手に入った素材で魔道具を修理できるか調べたいし」

「休憩も大事ってことですね、わかりました! それじゃ用意しますね」

「あー、それはわたしがやるからいいよ」

「でも」

「気にしない気にしない」


 ぱぱっとシートを広げ軽食と飲み物を出す。あくまで小休憩なのでテントを出したりはしない。

 ほんとはミスト君に用意させてもよかったけど、おそらく持ってきてるのって普通の携帯用冒険食だからねぇ。安いのはスッゴイまずいし、ちょっと高いのでも粘土を食べてるような変な食感だったし。さすがにそんなのは食べたくないのです。


 そういえばアリサの方は大丈夫かな? あの子ってまじめだから、ショージ君たちが用意してるであろう冒険食を食べてそうで心配だよ……。


「あの、ユキさんに一つ聞きたいことがあるのですが」

「ん? わたしに答えられることならなんでも答えるよー」

「ありがとうございます。えっと、術装ってどうやれば手に入れることができますか? 天魔に進化していない僕が言うとか気が早すぎなんですけど、どうにも気になっていて」


 休憩だからどうでもいい質問してくるかなって思ったら、まじめな内容だったよ。それも術装についてかぁ、そういうお年頃なわけですかね?

 それにどうやら術装の所持について大きな勘違いをしてそうだし、ここは勉強も兼ねてお話しておきますか。


「そうね、簡単なのは術装の所持者を殺して奪い取ることだよ」

「こ、殺して!?」

「うん。よくある先祖代々受け継がれし術装だって、元の所持者が亡くなってから新しい人が受け継ぐんだよ。まぁこっちは殺さなくても〝術装継承の儀〟って言う特殊な儀式を行えば譲ることはできるけど」

「そ、そんな……。てっきりもっと」

「危険が無くもっと簡単に手に入る物、って考えてたのかな?」

「はい……」


 やはり知らなかったみたいね。まぁわたしにエレン、それにアリサとノエルも術装使ってるから、そこまで複雑な手順とかは必要ないのではって勘違いしちゃったんだろうねぇ。


 確かに量産型を使えば誰に迷惑をかけることなく、しかも安全に術装を手に入れることはできるけど、量産型ってうちの国の国家機密なんだよね。

 国家機密だけあって、うちのお弟子さんや王家の親衛隊といった特別な人のみ所持を許可されている。でもミスト君はそういった立場じゃないから無理なわけで。


 それになぁ、5年前の事件で会ってるって言うことは、おそらくそこでお母様にも会ってるんだよね。

 だけどうちのお弟子さんとして勧誘されたとか、その後の足取りを調べていたとかが一切ない。それすなわち、お母様にとってミスト君はどうでもいい人物ってこと。そんな判定のミスト君に量産型をあげるとか、絶対に無理ですね。


 もっとも、お母様が興味を引くような進化、もしくは能力に目覚めたら別。

 精霊との仲がそこそこ良いし、このままがんばればもしかしたら、ですかねぇ。

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