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112話 ご指名入ります?

 ケーキ食べ放題なのであれもこれも頼んでみる。食べ放題に含まれないケーキもどんどん注文する。


 そんなことをしてるからか、わたしたちのテーブルにはケーキが大量。そして視線も大量。でも気にしません!


 まぁ大量のケーキ以上に目立ってるのが、わたしが顕現させた小精霊の子たちが一緒にケーキを食べてる方だけど。

 精霊と仲良く一緒に食事とか、普通はありえない光景だからねぇ。わたしにとっては日常茶飯事のことですが。


 それにしてもここのケーキ、ほんとレベルが高いわ。ルアスで売っているケーキといい勝負してるわ。

 なのに物価の関係か、ルアスで買うよりも安い! おいしいのに安いとか、なんとなく得した感じもするね。





「急に申し訳ないのですが、実はユキさんにお願いがあるのです」

「ふぁい?」

「私とショージさん、それとミー君を鍛えてくれませんか?」


 ケーキでゆるゆるになってたら、不意にアンジーさんがとんでもないこと言ってきたんだけど。真剣な様子だし、冗談とか思い付きじゃないみたい。

 でも鍛えるっていったいどういうこと? 断るつもりだけど、一応理由を聞いてみようかしら。


「何か事情でもあるの?」

「はい。中等部からは3ヶ月に一回、技能試験があるのをご存じですよね?」

「そうなの?」


 思わずアリサの方を向いて聞いちゃったけど、うん、マジであるみたいね。『ちゃんと覚えておいてくださいね』って小声で注意されちゃったわ。


「お恥ずかしいことに私たち、あまり成績がよくなくて。今度の試験で結果を残さないと退学の可能性もあるのです」

「退学って、また相当だね。もしかして奨学金のせいかな? たしか奨学金って高額給付の契約にすると、成績が優秀でないと取り消されちゃうんだっけ。事情はわかったけど、う~ん……」

「はい、これはユキさんにはまったく関係ない、それこそ私たち自身がどうにかすべきことです。ですが現状を打開しようと色々試しましたが、どうにもうまくいかず。でも諦めきれなくて、虫がいい話なのは重々承知していますが、ユキさんに頼らせていただきたく……」


 アンジーさんがちょっとしょげた感じで言ってるけど、確かにわたしには関係のない事。

 これがアリサやエレンの成績が悪いなら全力で鍛えるけど、この三人はわたしの友達とかじゃないからなぁ。


 それにこの三人を助けた場合、それって頼まれたら誰でも助けるってことに繋がるんだよね。

 そんな誰にでも優しい聖女のような考えは持っていない。そもそも高額給付を選んだ三人の自業自得だし。


 なので蹴っちゃってもいいんだけど、なんだろなぁ、少しだけ引っかかる。忘れちゃってるけど、三人に対して罪悪感でもあるのかな?

 だからと言って安易に受けるべきとは思えないし、う~ん困った。


「断りにくいようですし、ここは『課題をクリアしたら鍛える』としたらどうでしょうか」

「それ良いですね~。課題をクリアしたのでしょうがない、鍛えてあげるって感じに持っていけますもんね。お嬢様ってお優しいのに変なとこツンデレなので、無償じゃない理由をわざと設けないとダメですもんねー」

「ノエル、それ以上言ったら後でお仕置きするよ? そもそもわたしはツンデレとかじゃないからね?」

「ですわね。ユキさんはツンが無いただのデレですわ!」

「がふっ」


 ただのデレって、マジかいな。

 いやまぁ自覚はあるよ、家族や友達といった親しい人に対して激甘な対応になることが多いから。

 でもなぁ、ただの知り合いに対してはそうでもないんだけどなぁ。


 まぁそれはさておき、課題を設けるのは確かにアリかも。理由うんぬんもあるけど、最低限の力がないと鍛えるどころじゃないから嫌だし。


「ちなみに何を鍛えたいの? 魔力? それとの身体能力? 学力だとわたしよりも別の人に教わった方がいい気もするけど」

「私は魔力を、ショージさんとミー君は身体能力の強化をお願いしたいのです」


 どうやらアンジーさんは魔力の適性が若干高め、ショージ君とミスト君は魔力より身体能力が高めらしい。

 とゆーことは弱点を補うのではなく、長所をより強化する訓練がお望みってことですか。


 となると、課題は別々にした方がいいか。

 あとは難易度をうまいこと調整だなぁ。絶対に達成できない物を考えるとかは楽なんだけど、絶妙な物ってなるとなかなか難しいわ。





 考えること5分、なんとなく閃いたので、さっそく課題を与えましょうか。

 まぁわたしが5分もかけたというべきか、5分しかかかってないというべきか。


 確かポーチの中にいくつか……あったあった。


「それじゃ課題ですけど、アンジーさんはこの空っぽの人工魔石に魔力を込めてください。期限は10日間、それまでに魔力が満タンになれば合格、少しでも足りなければ不合格です」


 そう告げて、アンジーさんに人工魔石を手渡す。

 この人工魔石は魔力バッテリーの素になる物。そこまで大容量じゃないけど、一般の人が満タンまで魔力を込めるには約30日かかる。

 それを10日で満タンにできれば一般の人よりは上、鉄級冒険者にぎりぎり届くくらいの実力となる。最低限そのくらいないと鍛えるこっちが厳しい。


 もっとも、魔法や術への強い適正があれば、10日もかけずに数日で満タンになる可能性もある。

 強い適正があれば魔力操作も自然と身に付いてるもので、魔石への効率的な魔力の込め方も無意識にできちゃう。それだったらこっちも楽なんだけどねぇ。


「次にショージ君とミスト君だけど、こっちの魔力が込められた人工魔石を常に持ち歩いてください」


 そう言って二人にはアンジーさんに渡した物とは別の人工魔石を手渡す。うん、受け取った瞬間にすっごい驚いた顔になったね。


「な、なんなんだこれ!? 持った途端、一気に力を抜き取られたような」

「ぼ、僕もです。正直倒れそうなくらい」

「その反応が正常だよ。その人工魔石が二人の力を吸い取ってるの。もともとはリハビリ用の魔石なんだけど、少し負荷が高めになるように調整してあるよ。ちなみにその魔石、負荷に体が耐えられない状態になると魔石内の魔力が消費され、体を癒す術が自動発動する仕組みになってるから」


 やろうと思えばもっときつくできるけど、この二人がそれに耐えるのは無理だからなぁ。

 しかも抑えた魔石ですら結構苦しいようで、意識を失うほどじゃないみたいだけど汗ばんできてるね。


「二人はその魔石を5日間肌身離さず持ち歩いて、6日目に魔石内の魔力が規定値だったら合格、足りなければ不合格になります」

「わ、わかった」


 んー、すでに術が発動しかけてるね。

 発動回数が10回以下なら合格にする予定だけど、この様子じゃ軽く超えるんじゃないかな? 鉄級冒険者なら耐えられるくらいに負荷は抑えてるんだけどねぇ。


 もっとも、負荷を発生させる起点は事前に決めてあるから、そこに気が付けばほとんど発動しないで済むようになる。ランダム発生でもよかったけど、さすがにそれは鬼だろうと思ったのでやめた。

 まぁ起点となる動作を精査するのは難しいと思うけど、ちょっとだけ期待はしておこうかな。


「わたしからの課題は以上かな。達成できたら鍛えるけど、無理だったらきっぱり諦めてね」

「「「わかりました」」」


 うむ、三人とも了承したようでよし。さてさてケーキの続きを


「でもお嬢様、この三人にとってはスッゴイきつい課題だと思うので、予想よりも良い結果だったらご褒美をあげても良いんじゃないですかー?」

「一理ありますね。ただ合格するのではなく、一つ上の目標があった方がやる気もでるかと」


 ご褒美ねぇ。意味はわかるんだけど、この三人に対してはそこまでする気は無いんだよなぁ。

 でもアリサとノエルはそうは思ってないようで。二人とも、わたしのことを買いかぶりすぎだよ? 知り合いレベルの人には結構冷たいんだよ?


「まさかご褒美にデートですの!? それはダメですわ、わたくしが許しませんわ!」


 そうエレンが声高々に、そして握り拳を作って断固反対の意を示した。ここまで強く反対するなんて珍しいなぁ。

 まぁわたしも三人とデートする気はない、提案されても断固拒否するし。


「エレン様も言うようになったよね。そういえばユキ様って人に合わせた魔道具も簡単に作れるよね?」

「作れるけど、それが……あぁなるほど、レイジの言いたいことはわかったわ。専用の魔道具、つまり装備を作ってあげるってことね」


 わたしたちは装備を術や能力で顕現させてるけど、普通の人は武器や防具を買ったりするんだよね。

 この三人も買った装備のようだけど、正直言って微妙。魔道具化してるわけでもなく、かといって優れた素材を使った特注品でもない、誰でも買える民生品。まぁ民生品としては出来が良いとは思うけど。


「というわけで、予想以上の結果だったらわたしが装備を一式作ってあげます。それでいいかな?」

「ありがたいんだが、その、どんなものが作れるんだい?」

「んー、例えばこんな感じかな?」


 ポーチからミスリルの塊を取り出し、魔力を使って形を変化させる。

 ほんとは鍛冶専用の炉を使い目的に沿って鍛造するんだけど、あくまでこんな風にっていう例だから適当。

 そもそも魔力だけで作るのって非効率だし、出来も微妙なんだよねぇ。


 っと、無駄なことを考えてるうちにサクッと完成。面白味が全くない、いたって普通のミスリルソード。まぁ民生品よりもだいぶ優れた品質にはなってるけど。


「片手間で作るとこんな感じ。ご褒美に作る装備は魔道具化させる必要もあるから、片手間でなくちゃんと鍛造するけどね。鎧以外にも布製品、例えばリボンやマントなんかもできるから、そこは希望によってかな」


 そう言ってできたミスリルソードをショージ君に渡す。

 あら? すっごい間抜けな顔してるよ? 狐につままれたようなって、わたしって狐だった! 化かしてないけど。


 でもまぁご褒美が結構すごいものだというのは察したようだね。そのやる気でどこまで変わるか、ちょっと楽しみかも。

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