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110話 懐かしの遭遇?

 なんかこのミストって言う犬族の青年が久しぶりとか言ってきたんだけど、ほんと誰だっけ? アリサも知らないっぽいし。

 う~ん? どこかで見たような気がするようなそうでもないような。面倒だし、聞いちゃおうかな。


 っと、その前に


「まぁお話はあとで、んじゃ次の人どーぞ」


 試験も進めないとね。というより、こっちの方が重要だし。任されたお仕事は完全にこなさないとちょっと恥ずかしいもん。





「あれもダメダメだなぁ。それでえっと、ミスト君? だっけ、久しぶりになるのかな?」

「その反応、5年も経っていれば無理もないですよね。僕も成長し、身長も高くなりましたから」


 ん~? 5年ってことはアルネイアに来る前に会った人なのかしら? だけどぜんっぜん記憶にないんだよなぁ。

 でも向こうははっきりと覚えてるようで、しかも会えてうれしいのかニコニコしてる。この反応から、敵対した相手じゃないってことはわかった。


 ふーむ、5年前、5年前……、わからん!


「失礼ですが、お嬢様とはどこでお会いになられたのですか? お嬢様の交友関係はすべて把握しておりますが、貴殿のことを存じ上げないので」


 さすがアリサ、わたしが困ってるのを察してくれたよ。

 確かにアリサが知らないっていう流れで聞けば失礼じゃないもんね。ほんとわたしの専属メイドは優秀ですね~。


 あとはあれだね、一応どういう存在か分からないから、メイドとしての対応で聞いているね。

 これが敵というのが初見でもわかる存在だったら、結構きつく問いただすからねぇ。問いただすというより、尋問に近いものだけど。


「あ、あのお嬢様、急に抱きついてきてどうしたのですか? さすがに周りの目もあるので、ちょっと恥ずかしいのですけど」

「なんとなくしたくなったから? やっぱりわたしにはアリサが居ないとダメだなぁって思ったともいうけど。あ、次の人は止まらずにそのままどーぞ」


 アリサのおかげですごく助かってるのもあるけど、それ以上になんかね、アリサが知らない人と話してるとモヤモヤして、ちょっと不安になるんだよね。

 だからか、なんとなく抱きつきたくなっちゃう。これはたぶん、独占欲と嫉妬に近い感情のせいなんだろうなぁ。アリサがとられることは絶対にないのに、どうしても不安になっちゃう。


 それにしても抱きついたら照れちゃうとか、ほんと可愛いですね。なにより、成長してもこの反応をしてくれるのは良いですね~。

 まぁ『全然効きません』ってなったらちょっと寂しくなりそうだから、このままでいてほしいです。


 そんなことを思いつつ、抱きつきながらもお仕事はきっちりします。ほら、こっちを見てないで、さっさと得意な攻撃をしてください!

 とゆーか、抱きついてないとイライラしすぎて、精霊よりもわたしが先に爆発しそうなんだよ。周囲に居る精霊の感情がここまで影響するとは思わなかったわ。

 なのでこれ以上悪化するとしんどいから、さっさと終わらせたいのです。





 アリサとのじゃれあいを見たミスト君が少しポカーンとしてたけど、気を取り直したようで説明を開始した。

 気にせず説明を始めって、目の前でいちゃついてたらさすがに無理か。中断させて申し訳ないです。


「えっと、5年前、神聖王国の勇者に捕まった時に助けてもらいました。脱出するまでも一緒に行動しましたね」

「神聖王国に、ですか? なるほど、あの時にお知り合いになった方の一人なのですね」


 あー、そういうことね。拉致されてアリサを助けるため色々しちゃったときに会ったわけね。


 どうやらミスト君を助けてたみたいだけど、全然覚えてない。

 あの時のわたし、アリサを助けるまでに会った奴らに対しどうでもいい存在って考えちゃったからか、覚えることを頭と心が拒否しちゃったんだよねぇ。


 誰かが居たのは覚えてる。だけど助けた理由とか、どういう面子だったとか、その後どうしたとか全然覚えてない。ちょっと極端すぎるけど、これがわたしという存在だからしょうがない。


 でも今回みたいに事件後に会うって場面を考慮すると、この極端な状態はちょっと変えるべきかも。この状態が変わるかはすっごく怪しいけど。


「あれから僕も修行して、こうやってこの学園に通えるくらいには強くなれたわけです」

「へー、ということは一般枠での実力試験で入学したわけね。なるほどねぇ」


 うん、妙に照れてるようだけど、別に褒めてるわけじゃないからね? 一般市民よりかは強いとは思うけど、わたしが褒めるような強さじゃないんだよなぁ。


「あの、できれば姉とショージさんにも会っていただけませんか?」

「まぁ、うん、いいよ」


 姉が居たのか! ってのと、ショージって誰よ! の2段構えだけど決して顔には出しません。

 たぶん同じタイミングで会ってたとは思うんだけど、ほんと覚えてないんだよなぁ。これはあれかな、わたしも会ったことある人メモを作った方がいいかも。





 ミスト君御一行とは後で会う約束をしたので、とりあえずお仕事を続ける。

 といってもダメダメな結果を見続ける状態が続いてるだけなので楽と言えば楽、面倒といえば面倒な状態がひたすら続く。

 精霊の状態を見る限り、合格できそうなのはミスト君だけっぽいなぁ。


「じゃぁ最後の人どーぞ。ふぃ~、これでようやく終わるよ」

「ですねぇ。ただ、合格できそうなのは先ほどのミストと言う青年だけなのはどうかと思いますけど」

「だよね……。フルーレ先生がここの教師のお仕事辞めたくなるのもすっごいわかるよ」


 フルーレ先生の授業を受ける資格のない問題児がここまで多いとはねぇ。

 まぁ気持ちはわかるよ、どうせ教わるなら普通のオッサンじゃなく、美人エルフのおねーさんの方がいいのは確かだから。


 さてと、担当分の試験がようやく終わったので、フルーレ先生に結果報告しに行きましょう。エレンたちも終わってるかな?





 会場に併設されてる観察室に入り、そこに居るフルーレ先生に試験結果を記入した用紙を渡す。案の定、渡した内容を見て苦笑したけど。


「お疲れさま。やっぱこういう結果になったかぁ、一人合格者が居たのが奇跡とも取れるけど」

「ということは、フルーレ先生が見た分とか、エレンたちが見た分も同じ感じなんですか?」

「そうなの。でも多いほうかな? 今回は10名ほど合格してるけど、受験者が1000人いても合格者0という酷いときもあるの」


 すっごい苦笑いでフルーレ先生が話してくれたけど、気持ちはすごーくわかる。

 だって今回の試験、同じ内容をレグラスでやったら合格者は5割を越えるはずだもの。むしろもっと難しい試験にして、すっごい厳しい判定をするよね。


 まぁこの国が特別悪いわけじゃない、レグラスが異常なだけなんだけど。精霊関係はどうしても差が出ちゃうねぇ。


「ほんと助かったよ、今日はありがとね。それじゃ気を付けて帰るんだよ~」

「は~い」


 フルーレ先生に挨拶も済んだし、エレンたちと合流して帰りましょう。

 さっきフルーレ先生に聞いたところ、すでに校門の方に行ってるって話だったから、ちょっと急がないと。


「せっかくだし、帰りに新しくできたケーキ屋さん寄っていこうか」

「それは良いですね。高級志向なので少し値段が高いようですが、味の方は格別という情報ですよ。特におすすめなのが、桃を使ったタルトだそうです」


 さすがアリサ、いつの間にやら細かい情報も仕入れてるわ。

 でも高級志向かぁ、どんな感じなんだろ。お高い素材ばかり使ってるのかな? 気になっちゃうね!





「あっ! おじょうさま~、せんぱ~い」


 校門ではエレンたちが待っており、ノエルが目立つように手と尻尾を振ってる。

 一気に視線集めたようだけど、まぁ気にしないでおこう。大丈夫、尻尾も振ってたけどスカートは捲れていなかったから!


 さてと、それじゃ馬車を出して帰りって


「忘れてたぁぁぁぁぁぁぁぁ」

「ど、どうしたんですの? 何か教室に置いてきたのです?」


 みんな心配してるけど、違う、そうじゃないんだ。うん、アリサも気が付いたようでハッとした顔になったね。


「えっとね、人と会う約束してたのをすっかり忘れてたんだ。どうでもいい相手だけど、約束したのにすっぽかすのはまずいなぁって」

「なるほどですわ。ではどうします?」

「んー、探しに行くのは面倒だから、こっちに来てもらうわ」


 そう言って精霊力を高め、風の小精霊をさくっと顕現させる。

 うん、顕現させたとたんに頬ずりしてくるとか、相変わらずの反応ですね。


 次にポーチから紙を取り出し、さらさらっと伝言を書く。おっと似顔絵も必要だね。んー、地図は書かずこの子に案内をお願いすればいいかな。


「えっとね、このメモをミストって言う犬族の男の子に渡してほしいの。見た目はこんな感じね。渡したらここまで連れてきてもらえる?」


 似顔絵を見せながらそうお願いすると、風の小精霊はニコニコしながら頷き、そしてメモを大事そうに抱えて飛んで行った。

 学園内での召喚を含めた私用な術の発動は禁止されてるけど、精霊を顕現させ飛ばしてはいけないとは言われてない。なのでこれはセーフです!


 さてと、あの子が帰ってくるまで少し待ってますか。

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