104話 化け物の力はこういうものです
ジジイは中級の魔物に対しては無双状態だった。
傷一つ負うことなく殲滅するのは当たり前、余裕があれば階層の敵を殲滅することもやってのけた。
その光景を見てハーレム勇者君はドヤってたけど、君の実力じゃないのにその態度はどうなのかな~?
まぁそんなジジイのおかげで、中級のボスもあっさり倒されて制覇となった。
かかったのは3時間くらいかしら? 対決用に階層を減らしたそうなので、割と早かったね。
観客たちは帰還したハーレム勇者をすごい奴っぽく称えてるけど、皆さん忘れてませんか? 攻略したのはハーレム勇者の実力じゃなくて、そこのジジイが攻略したんですよ~?
「さて、オレ達は3時間という、常識では考えられない早さでクリアしたわけだが、どうする?」
「早いか遅いかは置いといて、あなたが威張るのは違う気がするんだけど。まぁいいわ、それじゃわたしたちの番ね」
わたしの態度が気に食わないのか、ハーレムメンバーズがピーピーギャーギャー言ってきてるけど無視無視。
ジジイにはレイジが話に行ったけど、なんか芳しくなさそう。
レイジのことを全く覚えていないのか、すごいぶっきらぼうというかなんというか。転生したときに過去を完全に捨て去った可能性もありそうね。
まぁいいや、ジジイはレイジに任せておくとして、わたしは力の差ってやつを見せつけましょうか。
「ねぇエレン、まずは試しにわたし一人でやらせてもらえないかな? 精霊衣の状態でどこまで能力が引き出せるか調べたいの」
「かまいませんわ。わたくしもユキさんがどの程度強くなったのか気になってましたから」
「ありがとー。んじゃちょっとやってみるね」
エレンの許可を取ったので、わたし一人で破壊できるか試してみましょう。
まずは精霊衣を顕現させてっと……おやまぁ、お母様が言った通りだわ。精霊衣の見た目は変わってないけど、精霊神衣を顕現させた状態とほぼ同じかそれ以上の精霊力があるわ。
それなのに以前の精霊衣同様、常に顕現させておいても体への負荷はなさそうだね。デメリット無しとかちょっとズルい気もするけど。
しかも精霊衣でこれってことは、精霊神衣を顕現させたら……ヤバいね。
ではでは、ちょっと頑張っちゃうよー!
わたしだけ転移門をくくり、中級ダンジョンへ入る。
へぇ、ダンジョンの魔物はもう復活してるみたいね、魔物の気配がするわ。これは学園が管理してるからできるのかな? でもこの速度で復活するなら、訓練とかには向いてそうだね。
魔物はいったん置いといて、とりあえず壁を軽く叩いてみる。ふむふむ、初級ダンジョンの壁よりも固い感じがするね。でもこの程度ならぶっ壊せそう。
ではどうやって破壊するかだけど、月華は使いたくないかな。
月華を使うと、きっとハーレムメンバーたちがいちゃもんつけてくると思う。そして絶対に術装を使えばだれでもできるとか言い出して、結果を無効にしてくる。さすがにそれは面倒なので避けよう。
精霊術も何か言ってきそうだからやめておこうかな。精霊のおかげだとかなんとか言いだす可能性が高いし。さすがに精霊衣までいちゃもんつけてきたら全力で言いくるめるけど。
となると術式が無難かな。でもなぁ、殲滅用の術をそのまま使うのも面白くない。それにどうせやるならアリサたちにドヤれるくらいすごいものにしたい!
ならトリプル、いや思い切ってオクタプルスペルを使っちゃおー。正真正銘、わたしの使う術式の中での最高火力で破壊しちゃうよー!
「よっし、それじゃやるよー」
カメラに手を振りながら、今からやるのを向こうに知らせる。
おそらくハーレム勇者たちは『なんで潜らないんだよ』って叫んでそうだなぁ。もちろん全員無視してて、『何か言えよ!』とか叫んでそうなのが想像できる。
そしてわたしがこれからダンジョンを丸ごとサクッと破壊したら、きっとあんぐりした状態で固まるに違いないね。
というわけで術札をポーチから取り出してっと
「では! 術式展開、終焉の炎!」
術式を発動すると目の前に巨大な炎の球体が出現する。この状態ですでに周囲の空間は歪み、球体から溢れ出た炎はダンジョン入口の壁や床を溶かしてる。
そのまま球体を操作し、ダンジョン入口にぶつける!
ぶつかったと同時に巨大な爆発が起こる。爆発の衝撃は大気を震わせるどころか空間に亀裂を作り、爆風は周囲をことごとく破壊し、炎がすべてを飲み込む。
巨大な爆発は1度だけではなく何度も繰り返し起こる。しかも対象を完全に破壊するか、術者の魔力が枯渇するまでひたすら続くわけで。
……うん、術名通りにこの世の終わりって感じになっちゃった。
殲滅用の術自体はいくつも存在する。
ノエルが使った〝断罪の雷〟は隔離領域を作って殲滅する術。雷以外にも存在し、断罪の炎であれば炎で攻撃し、断罪の嵐であれば風で攻撃する。
でもわたしが使った〝終焉の炎〟は隔離などせず、術者の力が及ぶ範囲を炎によって完全に破壊するとってもヤバイ術。範囲も広いから、味方が居るところでは使いにくい術でもある。
これも終焉の氷や終焉の雷といった他の属性が存在するけど、このレベルの術だと属性とかもう関係ない。どの属性であっても目標を完全に破壊するから。
そんなヤバイ術をオクタプルスペル、8乗の状態でぶっ放したらどうなるか。
答え、1分も経たずに目の前に何もない空間が現れました。
ダンジョンが特殊空間なのはわかってたけど、完全消滅させると何もない真っ白な立方体みたいな空間ができるのね。空気も魔素も何もない、ただ白くて不思議な状態。初めて見る空間だし、すっごい気になるわ!
でも空気がないのはマズイ。そりゃ1時間くらいなら体内魔力と精霊力で耐えることができるけど、耐えれるだけであって体が平気かって言うとそうでもない。
酸欠状態が続けば当然脳にダメージを負うし、体の末端から壊死する可能性だってある。化け物だけど、わたしもれっきとした生命体なのです!
そんな危険な状態で調べてたら怒られそうだし、もーどろっと。
「ただいまー」
「おかえりなさいませ。お嬢様、ちょっとそのままで……はい、綺麗になりました」
「ありがとー」
術式は使用した術者には何も影響がないけれど、さすがに爆発で舞った埃やら塵は防げないからね。
アリサが手早く髪や顔に付いた埃とかをタオルで綺麗に拭いてくれたので大満足。まぁそこまで汚れたわけじゃないけど、こういうのは気分の問題です。
「今の術はすごかったですわ! 威力がすごかったのもありますが、何より綺麗な炎の球体で、わたくしちょっと感激ですわ!」
「う、うん。なんかみょーにテンション高いね……」
エレンは初めて見た術にちょっと興奮してるみたい。わたしの両手握って上下にブンブンするほどテンション高い状態だよ。
「というかお嬢様、あれって普通の威力じゃないですよね? 私が同じ術使ってもあそこまでならないですよー」
「ノエル鋭い! あれはわたし専用術式のダブルスペルの応用で、オクタプルスペルを使った状態だよ。正真正銘、今のわたしが精霊衣をまとった状態での全力がアレになるよー」
天衣や精霊神衣使えばもっとだけど、そんな状態で殲滅用の術を使わなきゃいけない状況は勘弁してもらいたい。まぁ殲滅用の術式使うこと自体少ないほうがいいんだけど。
「で、わたしたちも終わったけど、まだ競う?」
そう言ってハーレム勇者君たちを見るけど、あー、うん、やりすぎたかも。
ハーレムメンバーズの半数は失神してるし、勇者君も顔が真っ青のまま固まっちゃってるわ。でもこれが実力の差ってやつですしー。
「もしもーし?」
「え? あ?」
「きこえてますかー?」
「あ、あぁ。だ、だいじょうぶだ」
「んで、まだ続けるの? ダンジョン競争で納得いかないなら、直接戦ってあげてもいいけど?」
そう言いながら、ちょっと炎の塊を精霊力で3個作ってお手玉する。
さっきの光景見た後だからか、ただの精霊力の塊でも十分威嚇になるね。同じ術だと思ってびくびくしてるよ。
さすがのわたしでも、あの術の塊を使ってのお手玉はしんどいのでやりませんよ? やれなくはないけど。
でもまぁこれで完全に反抗する気は失せたんじゃないかなぁ。圧倒的なまでの実力の差がはっきりとわかっただろうし。
それに奴自身をぼろくそにしたわけじゃなく、あくまでわたしとの差を見せつけただけだから、変な恨みもわかないでしょう。わかないよね?
ダンジョンにとっては完全にオーバーキル




