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102話 ハーレムさんたちの実力は?

 ハーレム勇者一行がダンジョンへ入っていった。

 わたしたちは転移門のところでのんきに座りながら配信される映像を見る。


 んーむ、どの程度の実力かだいたい把握したけど、現状は雑魚の一言だなぁ。役割分担はできてるみたいだけど、個々のレベルが低いのがまるわかり。

 まぁそういう人を鍛える学科だから、割と予想してた内容ではあるかな。


「それにしてもすごいですわね」

「ですよね、油断なりませんよ」


 エレンとアリサが神妙な感じでそんなことを口走る。うん、気持ちはわかるんだけど、わかるんだけどー。


「あ、あんまりつよくされると、はぅっ!?」

「進化の影響ですかね? 少し敏感になってますねー」

「でも見た目通りの柔らかさだね。これは虜になる人多いだろうなぁ」


 冷静にノエルとレイジが分析してるけど、正直ちょっとヤバいから! 4人に尻尾触られたりモフモフされたりとか、ほんと耐えれないんですが!


 進化して少し変わったわたしの尻尾が気になるようだから、なんとなく触るの許可したらこのありさまだよ。

 ふたり同時は何度も経験してるけど、4人同時はここまでヤバくなるとは思わなかったわ。


 レイジは軽く手で触る程度だけど、女性陣はお構いなしだから余計にヤバくなる。ノエルが言うようにちょっと尻尾が敏感になってるのに、容赦なく3人が抱きつくんだもん、勘弁してくださいほんと。

 これ以上の痴態を晒す前に、少しモフモフするのを抑えてもらおう……。


 でもおかげで面白いことを聞けた。

 レイジが言うには、カイルの尻尾はもっとゴワゴワしてるみたい。見た目はふっくらモフモフだけど、毛が硬めだからゴワゴワになるのかな?

 対するわたしの尻尾はすべすべしてて非常に柔らかい。しかも以前と比べさらにふっくら大きくなってることから、最高の抱き枕へと進化しつつある。というかホント大きくなりすぎ! わたしの腰回りよりも太くなった気がするし。





「あら、また罠にはまってますわ。罠の探知範囲もあまり広くなさそうですわね」

「魔力に反応する罠は特に苦手そうだね。さっきと同じ罠だよあれ」


 ハーレム勇者一行の配信を見てるけど、よくて鉄級冒険者パーティってとこだなぁ。一人くらい能力の高いのが居るかと思ってたけど、それはなかったね。

 この程度の実力じゃ中級のボスまでたどり着けないと思うんだけど、どうする気なんだろ。

 そういえば最初に『助っ人を雇ってもよいか』って先生に聞いてたね。許可は下りたようだけど、誰か呼んだりするのかな? ダンジョンに入ってから呼ぶってなると、個人用の転移門を持った貴族の可能性が高いけど。


『無理だよダーリン、敵が強くてこのままじゃ先に進めない』

『さすが中級だな、ここまで敵が強いとは』


 ハーレム勇者たちがそんな情けないことを言ってるけど、そんなに強いかなぁ?

 どう見ても森のダンジョンの初級にいるボス程度。連携されると少し厄介かもしれないけど、分断して各個撃破すればいいだけの雑魚だよ? それなのに苦戦しすぎだよ。


 そもそもこのハーレム勇者、転生ボーナスがしょぼそうなんだけど。

 てっきりハーレム築くくらいだから秘められし力とか、隠し持った超兵器とか持ってるかと思ったら、ハーレムメンバーと大して変わらない実力。しかもメンバーに対する指示も完全に素人で、ほんとざーこざーこって感じだわ。

 戦闘もダメ、指揮官としてもダメなのにハーレム築いてるとか、まさかこいつのボーナスって女受けが良いとかそういう類だけなんじゃ……。


『仕方がない、彼を呼ぶ』

『勇者様を呼ぶんだね!』


 はい~? ハーレム勇者が別の勇者を呼ぶの? ほんとこの世界って勇者が多すぎなんですが。しかも揃いも揃って雑魚か人として屑な奴ばかり、まともな勇者ってレイジだけじゃないかしら。

 そのせいかな、呼ばれる奴も雑魚な気がするわ。





「おや、彼が取り出したあれって日本メーカーのスマホだよね。ということは、彼も僕と同じで地球から来たのかな」

「かも? でもそうなると、ちょっとおもしろい事実が分かったわ」

「どういうことですか?」


 アリサがちょっと心配そうな顔して聞いてくるけど、大丈夫だよー。

 ほんとこの子って前世でわたしが勇者に倒されそうに、まぁ相手はレイジ一行なんだけど、その事実のせいで勇者に対する警戒心がすごいからなぁ。そこまで心配しなくても大丈夫なのにね。

 レイジに対しても最初は敵意がすごかったけど、今じゃ普通の従者仲間になってるのはちょっとおもしろい。


「えっと、レイジのような超強い勇者は簡単に増えないってことだよ。レイジと同じ世界、この場合は地球になるね。地球からの転生者であっても、他の世界からの転生者と同程度の力と転生ボーナスしかもらってないのがこれではっきりとしたわけ」

「なるほど、もしも地球からの召喚者が特別でしたら、あの方もレイジに近い強さがないとおかしいということですね。たしかに彼はレイジと比べるまでもなく弱いですし」

「そゆことー。まぁ転生ボーナスが全部ハーレム能力になってる可能性も考えたけど、あったとしてもそっち能力もお察しな感じかな。強かったらわたしたちもコロッとなったはずだもの」


 もしもレイジの持ってる力が全部ハーレム能力だったら相当なものになる。お母様には効かないだろうけど、わたしやエレンじゃギリギリな気がする。アリサとノエルなんて瞬殺でコロッと靡いちゃうよ。


 それに分かったことがもう一点ある。

 この世界に転生してきた者がハーレム能力を手に入れても、強いメンバーばかりのチートハーレムパーティはそう簡単には築けないってこと。

 だってハーレム勇者に群がってる女性陣、進化してない普通の人ばかりだもの。まったく戦えないほど弱くはないけど、お世辞で褒めることが無理なくらい雑魚なのもまた事実。


 これで美貌とか色気とか、そっちの方がすごければまだわかるけど、そっちもそこまでじゃないなぁ。

 客観的に見れば美人だったり可愛かったりするけど、わたしの周囲と比べると全然ダメ。まぁお母様の影響で、力だけでなく見た目にも手を抜かない一派になってるからだけど。


 彼女たちも素は悪くないけど、肌と髪の手入れをしっかりしてないからすっごくダメダメになってる。服装も『いかにも戦いに行きます』って感じでダサいのもダメダメなポイントだわ。

 というか好きな男が目の前に居るんだから、もうちょっと化粧と服装を頑張りなさいよ……。





『もしもし、オレだけど。思ってた以上に魔物が強力で、すまないが今から来てくれないか? 座標はメールに添付したGPS情報を確認してくれ』


 ハーレム勇者がスマホで連絡してるけど、ふむ? エレンたちが少し不思議そうな顔をしてるわ。どうしたんだろ。


「ねぇユキさん、じーぴーえす? ってなんですの?」

「GPSって言うのは――」


 なーるほど、GPSね。知らない単語のようだし軽く説明しますか。

 確かにこの世界だとGPS衛星って存在しないから、GPSっていう単語自体使わないからなぁ。


 そもそも現在位置を出すには専用の魔道具を使うか、位置情報を取得する魔法や術を使うのがこの世界での普通。なので現在座標とか、座標値って言い方をする。

 なのにあえてGPSという単語を使ったあたり、相手も地球からの転生者で間違いないか。この世界の人なら、エレンたちとと同じようにわからないって反応になるはずだし。


 そういえば転生者が持っているスマホに搭載されているGPS機能も、魔道具や術を使って使えるようにしてるんだっけ。衛星を使わずにGPSが使えるとか、元の状態よりも進化してる気がするけど。

 ただ、そこまでしてGPSを再現する必要ってあるのかな? 正直不要な機能だから、なんとなーく意地でスマホの機能を全部使えるようにしました! って感じに見えちゃう。転生者のプライドとかもあるんですかねぇ。


「そうそう、スマホって転生者さんから見ると最新便利アイテムなんだけど、わたしたちからすると骨董品になるよ。エレンたちにあげた魔道具もそうだけど、普段使う魔道具のほとんどが空間ディスプレイで操作する形でしょ? だけどスマホとかって、あの小さい画面で操作するんだよ」

「え!? あの機械は話すために空間ディスプレイを閉じてるのではなく、あの小さな画面のまま操作するんですの? なかなか大変そうですわね」


 世界が変われば常識も価値観も変わるからねぇ。わたしもスマホは前世で使ってたはずなんだけど、あんな小さな画面でよく我慢できたなって思うわ。


「それにしても助っ人さんって誰が来るんだろう?」

「思うんですけど、他の勇者を呼ぶんじゃなくて、レグラスの冒険者雇って呼び寄せたほうがいいんじゃないですかねー」


 ノエルが言うことはもっともではあるんだよねぇ。レイジみたいな勇者でもいたら別だけど、あの会話からしてそんな大物を呼んだとは思えないんだよなぁ。

 案外、助っ人が居てもクリアするは無理だったりして?


 でもこの展開、〝未来のわたし〟は経験してないんだよね。そもそも助っ人なんて現れなかったし、ほんと何が起こるかわからない。少し気を付けておこう。

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