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100話 尻尾が増えちゃいました

 念のためもう一度自分の尻尾を確認……うん、たしかに5本ありますね。

 いやいやホント、マジでどうなってるのよこれ。しかも増える前より尻尾自体も大きくなってる気がするし、わけわかんないよ。


「まぁ昔からユキはどこか抜けてたから、この反応は納得なんだが」

「しかも自覚無しで無防備なところまであるからなぁ。勘違いさせて馬鹿な男に言寄られてないか、兄として非常に心配だ」


 うぐっ、お兄様たちに言い返せない。

 確かに言われるまで尻尾に気が付かなかったし、どこかズレた考えすることも多いし、たまに前世の主観で動いて自分が女の子っての忘れる時も稀にあるし。

 ほんと心配される要因が多すぎて何も言えません……。


「やっぱり気付いてなかったのね。えっとね、ユキちゃんは進化して尻尾が2本も増えたんですよ~。ほんと私の娘は進化も早くてうれしいわ」

「進化って、え? わたしって既に天魔ですよ? それに特に何かしたってわけじゃないですし」

「進化というのは、私のような完全な九尾の狐族に近づく成長の事ね。でもね、尻尾が1本増えるだけでそれ以前の力を圧倒する力を手に入れちゃうから、成長ではなく進化するって言うのが正しいの。しかもユキちゃんは一度に2本も増えたすごい子なのよ」


 お母様にとってよほど誇らしいことなのか、ギューッとされながら頬ずりされる。ちょっと恥ずかしいですはい。


 狐族の場合、尻尾が増えるたびに巨大な力を得ることができるみたいね。尻尾が1本増えるたびに今までの倍以上の力を得るとか。2本一気に増えたら4倍になるのかな?

 まぁわたしとお母様は普通と違って、2倍とかそういう生易しい上昇じゃないとかなんとか。どこまで上がったのか調べるのが恐ろしいわ。


 でもなぁ、わたしって魔石が完全じゃないんだよなぁ。

 進化したってことは、魔石もそれなりに大きくなるんでしょ? だとしたら魔力不足がさらに長引くわけで……。うん、身長は完全にあきらめよう。


 それにしても、なんで急に尻尾が増えたんだろ?


「ねーねーお母様、どうして尻尾が増えたのか全然わかんないのです。1本増えるのに100年くらいかな? って予想だったのに、急に2本も増えたんですもん。もしかして魂が融合したせいなんですか?」

「それは違うわよ。魂の融合と同時に進化したからそう思うのはしょうがないのだけど、ユキちゃんの進化は別なの」


 お母様が笑顔で一番の可能性を完全否定しちゃったよ。

 うーむ、そうなるとますます分からないんだけど。まさかアリサとエレンと一緒に寝たせいじゃないよね? というか一緒に寝たとか、聞きようによってはかなり危ない言い方だけど。


「いくつかあるのだけれど、一番は精霊神衣の顕現を長時間維持できる状態にまで成長できたからなの。長時間維持できるのは、半精霊として一段上の存在になる準備が整った証でもあるのよ」


 一段上の存在、ですか。なかなか壮大な感じですなぁ。


 そもそも狐族は魔石に魔力を蓄える性質を持っている。そして蓄えた巨大な魔力を体に還元した際、新たな尻尾が生えてくる。

 だが還元は体への負荷が非常に高く、還元に失敗して体が崩壊する者も多い。魔力の蓄えは大事だけど、体もしっかり作らないとダメなんだよねぇ。


 もっとも今のわたしには魔力の蓄えがない。

 とゆーか魔力のほとんどを魔石の修復に使っているので、蓄えるどころか不足している状態だし。


 だけど、わたしには強い精霊力がある。

 しかもわたしの魔石って半分は精霊石だから、魔石部分が魔力を蓄えるのと同じように精霊石の部分が精霊力を蓄える。

 それに精霊神衣を使うようになったから、体も強い精霊力を効率よく吸収し活用できる状態に成長している。


 そして今回、魂の融合が呼び水となったのか、今まで蓄えていた精霊力が一気に還元されたようで、魔力ではなく精霊力の力で進化しちゃったと。

 本来ならば力を開放、例えば精霊神衣を顕現させたときに進化するはずが、起きたら勝手に進化してたのはそういうわけですね。呼び水になっちゃったのかぁ、しょうがない魂さんですね! 自分自身だけど。


 生えてきた尻尾が1本ではなく2本なのは、わたしが精霊力を今まですっごい貯めこんでいた結果だそうで。

 そういえばわたし、天衣をお母様との約束で使わなくなってからは精霊神衣を積極的に使ってるなぁ。

 エレンとの全力での模擬戦でもそうだし、お母様たちとの模擬戦でも使ってる。意識して精霊力を使ってたからか、精霊力が大量に蓄積されるのも納得。


 修行の成果で精霊力の扱いがさらに上達し、最近は精霊神衣も1週間くらいは余裕で維持できるようになった。

 魔石が完全じゃないのを考慮すれば上出来だと思ってたけど、まさか還元した精霊力で尻尾が生えるくらい成長していたとはねぇ。


 なにより、魂の融合は関係ないということは、今までわたしが頑張ってきた結果が認められたってことだからちょっと嬉しい。

 融合したおかげですってなってたら、正直ズルして強くなる感じがしてすっごい嫌だったし。


 まぁわたしが強くなったということは、当然それに引っ張られてエレンやレイジもすっごく強くなると思うんだよねぇ。

 エレンのような竜族は強者と戦うと成長が早いという戦闘系の種族だし、レイジも勇者能力のおかげで強者と戦うと一気に成長する。わたし一強の時間はすぐ終わるのが目に見えてるねぇ、良いことだけど。





 朝食も済んだので、お仕事があるパパ様やママ様などは転移門で帰っていった。お姉様は仕事を放り出して残ろうとしたけど、お兄様に止められてしぶしぶ。

 残ったのはお母様とシズクさんだけ。今日は1日中お母様とシズクさんがわたしに付き添ってくれるみたい。


 まぁ二人の気持もわかる。どうも尻尾が2本も増え、さらに全部の尻尾が大きくなったからか、ちょっとバランスがとりにくいんだよね。

 そのせいで、立とうとしたら思いっきりよろけて、傍にいたお母様に抱きついちゃったし。こんな姿見たらそりゃ心配になるよねぇ。


「このようなお嬢様を見ると、もっと幼いときのことを思い出しますね」

「たしかにそうね。ハイハイを覚える前に立って歩こうとして、転んでは起き上がってを何度も繰り返していたわねぇ」


 うん、転生者だったからハイハイをすっ飛ばして歩こうとしてたわ。あの時もこうやってお母様に抱きついてたなぁ。

 そしてあの時と同じように優しく撫でてくれる。そんなお母様に応えたいからかな、もっと頑張ろうって考えちゃうんだよね! というかちゃんと立てないと今日のダンジョン勝負が無理になっちゃう。何とかしないと……。


「焦ったらダメよユキちゃん。焦って変な癖をつけたらすっごく大変なの。まだ時間はあるから、急がずにゆっくり慣れていきましょうね」

「はーい」

「でも急ぎたい気持ちもわかるから、お母さんが手伝ってあげるわね。まずは増えた尻尾への意識だけど――」


 主任コーチにお母様、副コーチにシズクさんという体制での指導の始まり。

 二人の教え方は親切丁寧、これならすぐできそうな気がする! ……けど、現実は甘くないなぁ。何度もよろけたり転んだりしちゃう。

 こんな状態に付き合わせるのも問題だし、エレンたちには先に学園に行ってもらおう。まぁダンジョン勝負が始まりそうになったら時間稼ぎをしてもらうのも考慮してだけど。でもアリサだけは残ってわたしに付き添うんだろうなぁ。





 わたしがんばった、超がんばった!

 1時間くらいよろけたり転んだりひっくり返ったりしてたけど、何とかなるものだね。重心を少し変えるのってこんなに大変だとは思わなかったわ。

 獣人は意識せず尻尾でバランスをとってることもあり、意識して治すのがほんと難しい。まぁ普通は尻尾が増えたり減ったりしないから、こんな苦労は皆無なんだろうけど。


 しっかし尻尾が3本から5本に変わっただけでもここまで大変だと、9本になった時はどのくらい大変なのかなぁ。まだまだ先だけどちょっと心配。


「これなら大丈夫そうね。ほんと私の娘は頑張り屋さんで可愛いわぁ」

「あぅ、お母様ちょっと恥ずかしいです、はふぅ」


 尻尾が増えたことの影響を克服したら、お母様に思いっきり褒められた。

 むぅ、ぎゅーっとされた状態でなでなでされると、正直ちょっと困ります。恥ずかしいのもあるけど、気持ち良くてむしろ離れたくなくなっちゃいそうだから、ほんとまずいんだよねぇ。


「そうそう、今のユキちゃんなら精霊衣の状態でも十分強いわよ。だって、今まで精霊神衣をまとった状態の力を精霊衣の状態で発揮できるからね。もちろん精霊神衣ならさらに強い力になるわ。なので、いきなり精霊神衣を使うのではなく、魔衣や精霊衣で様子を見ること」

「は~い。そういえばお母様、尻尾が増えたってことはやっぱり体の成長は……」


 聞きたくないけど一応聞いておこう。だいぶ諦めてるけど、もしかしたらもしかするかもだし?


「そうね、思ってる通りかしら。魔石がさらに大きくなったから、修復に回す魔力はさらに増えちゃうわね。身長以外の成長を抑えてその分を充てることもできるけど、どうする?」

「ん~、身長は低くてもいいけど、お母様みたいな体型には絶対になりたいです! だってお母様はわたしの憧れですから!」


 なにより大きくないと胸元からお札をスッと出すあのエロカッコよさを再現できないからね! 身長はもともと諦めてるしー。


「あらあらまぁまぁ、そう言われるとちょっと恥ずかしいわね。でもそうね、それなら身長以外の魔力が充てられないように、ちょっとだけ調整してあげるわね」


 そう言ってお母様はわたしの胸に手を当てて魔力を流し込んでくる。おそらく魔石に直接作用する術だと思うんだけど、どうやってるんだろ?

 不快な感じはないし、痛みとかも全くない。魔力が流れてきてるなぁって感じだけだから余計に不思議。興味があるし、今度教えてもらおうっと。

棚ぼた的なパワーアップではなく、実は修行の結果というオチ

ちなみに尻尾が増えるだけでなく1本1本が太くなったので、戦力だけでなくモフモフ度も爆上げしてます

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― 新着の感想 ―
[一言] 非常用のお布団兼まくら(尻尾)が更に快適になりましたね
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