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10話 狐も歩けばトラブルに当たる

少し長いです

 アリサを部屋に招いてから数日後、今日も平和だねぇ。


 お姫様人形もばっちりできて、アリサすっごい喜んでくれてよかったなぁ。オマケに勇者人形(白馬付き)あげたら喜びすぎて抱きつかれちゃったけど、あれはちょっとはずかしかった。急にやられるの、弱いんです。


 それにしてもあの勇者、最近は二日に一回のペースでうちにくるんだよなぁ。


 勇者は嫌だけどアリサを毎回連れてくるなら歓迎。だけどアリサじゃない奴隷の人、しかも怖そうなオッサンを連れてくることが多いからすっごく不満。

 アリサじゃない時、あからさまにアリサも連れてこいよという不快アピールをしてもスルーされてる。奴のスルースキルを上回る抗議を考えないとダメそうだわ。


 そんなスルースキル上級者の勇者だけど、お父様に聞いたら結界の構築について勉強しに来てるとかなんとか。

 神聖王国でも結界は存在するはずだけど、どうしてわざわざこの国に来て教わってるんだろ? わたしたちの使うような強力な結界じゃないみたいだし、ほんと謎だわ。





 さてと、今日は外に出ても大丈夫と言われたのでその準備をしましょう。


 まずは身だしなみからだね。

 鏡の前で衣装と髪型のチェック、うん、白いワンピースも似合いますね。しかも今日の髪形はお母様にセットしてもらったツインテール! 我ながらあざと可愛いわ。


 次に魔道具で狐耳と尻尾を隠してっと……へぇ、予想はしてたけど両方隠すと只人族にしか見えないんだね。狐族狙いの人対策ならこれだけで十分かもしれないわ。


 身だしなみはよし、あとはポーチに術札を念のため多く入れて、お財布も入れて準備万端。


「それじゃいってきま~す!」

『いってらっしゃいませ、お嬢様』


 メイドさんと執事さん、それとお弟子さんたちに見送られ、いざご近所商店街へレッツゴー。





 通りの様子はどうかなっと。


 う~ん、今日も外国からの観光客が多いなぁ。いつもはもっと少ないのに、このところほんと人が多い。

 お父様やお母様、メイド長のシズクさんだけでなくうちにいる人みんなから『絶対に狐耳と尻尾は隠して』って繰り返し注意されるわけだね。どんな人がいるかわからないし、こういうところが珍しい種族に生まれたデメリットね。


 さてさて、今日は何買おうかな~。そういえば新しい模型(期間限定品)の発売日だっけ、売り切れてなければ買っちゃおうかな。売り切れてたらサンプルを確認して取り寄せしてもらうのもいいね。


 しかしこの世界、転生者の影響でどこかで見たことのある商品がほんと多く、物によっては完全再現しているものもあったりする。

 もしも元の世界の著作権をまとめる神様とかがいたら、売った人とかが間違いなく怒られて色々請求されちゃうだろうね。


 おや? 店の前とか広場でもない場所に人混みができてる、何かの催しでもしてるのかな?

 って、違うみたいだね。どうやらうずくまってる子が居るようで、その子をどうしようって感じになってるだけだわ。なんで見てるだけでちゃっちゃと助けたりしないんだろ?


 あれ~? よく見たらうずくまってるのはアリサじゃない? しかもあのロリコン勇者も居るけど、ただ上から見てるだけで起こそうとすらしてない。さらに周りにいるのは神聖王国の騎士かしら、アリサを取り囲んでいるようにも見える。

 なるほど、この騎士のせいで他の人たちも近寄れず、結果人混みができちゃったってことか。


 周りの様子からそう時間は経ってないみたいだけど、そもそも何でうずくまってるのかな。病気か何かが原因なのか、それともこの騎士たちにいじめられているだけなのか。


 まぁ理由はどうでもいいか。わたしって我儘だし、できることとしたいことをするだけだね!





「アリサ~、何してるの~」


 手を振りながら近づく、一応武器持っていませんよアピールです。

 あ、一斉に睨まれた、ちょっと怖いぞ。でもアリサはうずくまったままだけど、ほんとどうしたんだろ。


「これは可愛いお嬢さん、僕の奴隷の知り合いかな? はて、どこかで会ったような気がするのだが、ふむ」


 相変わらずナンパっぽいなぁこのロリコン勇者、名前忘れたけど。しかし狐耳と尻尾隠すだけでわたしが誰かっての、意外とわからないものなのね。この街の人とかには通じないけど、顔見知り程度の人には十分通用するってことかな。

 それなら話は早い、面倒だしあくまで知らない人を装いましょう。


「いえ初対面ですよ~。でもそちらのアリサとは友達です!」

「そうか、僕と親しい女の子に似ているだが。ちなみにその子は数少ない狐族でね」


 おいまてこら、いつお前と親しくなった、親しい要素皆無なんですが!

 っと、落ち着け、きっとこれはこの勇者の罠よ、ボロを出させるための作戦に決まってるわ!

 ……いや、たぶん本気でそう思ってるただのバカね。


「ところでアリサに何かあったんですか~?」


 変に追及される前に先に進む、もしもボロが出て正体がバレたらすっごい面倒そうだしね。こういうタイプ、偶然会ったことを『運命だ』とか言いそうなのもあるし。


 それに何となくだけど、この騎士たちに正体バレるとさらに面倒なことになる気がする。珍しい素材ゲットだぜーってなる可能性が高いからかな? そんな状況はごめんなさいなので、さっさとアリサを連れて逃げてしまおう。


「いやなに、荷物を取りに行かせたのだがご覧のありさまでね。困ったものだよ」


 状況を説明してくれるのはいいけど、とりあえずその『真正面でなく斜め30度くらいの角度をつけ、さらに少し天を見上げ片手で顔を少し隠す痛いポーズ』は止めろと。前世の自分を見てるようでちょっと恥ずかしいから、ほんと止めてください。


 だってしょうがないじゃない、あの世界でカッコつけようとしたら中二的なポーズや言動が最適だったんだから! 普通の日本人が幹部になれって言われたら、そりゃそういうキャラを作ることになりますよ!


 黒歴史を思い出すのは置いといて、荷物ねぇ。

 そこらに散らばっている剣とか盾とか魔法紙とかを大量に詰め込んだ大きな箱を複数を運ばせてたってことだよね、しかも荷車のような道具も無しで。

 わたしならヒトガタか召喚使えば楽勝だけど、普通は無理だろうなぁ。


 無理を無理と言えない状況なのか、それとも別の理由があるのか、う~ん。考えるのは後でいいや、さっさと連れ去りましょう!


 そのためには、後々面倒にならないようこの場を制する人が必要になってくるね。なら適任者をちゃっちゃと呼んじゃいましょー。

 こっそり術札を出してさらさらっと術式を構築してそのまま展開っと、うん完璧。


「そうなんですか。あ、繋がった。ボブおじさーん、ちょっと来てくれますか~」


 ふっふっふ、この術札の術式が指定した人物へ言葉と現在位置の情報を届ける物とは思うまい。この電話と位置情報通知の合成術はほんと便利だね、魔力消費は多いけど。

 それにこれは一般的な術式を組み合わせただけなので、ロリコン勇者たちにバレても問題ない術。だからと言ってわざわざ説明する必要は無いので聞かれても適当に流す予定。でもアリサに聞かれたら全力で教えるわ!


「ボブおじさん? 誰だいそれは」

「えーっと、あーきたきた、こっちこっち」


 意図的に目立つように元気よく手を振りましょう。見ている人が多ければ何かあってもバカなことしないでしょ、こいつらも。


「おーユキちゃん、どうしたんだ急に。ってなんだこいつら」


 早いなぁボブおじさん。ドワーフなこともあり、どう見てもずんぐりむっくりで遅そうなのにめっちゃ早いとかね。

 というかほかの警備の人達が遅れて、しかも息を切らしながら到着ってどんだけ早いんだよボブおじさん。


 あ、鎧新調している。しかもあれって最新鋭のすごい高いやつだっけ? これは他国の兵士が泣いて羨ましがるだろうなぁ。


「えっとね、この女の子が転んじゃったのか荷物がばらけたんだって。でも武器とか落ちてるでしょ、拾うにも危ないからおじさん達に頼もうかなって」

「なるほどなぁ、そりゃ確かにワシたちの仕事だわ」

「でしょ。んじゃわたしはこの子の治療に行ってくるね~」


 しれっとアリサの手を握って立たせる。一瞬びくってなったけど立ってくれた、よしよし。

 ん~、なんかいろいろされたのかな、泣いてたようで目が腫れてる。女の子泣かすとか、こいつらは完全にわたしの敵ですね。


「い、いや待ってくれ、その娘は僕の奴隷で」


 おーおー慌ててるぞこのロリコン勇者。周りの騎士たちも慌ててるけど、警備の人たちに睨まれてびくびくしてるわ。逆立ちしても敵わないのはわかるのね。


「あー君、あの嬢ちゃんの主人ならワシらに付き合ってもらおうか。安心しろ、治療ならユキちゃんがしてくれるさ」

「そういうことです! んじゃおじさんたちお願いね~。さぁアリサ行きましょー」


 アリサ引っ張ってさっさとここから離れましょう。ふらふらしてるから少し行ったら術使って運んじゃおうか。


「おうよ、気を付けて行くんだぞ。終わったら領主様経由で連絡しとくわ」


 ボブおじさんたちに手を振りながらさっさと移動。


 移動する際、騎士の一人が阻止しようとわたしの前に立ったけど、ボブおじさんの見事なドワーフタックルで阻止されたわ。って、止めるのにタックル発動とかどうなの?

 それに思いっきり吹っ飛んだようで、ズッドーンっていうすごい音と地響きまでしたし。これはボブおじさん、止め方だけでなく力加減も間違えたな……。





 歩いて数分、ここまでくればもう大丈夫かな? 足を痛めてるのか結構辛そうだし、ちゃっちゃと運んであげよう。


「とりあえず術で移動しちゃうね。ここだと治療術使うと目立つから」


 じろじろ見られながらの治療術はさすがにねぇ。門外不出とかじゃないけど他国の人に堂々と見せるものでもないし。


「あの、ありがとう、ございます」

「気にしない気にしない。ちょっと空飛ぶけどすぐだから安心してね」

「え? 空を、飛ぶ?」


 腰のポーチから術札を出してさらさらっと術式を構築してっと。


「あ、手は離さないでね、落っこちるから」

「落っこちるって、あの、ちょっと」

「術式展開、さぁお空へいっくよー」

「ま、まって、浮いて、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 ちょっと勢いよく上昇したら悲鳴上げられちゃった。

今更ですけど、この世界は主人公より強い人が数多くいる設定です。

同世代やモブと比較すれば圧倒的だけど、もっと上の人もわんさかいるって感じですね。

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