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7.お買い物

8日目朝。


ギルドで朝の日課の木刀を振っていたら、寝起きなのか赤髪に寝癖がついているレッドが来た。


「おはよう。」

「おう。早いな。」


僕はいつもの素泊まりに戻っていたので朝ごはんはパン一個。

レッドはもっとひどくて昼のギルドで出るゴハンしか食べない日もあるそうだ。

よく持つな。


「昨日ジョン爺さんにおすすめ聞いたんだけど、雪が降ったらスノードロップとりにいかないか?」

「なんだろう?ジョン爺さんが勧めてくれるならいい依頼なのかな。」


「近くの村で毎年雪が降ると雪ウサギが出るらしいんだが、こいつから取れるスノードロップがいい金になるらしい。

 寒いし探すのに体力がいるから初心者以外はやらないクエストらしいぜ。」


「雪ウサギかー。もふもふしててカワイイのかなぁ。」

「俺も見たことないが、言っとくけど動物が進化した魔獣だろうからな。考えといてくれよ。」


レッドはそのまま昼飯目当ての講習にいってしまった。

講習は何度受けてもいいらしい。昼飯付きなので子供の参加も多い。




僕はゴールさんの店目指して歩いて行った。

冬物あるといいな。

店はすぐにみつかった。ちょっといい服や装備品、傷薬なんかも置いてある。

店員さんが近寄ってきたので貰った名刺を渡す。


服や靴を見ていたらツインテールのリリーシュがにこやかにやってきた。

頭ポンポンがよかったのだろうか?


「ショウさん、先日はありがとうございました。」

「冬物の服を買いに来たんだ。雪ウサギ討伐に行こうと思ってね。」

「それじゃあ選ばせてください。雪の中をかきわけて進むので丈夫な靴もいりますね。」


上着や帽子、毛皮のマントや靴などが並べられた。

どれもよさそうだが、お値段が心配だ。


「このまえのお礼として一式プレゼントしようとおもってます。」

「いや、それではもらいすぎです。」


慌ててお断りしたら、そばにいる店員さんにこそっと言われた。


「遠慮してはいけませんよ。冒険者ならまた次も買い物に来てくださるでしょう?そのための顔つなぎでもあるのです。」


そういうものなのか。商売って難しいんだな。

それなら遠慮なく必要最低限のものはいただいていこう。


雪焼け用のクリームとゴーグル?らしきものは自分で購入。

日本の学校でスキー教室に行ったときに大変な目に遭ったことを思い出していた。

まぶしくて目が痛かったんだよね。



お昼ご飯もまだならご一緒にと言われ、遠慮するも押し切られてしまう。

従業員用なので、簡単なものしかありませんがといいつつ食堂に通される。


さすが異世界なのか見たこともない料理がたくさん並んでいた。

柔らかいパンと肉、赤や黄色のジューシーな果物。

とてもおいしい。



食事中ちょっと気になる話があった。


リリーシュは近くの村に届け物を頼まれて護衛付き馬車で向かったらしい。

この街道は毎日見回りがあり、ほぼ安全な道だった。

荷物を届けたその帰りにいきなり馬が走りだし、突然のことに護衛たちが間に合わず後から追いかけたが見失ってしまったと。


リリーシュだけを乗せた馬車は走りまくってやっと止まったと思ったら、そこにあの盗賊二人がいただとか。


偶然にしてはできすぎてる気がする。

いきなり馬が走りだすなんてことあるのだろうか?

何かに驚いたのかもしれない。

でも偶然リリーシュだけが乗っていて、そこに偶然盗賊がいるだなんてできすぎてる。


ただ運が悪かっただけなのかもしれないが、フラグのためだけにでっち上げられたのだろうか?

なんだか申し訳ない気持ちになった。




商会で買い物をして、午後の講習にはもう間に合わないのでギルド2階にある資料室に入ってみた。


近くに出る魔獣や植物の種類も詳しく載っていた。

魔獣は動物が進化したもの、豚の魔獣はオーク。

魔物はドラゴンなどのことをらしい。


はじめにメルクル街はフローリアという女神さまが作ったと伝えられている。


メルクル街のほうが王都よりも歴史が古く、古い外壁を囲うように新しい外壁がある2重構造になってるんだとか。

建物も歴史ある建物があちこちに残っているそうだ。


一番興味をひいたのはメルクル街のあるフローリア王国の地図だ。

街からいくつかの村を経由すると王国につながる街道があった。

ここより暖かいと聞いてたから見に行ってみたいところだ。


そういえば毎日が必死で観光もしてなかったじゃないか。

日本食あるのだろうか。余裕ができたら探してみたい。




ギルドを出て街を散策する。

しばらくいくと古い外壁に魔法をぶつけて練習してる銀の髪の少女がいた。

見たことある気がするが名前がわからない。

振り向いた少女はクスクス笑って僕に話しかけてきた。


「ショウくんだったっけ?こんにちは。」

「こ、こんにちは。えーと…僕の名前覚えてました?」

「もちろん。魔法講習で緊張してる皆を笑わせてくれたじゃない。おかげでとても楽しかったわ。」

「いや忘れてほしい。恥ずかしい。」


僕はやっと思い出した。講習会の時に隣で魔力を流して教えてくれた子だ。

お腹がなりまくって恥ずかしかったことも思い出す。

ただ、名前が思い出せない。そもそも聞いたっけ?


「ここは魔法を練習していい場所なの。古い外壁に向けて練習してるのよ。」


内側の歴史ある壁のほうは焦げたりひび割れたりしている。女神さまが作ったのにいいのかこれ?


「じゃあ僕も少しやってみようかな。」

「本当?一緒に練習しましょうか。」


彼女のほうは矢のような氷魔法をバシバシ壁に当てている。

雪ウサギを仕留めるために魔法の練習をしてるそうだ。


話をしながら壁に向かって火と風で投げてみたが、僕のはヒョロヒョロしてて小さいので途中で消えてしまった。

僕は根本的に魔素が全然足りないみたいだ。


それでも練習していれば多少はよくなっていくらしい。

魔法にも熟練度みたいなのがあるのかな。

毎日お湯を作る練習してるのに、あれじゃ足りなかったんだ。


「今日はここまでかな。もっと練習してからくるよ。」

「練習場に来るために練習するの?」

「あ、ほんとだ。そういえばそうだ。」


また笑われてしまった。

うぐぐ。

恥ずかしかったので走って宿屋まで戻る。


あれそういえば、さっきの子の名前はなんだったんだろう?

聞いてないよね?あれ?また聞いたけど忘れたのかな?

まあいいか。




早めについた素泊まりの宿屋で、僕は黙々とお湯を作ったり、洗濯を乾かしたりした。

これも毎日練習しないとだめなんだな。

朝は素振り、夜は魔法か。


めんどくさいけど、これができないと生きていけないからなぁ。

毎日臭いなんて絶対ごめんだよね。




硬いベッドに横になる。

転生させた神様って中学生の僕なんかに何をさせたかったんだろう?


ラノベなら社会人がメシテロとか異世界常識使って内政テロとかあるけど、

実際はちょっと知ってるってだけで作ったりできないんだからね。

むしろ前世の記憶いらなくないか?


僕もレッドも必死に生きてるだけで、全然差がないよね。

もう思い出してもしょうがない。

悲しくなって毛布をかぶり、そのまま寝てしまう。


夜空は満天の星を浮かべて優しく静かにふけていった。




お読みいただき、ありがとうございます。


少しでも続きが気になる、と思っていただけたら、

『ブックマーク』と【☆】何卒応援よろしくお願いします。


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