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3.貧乏なことに気が付いた

夜もかなり遅いらしい。

周りをみまわして夜勤のギルド職員がいたので泊まれる場所を聞いてみたが、さすがにこの時間になるともうどこも空いてないらしい。

ただギルドの練習場が無料開放しているので、そこで仮眠をとったらどうかと勧められた。


ギルド裏手にある練習場はただの広い庭であるが、屋根代わりに大きな天幕が張られていた。

お金のない人や夜中に戻ってきて部屋が空いてない人用に寝転がれるようになっている。

王都に近い街とはいえ宿屋は少なめなのだそうだ。


毛布と薄いマットで3銅貨。日本円で300円くらいだろうか。

避難所生活を異世界で体験するとは思わなかったが、路上で寝るよりずっと安全なことは間違いない。

ウエストポーチから干し肉を取り出してしょぼい夕食をすませる。

お金も小銭ばかりであまりはいってないようだった。


すでに何人かいたが夜も遅かったので毛布にくるまってる人を起こさないようにそっと移動して隅っこに寝転がる。




二日目朝。


寒かった上に寝心地はあまりよくないので、体中がバキバキして痛い。

温かい飲み物が欲しいところだけど当然そんなものはない。

ギルド職員が出勤してきたので毛布を返し、仕事依頼がないか聞いてみた。


「ギルドの仕事依頼は基本的にボードに貼ってあるものになります。

 早いもの勝ちですので皆さん朝早くから並んでいます。

 Fランクの仕事を最低3回は完了させないとEランクにはなれません。」

「一日で終わらせることはできますか?」

「Fランクの仕事を午前中に終わらせて、午後はギルド講習を受けたらいかがでしょうか。

 講習を修了した学科についてはEランク相当として仕事が受けられるようになります。」 

「誰でも受けられるのですか?」

「はい。冒険者の安全のために基礎中の基礎だけは身に着けられるようにしてあります。」


最低ランクFは子供でもできる仕事がほとんどだ。

なので最低でもEランクにならないと外に出るようなまともな仕事にはありつけない。

午前中に掃除の仕事、午後は講習に励もう。



季節で言えばもう冬になるのだろうか。

この世界に四季があるのかはわからないが掃除は道路に積もる落ち葉掃除だった。


人通りがあるので急いでかきあつめる。

そして当然ながら馬車も通るので馬糞もあってなかなか大変な仕事だ。



昼はギルド講習を受ける人用に無料のパンとスープが用意されていた。

食事をまともに取れない人用にちゃんと考えてあるらしい。

朝ごはんも干し肉だったからありがたい。なかなか歯ごたえのある黒いパンだけどまずくはない。


午後の講習は街近辺でとれる野草を学んだ。

これで野草関係の仕事ができるはずだと思ったら、弱いけど魔物もたまにでるらしい。

僕、戦えないじゃん!



ギルドで紹介された安い宿屋に行ってみたが素泊まりでも銀貨3枚なので結構お高い。

食事は追加料金をとられてしまうので素泊まりをお願いした。

お風呂もなくて桶っぽい入れ物にお湯を入れて、タオルで体をふく程度らしい。

お湯は銀貨一枚追加。地味に痛い。


昨日のこともあるし今日は絶対布団の上で眠りたい!


夕食は露店をブラブラして串焼きを買って食べる。

朝ごはん用にサモサも買っておこう。節約、節約。



夜は早めに宿屋へいく。やっとベッドで眠れる。

硬いけど外より何倍もましだ。


タマちゃんのおかげで一般的な冒険者の力はあるけれど、なにしろやりかたがわからない。


弱い盗賊を偶然たおしたときは何とかなったが、剣のさばき方もちゃんと教えてもらおう。

ダガーを振り回して偶然あたっただけってかっこ悪すぎるだろう。

次の講習会は剣を習いたいな。

あとできたら魔法も少し。魔法はロマンだ。


そのまま意識は夢の中へと引きこまれていった。





三日目早朝。


僕はいきなりガバッと起きた。


「捕縛金もらいにいくの忘れていた。」


金がないといいながら忘れてるとはマヌケすぎる。

学生だったころの呑気さが忘れられないのかもしれない。


せめて下着を買えるくらいはほしいなぁ。

ちょっと臭いかもなどと思いつつギルド受付を済ませる。


「ショウ様、お待たせしました。報酬として10銀貨になります。」

「盗賊はどうなるのでしょうか?」

「初犯らしいので強制労働になると思いますよ。」


これに懲りて真面目に働いてほしいものだ。

王都が近いこともあって、盗賊が出るのは珍しいそうだ。


予想外に多くもらえたのでさっそく一日かかる初心者用の木刀講習を申し込んだ。

薬草摘みでも弱い魔獣はでるそうなので、戦えなくては生きていけないし、どこにも行けない。




朝からギルド講習に参加。

場所は初日に寝ていたギルドの裏にある練習場だ。

天幕は外されている。


数人の子供は生徒なのだろう。一人大柄な髭ヅラ教官がいた。


全員に木刀が配られて「剣をもつなんて100年早い」と怒鳴られながら素振りの練習。

僕はタマちゃんのおかげで体は丈夫なようだが、素振りもまともにできない。

木刀がすっぽぬけて飛んでしまうのもお約束だ。


髭ヅラ教官に怒鳴られながらなんとか言われたように素振りをこなす。

他にも生徒が数人いたが皆昼休みはぐったりしてた。


午後は大きなネズミを走らせて、生徒みんなで倒した。

なかなか当たらないし、逃げ足は速いしへとへとだ。


「今日教えたのは基礎中の基礎だ。素振りは毎日こなすこと。以上だ」


講習で使った木刀をもらえた。これで毎日練習だ。

生きていかねばならない。

タマちゃんからもらったダガーがあるけど、短いので使いどころが難しい。


ギルド内でも下着や初心者用の防具などが売っていた。

他にも傷薬などもあるらしい。


もしかしてポーションもあるんだろうかと聞いてみたらあった。

すごくお高いので手が出せない。





買い物したらお金はあっという間に消えていった。

必要なものしか買ってないのに宿屋に泊まれないことに気が付く。

ショウは自分自身にあきれながらまたギルド裏手にいってみる。


「よお、兄ちゃん。ここに泊まるなら天幕手伝ってくれねえか?」

「あ、はい。」

「よーし。そこをそのまま広げていってくれ。」


僕は言われるまま天幕を広げて柱に縛ったりした。


「いやー助かったわ。今日は一人休んでるから誰か来ないかと思ってたんだよ。」

ギルド職員も人手不足で大変みたいだ。

「ところであんちゃん。夕食は食べたかい。」

「いえ、そのお恥ずかしい話お金がなくて。」

「そうかい。なら昼の残りだけど食べていきなよ。」


手伝ったお礼として昼に食べたのと同じパンとスープをいただいた。


ここの街はスラム街とかはなく飢えて死ぬ人はいないらしい。

王都に近いとそれなりに恩恵があるらしく、ほそぼそと暮らすことはできるみたいだ。

Fランクは生活がどうしようもなくなった人の受け皿にもなっているみたいだ。

一日一食は無料で食べることができる。



夜になるとFランクの人たちが毛布を借りて集まってくる。

僕もその中の一人だ。


この街の宿屋はお高いが地方に行けば銀貨1枚くらいが相場だとか。

練習場の奥に水場があるからタオルがあれば体をふくくらいはできるとか。

いろいろ教えてもらえた。

着替えもタオルも買っておいてよかった。


ジョン爺さんという冒険者引退者の人もいた。

引退したのになぜいるかというと、ここにいる貧乏な人たちにすこしでも稼げるような話をもって来るらしい。

この人が面白い人でこの国の古い話なんかをよく知っている。


気になる話があったのだ。

昔、この街のそばにダンジョンがあったらしい。

しかもその場所は渓谷の中ほどのところ、つまりタマちゃんのいるあの場所らしい。



お読みいただき、ありがとうございます。


少しでも続きが気になる、と思っていただけたら、

『ブックマーク』と【☆】何卒応援よろしくお願いします。


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