1.古びた祠・転生初日
小説書いて投稿するのも始めててドキドキドキ。
小心者です。
「ここはどこだろう?」
気が付いたら石で囲まれた部屋の片隅に仰向けに倒れていた。
3メートル四方の狭い部屋。
ちょっと埃っぽい。
部屋の中央にある階段状の台座上に顔くらいの大きさの丸い石が置いてある。
なぜここにいるのか?そもそも僕は誰だ?
頭でも打ったのかな?何も思出せないぞ?
いやいや、とりあえず冷静にならないと。
麻でできた簡素な服を着ているみたいだが、裸足だ。
ざらざらした石の部屋から外に出てみた。
少し肌寒い風が通り抜ける。
ゴツゴツした大きな石が転がっている川原だ。
足が冷たい。
空気は澄んでおり、どこまでも高い空が広がっていた。
透明だが勢いのある川が岩の間をザザーザザーと流れている。
川で顔を洗って深呼吸をする。
落ち着いてきたので周りを見回す。
山を削った深い渓谷になっており、登れそうにない両側の崖にはさまれている。
崖の下には出てきた時の古そうな祠があった。
やはり何も思い出せなかった。
しかたなくもう一度石の部屋に戻り、何か手がかりがないかと探してみた。
このわざとらしく置いてあるこの丸い石はなんだろう?
そっと触れてみる。
そのとき!
いきなり石がほんのり光りだした!
「ようこそダンジョンマスター。
ここはメルクル街郊外にある滅びた遺跡です。」
へ?あ?
なんだ?石がしゃべったぞ?
「初めてこの世界にきた方へのチュートリアル担当させていただきます。タマと申します。
タマちゃんとお呼びください。短い間ですがよろしくお願いします。」
「は?はぁ・・・?ご丁寧にありがとうございます。
すみません。えーーと僕は何も覚えてなくて・・・名前が思い出せません。」
なんだか気恥ずかしくなってもじもじしてしまった。
タマちゃんはかわいらしい女性の声だったからだ。
「あなたの前世では戸川翔という名前だったようです。
とりあえずこちらの発音で違和感がないのは・・・仮にショウさんとお呼びしてよろしいでしょうか?」
そう問われてなんとなく僕は日本の中学生であった記憶をぼんやり思い出していた。
部活さぼって友達と遊んでしまったり・・・
あれ?日本!
そうだよ!
「ってなんでこんなとこにいるんだよ!」
「混乱させてしまいましたね。すみません。そちらの世界の人生はおそらくもう終わっています。」
え?死んだってこと?
「原因はわかりませんが、人生がおわってこちらにショウさんとして転生したと思われます。」
何かが原因で戸川翔という僕はなくなってしまった。
じゃあ今いる僕は?
転生?赤ん坊じゃないのか。
「それじゃあ僕はここに新しく生まれたってことですか?」
「はい。そのとおりです。」
タマちゃんによるとここは剣と魔法の世界というファンタジーな世界らしい。
そして僕は人間に敵対するダンジョンをつくる側ということらしい。
ダンジョンを経営するのか?やっぱり人間の敵なのか?
僕は迷った。
これでも前世は人間だったのだし、人を殺すのはちょっとやだなと。
そう思っていたらタマちゃんから提案してきた。
「まずこの世界を見てきたらいかがでしょう?
ダンジョンマスターに生まれたからとはいえ、力がないのですぐに作ることは不可能です。
場所選びやどういったダンジョンにするかなど考える時間もありますしね。
まずこの世界を見学しにいくのがよいと思われます。」
それもそうだな。
とりあえずどういう世界に転生したのか見てこないとかな。
僕は納得してとりあえず一番近いメルクルという街に行ってみることにしたのだった。
タマちゃんにこの世界にある違和感のない服や装備を出してもらう。
ちょっとごわつく麻の服にベルトと護身用ダガー。靴は皮なのだろうか?
履きやすいのでよしとする。小さなウエストポーチ。
ギルドカード(身分証明書)もポケットにいれる。
どういう仕組みかわからないけど、人間として行けるようだ。
「体は冒険者の一般的な力に偽装しておきますね!」
と、親切なのかよくわからない言葉で送り出された。
どうせならめちゃ強くしてチートで目立ちたかったが・・・いや、それはめんどくさそうだな。
このショウという男、実はめんどくさいことが嫌いであった。
のちにこの性格が災いして、誤解を生んだり苦労するはめになるのである。
お読みいただき、ありがとうございます。
少しでも続きが気になる、と思っていただけたら、
『ブックマーク』と【☆】何卒応援よろしくお願いします。