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一日千文字のストーリーズ  作者: 伊達幸綱
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二日目 幸福

どうも、伊達幸綱です。それでは、早速どうぞ。

「俺達も……もはやこれまでか」


 戦国の世。炎が燃え盛る城の天守で一人の男が哀しげに呟いた。そして、それに対して隣に座る妻が涙を流しながら頷いていると、男は妻を見ながら優しい笑みを浮かべた。


「家臣や民達もだが、お前や息子達にもこれまで色々苦労をかけたな」

「……いえ、そんな事はありません。余所に比べれば、この国での暮らしは本当に幸せその物だったはずです」

「そうか……」

「……でも、だからこそ悔しいのです……! どうして平和に暮らしていただけの私達が戦いを挑まれないといけなかったのですか……!?」

「……それがこの世の理なのだからなのだろうな。他の国々からすれば、攻撃をしてくる気がなく、ただただ豊かな国など絶好の的だったのだろう。俺はただこの国に住む者達が幸せになってくれればと願っていただけなのだがな……」

「……そうですね。あなたは自分の事よりも常に家臣やこの国に住む民、私達家族の事ばかりを優先し、年貢も無理に取り立てようとはしなかった。だから、攻撃を仕掛けられた時も民達はそんなあなたのために命懸けで戦いました。しかし……結果として全員が命を落とし、今では私達しかいません」

「……そうだな」


 男は頷きながら答えた後、自分の意識が一瞬遠退いた事から、自身の死期が近い事を悟った。そして、再び意識が一瞬遠退いた後、男は妻に声をかけた。


「……もし来世があったら、俺は今度こそそこに住む者やそこを訪れる者が幸せになれるような国を作りたいと思うが、お前はそれが実現出来ると思うか?」

「……出来ますよ、あなたなら」

「……そうか。それな、ら……頑張らな、いとな……」


 途切れ途切れになりながら男は決意を口にした後、その場に倒れ込み、酸欠で静かに命を落とした。そしてその後を追うように妻も炎の中で意識を失い、酸欠で命を落とした後、炎は二人の遺体を飲み込みながら彼らが幸せに暮らしてきた城を燃やし続けた。





「…………」


 現代。とある町の中心にある町役場の執務室で一人の男性が仕事の休憩がてら一人の新人アイドルが映っているテレビをボーッと眺めていると、執務室のドアがコンコンとノックされた。そして、ドアを開けながら一人の女性が入ってくると、その女性は男性の姿を見てクスリと笑った。


「あなた、町長のお仕事お疲れ様です」

「……ん? おお、お前か」

「お疲れかと思ってコーヒーをお持ちしましたよ」

「ああ、ありがとう」


 町長は妻からコーヒーが入ったカップを受けとると、どこか満足げに息をついた。


「それにしても……まさかこの町が住みたい町ランキングの一位に選ばれるとはな」

「ふふ、それはあなたが今まで精一杯頑張ってきたからですよ。“あの時”と同じように」

「……そうだな。現代にも様々な争いはあるが、あの頃に比べれば本当に平和だ。だから、今度こそこの町を誰もが幸せになれるような町にしていきたいと思う」

「ふふ、あなたなら出来ますよ。あの時と同じように誰からも慕われるあなたなら」

「……ありがとう」


 町長は妻の言葉を聞き、心からの笑顔を浮かべた後、コーヒーを一口飲んだ。


「さて……また仕事を頑張らないとだな」

「ええ、そうですね。この町を誰もが幸せになれる町にするためにも」

「ああ」


 町長は心から幸せそうな笑みを浮かべながら答えた後、それを優しい笑みを浮かべながら見守る妻の視線を感じながら再び仕事を始めた。

いかがでしたでしょうか。これからも一日につき一話ペースで投稿していくつもりなので、読んで頂けると嬉しいです。

そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので、書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。

それでは、また明日。

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