現着
後部座席に加納が乗り込んだのを見て、スキンヘッドが車を出した。
「加納さんすぐ着きますぜシートベルトしっかりね」瀬崎がパトランプを乗せる。
「行きますぜ」
スキンヘッドがアクセルを踏み込む。パトカーはそのスピードを上げていく。
「オラオラどきやがれそこの車ども警察車両のお通りだってんだよー。」
殆どがドロイドによる自動運転だから良いものを。グロウラの外でやったら即懲戒免職だろう。
「毎回思うのだが、ここまで急がなくても事件は逃げないぞ。それに今回は犯人の目撃情報はないんだろ?」
加納が嗜める
「いやいや〜、またあいつが1番乗りだってのは悔しいでしょ?」
スキンヘッドはスピードを全く落とさずコーナーを曲がる。
「俺は事故さえ起こさなければ構わないが…」
「が?」
「隣を見てみろ。」
ミラー越しに隣を見るように指差す。
「隣?」
スキンヘッドが隣を見ると、瀬崎が気絶していた。
「…分かりました。安全運転で向かいます。」
諦めたようにスキンヘッドはスピードを落とした。
現場に到着したところで瀬崎が目を覚ましました。
「あれ?浦本さん早いですねぇ、もうついたんですか?」
スキンヘッドは瀬崎に三角絞めを極めながら怒鳴る。
「おめぇが寝てなきゃもっとはやかったってーの!」
「え、えぇ、すみません。死んじゃいます、死んじゃいますぅー!」
瀬崎の必死なタップでスキンヘッドはやっと瀬崎を開放した。
「遊んでないでいくぞ」
加納の言葉で2人はやっと仕事を思い出したようだ。黄色いテープで囲まれた現場に向かった。
そこにはまだ近隣住民の姿は見えなかったが、テープが貼られているあたり、もう先客があるようだ。
加納がその先客に声をかけた。
「これは塩谷警部補お早い到着ですね。今回も…」
塩谷と呼ばれ振り返ったその男は、まだ少年それも小学生と言っても良いぐらいの容姿だった。ただ、小学生にしては憎々しい目つきをしてをしている。
「あーこいつはどうも。確か、カノーサンでしたっけ?アツミサンとこの。えーと、現場保存しといたんで後は頼んますわ。んじゃ」
「んじゃ。じゃねーよ」
と帰ろうとした塩谷をスキンヘッドが止める。
「てめぇ、第一発見者に話聞いてねぇわけじゃねぇだろうが。」
「えー、でもあんたらどうせもう一回話聞くんでしょ?後でLINEで送りますから。そういうことで、ほんじゃまた。」
言い捨てて塩谷は立ち去ろうとしたが、瀬崎とすれ違ったところで足を止めた。
「あれー、あれー?セザキじゃ〜ん、まだやってたんだ、警察官。むかねーから辞めろっていったのによー。いや、今年から正規だっけっか?まーいいや。重大なミスする前にさー辞めとけ」
ずっと俯いて聞いていた瀬崎は何か言おうと顔をあげたが、すでに塩谷はいなかった。
「直哉…」
キーーー!
佇む瀬崎の前に一台の警察車両が急ブレーキで止まる。
「いやー、早紀さんって結構無茶するんですね〜。もっと清楚な人だと思ってましたよ〜。」
助手席から1人の細身な少年が出てくる。次いで運転席から早紀が降りて来た。
降りて来た少年は集まって来た加納とスキンヘッドを含めた3人の方を向く。
「本日より捜査一課第4係渥美班に配属になりました。
神薙惣太郎です。よろしくお願いします!」
神薙はそう言うと、敬礼をした。
それはそれは綺麗な敬礼だった。左と右が違うことを除けば。