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ちいちゃんとオバケ

作者: 名種みどり

 ちいちゃんは、とてもお腹が空いていました。


 今は午前二時。パパも、ママも、隣のおばさんも寝ている真夜中です。

 ちいちゃんはいい子なので、いつもだったらまた布団に入って眠るのですが、今日は違います。

 ちいちゃんはお腹がすくと、お腹からアクマがやって来て、ちいちゃんを悪い子に変えてしまうのです。


 ちいちゃんは、布団からこっそり抜け出しました。

 パパとママを起こさないように、ドアをそっと開けました。

 ドアを閉じるときに、ガチャンと音がしましたが、パパとママが起きなかったので百点満点です。


 第一関門を突破しましたが、安心していられません。暗い廊下の大冒険が始まります。

 ちいちゃんの身長だと、電気のスイッチがまだ届かないのです。

 こんなことで諦めるちいちゃんじゃありません。パパが言ってました。


「諦めないでやったことは、必ず良い経験になる」


 ちいちゃんはパパを信じて、暗い廊下を歩き始めました。

 今日は満月です。廊下の窓はカーテンが開けっ放しで、目の前は見えるけど、ちいちゃんは少し怖いと思いました。

 なぜなら、廊下の端っこにオバケが座っているからです。

 ちいちゃんは勇気を出して、オバケに話しかけました。


「オバケさん、こんばんは。どうしてまだ起きているの?」


 オバケは言いました。


「オバケはみんなに怖がられちゃうから、みんなが寝てる時間に起きるんだよ。だから友達ができなくて悲しいよお」


 オバケは泣きだしました。


「オバケさん、泣かないで。私が友達になってあげる」


「ホント? 嬉しいな」


 オバケは喜んで光りました。


「わー! オバケさん凄い! ピカピカしてキレイ」


「ありがとう。ピカピカするのはボクの得意技さ!」


 ちいちゃんはオバケと友達になりました。友達の多いママも、オバケの友達はいないはず。ちいちゃんはとってもワクワクしました。

 オバケが光ってくれるので、暗い廊下も怖くありません。ちいちゃんは、そのままキッチンに歩いて行きました。


 キッチンはいつもだったらママがいる場所です。でも今はママがいません。ママがいないだけなのに、まるでいつもと全然違う場所みたいです。


 ちいちゃんは冷蔵庫の前にイスを持ってきました。

 イスの上でグラグラして、ちいちゃんはドキドキしました。


「ちいちゃん、危ないよお」


 オバケほヒヤヒヤしました。

 ちいちゃんはやっとのことで冷蔵庫を開けると、プリンを二つ取り出しました。

 イスからぴょんと飛び降りたちいちゃんは、オバケに手伝ってもらって冷蔵庫の扉を閉めました。


 それから二人でプリンを食べました。

 プリンは三時のおやつの時間にしか食べちゃダメってママに言われていましたが、今のちいちゃんは悪い子です。プリンを全部食べてしまいました。


「ボク、プリンなんて初めて食べたよ。とっても美味しいね! ちいちゃんありがとう」


「オバケさんが喜んでくれて良かった。でも、このプリンはいつもと違う味がする。プリンはいつも甘いけど、このプリンはもっと甘い」


「いつもと違うプリンなの?」


「同じプリンだと思う。でも、ちょっと違う味がする気がする」


「それって不思議だね」


「うん! とっても不思議」


 ちいちゃんは、オバケの口の周りを拭いてあげました。オバケも、ちいちゃんの口の周りを拭いてくれました。


 お腹がいっぱいになると、ちいちゃんのアクマが、どこかへ行ってしまいました。

 ちいちゃんは泣きだしました。 


「勝手に食べたってバレたら、ママに怒られちゃう」


 オバケは言いました。


「プリンは五つもあったから、二つ無くなってもバレないよ」


「パパは数字が得意だから、パパにバレちゃうよ」


「それならボクにい良い考えがある」


 オバケは冷蔵庫の扉を開けると、呪文を唱えました。


「ちちんぷいぷいのぷいっ!」


 すると、冷蔵庫の中に食べたはずのプリンが現れました。


「オバケさんってなんでもできるんだね!」


 ちいちゃんはびっくり。


「ヘヘン! オバケの力は凄いんだぞ」


 オバケは褒められて得意気です。


「こんなこともできるよ。ちちんぷいぷいのぷいっ!」


「わあ! なにこれ!」


 ちいちゃんは猫に姿を変えました。

 調子に乗ったオバケは、コップをちいちゃんより大きくしたり、折り紙の鶴を本物の鶴に変えたりしました。

 もうリビングはめちゃめちゃです。


「オバケさんが凄いってのはわかったから、元に戻してよ! このままじゃパパもママもビックリしちゃう」


「えー、楽しいのに。ちいちゃんが言うなら仕方ないなあ。ちちんぷいぷいのぷいっ! あれ? 戻らないぞ。ちちんぷいぷいのぷいっ!」


 オバケがいくら呪文を唱えても、元に戻りません。


「困ったな⋯⋯。元に戻す方法を忘れちゃった」


「どうしよう、怒られちゃうよ」


「心配しないで! 一つだけ、元に戻す方法を思い出したよ。ちいちゃん、目を閉じて」


 ちいちゃんは言う通りにしました。


「ちちんぷいぷいのぷいっ!」


 目を開けると、ちいちゃんは布団に入っていました。

 ママがちいちゃんを呼びます。 


「ちいちゃん! ご飯だよー!」


 もうすっかり朝でした。ちいちゃんは時計を読めませんが、明るいのは朝だって知っています。


 ちいちゃんは朝ごはんを食べると、冷蔵庫の扉を開けました。

 ママが言いました。


「ちいちゃん、今は三時のおやつじゃないよ」


 冷蔵庫の中にあるプリンは、五つでした。ちいちゃんはホッとしました。

 ちいちゃんは、オバケとプリンを食べたことは、パパとママには秘密にしておくことにしました。


 今夜も悪い子になろうと、ちいちゃんはこっそり思ったのでした。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 可愛らしい童話で、 和みました。(^^♪ ママの?優しい視点が素敵だと思います。 [一言] 僕の小説も感想くださいね。(^^♪
2019/11/23 05:53 退会済み
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