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四ノ巻

「……」

縁側で一人、雪は座禅を組んでいた。

「……」

風吹けば、木々に付いた新緑色の葉が音を立てて揺れ、彼女の長く艶めく漆黒の髪も揺れる。

そこへ一人が歩いて来て声を掛ける。

「せっちゃん」

後ろから双が話しかけるが、雪は何も答えない。

「おーい」

口も体も動かない雪に双は顔をのぞき込んだり、彼女の顔の前で手を振ったりしてみたが、動かない。

「……」

しかし、それにも終わりが来た。

「……ふぅ」

目を開き空を向くと、息を吐き、一息をつく。

「毎日やってるけどそれいる?」

「いります」

双の質問に淡々と答えていると、焔ら三人もやって来た。

「双……また雪の精神統一を邪魔をしていたのか?」


「いえ、構いませんよ。統一している最中はいないようなものですし」

「酷くない⁉」



「何時もしてるのか?」

「ええ、妖術の発動に必要な事ですし」

「妖術?」


「貴方も使った事があるでしょう」

「使った……?」

思い当たる節が無いのか、焔は考え込んでいると雪が続けて言う。

「姿を変えられるのも、人並み外れた技、身体を得られるのも妖術の効果なんです」

「ああ……」

「本来なら大きく気力を使うのですが……」

雪は言いかけてポケットから変化袋を取り出し、見つめる。

「戦闘中に使用している筆剣や変化袋は、それを制御、浪費を抑える効果があるので長時間の戦いを行う事が出来るんです」

「強くなる以外にもそんな効果があったなんて……」

焔は驚いた顔で雪の変化袋を見つめていた。



「あれは火焔猫!」

「火焔猫?」

「火を出せる猫だよ」

焔の疑問に双は明るげに答えつつ、変化袋を装備する。

また全員も変化袋を装備した。

「よし、行くぞ!」

焔の掛け声と共に


「百鬼夜行!」

それぞれ宙に変身用の文字を書き、それぞれ、紅蓮、漆黒、青藍、山吹、紫紺の妖となった。

「……」

全員が黙って腰の筆剣を抜いて構える。

「はっ!」

それぞれ剣を握って走り出した。

先陣を切ったのは紫紺と山吹、





「焔君! 火って書いて!」

「わ、分かった!」

山吹に言われ、紅蓮は筆剣で火の文字を画くとそれに続いて山吹は西、紫紺は土の文字を書いた。

すると三つの文字が一行の前に躍り出て融合、一瞬で三つの漢字が合わさって煙の文字となると、激しい煙幕が四人を包む。

「うおっ⁉」

「くっ……!」

周囲が見えなくなる程に煙が撒き散らされ、更に煙が目に染みるのか思わず目を瞑る火焔猫と天。

だが、妖術で生み出された煙は、そう長くは持たず、やがて晴れていった。

それでも、四人が逃げるには十分な時間だったからか、火焔猫の前にはもう誰もいなかった。

「あいつら……逃げたな」

「皆……」

「ま、一人でも十分な収穫だな」




「妖術にもこんな使い方があったなんて……」

「そ、皆で力を合わせれば





「にゃん……だと……⁉」

自身が生成した炎全てが凍らされ、暑く赤かった周辺が一気に寒く青い世界と化した事に戸惑いが隠せず、火焔猫は言葉を漏らす。

「鍛えられた氷結は炎をも凍らせる!」

そう叫んで青藍は、右手に握った筆剣で地面を思い切り叩きつけた。

それに答える様に、周囲の燃え盛る炎のうねりの形をした氷柱全てに、一瞬でヒビが入り、粉々に砕けた。

「にゃにいいいいい⁉」

「さて……決着をつけましょう」

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