砂漠遠足
ファリアス市はグレン達が通う魔法学園のある街である。街の中央に森があるが何故かその森が手をつけられた様子はない。ファリアス市の特徴として街の周りの自然がかなり特殊なことだ。東に行けば小規模な砂漠があり、西には海が広がる、南に山がそびえ、北に谷がある。つまりファリアス市は自然的には孤立している。今では交通網が整備され誰でも気軽に行ける街になっている。
入学式から1ヶ月が経った頃、グレン達新入生はブラウンとスピガ引率でファリアス市の東にある砂漠を歩いていた。目的は砂漠の中にそびえ立つ塔に向かうことである。この塔は長年の間どういった経緯で建てられたのか不明なのだ。
「まあ、魔法で建てられたっていうのが有力だな。ちなみに最上階にある石碑に結構な魔力が秘められてて塔の風化を抑えている」
「なあ先生、俺達なんで歩いてんの?その塔って確か舗装された道を車で行ったら10分くらいで着くはずなんだけど」
グレンが尋ねる。
「あほかお前、魔法が使えるんならこんな砂漠くらい歩けないと」
「無茶苦茶ですね…」
ラザスがため息をつく。
「だが現にお前達ちゃんと付いてきているわけだし、水分補給さえ気をつけときゃ大丈夫だ」
「嫌な風だな」
ブラウン達は塔から少し離れた古びた石作の建物で水分補給をしていた。
「ブラウン先生これからどうするんです?さすがに帰りまで生徒達の魔力が残るとは思えませんが…」
スピガが生徒達を見ながら言う。
「まあ帰りは転送陣使いますよ」
「て、転送陣なんてあるんですか…。でもどこに転送されるんです?」
「この砂漠の入り口にあった円形の石畳の床があったでしょ、あそこに」
「まだ使えるとは思えませんが」
「まあかけた部分は補えば良いんですよ。後は魔力を流せば誰だって使える」
ブラウンは塔の方向を見る。
「やはり壁がもう消えている…、段階を踏まないのは面倒がなくて良いが誰か塔の中にいるのか」
塔の周りには見えない壁があり、本来ならここである儀式を行い壁を取り除く予定だった。
「スピガ先生は塔の中には入ったことはありますか?」
「ええ、5年ほど前に」
「なら少しはましか…」
ブラウンは塔を睨みながら呟いた。