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魔法学園  作者: 心木真冬
第5章 修行と襲撃
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魔力の流れ

「おりゃあ!」


 放課後のグラウンドの片隅で、グレンは鉄製の的を前にしてひたすら拳を振るっていた。


「はあっ!」


 しかしグレンと的の距離は遠く、その拳が的に当たる事はない。


「ふん!」


 炎を纏った拳をただただ振り抜くだけ、


 そんなところに偶然ラザスが通りかかった。


「グレン?」


「はあっああ、あへへ?……っと、ラザスか、どうしたんだ?」


「どうしたって、こっちが聞きたいんだけど……」


「ああ、これか?鍛錬の一環でね」


「鍛錬って、グレンは剣を使うんだろ?」


「そっちの方は師匠から『ひたすら型の反復あるのみ』ってね、素振りの方もちゃんとこなしているし、こっちの拳術をやってみようかと思ってな」


「はあ……」


「おりゃっ!……はぁ、やっぱダメだな。うーん、……なあラザス、お前拳の飛ばし方みたいなの知っているか?」


「え?ごめん、もう一度言ってくれない?」


「あー、なんだろう、あんまし説明するの難しそうだしな……」


 グレンは砂の地面に剣先で絵を描きながら説明をする。


「こんな感じで、前に戦った奴が見えない拳を飛ばしてきたんだよ、まあ多分厳密には拳撃なんだろうけど」


「なるほど?」


「魔法って感じじゃなかったけど、魔法で再現できるんじゃないかって思ったんだよ」


「それでファイヤーフォースを使って試していたのか」


「だけどなぁ、全然うまくいかなくてさ」


「詠唱の仕方を変えてみればいいんじゃないか?」


「何回か試したけど、しっくりこなくてなぁ……。どちらかというと魔力の流れを操ってどうにか飛ばすみたいなもんだと思うんだよ」


「まあやろうとしているお前がそう言うんならそうなんだろうな、うーん……」


 ラザスはぶつぶつと呟きながら考えこむ。


 そしてしばらくして、


「あ!そうだグレン、試しにファイヤーボールを出してみてくれ」


「ああ?いいぜ、炎魔【ファイヤーボール】」


「そのボールを握った拳の形にするんだ」


「ああ、やってみる」


 グレンは火球を拳の形にしようと試みるものの、アメーバのようにウニョウニョと変形するのが精いっぱいという様子である。


「はぁ……、意外に難しいなこれ。それにしてもこれが一体何になるんだ?」


「さっきグレンは魔力の流れを操るのが重要だって言っただろ?だからとりあえずは炎の拳を飛ばすイメージを持てるようにするんだよ」


「おー!なるほど、頭いいなラザス!」


 その後もグレンは炎の拳を作り出そうとするも上手くいかなかった。


「うーん、無理に拳を作ろうとしないで、まずは手の形にする所から始めないといけないかな」


「そうか、なら……。炎魔【ファイヤーカッター】」


 炎の刃、その刃を丸くする。


「こんな感じだったかな」


 それは厚みこそないものの、あの岩の棘を纏ったミノタウロスの技のようである。


「これに……」


 そこから刃に5本の指をはやさせていく。


「それを握ればなんとか形にはなりそうだね」


 ゆっくりと、形を変えて、ようやく不格好な拳が出来上がった。


「出来た、とは言い難いな」


「だねぇ……、より正確な形の拳を一瞬で作れるようにならないと」


「反復あるのみ、だな!」




 そしてグラウンドの別の場所にレイはいた。


 手袋をはめ、ブラウンの言っていたことを試そうとしているのだ。


「この上に更に魔力を纏うのか……。氷魔【アイスフォース・アーム】」


 氷によって手袋が覆われる。


「コルッシュ、これに憑依してみてくれないか?」


 そしてコルッシュを憑依させると、


「うぐっ!? 何だこれ……、魔力が安定しない!!」


 手袋に纏った氷は不規則に変形を繰り返す。


「ま、まずい、このままじゃ右手が……」


 なんとか魔力を安定させようとするもまるでうまくいかない。


「一体どうして……」


 しばらく苦戦していて、とりあえず右手がどうにかなる心配はないと分かったが、特に解決には至っていない。


「身体憑依もこんな感じなのか?……はっ!そうだ、憑依先の魔力の均衡……。コルッシュ!僕が君に合わせる!君は常に一定の力を出してくれ!」


 レイはコルッシュの出す力に合わせようとする。

 また少し経ってようやく右手に変化が訪れる。


 氷の鱗に覆われた手袋を確認して息をつく。


「なんとかできたけど……。100回やって100回失敗する、か……、確かにこれをモノにするには先が長そうだ、でも!」


 レイは憑依を解かせて再び挑戦する。


「僕にできる事を少しでも……!」




 そして時は流れていく、


 ブラウンはメーデが言ったように2週間で退院した。

 その時、教頭にグレンとレイともども3人で呼ばれてしかられた。


 残るは1週間、ブラウンに呼び出され、3人はグラウンドにいた。


「残りの1週間は申し訳ないが俺達3人の共同の鍛錬にあてたい」


「別に構わないけど何するんだ?」


「そうだな、とりあえず俺の合図で各々の得意属性の(ボール)を出す。今日のところはそれで終わるだろうな」


「え、それだけなんですか?」


「まあすぐに分かる。じゃあいくぞ」


 3人は手を差し出し、


「せーのっ!」


「「「炎/氷/雷 魔【【【ファイヤー/アイス/サンダー ボール】】】!!!」」」


 一斉に3つの属性の球が現れる。


「とりあえずタイミングは良しとしよう。……グレン、少しだけ球の大きさを抑えてみろ」


「え?こうか?」


「いきすぎだ」


「あー、……こんなもん?」


「そうだ、レイの方はもう少し大きく」


「はい……」


 ブラウンも球の大きさを少し小さくする。


「これを基準値とする、よく覚えろよ。これから俺が合図を出して球を出す時は全く同じ大きさのを出せ」


「はあ……?おお、てかよく見たら全員同じサイズか」


「そうだ、3人が全く同じタイミング、同じサイズの球を出すのが今日の鍛錬だ」


「魔力の適正な量を使えるようにする、みたいな目的ですか?」


「それもある。もう一つは、船や森での大量の雑魚に囲われたり、仮に森であのミノタウロスを倒せたとしてもガルムのもう1人の部下と連戦になったかもしれない。そういう長期戦を視野にスタミナを増強させる狙いがある」


「でもなんで3人一緒に?確かに効率はいいけどさ」


「もう一つ、というかこれがこの鍛錬の本当の狙いだが……」


 ブラウンは2人に紙を見せる。


 紙には簡素な絵と説明文が書かれている。


「これは……、ええっ!! こんな事本当に出来るんですか!?」


「理論的には可能だ、まあやろうとする奴なんていないがな」


 その紙に書かれた誰もやろうとしない事を目指して、3人は鍛錬を続けるのであった。

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