蛇の如く
「で?どうするんだよ」
グレンが腹立たしげにブラウンに尋ねる。
「まあ落ち着け、とにかく今の状態じゃ真正面から戦ったって部が悪い。作戦を練らないとな」
「そんな暇あいつがくれてやるとは思えないんだが」
「だが単純な作戦なら練れる。それにはレイ、お前の力が要る」
「俺は?」
「お前には時間稼ぎをしてもらう」
少ししてグリムがグレン達がいた場所に来た。
「よお」
「一人か、いや、あとの二人で私に不意討ちしようという魂胆か」
「へ、見透かしたかのように言いやがって。何様のつもりだ?」
グリムの頭上から突然ヒルダが飛び出しグリムに突撃する。グリムは普通に避ける。
「若いな」
「さっきもそんなこと言ってたがお前一体何歳なんだよ?」
「さあ、数えるのはとうにやめたからな」
「少なくとも人間、じゃなさそうだな…」
「私がお前に自分が人間だと言ったか?」
「確かに、じゃあお前は一体何者なんだ?」
「私はこの砂漠が生み出した怪物みたいなものだ、もっともこの砂漠を作ったのは私なんだがな」
「…。炎魔【ファイヤーフォース・ソード】」
グレンはこれ以上会話をしても無駄と判断したのかグリムに斬りかかる。グリムも剣を持ちグレンと打ち合う、グリムはグレンの猛攻を軽々しく捌いていく。
「剣の腕は並以上といった所、だがそこで止まっている。ならば」
グリムはグレンの猛攻の隙をついて腹を蹴った。グレンは勢いよく後ろに飛ばされた。
「力も大成されていないが故に力押しにすらならない」
グレンは立ち上がり再びグリムと打ち合う、しかしこんどは形勢が逆転してグリムが一方的に攻め、これをグレンがなんとか防いでいる形だ。
「知力を絞っても所詮は死角から攻撃する程度、若い。どこまでも若い」
「うるせえ!!」
グレンの剣がグリムの顔に当たった、しかし当たっただけだった。
「なんで…!」
「言っただろ、力が無い。お前の炎をもってしても私の首は落とせない」
「くっ!!」
グレンは力を込め、もう一度グリムの首を斬ろうとする。しかしグリムが後ろに跳んだためグレンの剣は当たらない。
「私は練習台じゃないぞ?」
「くそ!!」
次の瞬間壁を壊して大きな氷の刺が回転しながらグリムの後ろより現れる。氷の刺はグリムの体を貫通するかに思われたがなんとグリムの鎧が意思を持ったかのように氷の刺を受け止めたのだ。
「なんだと!?」
「ふむ、そろそろだとは思っていたがそこだったか」
グリムは後ろを振り向く、そこにはレイが銃口をグリムに向けて立っている。
「氷魔【アイスニードル】」
銃から氷の刺を放つ、
「どうせなら下もやるか」
グリムはそう呟いて腰に手を当てる、唯一残っていた緑の鎧の下半身の部分が収束して球体となる、そしてこれで氷の刺を防ぐ。
「それで?」
「豪土魔【ビッグブロックアーム】」
瓦礫が突如として集まり大きな手となりグリムを殴った。さすがにグリムはこれを防げずにぶっ飛ぶ。
「たく、慣れない属性を使うもんじゃねえな」
ブラウンが手をはたきながら現れる。
「今のは想定外、だがお前達の作戦は終わりか…」
「ああ、ここらは真っ向勝負さ」
「ならば」
グリムは立ち上がる、その顔には亀裂があった。
「人間じゃないってのは本当か…」
グレンがぼやく、
「私は魔人、グリム・アナトリモス」
「名前はもう聞いたよ」
グリムは石を天井に投げる、
「またか!!」
天井が崩壊し、瓦礫が降ってくる。今度は3人は離れた位置にいたため自信の魔法で瓦礫を防いでいく。そうして瓦礫の降り終えた所で3人はグリムのいた場所を見る、土煙から姿が見えていたグリムは左腕をつき出す。グリムの左腕に瓦礫が集まり、グリムの左腕が鞭のようになる。
「そんなのありかよ…」
グリムは腕を振り、その大きな鞭で3人に襲いかかる。
魔を呑み込みし人か人の形をした魔か
グリム・アナトリモス、砂と蛇の魔人。彼は後者だった。