塔を守る者
水分補給を終えた後ブラウン達はいよいよ塔に入る事にした。
「扉も開いてるし、こりゃ間違いなく誰かいるな」
そんなこと吐きつつ塔内に入った。
塔内は広く、正面に幅の広い階段がある。
「とりあえず上まで行くがどうも先客がいるらしい、会ったらちゃんと挨拶しろよ」
「うわ初めて先生っぽい事言った」
グレンが思わず言うと周りの生徒達は微笑する。
3階に登るとそこには武装した軍の兵士がいた。
「ん?もしかして魔法学園の人達ですか?」
「そうだが…、なんだって軍の兵士がこんな塔にいるんだ?」
「定期的に学者達とこの塔の調査をしているんですよ」
「じゃあ壁はお前達が取り除いたのか?」
「いえ既にありませんでしたよ。そういえばいつもならあそこの建物で儀式をするはずなんですよね?」
「そうだが…、他の連中は上にいるのか?」
「はい、ただここ電波ないから何階にいるかは分かりませんが…」
「そうかありがとう。一応確認するが通っても構わないな?」
「はい、でも調査の邪魔はしないでくださいね?」
「分かってる」
ブラウン達は階段を上り上を目指す。
5階、そこで上に上がる階段の入り口の前に鎧姿の者が居た。
胡座をかいて頭を揺らしながらいびきをしている、完全に寝ていた。
「ちっ、面倒だな」
「ブラウン先生、あの人も軍の人?にしてはなんかすごい装備が違うけど」
「軍が鎧を着るにしてもあんなのじゃないな。しかしまいったな、この階の階段はあそこしかないってのに」
「まるであそこにいる人が起きたらまずいような言い方ですね」
ラザスが首をかしげながら言う。
「まずいんだよ、なんでかはあんまり言えんがこの塔に入れるやつなんてそうそういないからな」
「あら、観光で来た可能性は考えないんですの?」
ソフィアが尋ねるが戯れ言と受け取ったのかブラウンは答えない。
「とにかく少し静かに通るぞ」
そう言ってブラウンが一歩前に足を出したその時だった、いびきが止まる。
鎧姿の者はゆっくりと顔を上げる、
「ふわあ、よく寝たな。ん、なんだお前達?俺は見せ物じゃないぞ」
「俺は魔法学園の教師をしているブラウン・レイキット、隣にいるのがスピガ・ファウス。俺達は塔の見学をしている」
「なるほど、悪い事は言わないからこの塔からさっさと降りた方が良い」
「理由を聞こうか」
「面倒くさいな、ここはある奴がこれから実験に使う。だから巻き添えくらわない内に逃げろという訳だ」
「実験とは?」
「さあな、早く降りた方がいい。登る気なら止めるしかないが」
「悪いが信じられないからな」
「はぁ……、人が親切で言ってるのに。言てっおくが上にいる連中はヤバイやつらだ。少し前にここを通った学者達も今頃はあいつの腹の中だろう」
「忠告、感謝しよう。グレン、ラザス、ソフィア、キャシー、この鎧野郎と戦え、一応殺すな、無力化しろ」
「おいおい、生徒達にやらせる気か?正気じゃないな」
「ブラウン先生!彼の言う通りにしましょう。彼と生徒達を戦わせてはいけません」
「スピガ先生、これはいい実戦訓練になります。今年は育て方を特に考えないといけませんし」
「何を言ってるんですか!? 生徒の安全を考えない教師なんて!」
「勝算ならありますよ」
「そういう問題じゃないでしょう!考え直してください!」
「まったく、だからフィデア先生を同伴にしたかったんだ。とにかくスピガ先生はここに残ってください。本当にやばかったらあなたがどうにかしてください」
「ブラウン先生!」
「分かってください」
スピガはこれ以上ブラウンを説得しても無駄だと思ったのか項垂れる。
「よし、後のやつらは俺に続け」
「愚かな奴だ。後悔しても知らんからな」
鎧の者はブラウン達が階段を登るのを見届け、
「さて、自己紹介がまだだったな俺はメルト・シナリー」
「スピガ先生、戦ってもいいんだよな」
「な、本気ですかグレン君!!」
「まあ先生が言うのなら戦いましょうか」
「ソフィアさんまで…」
「諦めた方が良さそうだな、ここに残ったなら覚悟があるという事だ」
「え、僕戦いたくないんですが…」
ラザスが弱々しい声で言う。
「残ったなら、文句言えない」
4人が武器を構える。
「じゃあ、始めようか」