村を訪ねる者
とある村にて、
何かの足音が聞こえる。村に近づき、やがて村の前で止んだ。
村の男がそれの前まで来て驚く、そこには緑色の鎧を纏った何者かが巨大な蜥蜴のような魔物に乗っていた。
「な、何者だ!?」
村の男は尋ねる。
「ここの、村長に用がある」
「村長に、何の用だ!」
「答える必要はない」
鎧の者は静かにいい放つ。
鎧を着ているからか、あるいは本人が発しているのか、とにかく村人はその者の気に圧される。
「くっ、用をここで言わない限り貴様のような奴を村に入れるわけにはいかん!」
「お前、何歳だ?」
「に、23だ。だがそれが……」
「若いな、その若さで死にたくはないだろう?」
鎧の男はいつの間にか剣を村の男の首元に向けていた。
「ぐっ!?」
「剣をしまえ、訪問者よ」
村人の後ろから別の男の声が聞こえる。
「村長か?」
「そうだ。とにかく剣をしまえ」
自身を村長と名乗った男は若かった。
「断る」
「ならば、」
「立ち去れと言うのだろ?しかしその力がお前やこの村の人間にあると?」
「……、用件を聞こう」
「理解が良い、では単刀直入に尋ねるがこの村にミーライ・プロブシーが滞在していないか?」
「ミーライ?あの預言者がか?」
「そうだ。数日前この辺りで目撃されている」
「知らんな、大体何故その預言者を探しているんだ?」
「答える必要は、」
鎧の者は剣を持っていた手に力を込め、
「ない」
「あっ!! ヒュッ」
剣が男の喉に突き刺さった、鎧の者が持っていた剣の先端は平らだ。
直角定規のようなその剣の先で人の喉を突き刺すには相当な力が要る。
「貴様っ!!どういうつもりだ!」
近くにいた村の者達が刺された男を担いで運んでいく。
「答える意味のない質問をするな、知った所でどうしようもないことだ」
「と、とにかくここにはこの村以外の者は滞在していない」
「どうだか、少し調べさせてもらうぞ。拒否権はあると思うまいな?」
「良いだろう、好きにしろ」
その後10分間鎧の男はその場にいた、そして
「なるほど、確かにいないな」
「わ、分かったら早く立ち去ってくれ」
「ふん、そう急かすな。何歳だ?30か、若いな。もしミーライがこの村を訪れた際は知らせろ」
「知らせる?どうやって」
鎧の男は小さな石を村長に投げ渡した。
「それを割れ、今じゃない。もしもの時にだ」
その後鎧の男は去り、村では会議が行われた。そこで2つの事が決められた。
1ヶ月後、村は滅んだ。
近くの山場で発生した土砂崩れに村そのものが巻き込まれた。
この国の軍によって調査と救助活動が行われたが、当然単なる自然災害で片付けられた。
災害に理由は無い、村人は偶然前日行方不明になった2人を除いて全員の死亡が確認された。