全くの想定外だ
書き収めです。
-名前-
-年齢- 26歳
-性別- 男
-序列-
-スキル-
ユニークスキル 「卓越者」
ある役職を定めると、その適正が大幅に上がる。
ただし変更は不能。最初に決定されたときにスキル名が変わる。
-魔法-
特殊魔法 「使役権」
自分の手下としてどのような生物でも1体のみ使役可能。
ただし条件として、一度でもいいので相手がこちらに忠誠を誓うこと。
なるほど?
なかなか面白そうなスキルと魔法ではないか?
でも、卓越者の方はまだ使うのがもったいないから放置として、結局使役権の方も今のところ使い道ないしなあ……。しばらくはどっちも放置だな。
ところで。
「ちょっとここを見てほしいんだけど……」
「ダメですよ?それは超重要な個人情報の塊みたいなものですから、人に簡単に見せてはいけません。覚えておいてください」
「……わかった。で、名前と序列の欄が空白になってるんだが、なんでだ?」
「それはですね、まず名前の方についてなんですが、まだ名づけの儀式をなさっていないからかと」
「名づけの儀式?」
「名前を授ける儀式のことですね。普通は生まれたときに親にしてもらうものなのですが。この儀式を通して、世界に自分の名前を認めてもらうのです。まあ、儀式といってもたいそうなものではないのですけどね」
「つまり元の世界での名前とかは全く関係ないってことだな」
「はい。多分その通りです。あとは序列の方なんですけど、この世界の生き物は皆何かしらの序列を与えられています。上には王から下には平民までいろいろですね!ただ割と複雑なシステムでいろいろな派生序列があるので一概にどれがいいとかはないのですが、大○○、とか○○王とかつくのは基本的にヤバいやつです!!」
急に興奮しだしたな?
「なんで俺には序列がないんだ?」
「まだこの世界に認められることを何もしてないから、ですかね?例えば赤子は、生まれたときに『誕生の奇跡』を授かるので、その時点で平民の序列が与えられます。つまり今のあなたは、赤子以下ということです!」
赤子以下……だと…………!?何となくむなしいな。
「序列があると何かいいことがあるのか?」
「はい!例えば、序列が上がると自身が強化されます。単純に魔素量が増えるのはある程度共通していますが、序列に見合ったスキル、魔法が手に入ったりといろいろありますけど、本人の個性も反映されるので一概には言えないですね!あとはマルチ序列持ちも世の中にはいて、かくいう私もマルチなんですよ!実は、世の中には特…………なんでもないです」
と言葉を切って、急にシュンとしてしまった。
今絶対重要なこと言いかけただろ!特……なんだ?
まあ、いいか。この様子だと教えてくれないだろう。
「他に……聞きたいことはありますか?」
「そうだなあ…………あ、そうだ。この世界で魔素に覆われていないものといったら何がある?」
「そうですね……。まず魔素はこの星から無尽蔵に生み出されています。空気はもちろんのこと、川の水や建築物、果てにはそこら辺の石ころまでその魔素を吸収しています。私たちが魔法を使うために使う体内で生成される魔素とは残念ながら別物で、利用することはできないんですが……。」
「ってことは……?」
「はい。この星のもので魔素に全く無縁のものといったら、多少は例外があるかもしれませんけど、ないと言い切ってしまってもいいかもしれませんね?」
「………………」
それは、この世界では俺の存在抹消マシンがほとんど無意味だ、ということだ。
大きな切り札を一つ失ってしまった気分だ。
しかし使えないものは仕方がない。
そんなことよりも。
「唐突だが、俺を、この家においてはくれないだろうか……?役に立つ自信はあるが?」
告白をした直後のように、相手の返事をドキドキとしながら待つ。誰かに告白なんぞしたことはないが。
「…………もう聞きたいことはないですか?」
「ああ」
「では、最後に一つだけ。髪が金色の人にご注意ください。髪の色は魔素の質を表し、金色はその最上位に来るといわれています。なので、普通は幻術で色をごまかすのですが、隠さないということは相当の自信の表れです。そして先ほどの話ですが……お断りさせていただきますね」
そう言って、少女は悲しそうにニコッと笑った。
その瞬間、体が不思議な感覚に包まれる。
この感覚は……味わったことがある。そう、確か空間転移の時の……。
考え終わる前に、視界が切り替わった。
先ほどまで室内にいたからだろうか。光がまぶしい。
ゆっくりと目を開けると、そこは俺が少女と出会った場所であった。
なぜ、なぜ断られたんだ!?特に詳しい理由もなく。
しかもいきなり屋敷を追い出されるなんて。想像以上につらい拒絶だ。
激しいショックに襲われる。
そしてしばらくの間、茫然としていた。
そのせいかは知らないが、俺は後ろから迫ってくる気配に気づかなかった。
そいつがいきなり殺しにかかってくるようなやつであったら、最悪死んでいたかもしれない。
「おい、そこのニンゲン。やっと見つけたぞ」
後ろを振り返ると、そこにはちっこい少女が立っていた。
その長い髪は、金色に光り輝いていた。
良い年末をお過ごしください!




