厄介な下僕
「…………ここは…………どこだ?」
目を覚ました俺は、全く見知らぬ場所にいた。
どこかの家の中だろうか?ベッドらしきものに寝かされているようだった。
「やっと目を覚ました?お主はもう何時間もここで寝てんだよ?」
横を見ると、例の元金髪黒髪少女が立っていた。
「……お前が運んでくれたのか?殺してやるとか言ってたくせに優しいんだな。ツンデレか?」
「ふざけてると指ちぎるよ」
「あ、ちょまって!お前のかじりつき方まじで加減がきいてないから!ちぎれる!!」
なんとか話してくれたが、指にはびっしりと歯形がついていた。
「勘違いしないでね。仕方なく助けたの。あんなところで野垂れ死になんてされようものならワシも死んでしまうからね」
「どういうことだ?」
「そうね、お主が寝てる間にいろいろ調べさせてもらったから、そのことについてちょっとだけ教えとく」
「聞かせてもらおうか。ところでお前、そのワシっていうのとお主っていうの何とかならないか?違和感しかないのだが?」
「お主、今すぐ自分のこと俺って言うの変えれる?」
「僕……、私……、拙者…………。違和感しかない」
「そうでしょ?無理なの。この一人称はまだヒト語を覚える前に近くにいたおじいさんのを真似してたせいなの。語尾はあっさり変えられたけど、一人称は無理」
「そうか、まあいいが…………」
閑話休題。
「で、何を調べたんだ?」
「そう、まずワシの美しい金髪がこんな地味な真っ黒になってしまった理由」
「地味って……失礼な」
「お主、イセカイジンだよね?」
「なんでわかった?」
「見てりゃ分かるっての。それはいいとして、髪の毛の色が魔素によるっていうのは知ってる?」
「ああ、知ってる。金髪が確か最上位なんだろ?」
「まあ、そういうこと。逆に黒が最下位で、あんまり魔法を乱発したりすごい魔法が使えるとか、そういうのができないの。お主がさっきぶっ倒れたのも魔素を一気に使ってしまった反動のせい」
「お前が空を飛んだり火の玉はいたりできてたのも……」
「そう、潤沢で高質な魔素をたくさん持ってたから。でもお主のあの忌々しい魔法のせいで、ワシは現在お主の下僕状態で、お主の持ってる微々たる魔素を分けてもらって魔法が使える状態。だからでかい髪も黒くなってしまったし、でかい魔法も使えない。わかる?」
「まあ何となくは。もしかして俺が死んだらお前が死ぬって言うのも……」
「そう、お主の魔力に頼っている今の状態でお主に死なれると、ワシも生きていくことができなくなる。唯一の方法がお主が魔法を解除することなのだけど」
「俺としてもお前みたいな厄介な奴とは今すぐおさらばしたいが……。解除した瞬間お前俺を殺しにかかるだろ」
「もちろん。何も問題なければ今すぐ100回殺すところなんだけど……。あーあ、下僕にしてにして一生こき使ってやろうと思ってたのに」
「さらっと怖いこと言うな!」
こいつ、やっぱり危険だ。
「ところで、面白いこともできそう。例えば……」
【…………聞こえる?】
「おお、なんだこれは!脳内に声が!」
【脳内で語るようにイメージしてみて】
【そう。どうやら、声を発さずに会話ができるらしい】
【おお、テレパシーというやつか。便利だな】
【てれぱしー?】
【いや、なんでもないぞ】
「他にはこんなことも……」
そう言って、少女はシュっと姿を消した。
「おお!どこにいるんだ?」
「どうやらお主の魔素の中に入り込んでいるらしい。こうやって姿を隠すこともできる」
想像以上に便利そうだな。
「そういえばお前、名前は?」
「特にない。呼び名を付けたかったら、名付けの儀式してくれてもいいよ?」
「そういえばそんなのあったな。どうやってやるんだ?」
「簡単。何でもいいから書けるものない?」
「そういえばまだティッシュペーパーがうぉぉおおおおっと!」
急にかみついてきやがった。
「欲しいならやるから噛みつくな!ほれ」
「ん、……アムアムアム…………」
むしゃむしゃと喰い始めた。羊か!?
「ぷはぁーーーー。やはり上手いね。もっとないの?」
「そのうち量産できるようにしてやるから待ってろ。この布団でもいいのか?」
「大丈夫。ちょっと待ってて……。『アイン!』」
胸に布団を当てると、少女は唱えた。
するとみるみるうちに布団に文字が浮かび上がってきた。
なるほど、こんな使い方もできるのか。
「ん?これほぼすべての欄が空欄になってないか?」
「やろうと思えば偽造できるの。お主に見られるのは嫌だし」
「あっそう。で、どうすればいいんだ?」
「まず呼び名を考えて」
「呼び名……か…………」
今まで誰かに名前を付けたことなんてない。
どんな名前があるかな……あるかな………、あるか…………。
アルカ、アルカでいいか。
「お前の名前、アルカでいいか?」
「おお!なかなか良さそうな名前じゃないか!センスあるなお主」
適当につけたとか言えないな。
「じゃあ、ここの名前って書いてある横に名前を書いて」
「あれ、ペンは?」
「そんなものは使わない」
「じゃあどうするんだ?」
「指を出せ」
「え、嫌だが」
「えーい!まどろっこしい。ガブッ!!!!」
「ぎゃぁぁぁあああああ痛い痛い痛い!血が出てる!!!」
「その血でここに名前を刻んで」
「こんな肉体的に痛い儀式だったのか……」
仕方ないので指先で文字を書く。ア、ル、カ、と。
「で、ほかに何をすればいい?もう痛いのはごめんだぞ」
「終わり」
「終わり?」
「お主にはわからないかもしれないけど、もうワシの体には名前が刻まれた。終わり」
「やけに呆気ないんだなあ……」
こうして、アルカという厄介な魔法効果上は下僕ができた。
本人はこのことを認めがらない上に、俺の方が下僕だと思ってるらしい。
まあ、俺はアルカはペットみたいなもんだとこっそり思ってるが。人じゃないし。
次回からほったらかしのヒロインが関る話を。
個体名Aの語尾唐突に変えるかもしれません。




