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とある物語の始まり?

注、シリアスものではありません……のはず

「ひもじい……」

 唐突だが、俺は道端で死体のように倒れていた。

 かつては、超一流の暗殺者として世界中の悪徳人から恐れられていた俺がだ。


 何を言っているかわからないだろう。俺もよくわかっていない。ちょっと状況を整理してみるか。


                   ◇


 そう、先ほども言ったが俺は稀代の暗殺者であった。

 依頼された仕事は見事な手口でやり遂げ、証拠すら一切残さなかった。

 表舞台には決して立つことはなかったが、裏世界では「あいつににらまれたら終わりだ!」とまで言われるほどであったのだ。

 もちろん俺にも流儀はある。

 それは、自分のための殺しは絶対行わないことだ。

 あくまで人のため、それも世界を良くするような依頼だと判断したときだけであった。

 マフィアのボスに、敵組織のボスを暗殺してほしいと頼まれたこともあったが、その時も二人とも殺した。

 そんな俺でも、殺したくても絶対に殺せない存在がいた。

 それは過去の自分だ。

 かつての俺は普通の少年であった。

 しかし、俺はある出来事をきっかけにこの道に進むことになってしまった。その出来事は今は話さないが。

 いくら世界を良くするという信念に基づいているとはいえ、自分のやっていることは誰かを不幸にしていることであるだろうし、今思えば他にも道はあったのではないかと思う。

 あの日、この道に進むことを決意してしまった自分を殺したいという思いが、次第に心の中で渦巻くようになってしまった。

 

 そして24歳の誕生日、ついにタイムマシンを創り出すことに成功してしまった。

 暗殺者には掃除、洗濯から、運動能力や科学、芸術など、様々なスキルが必要だ。タイムマシンを創り出すことも、簡単ではなかったが成し遂げることができた。

 原理?説明してもわからんだろう、あとめんどい。

 

 そんなわけでタイムマシンに乗ってすぐに15年前、9歳の自分を殺しに行ってしまった。

 到着してすぐに9歳の自分と遭遇した俺は、ためらうこともなく手作りの存在抹消マシンを起動してしまった。

このマシンも4年前に自分で作ったものだ。証拠が残らない暗殺がより簡単となった。


 さあ、発動するか……!とその瞬間、視界が反転した。


 次に目が覚めると、目の前には黒い男がいた。

 どう黒いかというと、真っ黒の中折れ帽子を深くかぶり、真っ黒のスーツを着、これまた真っ黒のズボンをはいた男であった。


「君ねえ、バカでしょ」

「突然バカだとはなんだ。失礼な!」

「過去の自分を殺そうとタイムマシンを造るなんて、狂気の沙汰でしょ」

「それに関しては否定はしない」

「いや、一応でもまともな思考ができるだけの頭があってよかった」

「ところで、さっきはあの後どうなったのだ?すごい気になるんだが」

「まったく懲りてないね……、まあいいけど。たまにねえ、君みたいに過去を勝手に変えて自分の利益にしようとする輩がわりといるんだよ。そういうことされると世界がおかしなことになっちゃうから、その前に止めるのが僕の仕事。自分を殺そうとするバカは君以外見たことがないけどね」

「ちょっと待て、俺以外にもタイムマシンを開発した奴がいるのか?」

 うぬぼれじゃないが、そんなことができるのは自分だけだと思っていたし、いても1人や2人だと思っていた。


 男はとてもとても、とて〜も深いため息をはいた。


「君が残した設計図、理論、パーツの一部のせいで後世の科学者がすごい頑張って再現しちゃったんだよ。君さえいなければ僕はほとんど一生快適なお布団にくるまって寝て過ごせたのに……」

「今とんでもない本音が聞こえた気がするんだが……。まあいい、事情は理解した。で、俺はどうなるんだ?」


 このままこのようわからん場所に取り残されるのは勘弁だぞ。


「選択肢は2つある」

「ほう、詳しく」

「1つ目は、変死体として元の時代で発見されることだ」

「最悪の結末だなオイ」

「だって君を生かしといたら、またタイムマシン造って変なことになっちゃうでしょ?それは困るんだよ」


 そう言って男はこちらの胸の内を読むかのような視線を向けてきた。

 こりゃ俺が全然懲りてないのはバレてるな……。

 もちろん元の世界に戻ったらまたやり直すつもりであった。


「そんなことしないって言ってもどうせ信じないんだろう?で、もう一つの選択肢は?」

「異世界に行ってもらうことになる」


 え、それもめんどくさそうだなあ……。

 いや、ちょっと待てよ?


「その異世界とやらはどんなところだ?」

「細かいことは話せないが、まあ大雑把に言うと、中世ぐらいの世界をイメージしてくれればいい。お城とかがある」

「ほうほう、それで?」

「魔法が使えるな」


 キタ!予想通りだ!

 俺は長年疑問であったのだ。

 異世界に転移するという物語はよく耳にするが、彼らはその世界で魔法を用いる。

 魔法にあこがれる気持ちは非常よく、なぜ科学という素晴らしいツールを活用しないのか、と。

 中世ぐらいの世界、それも魔法があるってことは、科学技術はほとんど発展してないってこと。

 そんな世界にこの世界で科学を学んだ俺が行けば、まずその世界の技術の頂点に立つこともそんな難しくない。

 この世界での過去にこれ以上悩み苦しむ必要もなくなるだろう。

 最高じゃないか異世界?!?!?!

 元の時代で死ぬぐらいなら科学で異世界無双してやろうじゃないか。


「悩む余地もない。異世界のほうで決まりだ」

「ん~僕的にはどっちでもどうでもいいんだけどね。わかったよ。」

「今すぐ連れていかれるのか?」

「うん、そうだけど、その前に二つ贈り物をしよう。一つ目は、言語だ。この世界の言語はすべて一つに統一されている。これを話せるようにしておいてあげるよ。」

「それは最高じゃないか。英語教育に苦しむ俺の国の小中高生たちが大喜びしそうだ」

「ん?何言ってるか理解できないけどいいや。」


「で、もう一つは?」

「君にユニークスキルと魔法を一つずつあげよう。いきなり生身で放り込むのも申し訳ないからね。もちろんその効果のすごさに応じて制限はかけるけど。例えば世界を一瞬で滅ぼす魔法とかだったらその世界の人間全員分の魔力が必要だとかね」


 ん?スキルと魔法か、多少の憧れはある。

 ただし俺には、結局頼れるのは自分の技術だけだという暗殺業で培った信念がある。

 魔法など必要ないものだな!


「適当につけといてくれ」

「それでいいの?まあ楽だからなんでもいいけど。」

「話は終わりか?」

「うん、もうなかった……はず?」

「なんで疑問形なんだ!?あとさっきからだんだんいい加減になってきてないか!?」

「久々に起きたせいで意識が朦朧としてるんだよね。もう考えるの疲れたし行ってらっしゃ~~~い」

「おい、待て、絶対なんか忘れてるだろ、ふざけるなああぁぁぁぁぁぁぁ!」


 男がドアをあけ放つようなしぐさをすると、突然空間に穴が開き、俺の体が吸い込まれていった。

 こうして俺は、しばらくぶりの視界の反転を味わった。


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