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異世界神様の文明開化計画〈アナザードライブ〉  作者: 記角麒麟
序章 進撃のマーシェ帝国
11/18

大国の使者

 その日、俺はいつものように城壁の建築を行っていた。


「ふう……」


 現在では、城壁の三分の二が完成しており、集落側から城壁の上へと移動するための階段やスロープも同時に造られている。


(エレベーター欲しいな……)


 魔法で空を飛ぶのは、ちょっと足元が覚束なくて怖いから嫌だし、かと言って板の上に乗って空を飛ぶのも、なんか不安定で怖いし。


 俺はぐっと腰を伸ばすと、造りかけの城壁の上に胡座をかいた。

 と、そんな時だった。


 背後から俺の方へとかけてくる足音があった。


「スズメ!

 仕事はかどってる?」


「ヒバリ!

 久しぶりだな」


 そう。

 その足音の正体は、俺と同い年の少女ヒバリのものであった。


「えへへ、久しぶりスズメ!

 ずっと会えなかったから寂しかったよ」


 ヒバリはそう言うと、休憩中の俺の背中へと抱きついてきた。


「俺も寂しかったよ」


 俺はそんな少し安心する声に微笑みを浮かべながら、彼女の頭をポンポンと叩く。

 すると彼女は、嬉しそうに頬を寄せる。


「ところで、何しに来たんだ?

 用事があるんだろ?」


 俺は暫くしてそんな彼女の頭を撫でていたが、そういえばなぜここに来たのかと疑問に思い、尋ねてみる。


「理由がなきゃ、来ちゃだめだった?」


「まあな……。

 今は戦争前だし」


 俺は肩をすくめると、苦笑いを浮かべてそう答えた。


「戦争ねー。

 いつだっけ?」


「あと一ヶ月と少し」


「ふ〜ん」


 彼女は何だか、面白くなさそうな表情を浮かべると、どっかとその場に腰を下ろした。


「そういえば、算術の方はどう?

 みんな問題なくできてる?」


 かねてより気になっていたことを、ふと思い出して尋ねてみると、彼女は何色をその顔に写して、う〜んと唸る。


「上手くいかない。

 ゼロの概念?っていうのが、よく説明できなくて……」


 そう言って、ヒバリは盛大なため息をついた。


 ゼロの概念。

 ゼロと言うものが生まれたのは、確かもう少し先の時代だったはずだ。

 確かに、無いものを考えると言うのは、難しそうな気はするが……。


(通貨の発行は、先が長そうだな……)


 そう考えて、俺はガクリと項垂れるのであった。


⚪⚫○●⚪⚫○●


 その日の午後。

 大国マーシェ傘下、ここから北方にある村「ラセ」から、馬車に乗って使者が訪れてきた。


 俺はそれを防壁の上から眺めながら、おそらくは戦争の詳しい日時と場所を伝えに来たのだろうと推測する。

 ……まあ、もっぱらこちらは籠城する事しかしないし、出来ないのだが。

 おそらくそれ以外を選んだ暁には、蹂躙による壊滅が待っているのだろう。


 そう考えて、俺は歩兵戦力はこの際無しとした戦略を組んだのである。


 防壁の完成度は、この日既に九割ほどにまで達成していた。

 おかげで俺の創造魔法の呪力コストはかなり低くなっていた。


(来るなら来るって、先に連絡寄越してほしいものだよなぁ)


 小さくため息をつきながら、俺は防壁の内壁に作られた階段を下る。


 神殿に到着すると、いつもの服装では威厳がないからと、ヒバリとヒバチが頑張って作ってくれ飛竜の革で出来た黒い貫頭衣を纏って、謁見室まで移動した。


 謁見室につくとそこには、白い髪を蓄えた、この世界では珍しく長生きであることを思わせる、老齢の男が傅いていた。


(へぇ……)


 この世界では平均寿命は三十ほどである。

 その理由は、主に魔物との戦闘による死亡が原因だった。


 医療は水属性の咒が使える水術師によって、あるいは現代日本より高い水準を誇るこの世界だが、一瞬にして、治療する間もなく逝かれては、流石に治せないからだ。


 その点を見ると、やはり彼の出で立ちは異様とも思えた。


(文官、という線が濃さそうだな)


 続いて俺は、その後ろに控える人たちを見据える。


 控えているのは三人。

 全員、十歳前後の少女である。


 そして、その少女たちには、普通の人間とは違う点がいくつか見られた。


 まず、身体的特徴。

 全員、何かしら獣の耳と尻尾が生えていた。


(この世界に獣人って居たのか……)


 初めて見るその容姿に、俺の心は若干高鳴る。


 獣人といえば、ラノベとかでは戦闘能力が人間より高いように設定されることが多い種族だ。

 多くは、その獣人のケモノの部分の特性を受け継ぐような形が多いを


 目の前に傅いている三人は、尻尾の形やケモミミの形状から考えるに、狼、猫、兔である。

 狼の娘は銀色の毛並みをしている。

 猫は金髪で、先端が少し白っぽい。

 兔の髪は赤っぽいオレンジ色に近い茶色……というのだろうか?そんな感じの配色で、赤兎と同じカラーリングだった。


 他の狼も、見たことはないがたまに守護者たちが狩ってくる銀狼に特徴が似ているし、猫の方も尻尾が二つあることから猫又という魔物に特徴が似ている。


 ……もしかして、遺伝子工学?


(――いや、考え過ぎかな)


 俺は心の中だけで首を振りながら、段差になって少し降りたところに頭を伏せる四人を見下ろしてから、ちらりとトンビの方へ視線を移す。


 トンビは面倒臭そうにコクリと頷くと、老人に話しかけた。


「要件は何だ?」


 相変わらず短い質問文だが、その意図するところは確実に老人の脳に届く。


 老人は短く答えると、マーシェ帝国帝王から手紙を預かってきたことを告げる。


 控えていた守護者の一人が、老人から手紙を受け取ると、それをトンビに手渡した。

 トンビは風を開けると、中身をサラリと確認して俺に渡す。


(なになに……)


 簡単に手紙の中身を要約すると、こんな事だった。


 ・五体のワイバーンの討伐を無傷で、四十人だけの兵力で討ち取ったことに対する賞賛。

 ・それに使われたという兵器が知りたい云々。つまり、勝ったら作り方を教えろ寄越せという意味。

 ・戦争の日時。予定通り一ヶ月後。場所はここから北にある平原にて。


(一方的すぎて対話の気すらないな)


 手紙には、そんな内容の文がつらつらと書かれていた。


 さて、どうするのが一番か……。


 俺は手紙をトンビに返すと、少しの間瞑目して、思考する。


 そもそも、俺は最初から籠城する気しかないのだから、期日になって戦場へ赴く必要はない。

 もし向かわなかったのなら、彼らはどう考えるか。


 帝王直筆かどうかはわからないが、要件だけをみればかなり図に乗った性格をしていると見える。

 そんな奴が考えるとすればおそらく、怖くなって逃げたとでも思うだろう。


 使者はここに来るまでに、あの防壁を見たはずだ。

 見ないはずがない。


 彼の性格はイマイチ把握しかねるが、彼の佇まいから文官であることが推測される。

 たぶん、かなり頭がキレる人だ。

 なら、壁に疑問を持つ。

 具体的には、この短期間でどうやって建てたのか。


 壁をくぐったなら、その厚さ、高さも知ってのとおりだ。

 厚さ十メートル、高さは現在十五メートルほど。

 まだ上に砲台を設置する予定だが、彼らはそんなこと考えもしないだろう。

 せいぜい、上から矢を放つか、爆弾を落とす程度にしか想像できまい。


「……」


 俺は眉間にシワを寄せると、更に深く考え込んだ。

 手紙の内容から、だいたい敵国の帝王とやらの思考回路はトレースできる。


 だが……。


「手紙の中身はわかった。

 他に、何かあるか?」


 俺は思考を後回しにすると、とりあえず待っているだろう老人に続きを促した。


「いえ、今回の用事はそれだけの事ゆえ」


 顔を伏せたまま、老人が答える。


 その時、俺はふと気づいた。


(……なるほど、ただの文官じゃないんだ)


 俺はニヤリと口元を歪めると、そうかと返した。


「では、帰ったら伝えてくれ。

 もし仮に俺が勝ったら、何でも言うことを聞いてくれとな。

 話は以上だ」


 俺は、自称威厳たっぷりな口調でそう話を終わらせると、トンビに目配せをして、四人を神殿から退けた。


⚪⚫○●⚪⚫○●


 謁見が終われば、すぐに会議室へと向かった。

 招集したのは、守護者の隊長、トンビと、副隊長のキツネ。


 後は分隊長の四人である。


 会議が始まると、俺の指示でトンビが手紙の内容を伝え、会議室に設置した俺特製の黒板に、話を纏めたものと、こちらの作戦が記されていた。


「問題は、北の平原に誰が行くかですね」


 眉をしかめながら、副隊長のキツネが呟いた。


「来なければおそらく、腰抜けなどと罵られることになりましょう」


「しかし、一万人を四十人で相手するのは不可能に近いです!」


 キツネの呟きに呼応するように、分隊長の二人が議論する。


 罵られることになることを指摘するのは、第一分隊隊長、ハヤブサ。

 トンビとは同じ年齢だが、トンビより二回りほど体がゴツい。


 対して、それに反論しているのは第三分隊隊長のユリ。

 年齢は十代前半。日本で言えば、まだ中一か、小学六年生くらいの少女である。

 黒髪のロングヘアーに、くりくりとした大きな瞳で、整った顔立ちをしている。

 かなり美少女の部類に入る女の子だ。


 ヒバリ?

 彼女も可愛い方だとは思うが、まだ五歳だからなぁ。

 ときが経てばどうなるかわからないから、あえてそこは言及しないでおく。


 閑話休題。


 俺はゴホンとわざとらしく咳払いをして、まず先にハヤブサの提案を却下する。


「マーシェ帝国が腰抜けだと笑うなら放っておけばいい。

 勇敢と無謀は違うからな」


 俺がそう言えば、ハヤブサは苦い顔をして、それを見上げるユリは、どこか勝ち誇ったような笑みを浮かべて、無い胸をそらした。

 これが漫画なら、後ろに「へっへーん、ざまぁみやがれ!」という文言が浮かんでいそうである。


 俺は彼女に苦笑いを返すと、話を続けた。


「さて、それで問題だが、この件については前通りに籠城作戦で行くつもりだ。

 正直言って、それしか勝てる見込みがない」


 本当は、将軍さえ討てばこちらの価値になるというのが、この世界の一般的な戦争のルールだが、さてはて帝王はどう仕掛けてくるかわからない。


 なら、こちらの手のひらで簡単に動かせるように誘導すればいいのだ。


 俺はそんな風に考えを伝えると、ユリが片手を上げながら「ユリもそう思ってました!」と元気に答えていた。


 ……ユリちゃん、何回か見てたし、話もしたことあるけど、こういうところ可愛いよなぁ。


(……なんで守護者なんかになったんだろ?)


 ま、それはいつか聞くことにしよう。


 とりあえず今日のところはこれで会議を終了として、今日は解散することとした。


⚪⚫○●⚪⚫○●


 部屋に戻ってくると、扉の前で女中が待っていた。


「どうした?」


「神様。実は、提案したいことがあるのですが」


「提案?」


 俺は小首を傾げると、彼女を部屋の中に案内した。


 彼女は、以前北の村「ラセ」から使者がやってきたことを伝えてくれ、その内容を手紙に残して伝えてくれた人物である。


 名前はコムギ。

 齢は十代後半で、日本で言えば高校一年か二年くらいの少女である。


 因みに、結構キレイなタイプの美人である。


(……なんか、この世界って女子の美形率高いよなぁ)


 ふと、そんなことを頭の片隅に思い浮かべる。


 部屋の中に入った女中のコムギは、俺が着ていた飛竜の革で出来た貫頭衣を脱がしながら、話を続けた。


「はい。

 秘書を雇っては如何かと」


「秘書?」


「はい。

 私の住んでいた集落では、それぞれ要職についている人のトップには常に秘書と呼ばれる人がついておりました」


 秘書ね……。

 秘書なんて概念がもうあったのか。


 ……いや、ある程度成長すれば、それくらい当然か。

 一人で全部回すのは誰だってキツイだろうし。


 俺は彼女に相槌を打つと、そうだなと考えるように呟いた。


「それに、いつもそばに控えさせるのですから、色々と便利らしいですし」


「というと?」


 確かに、荷物持ちや帳簿管理とか、楽そうではあるが。

 それってもうメイドでもよくね?って思うんだよなぁ……。


 そんなことを考えていると、コムギは俺の前に跪いて、どこかとろんとした眼差しで俺の顔を見上げた。


「神様は気づいてないかもしれませんが、実は私知ってるんですよ?」


「……知ってるって、何を?」


 なんか、意味深な言い方だな。

 っていうか、さっさと着替え持って来いよ。


 俺は怪訝な表情を浮かべながら、コムギの顔を見つめる。


「夜、いつも布団の中でしていることです。

 最近は特に回数が多い。

 欲求不満ですか?」


「!?」


 彼女のその言葉に、俺は息をつまらせる。

 頭が白くなり、心臓が耳元で脈打つ音が聞こえる。


 コムギは妖艶な表情をしながら、俺の股間に手を添えた。


「実を言いますと私、いわゆるショタコンというものでして。

 この職についたのも、本当は神様とこのようなことをしたいがため」


 顔が火照る。

 脈動が早くなり、制御の効かないそれは、布の下でムクリと頭を起こしていた。


「それで……便利というのは……つまり……」


 コムギの熱い吐息が、俺の肌を舐める。

 惚けたような彼女の顔は、妖艶な、というよりもエロいと言ってしまったほうがにあうようだ。


 彼女は俺のそんなセリフに口角を上げると、そのまま俺の下着に指をかけた。


「……!?」


「神様、小さくてかわいいですよ」


「い、言うなよ……」


 俺は赤面しながら、視線をずらす。

 そんな俺の対応に、コムギは目を輝かせると、おもむろに立ち上がって、服を脱ぎ始める。


「ちょ、ちょっと!?」


 衣擦れの音に思わず反応して、服の裾に手をかける彼女の手首を掴んで静止する。


「どうしました、神様?」


「なんで服脱ごうとしてるのさ!?」


「……もしかして、神様は、着たままがご所望ですか?」


「いやそうじゃなく――」


「でしたら、脱ぎましょう」


 俺の静止も虚しく、彼女はスルスルと衣服を脱ぎ捨てていく。

 一枚、また一枚と脱ぎ捨てられていくたびに、彼女の肌色の割合は増していく。


 そうして呆然としているうちに、コムギの体には一切の布切れが見当たらなくなってしまった。


(……これ、本当に大丈夫なんだろうか?)


 ナニが、とは詳しくは言わないが。

 いや、言えないが。


 俺は赤くなった顔を隠すように顔を背けると、早鐘のように鳴る心臓を、どうにか収めようと深呼吸をした。


 ――ふわり。


 するとどうだろう。

 俺の鼻腔をくすぐるように、甘い匂いが俺の脳を刺激した。


(拙い拙い拙い拙い……!)


 いや、もはやラッキーとでも言うべきなんだろうが、それを認めてしまうのはちょっと憚られるというかなんというか……。


 そんな言い訳じみた思考は、次に俺の背中を襲う、柔らかで温かい、弾力のある感触によって、強制的にシャットアウトされた。


「ふぅ〜」


「ひゃぎぃっ!?」


 突然耳に吹きかけられた吐息に、俺は奇声をあげた。


「神様、まずは何にいたしましょうか?」


 後ろから、肩の上から回り込むように、コムギは俺の体を抱きしめる。

 その指はツーと肌をなぞって、腕と腕が擦れるように、より肌が密着するように、コムギは俺を弄ぶ。


「……(ゴクリ」


 何も考えられない。

 何もできない。


 全身がカチコチに固まってしまって、今にも気を失いそうである。


「大丈夫ですよ、神様。

 力を抜いて。

 リラックスしましょう?」


 手のひらで俺の胸や腹をくすぐりながら、彼女は俺に支持を出す。


「吸って……吐いて……。

 吸って……吐いて……」


「スー……ハー……。

 スー……ハー……」


 これは、なんの香りだろうか?

 果物ではない。

 草花の香り……でもない。

 香木でもないし……。


 でも、なんだか安心する香りだ。


 俺は頭の中から全ての雑念を投げ出して、彼女の言うがままになる。


 頭がぼぅっとする。

 心臓が早鐘のように打ってくる。


 コムギはそんな俺の様子を見ると、ベッドに押し倒して、両手を顔の両脇についた。


「ああ、神様……。

 ハァ……ハァ……」


「コムギ……」


 彼女の呼びかけに、反射的に呼び返すと、彼女の中で、何かが壊れる音が聞こえた。


「んっ……」


 口内に、柔らかくぬめりのある舌が侵入してくる。


 そして、経験したことのない感覚が、俺を襲った。

 仕返しにとばかりに、俺も彼女の口内に舌を入れる。


 何回かそうしていくうちに、彼女の手は俺のあんなところやこんなところをまさぐり始めていた。


「神様……神様……!」


 俺を呼ぶ声が熱い。

 体が熱い。


 焼けそうだ。

 解けそうだ。

 蕩けそうだ。


 その後、何があったかを詳しく説明するには、残念ながら記憶が曖昧なので無理な相談であった。

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