おはなしをしようか
あるところに おとなと こどもが いました。
おとなは となりに すわっている こどもに むかって はなしかけました。
「おはなしを しようか。」
こどもは おとなを みあげます。
「わたしが ちいさいころの おはなし。
わたしには よっつ はなれた おとうとが いるんだ。
わたしが ななさい。
おとうとが さんさい。
おとうとに おねがい されて、
わたしは おうまさんに なったんだ。
てを ゆかに つけて。
おとうとが せなかに のって。
おうまさんに なった わたしは、
みぎてと みぎあし、
ひだりてと ひだりあしを、
いっしょに うごかしたよ。」
こどもは ふしぎに おもって、
たずねました。
「どうして みぎてと みぎあしを いっしょに うごかしたの?」
おとなは すこし かんがえて、
こたえます。
「なぜかって?
おばあちゃんと いっしょに、
おうまさんを みにいった ことが あったんだ。
そこにはね。
おうまさんが さんとう いたの。
おうまさんは みぎてと みぎあしを、
いっしょに うごかして あるいて いたんだよ。
おうまさんは あるくだけ じゃあ なくて、
はしったり、 とんだり してたんだ。」
こどもは くびを かたむけます。
「さんとう?」
「にんげんは さんにん。
おうまさんは さんとう。
って よぶんだよ。」
おとなは ゆびを さんほん たてて、
こどもに おしえます。
「どうして?」
おとなは こどもに たずねられて、
かんがえました。
「なんでかって……
そうだなぁ。
おうまさんや おうしさんは おおきい から、 あたまを ならべて かぞえたの かも しれないね。
あたま って かいて とう って よむ かんじが あるんだよ。」
「かんじ って なあに?」
「かんじ?
こうやって かくの。」
おとなは こどもの てに、
あたまという かんじを、
ゆびで かきました。
こどもは ふしぎそうに、
じっと みつめます。
「わからなくて いいよ。
おおきく なったら、
がっこう って ところで ならうんだ。」
おとなは つづきを はなそうか。
と いって こどもに ほほえみ かけます。
「さんとうの いる ところに、
にんげんを のせた おうまさんが、
あるいて きたんだ。
おうまさんは にんげんを、
おとさない ように、
ゆっくりと あるいて いたよ。
おうまさんは にんげん よりも おおきいから、
にんげんが おちない ように ゆっくりと あるいて、
にんげんが はしろう って、
いわない かぎり はしらないし、
とんだり しないの。」
「おうまさん やさしいねぇ」
「うん。 そうだね。
おうまさん やさしいね。」
おとなは こどもの あたまを なでました。
「わたしは おうまさんに なって、
おとうとを のせて あるきました。
おとうとと いっしょに、
『パカラ パカラ』と いって、 あるきます。
しかし、 わたしは あるくことに、
あきて しまいました。
そこで、 わたしは おとうとを のせたまま、
とびはねます。
『バカダ!』
わたしは おうまさんが やらない、
おとしそうなことを します。
おとうとは わたしから おちてしまいました。
おうまさんよりも ちいさな わたしから おちても、
おとうとは けがを しませんでした。
しかし、 わたしは あぶないことを しては いけないと、
おかあさんに おこられて しまいました。
おしまい。」