第一話 黒閃は疾風とともに
この小説は以前投稿したのを手直ししたものになるので、色々と使い回ししてる箇所があります。ご了承ください。
※1/12 最後の方に文章を追加しました。
ハジメヨウ。ココカラ。
ハジメヨウ。アソビヲ。
ハジメヨウ。ゲームヲ。
サァ、ゲームノカイシダ。
呟くそいつは歪に笑いながら闇のように暗く、深い渦の穴に消えていった。
それがこちらとあちらを繋ぐゲートと知っていながら、そいつは消えていった。
◇◆◇◆◇
壁に設置された松明で照らされた薄暗い迷宮。その中で煌めく一陣の黒閃が2メートルを優に超すオークを切り刻んでいく。
止まることなく黒閃がオークの緑の皮膚を斬る。切り口からは紫の液体を出血させ、その姿は既に紫色に染められている。
オークの視界には自分の血で紫に染まっているが、それでも確認できることがある。松明の揺らめき。石レンガで造られた壁と床。己の手に持つ使い古した混紡。ダメージを受けていく巨体と苦悶の表情。
そして──────黒閃を操る少年の姿。
黒閃が振るわれるたび、小さい呼吸音が聞こえる。松明の明かりによって度々照らされる少年の手には刀を携えていた。オークの目では鍔を持たない直刀にしか見えなかった。
「そろそろ終わらせる」
か細い声はオークに届くことはなかった。
右腰にも携えていたもう一本の直刀を抜刀。橙閃が暗闇を明るく切り裂いた。
その姿を目で追いかけるだけで精一杯の状況で斬撃が二つに増えたのだ。たまらずオークは目を見開く。
刹那、少年が見えなくなった。目が潰された訳ではない。紫に染まった視界は今も見えている。それなのに少年の姿が全く見えなくなった。同時に体の切り口は急速に増えていった。
疾かった。
それだけ。
驚異的な加速と手数の多さ。既にその軌跡を負うことは不可能だった。先程まで視認できていた少年の姿は手を抜いたため。今となっては何も解らない。ただただ己のライフが消えていくだけ。
薄暗い迷宮の通路に風が通り抜けた。痛みも音も消えた。敵である少年を一刻も早くみつけようと首を動かす。
刹那、首元を黒閃がすり抜けた。視界は回りながら落ちた。地面に転がり、止まった場所から見えた景色は、切り離された自分の巨体が紫に染まりきり、肩に乗っている少年だった。
「はぁ……やっと倒した。無傷とは言え、やっぱ体力・防御力が高いモンスターだと苦労するな」
巨体から飛び降りると切り離された頭と身体がデータとなって霧散していった。
刀身にこびり付いた紫の液体を振り払い、納刀する。
ピコーン、と軽快な電子音が耳元で響く。
『目標モンスターの討伐に成功しました』
無機質な音声。
ぐーっと両手を上に伸ばし、体の力を抜き、一言。
「つかれたぁ」
これはゲーム。デジタルで構成された仮想世界。
『Another Select Online』と呼ばれるVRMMORPGである。
スレン──────鈴城 蓮はプレイヤーの一人であり、この世界に閉じ込められた一人である。