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第006話 ドドドン酒場

 秘密の通路から出た先は、とある酒場の地下倉庫だった。


 ここ『ドドドン酒場』は国営で、情報収集用に作られた場所である。昼間はカフェ。夜は酒場へと変わり、他の店に比べると非常に安い。そのため、二十四時間常に賑わいをみせていた。人の出入りが常に多いため、城からの行き来、店の出入りも容易に行うことが出来ることが利点の一つだった。


 魔法薬で灯されたランプが倉庫内全体を照らし、棚にはたくさんのお酒や食糧が置かれていることが良く見える。上の階からはガヤガヤとした声が小さく耳に入ってきた。エリー王女は興味深そうに倉庫内を見渡しながらもアランの後ろをついて歩く。レイのお陰で新しい場所に着いても、少しも怖くなかった。


 倉庫内の奥にある簡素な木の扉にたどり着いたアランは、コンコンと二回扉を叩く。しかし、奥から何も反応がない。もう一度叩いてみたが変化は見られなかった。


「失礼します」


 アランは仕方がなく、そのまま扉を開けて中に入った。そこには大柄のいかつい男が険しい顔で書類に何かを書いているところだった。集中しているのか、三人が入ってきても全く気がつかない。アランは大きくため息をつき、机の前に立つ。


「ジェルド、エリー様が参られました」


 ジェルドと呼ばれた男は顔をバッと上げ、アランの顔を見て、壁に掛かる時計を確認した後、体を横に傾けてアランの背後を見た。強面の顔があからさまにしまった! という表情に変わった。


 エリー王女はジェルドと視線が交わると小さく肩を揺らすが、背筋を伸ばして微笑みを作った。


 慌てたジェルドはガタガタと机と椅子を鳴らしながら、エリー王女の前にかけより跪く。


「本来であればお出迎えするべきでしたのに申し訳ございません。こんなむさ苦しいところにご足労いただき誠にありがとうございます」

「構いません。国のために一生懸命働いているのならば、それは喜ぶべきことです。面をお上げください」


 ジェルドが面を上げても、父親と同じくらいの年齢だったため、エリー王女はそれほど動揺することはなかった。そんな自分にほっと胸を撫で下ろす。


「話は聞いていると思うが今日は忍びで来た。街の様子はどうだ」


 アランがジェルドに話しかけながら手を差し伸べ立たせる。


「最近も特に変わった様子はなく、平和だね。今回の朝市もいい店が出揃っていたよ。ん? おい、そこにいるのはレイか!? はっはっはっはっは! いつの間に女になったんだ? いや~前から可愛い顔をしているとは思ったけどまさか女になるとはな!」


挿絵(By みてみん)


 笑いながらレイに近づき背中をバンバン叩いた。


「いてて。女の俺もいけてるでしょ?」

「どうせあいつに変なもん飲まされたんだろう? あんまりあいつに付き合ってるといつか死ぬぜ~」

「ははは。大丈夫大丈夫! セルダさんだって国のために頑張ってるんだ。俺にできることがあればやるだけだよ」

「相変わらずお国への忠誠心が強いね~。しっかし、その身体いいね~。こりゃ~色々と役に立ちそうだな。なぁ、今晩俺とどうだ?」


 ジェルドがレイの体を舐めるように見た後、ニヤリと笑う。


「お、おい! エリー様の前で何を言っているんだ!」

「ん~、今日の夜はエリー様のお披露目パーティがあるし、この体でいられるのもそんなに長くないんだ。悪いけど今日は他をあたってくれる?」

「お、お前は何で普通に返している……」


 アランが嫌悪を露にしながらアタフタしている。それを見たレイとジェルドが顔を見合わせ、噴き出した。


「アラン、お前何想像しているんだ? 仕事だよ仕事。調査のな。女だからこそ出来る仕事もあるんだよ」


 ジェルドは笑いながらアランに言うと、アランはハッと気付き、顔を赤くする。そんな様子を見てジェルドは満足そうだ。


「相変わらず面白れえな。俺はレイに手をだすほど飢えてねぇよ」

「……っ。お前らわざとだろ!」

「まあまあ、アラン。俺はそんなアランが好きだけどね」

「俺はお前らが嫌いだ」


 楽しそうに笑い合う三人。それを横で見ていたエリー王女は、アランが何故怒っているのか良く分からず首をかしげていた。





挿絵(By みてみん)


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