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第017話 休憩

 リリュートを見送り、エリー王女は一息つく。


「お疲れ様です。とても良かったと思います」

「そう……でしょうか……」


 アランの慰めの言葉に、エリー王女の顔が曇る。自分からは上手く話せなかった上に、王として相応しいかなど全く分からなかった。


 自分の不甲斐なさにエリー王女は視線を落とす。


「まだ一人目です。今は何も考えずに多くの人と話すだけで大丈夫です。さ、エリー様。次の方まで少しお時間がございますのでこちらで休憩致しましょう」


 アランに案内されたテラスのベンチに座ると、全身から力が抜けていった。ずっと気を張っていたため、ぐったりと疲れていたことが分かる。


 心地よい風が吹き、瞳を閉じた。青々と茂った木々がさやさやと優しく囁く。暫くそうしているとあまり寝ていないこともあり、エリー王女はすっと眠りについてしまった。


 アランはエリー王女の眠っているベンチの後方に立ち、交代の時間になるのを待った。それから数十分後、レイが建物内からテラスへと入ってくる。


「リリュート様とはどうだった?」


 エリー王女が寝ていることが分かったレイは小声でアランに話しかけてきた。


「あちらはエリー様を気に入られたようだが、エリー様はまだ話すのも精一杯といったところだな」

「うーん、そもそもまだ男が苦手みたいだもんね。そうなると次のジェルミア王子は、エリー様にとって少し厄介だよね」


 レイは腕を組み、エリー王女の身を案じた。


「女癖が悪いようだからな。だからと言って、王となる資質がないわけではない。デール王国との絆が深まれば我が国も大きくなり経済的にもより安定はする。女癖が悪かろうがエリー様が気に入ればそれで問題はない」


 そうかもしれないが、やはりそんな相手とは上手くいって欲しくないとレイは思った。


「じゃ、そろそろ俺は行く。時間まで寝かせておいてやれよ。酷くお疲れの様子だ」


 アランが表情も変えずにレイに伝えると、その場から立ち去った。


 レイがエリー王女の様子を見るために、ベンチを回り込むと頭を垂れてすやすやと眠っていた。あまり眠れなかったのだろうか? レイが心配していると体が傾きだしたので、慌てて体を支えた。しかし、起きる気配はない。どうせならちゃんと眠ってもらおうと、エリー王女の隣に座り自分の膝の上に頭を置いた。これで少しは疲れが取れるといいなと思いながら、顔にかかる髪を後ろに流す。するとエリー王女の真っ白な細い首と愛らしい寝顔が露わになり、レイは思わず視線を逸らした。


挿絵(By みてみん)






 少し暑さを感じ、身をよじる。体が痛い。床の硬さに疑問を感じ、エリー王女はゆっくりと瞳を開けた。綺麗に刈られた芝に、庭師の手が入った整った形の木々。花壇にある色とりどりの花々が目に入ってくる。綺麗だなと、状況が飲み込めないままぼんやり眺めていると頭上から声が降ってきた。


「もしかして起きた? おはよう、エリー様」


 聞き覚えのある声にハッとし、素早く体を起こす。その勢いでレイの顔に思いっきりぶつかった。


「うっ」

「あっ! あの……ごめんなさい! だ、大丈夫でしょうか?」


 横に座るレイが痛そうに鼻を抑えており、エリー王女は身を乗り出して顔を覗き込む。


「あはは、こっちこそ驚かせちゃったみたいでごめんね。エリー様こそ大丈夫?」


 エリー王女の頭を撫でながらにこやかに話すレイの姿に、一気に熱が顔に集まった。距離が近い。その距離に昨夜のことを思い出してしまい、赤くなった顔を隠すように俯いた。


「凄く疲れていたみたいだね。昨日はあんまり眠れなかったの?」


 レイの問いにさっきまでの体勢を思い出し、エリー王女は慌てた。ただ、どうしてもレイの顔を見ることができず顔は俯いたままだ。


「あ、あの……。このような場所で寝てしまうなんて……王女として恥ずかしいところをお見せいたしました。そ、それに、レイの……その……膝に……重かったですよね。ごめんなさい……」

「ううん、謝る必要はないよ。誰もいなかったし、俺たちの前では気は張らなくて大丈夫だから。ゆっくり休むのも大事だよ」


 優しい言葉と共にエリー王女の頭をポンポンと触れてくる。エリー王女はどう反応して良いのか分からず、そのまま固まった。でも、触れられるのは嫌じゃない……。


 いつまでたっても顔を上げてくれないエリー王女に、レイは少し不安を感じてきた。昨日、少し打ち解けたと思ったのは気のせいだろうか。


「よーし! ジェルミア王子がいらっしゃるまでもう少し時間があるから俺と少し歩こうか。作戦練ろう!」

「作戦……ですか?」


 話を変えようとレイがそう提案すると、エリー王女がやっと顔を上げた。レイはにこりと笑う。


「うん。さ、行こう」


 エリー王女はよくわからなかったが、レイが昨日と変わらない様子で安心すると共に一緒にいられるだけで心が弾んだ。

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