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第015話 晴れない気持ち

 薄紅色の重厚なカーテンが軽快な音を立てて開かれると、柔らかな日差しが部屋全体に広がる。ベッドの上にいるエリー王女は、眩しさから目をぎゅっと強くつぶった。なかなか眠れず長い夜を過ごしたエリー王女は、重い体を起こし、右手で額を押さえる。


「エリー様、顔色が優れていないようですが大丈夫ですか?」

「……あまり眠れなかったのですが……大丈夫です。ありがとう」


 心配そうに顔を覗き込んできたマーサに、エリー王女は無理をして微笑んで見せた。こんなことではいけない。今日から国のために国王選びをしなければならないのだと、一呼吸置いてベッドから起き上がった。


 いつものようにマーサや侍女たちがせわしなくエリー王女の身支度を整える。エリー王女はただ人形のように立っていた。美しいドレスを身に纏った鏡の中の自分を見ているようで見ていない。心はどこか別の所にあるようだった。


 そんなエリー王女をマーサは心配そうに見つめる。何度も繰り返されるエリー王女の深いため息と曇った表情。急に生活が大きく変わったことが原因なのだとマーサは思った。


 侍女たちが下がると部屋はしんと静まりかえり、重い空気が際立って感じる。マーサは少しでも心が休まるようにと、ソファーに座るエリー王女の前に紅茶をすっと差し出した。


「……ありがとう、マーサ」


 そう静かに呟くエリー王女は紅茶をただじっと見つめているだけだった。いつもと違うエリー王女の様子にマーサの表情も曇る。


「マーサ……そろそろレイが来る頃かしら?」


 やっと声を発したエリー王女にマーサが答えようとした時だった。コンコンとドアを叩く音が部屋に響いた。その音にエリー王女の体がびくっと跳ね、紅茶のカップをカチャカチャと鳴らせた。


「今いらっしゃったようですね」


 マーサはそんなエリー王女の行動に首をかしげつつ答えた。




 エリー王女はドキドキと高鳴る胸を抑えてすっと立ち上がり、両手をきゅっと握った。どんな顔をして会えばよいのだろうか。会うのは少し気まずい。出来ることなら会いたくない。レイを否定しつつもほのかに頬を染め、マーサがドアを開けるところをエリー王女はじっと見つめた。




挿絵(By みてみん)




 しかし、その向こうにはアランと侍女だけが立っているだけで、レイの姿は見当たらない。レイと顔を合わせずにすんで安心するとともに、寂しいという想いがじんわりと胸の中で広がる。そんな自分の気持ちに違和感を感じた。




 朝食の支度が終わると、マーサと侍女は部屋から出ていった。アランと二人きりになり、エリー王女は気まずさを感じていたが、アランは全く気にしていないようだった。


「お食事をしながら本日の予定を説明させていただきます」


 エリー王女の横に立ち、淡々と説明が始まる。そういったアランの事務的な行動は、エリー王女を安心させた。


 アランの説明では、午前に一名、午後に二名の候補者に会うというものであり、それがエリー王女にとって最優先事項だということを改めて認識させられた。


 一昨日まではそれが当たり前だと思っていたし、苦だとは感じてはいなかった。しかし、何故か心にひっかかるものを感じ、思わず大きなため息を溢してしまう。


「顔色も悪いですし、体調が宜しくないのですか?」


 アランもまた心配し、眉間にしわをよせた。エリー王女は、アランやマーサに心配され、王女としてこれではいけないと思い姿勢を正す。


「いえ、問題ありません」


 自分に言い聞かせるように言葉を発した。


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