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第102話 合流

 サイラスに寄り添う男はレイだった。


「アラン。それに隊長と先輩。一旦引きます。援護!!!」


 レイが手を上げ叫ぶと、後方から多くの矢が飛んできた。


「サイラス様、今のうちに一旦引きます。いいですね」


 有無を言わせない鋭い視線に、サイラスは頷く。

 低い姿勢のまま後方に下がり、対ゴースト用の武器を装備した騎士達と入れ替わった。


 レイたち五人は後方に設けられたバリケード内に入る。


「レイ! いいタイミングで戻ってきたな。ってか、どうしたその服……背中がむき出しになってるじゃないか。着替えは?」


 浄化魔法で血などの汚れは消すことは出来たが、服は元に戻すことは出来ない。さすがに背中だけ見えているのは見た目も悪いが、防御率も下がる。


「うん、頼んである。あの悪魔バフォールだけど――――」


 レイは簡潔にハーネイスの悪魔との契約について説明する。それに対し、アランも状況を報告した。


「対ゴースト用でも少し効果あるかもしれないけど、それだけでは難しそうだね」


 レイがチラリと戦っている様子を窺う。

 バフォールは今もまだ余裕な笑みを浮かべていた。


「悪魔に対抗する手は知ってる?」

「あるにはあるが、洗礼を受けた多くの聖職者か、魔力のある聖職者がいれば恐らく……。今呼びに行ってもらっているが足りるかは分からない……」

「魔力のある聖職者!?」


 レイは瞳を輝かせた。


「ギル! こっちに来て!」


 後ろの方に申し訳なさそうに立つギルを呼ぶ。


「え? あ、うん……」


 ギルはこの場の空気に圧倒されながら、レイの側に来た。周りの視線が痛い。


「アラン、隊長。こちらファラン教会の聖職者なんだ。それに魔力もある」

「おお、あのファランの! それはそれは! 初めまして、騎士団隊長のビルボートです」

「エリー王女第一側近のアランです」


 ギルは差し出された手を慌てて握り、握手を交わす。


挿絵(By みてみん)


「お初にお目にかかります。ファラン教会の……()聖職者になります。洗礼の効果は聖職者を辞めても失われません。ただ……誠に申し訳ないのですが、私は悪魔との戦い方を知りません」

「問題ありません。やり方は文献に載っていました。魔力があるというのであれば、一人でもいけるかもしれません。お力を貸しては頂けないでしょうか」


 自信は全くない。

 しかし、ギルは自分に出来ることがあるのならば手助けしたいと思った。そのために来たのだから。


「もちろんです。何をしたらよろしいでしょうか」

「先ずは私と一緒に書庫へ」

「分かりました」


 ギルの力強い返事にアランは一礼し、ビルボートに視線を移す。


「ビルボート、時間稼ぎを頼む」

「ああ、任せておけ」


 アランはギルを連れて城内へと戻って行った。


「隊長、次は俺も出ます。先制攻撃は俺が行いますので、アル先輩と援護をお願いしたいです」

「あいつ、魔法は効かないみたいだ。無理はしない方がいい」


 ビルボートの心配をよそにレイは笑顔を見せる。


「はい、無理はしません。ただ時間稼ぎに魔法を使うのは有効かと思います」

「わかった。じゃ、二人で援護に回ろう。いいな、アル」

「おう!」


 二人の心強い言葉にレイは小さく一礼し、側で手当てを受けているサイラスの前で跪く。


「サイラス様、申し訳ございません。ここは私たちにお任せ願います。ただ、ハーネイス様のお命は――」

「任せた。悪魔に身を投じた母に情けは必要ない。君らの命を優先してほしい」

「……ありがとうございます」


 ハーネイスを傷付けずに戦うのは難しい。全力で戦わなければこちらの身が危険だった。刺し違えてもハーネイスを止めなければならない。

 サイラスの強い言葉にレイは深く頭を下げた。




 レイ、ビルボート、アルバートの三人は次の戦闘を行うため、装備を整え近くで待機をする。


「退避!!!」


 頃合いを見て、ビルボートが叫ぶ。

 そのタイミングで戦っていた騎士達が後ろへ下がり、レイが飛び出した。


 剣に魔力を込め、上から斬りかかる。

 バフォールはそれを防御するため剣を構えた。

 剣と剣がぶつかる。

 と思ったその瞬間、バフォールの剣をすり抜けて肩に傷を付けた。


「くっ……」


 バフォールはぐらついた体を起こし、素早く体勢を整える。


「やるな、人間。私の剣より強い魔力をその剣に込めたのか……。やっと骨のあるやつが出てきた」


 嬉しそうに目を細めながら、バフォールは手からもう一度剣を作り出した。

 魔法は効かないが、打ち消し合うことは出来る。


「次は無効化は出来ないぞ。さて、どう戦う?」


 強い魔力が剣に注がれるのを感じた。

 魔法で作られた剣と剣に魔力を注いだのでは、魔力の差は大きく開いてしまう。

 バフォールが言うように同じ技は使えない。


「なら次の手だ!」


 レイからもう一度攻撃をしかけた。

 薙ぎ払うと今度は剣と剣がぶつかった。


 その瞬間にレイは稲妻を剣から放つ。

 バフォールの体が青い稲妻に包まれた。

 間髪を入れず剣で流線を描く。


「ぐっ」


 傷は浅そうではあるが、手応えを感じた。


「なるほど、面白い。ならばこちらからもいくぞ」


 バフォールは赤黒い炎の球をレイに向かっていくつも撃つ。

 レイはそれを防ぐために、同じ大きさの赤い炎の球をぶつけた。


 炎と炎が交わると一段と大きな炎に変わる。


 レイは大地に手を置き、土を巻き上げ、炎を覆い隠した。


 今度は風を鋭い刃に変えて飛ばす。

 一緒に風に乗ってバフォールの後ろに回り込んだ。


 すかさずバフォールも剣で防ぎ、レイごと弾き飛ばした。

 ザザザザと、土を削るように体が擦れる。


「次は俺だ!!」


 体制を崩したレイを守るようにビルボートとアルバートが戦闘に加わった。

 レイの体勢が整うとまた交代し、それを何度も繰り返す。


 致命傷は負わせられないものの、時間稼ぎは出来ている。


「気に入らないな。希望などお前たちには不要だ!」


 バフォールからは笑みが消えていた。

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― 新着の感想 ―
[一言] ハーネイス様に取り憑くだけあって(!?)バフォールも手強いですね。レイたちの時間稼ぎがあとどれだけ持つでしょうか? 哀しい真実を知ってしまったサイラス様も、心に深手を負わなければいいのですが…
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