一章・5-1
※'15.11/5 読みやすいように編集しました。
5
次の日の朝。
「おーい、メリ! 起きてるか~?」
俺は、扉をたたきながら俺の名前を呼ぶトカレフの声で目が覚めた。
「メリオダス!」
「はいっ‼」
「なんだ、起きてるじゃないか。ならすぐ返事してくれ……」
そういって、トカレフは俺の部屋に入ってきた。
「トカレフさ……って、なんでかってに入ってきてるんですか⁉そもそもオートロックのはずなのに……」
「おお、言ってなかったな。この基地の部屋はすべてオートロックなのは知ってるよな?」
「ええ、まあ」
「それで、お前はこの部屋に最初に入るときどうやって中に入った?」
「えっと、ドアが閉まってたから……あれ? そういえばなんで鍵かかってなかったんだ?」
「いや、その時は鍵がかかっていたはずだ」
「でも、何もしなくても空きましたよ?」
「ほら、このドアを見てみろ」
そういって、トカレフは自分が入ってきたときから開けっ放しのドアの外側を見せてきた。
「おかしなところがあるとは思はないか?」
「えっ? 特にないと思いますが……」
「よし、じゃあお前がこの扉の鍵を開けるとして、どうやってあける?」
「それは、鍵穴に鍵を……そもそもトカレフさん、鍵もらってませんよ? それに鍵穴もないし……」
「でも、お前鍵のかかった部屋の中に入れたんだよな?」
「そうなりますね……って、え! どういうことですか⁉」
「ようやくおかしなところに気が付いたか……」
☬
「ということで、この基地はすべて自動セキュリティが働いているんだ」
「なるほど!」
鍵が開いた仕組みは全自動セキュリティシステムによるものだった。この基地にはいろいろ秘密が隠されているらしい。そもそも、この基地の存在がまず秘密である。そのため、いたるところで仕掛けがあり、不法侵入を防ごうとしているようだ。カードキーはもちろん、顔認証システムや音声認証システム、他にも体型や性格比較なんてのもあるらしい。
そして、この各個人の部屋のセキュリティには、指紋認証システムが使われているらしい。すごいことに、そのシステムはドアノブに仕込まれていて、一見普通のドアなのだが、ドアノブを触った時に指紋認証が合わないと鍵が開かないシステムらしい。ちなみに、いつおれの指紋をとったのかを聞いてみると、あるものを使うとシステムがリセットでき、その次にドアノブを触った時にとられるらしい。仮に誰もいない部屋のドアノブを触ったとしても、その時はこのシステムが働いていないので開けることができるらしい。
次に、今トカレフが入ってこれた仕組みなのだが、とても面白い仕組みだった。それは、一種の音声認識システムによるものなのだが、ドアをノックしたとき、または、ドアがその部屋に向かって誰かを呼んでいると認識したときに、部屋の中で返事をするとロックが外れるというものだった。このシステムには『何を話したか』を認識するだけのシステムしかなく、『誰が話したか』は関係ないので、部屋の中にいる人ならだれでも開けることができる。もちろん、そのシステムを使わなくても内部からならいつでもドアは開けられるし、ロック解除ボタンを押せば最初に開けるまで、または押してから一分間の間ロックがかかっていない状態になる。このシステムは、実は集会室にも使われていたらしい。そういえば、俺はまだ自分であの扉をあけてはいなかった。すべての指紋認証システムは各部屋とつながっており、部屋で指紋の登録が行われるとその部屋の持ち主の情報にこの指紋が登録されるらしい。
(にしても、有名なゲームのトップなんだから秘密はあるだろうけど、些かやりすぎなんじゃ……)
無論、こんなことは口にしない。
「それでトカレフさん、何の用ですか?」
「まだ言ってなかったな……」
そういって、トカレフはポケットに手を突っ込み、何やら小さな紙切れを取り出した。
「これだ、【朝食の食券】」
「食券?」
「ああ、《美空》の食券だ。これを食堂にもっていけば朝食を無料で食べれる」
「そういうところはデジタルじゃないんですね」
「一応《美空》は外部と通じているからな。情報漏れが起きないようにするためだ」
「(やっぱり、やりすぎだって……)」
「なんか言ったか?」
「い、いえ、何も。それで、これを上の《美空》に持っていけばいいんですね」
「いや、持っていくのは食堂に、だ。その券を上の居酒屋に持っていったって何もないぞ」
「食堂、ですか……」
俺はすぐさま昨日もらった【電子マップ】で調べようとする。が、ポケットに入っていると思われたそれは、実際には入っていなかった。
「おお、すまない。昨日落ちていたのを拾ったまま返してなかったな」
そういって、トカレフは先ほどと違うポケットから【電子マップ】を取り出した。
(なんだこのやけに収納の多い服は⁉)
「これ、お前のだろ?」
「はい、そうです」
色と配置と、そして目的地が《部事務》になっていることから俺のものであることが分かった。
「昨日おまえが倒れたところに落ちていたんだ。返すのが遅くなってすまない」
「拾ってもらったのに謝られることはないです。拾ってくれてありがとうございました」
そういいながらも、俺は差し出された【電子マップ】をとり、すぐに食堂の場所を調べた。
「ずいぶん慣れたもんだな」
「いえ、俺が前に使っていた端末と操作が似ていたもんですから」
「なるほどな」
そういっている間に検索結果が出た。三件もあったが、それは各部隊にひとつづつある、ということだろう。そういえば、今は何時なのだろうか。この部屋には時計がないからわからない。それで【電子マップ】の右上の時計を見てみると……。
「えっ⁉ もう八時なんですか‼」
時刻は『08:07』と表記されていた。
「まだ真っ暗じゃないですか!」
「当たり前だここは地下なんだからな」
「あっ、なんか……すいません」
「なんだメリ、まだおかしいのか? 突然謝るなんて」
「もう治りました、大丈夫です。今のはなんだか無性に失礼なことを言った気持になって……」
「失礼でないことではないが」
「! すいませんでした‼」
「だからなぜ謝る。そっちのほうが失礼だ」
「そう、ですか……」
落ち着いて考えてみればそうだった。何もほんとのことを言わなくても「なんでもないです」だけ言えばよかったものだ。
「それで、俺はもう朝食は済ませてある。食堂は夜まで閉まることはないし、その食券も期限があるわけじゃないから急がなくてもいいがお前は昨日の夜何も口にしていない、さすがにおなかがすくだろう。俺は用があるからお前の食堂場でついていくことはできないが別に問題はないよな」
「はい」
「なら俺は行くぞ。俺だって日までここへ来たんじゃないんだ」
そういって、トカレフは部屋を出ていった。
「さて、俺も準備するか」
と言っても着替えるわけではない、荷物もいらない。だから準備なんて必要ない。
「……行くか」
そういって、俺は部屋を後にするのだった。
今日から何かしら毎日投稿しようと思います。
OFは、このまま三日ごとに更新します。
※ P.S.結局これは一週間しか続きませんでした