一章・3-1
※'15.09/03に一部編集しました。
※'15.11/4 読みやすいように編集しました。
3
第一回部隊集会はトカレフの司会によって行われた。
OFの概要や派遣元の軍のこと、他にも編成や力の配分、そして話は武器に関することになり、まずは公にされている資料の【サーバーオープン時の使用可能武器、武装一覧】と【初期装備の選択肢】などを見て、次にどの装備を使用するかを決めることになった。
俺は、勧められた[ライオットシールド]を主防具とした。だが、銃の扱いどころか銃に関することをほとんど知らなかった俺は、どの武器を使えばいいかわからなかった。
そしたら、隣に来たシュリンプさんが、
「短剣とかってどう?」
と、武器一覧の一部を指で指しながら俺に勧めてきた。
でも戸惑った。だって、今選んでいる武器を使うのはガンゲー、銃のゲームの世界である。武器が銃でなくてもいいのだろうか。確かに、俺は超至近距離型だから利に適っているのかもしれないが、どうしても違和感を覚える。
「何か言った?」
いつの間にか思ったことをそのまま口に出していたみたいだ、聞こえてはいないようだが。
「いえ、銃のゲームで武器が銃じゃなくてもいいのかな~、と思いまして」
「あ~。まあ、普通はそう思うわよね。でも、使ってみると案外便利なんだから」
「使ったことあるんですか?」
「「使った」‥‥ってより「持たせた」が正解かな。ほら、「使った」だとまるで私が実際に使ったようじゃない?」
「確かに、そうですね。でもまるで自分が使ったかのように話していたので‥‥」
「‥‥‥」
「まあ、勘違いですよね」
「そうよ。勝手に私を怖い人にしないでよねっ」
「なんか‥‥すいません」
「別に謝る必要なんてないわよ。それより私が「持たせた」結果なんだけど、まさかの奇襲攻撃をされてね、それで仲間だった銃を装備していた人はすぐやられちゃった。けど私は、さすがにすべて倒すまではいかなかったけど、ほとんど無傷で脱出、逃げることができたの。ソロで‥‥‥一人でやる分には違うけど、仲間がいて、それに君は超至近距離型なんだから、ぴったりだと思うわよ」
「そんなんですか?」
「それだけではないぞ。短剣は、銃とは違ういいところがたくさんあるんだ」
そういって、突然話に入ってきたトカレフが説明を始めた。
「短剣は、銃と違って遠距離攻撃などができないから火力が少ない。これだけでは悪いように聞こえると思うが、ここからはほとんどいいことだ。まず、軽いから『携帯性』に優れているということ。また、サイズが比較的小さいから、将来銃などほかの武器を主武器にすることになっても、護身用の忍び刀として持っていることができる。そして…………」
トカレフが長々と語り始めてしまったが、ようは2つの内容を伝えたかったらしい。
1つめは、『スキル』や、『熟練度』の話。
短剣には、銃と違ってこの二つがあるらしい。銃にも熟練度はあるが、それは『慣れ』というものの数値が上がり『正確さ』や『機動性』などの数値を底上げする機能で、数値的に火力が上がるわけではない。
ところが、剣や短剣、他にも鉈や槍などの武器にある『スキル』は、『熟練度』の上昇にともなって火力が上がる。これは、『アシスト機能』が付くからである。ここで言う『アシスト機能』とは、武器を動かすときの速さや攻撃するときに武器にかける力などに補正をかけてくれるもの。そのため、数値的に火力が上がることになる。
また、このような武器スキルはその武器を手にするだけで取得できるため苦労せずに『スキル』を手にいれることができる。
すぐに強くなることはないが、将来を考えると銃系の武器が使えない自分にとって相性がいいとのことだった。
2つ目は『直接攻撃系武器』の利点についてだった。
弓や投擲など飛び道具を使った攻撃、また銃による攻撃は弾数などが決まっているため、永遠と攻撃できるわけではない。長期戦になって弾切れを起こせば致命的である。 他にも、武器自体のメンテナンス費にプラスして弾や矢などのコストがかかり維持費が高くなる。 それを使用することで利益があるなら別だが、慣れていない人がむやみに使い、それを無駄にしてはもったいない。『直接攻撃系武器』ならメンテナンス費のみで維持できるし、仮に長期戦になっても、攻撃手段がなくなることがなく安全、とのことだった。
この説明を受けた俺は混乱したが、すぐに落ち着きを取り戻し霧野に相談してみることにした。そのとき霧野は同じスナイパーであるディオと、少し離れたところで話していた。そこに向かって歩いていると、ディオが気づき手招きしてくる。そして、突然言われたのだった。
「メリオダス、こいつと『コンビ』組んでみる気はないか?」
「‥‥えっ?」
「ディオ、説明!」
「あぁ……、タカシとルーピンが『コンビ』を組んでいるのは知っているな?」
「いえ‥‥。そもそも『コンビ』って何ですか?」
「そうか、では『コンビ』から説明しようか」
そういうと、ディオはトカレフと違って端的に説明してきた。
「OFは、個人ではなく大勢でやることを主としたゲームだ。ただ、部隊に入ることを拒むプレイヤーだっている。コンビは、そいつらが使う作戦のことだ。コンビを組むからと言って特別な機能があるわけではないが、より効率よく敵を倒すことができるから部隊を組んでいる奴でもよく使われる作戦だ。コンビの組み合わせは、同じ型同士で連携して素早く敵を倒す組み合わせであったり、近距離・至近距離型と中距離・遠距離型が連携して囮作戦をして資源を無駄にしない攻撃をする組み合わせであったりと様々だ。コンビについてはこんなもんでいいか?」
「え……あ、はい」
「それで、俺が勧めてんのはお前ら二人がコンビを組まないかってことだ」
「さっきディオが言ったように、実際タカシとルーピンは近・中距離のコンビを組んでいるらしい」
「あの二人が……」
「こいつに説明したら結構乗り気だったんだがお前はどうだ、組んでみないか?」
「えっと‥‥」
悩むところだ。なんだかんだ言って俺は霧野と仲が良く、それに幼馴染みである。連携はとれるだろうが‥‥‥それでも霧野の足を引っ張りそうだし、まだほとんど知らないのにこんなことを決めていいのだろうか。
(そもそも、俺は武器の相談をしに来たはずなのに何でこんな話に‥‥)
そうだった。俺は武器の話をしに来たんだった。まずはそっちを決めてからにしてもらおう。
「あの、その前に‥‥‥」
「おっ、トカレフ。ちょっといいか?」
(決めることはできなさそうだ)
「なんだ?」
「こいつら二人がコンビを組むのはどうかって話なんだが、お前はどう思う?」
「なに勝手に話進めてるんだ。お前には何も権限ないだろ。CapREXに言わないにしても副隊長である俺に相談なしで勝手に決めないでほしいな」
(決めないでほしい‥‥?)
「だから今話そうと……」
「それは本人たちに話す前にしてくれ。まあ、今回は許してやろう。俺も思っていたことだからな」
「なら話が早い。で、どうすんだメリオダス?」
ディオが言う。
「もちろん、組むよな?」
これは霧野が。
「あ‥‥はい‥‥‥」
「よし、じゃあこれで全員のポジションが決まったから、俺はCapREXに報告してくる」
「俺も、決まって安心した。トカレフ、今日はもう戻ってもいいか?」
「いや、今日はまだ用がある。ただもう少し時間がかかるだろうから部屋になら戻ってもいいぞ、連絡する。じゃ、俺はもう行くぞ」
そういって、トカレフは部屋を出ていった。
「ってことで、俺は部屋で休んでる。お前らはまだいろいろあるだろうが頑張れ」
「ああ、わかった」
続いてディオも部屋を出ていく。
「俺も……」
「霧野は行かないで!」
「なんでだ?」
なんてこの人たちはこう自分勝手なのだろうか。トカレフさんは人の会話に入ってきて、人の話を聞かずに長々と話すとどこか行ってしまい、ディオさんは事を自分で進めてさっさと終わらすとすぐに休んでしまい、霧野はこの部隊の募集の話を聞いたときと同じように勝手に俺のことを決めてしまう。まあ、この部隊に入ったのは半ば強制的だったが結果的によかったと思っている。
そんなことより、今は何とか自分の武器の相談をしようと必死だった。
「もともと俺は、武器について相談しようと思って霧野たちのところへ来たのに、その話を何もしないでいなくなられちゃ困るよ!」
「あ、だからお前からこっちに来たのか。まさかディオとの会話が聞こえてたのかと思って驚いたぜ」
「そんなわけないじゃん‼」
「それで、武器の相談ってなんのことだ?俺はもう決まってるぞ」
「霧野のじゃなくて俺の武器!」
「そういえばお前、まだ決まってなかったな」
「そうだよ‥‥。さっきシュリンプさんに短剣を勧められて、それで霧野に相談しに来たら違う話になって……」
「なるほどな。短剣、か‥‥。いいんじゃねえのか?お前は超至近距離型なんだし、それに俺とコンビを組むことになったんだから、銃じゃなくても距離の心配はいらなくなったわけだし。ま、ずっと短剣ってわけにはいかないだろうがな」
「それも言われた。ただ、短剣なら将来銃になっても忍び刀として所持できるから無駄にはならないって」
「それがわかってんならもう短剣で決めちゃっていいんじゃないか?別に最初だしそこまで悩むことでもないだろ」
「そうだね、わかった。トカレフさんに言いに行ってくる」
「さっきはトカレフのこと悪いように思っていたみたいだったが、結局頼るんだな」
「えっ、なんのこと?」
「なんでもねえ。ほら、もうみんな武器決まってあとはお前だけなんだから、さっさと行ってこい」
「うん!」
そういって俺は目の前の扉を開け、集会室から外に出た。まではよかったのだが、はて、一体トカレフさんはどこにいるのだろうか。CapREXに報告しにいくと言って出ていったからCapREXの部屋かなんかなのだろうけど、それがどこなのかが分からない。
「こんなところで何してるんだ?」
声をかけられたのは、ちょうど集会室に戻ろうとした時だった。
「あっ、トカレフさん。ナイスタイミングです」
「妙にテンション高くないか?」
「そうですか?それより、霧野にも相談して武器は短剣に決めました」
「そうか。で、何を使うんだ?」
「えっ? ですから、短剣って‥‥」
「短剣を使うのは分かったから。そうじゃなくて、何を使うんだ?」
「何を、と言いますと?」
「はぁ。だから、お前はどの短剣を使うのかって聞いてんだ」
「ですから、短剣を……って、「どの」ってどういうことですか?」
「お前、もしかして短剣に種類あることわかってないだろ」
「短剣に種類?」
「やっぱり、な。いいか、一口に短剣って言ったって数種類ではない。ましてや一つしかないはずがない。《OF》はリアリティの限界を目指している。だから短剣といったって〔包丁〕のような身近な刃物から昔軍の使っていた短剣のような普段一般人が触ること何てできないようなものまで、かなりの種類がある」
「そうなんで……ってことは、もしかしてどの短剣にするかを決めなきゃいけないんですか?」
「俺は最初っからそのことを聞いている」
「えっと……、どうすればいいんですか?」
「まったく、困ったやつだな。ただ、初期装備で短剣といったら〔ジャックナイフ〕が一番だと思うぞ」
「〔ジャックナイフ〕ですか‥‥」
「〔ジャックナイフ〕は、サバイバルナイフ型武器の一つだ。他にも、〔包丁・短〕とかもあるが、属性が付いていたり、他のスキルも同時に上がるためそのスキルを上げるには効率が悪かったりするからあまり初心者が使う武器としてふさわしくない。慣れてきたら変えてもいいがな」
「なるほど‥‥」
「それと、〔ジャックナイフ〕の一番の利点は、刃部を折りたたむことができるところだ。そのため、副装として携帯する短剣としても人気がある。ほかの短剣や武器に変えても使い続けることができるから一番無駄にならない武器、と言ってもいいだろう」
「わかりました。それにします」
俺の武器が決まったということは全員の武装が決まったということ。トカレフは全員から武装を何にするかを聞いた後らしく、もう一度席に着くようにと集会室にいるメンバーに声をかけた。次に、ディオに声をかけに行くといって、部屋の外、ではなく奥へといった。何か話した後、「それでは、CapREXを呼んでくる」とだけ言い残し、トカレフは部屋を後にした。
少しすると、ディオが部屋に入ってきた。
そして、それからまた少し経った後、トカレフさんがCapREXを連れて戻ってきた。