幕間 チュートリアル編6 タカシ&ルーピン 懐かしき思いで3 ―試験の結果-
タカシ&ルーピン幕間ラスト!
長めです。
現在一章の編集をしています。
誤字脱字はもちろん、少し内容を増やしたり言い回しを変えたりしています。
今のところ必要な内容としては、
・ゲーム人口を全世界「一千万人」から「3000万人」増やしたこと
・「30サーバー」から「13の国」に変えたこと
の2つだけですが、まだあまり進んでいないので、他にもあるかもしれません。
その時は、今回のように報告したいと思います。
(編集したものを順次改稿していきます)
改稿したものも、報告していこうと思います。
※'16,1/7 序章を改稿しました
幕間 チュートリアル編 ㈥
タカシ&ルーピン 懐かしき思い出 三
――試験の結末――
ぽーん。
『最終試験を開始します』
練習は難なく終わり、ついにこのときがやってきた。
一番恐れ、でも楽しみであった試験。
それがもう少しで、はじまるのだ。
「なんだ?」
だが、その前に異変は起こった。
まるで雪雲のような、水分をたっぷり含んで黒くなった雲が、辺りの地平の先から立ち込めてきた。
「雨だ……」
ぽつり、ぽつりと降り始めた雨は、やがて五月雨になった。
さーっと、梅雨に降りそうな雨だ。
まだ空は明るかったはずなのに、黒い雲が光を遮り、うっすらとしか光がない。
ぽーん。
『最終試験:敵を倒せ』
またそれか!
タカシは思わず突っ込んでしまったが、それは声には出なかった。
なぜだか、心苦しい気持ちになったからだ。
それは怖さではなく、ただただ寂しい、悲しい感じになる雰囲気なのだ。
ズンッと、突然地面が揺れた。
そのあとも、ズンッ、ズンッと、きっと足音であろう音は続く。
「タカシくん、あれ……」
ルーピンがあるものに気付いて、指を指している。
その先には――――
「なっ、[愁える憐みの巨人]だと⁉」
タカシはその敵を見覚え合った。
あれは確か、パソコンゲームの時のあるクエストに出てきたボスだったと思う。
そう。クエスト{軍事研究所の産物}の中ボスだ。
[愁える憐みの巨人]は、タイタン族の巨人で、他にもいろいろ存在する。
きっと、あの巨人もその一体なのだろう。
「知ってるの? タカシくん」
「ああ。はじめはほとんど動かないくせに、途中から突然暴れ出して、油断したプレイヤーが次々に殺されていったことで有名な敵だ」
「そんな……」
「まあそれはあくまで同じタイタン族の一体にすぎないから、必ずしもそうとは限らないけど……」
そう。あの敵は絶対にあのクエストでしか出てこない。だからあの名前で、あの性格で、あの攻撃方法なのだ。
他の場所で出てきたら、色々と問題が発生してしまう。
何よりサイズが違う。
[愁える憐みの巨人]に比べると、あの敵は一回りか二回りか身長が低い。
それだけ、他のステータスも低ければいいが……。
「それよりこの雨、大丈夫?」
「何言ってんだ? 俺の〔AK-47〕はどんな悪環境でも壊れないって有名な銃だし、お前の〔AK-74〕だってこの程度の雨じゃ攻撃力に問題ないだろ?」
「そう言うことではないのですが……」
いつの間にか、ルーピンの口調が戻っている。
今のは本当に、そう言うことを言っていたのではなかったのだろう。
「それで、どう思う?」
「そうですね。タカシくんがそういうのならタイタン族というのはあっているのでしょうが……」
「まあ、やるしかないわな。チュートリアルだし、そこまで強くはねえだろ」
「それもそうですよね」
そう。いくらボスとはいえチュートリアル。そこまで強ければゲームバランスを壊しかねない。さすがに《OF》と言えど、そこまでしたら苦情が来るだろう。
それですら楽しんでしまうおかしなプレイヤーたちはいっぱいいることもまた事実だが。
「では、いつも通り指示はお任せします」
「よし。突撃用意!」
「はいっ!」
二人とも、マガジンを抜き捨てる。
本来なら絶対そんなことはしないが、今はチュートリアル。
マガジンは無限にあって、ここで出し惜しみをしてもあとでそれが残るわけではない。
こんなところで無駄に時間を使っているわけにはいかないから、練習にならないような条件でも、『楽しめばいい』との考えで試験に臨むことにした。
そして、この考えはあまりに楽観しすぎていたことを、この後二人は我が身を持って知ることになる。
☬
巨人は暴れる。その腕を振り上げたかと思うと、すぐにそれは落ちてくる。まるで虫でも払うかのように。脚の動きは止めず、その部分だけ見ればまるでダンスのステップでも踏んでいるかのように、動かし続けている。
その足元を、ちょこまかと動く二人のプレイヤー。
その様子は、まるで鼠。
その攻撃が噛み付くことでも引っ掻くことでもなく、銃を撃つということがせめてもの差といえよう。
「こんなの倒せるのかよ!」
鼠の一匹が何かを喚くが、巨人にそんなことはお構い無し。
早く煩わしいものを駆逐せまいと、ただ暴れまわっている。
巨人は、己が汚れることを気にしない。
巨人は、己が傷つくことを恐れない。
すでに汚されたその身体に対し、守ということを思わない。 ただその身体を壊した、敵なる自分以外すべての生き物に対し復讐と報復を、破壊の限りを尽くそうとしていた。
言葉として聞き取れないほどの咆哮を上げる。
それを聞いて、また鼠がたじろぎ始めた。
巨人はそれを気にする様子もなく、また暴れ始める。
「なんだよこいつ、強すぎるだろ! こんなの新人ができるわけねえ!」
「仕方ないよ。僕たちのレベルのせいで、新人扱いじゃなくなっているんだ」
「だとしてもこれは納得いかねえ!」
モンスターの個有名は[タイタン]。つまり、もっともシンプルな、タイタン族の大本と言っていいだろう。
そして恐ろしいのが、その圧倒的な体力と防御力。
新人用補助を持った古参者への壁として、二重の意味でその巨人は立ち上がっていた。
「ったく、こいつの体のせいで銃剣は全く役に立たねえし、遠距離の攻撃は吸収されちまう!」
ぬかるんだ地面と言えばいいだろうか。
そのやけにやわらかい体は、苔の生えた土のゴーレムのような見た目をしていた。
普通にみれば、気持ち悪いと思えるその体。
だが、この場面でおいて絶対の防御力を誇るすごい体になる。
「救いなのは、動きが遅いことだよな……」
体のせいで、近距離の、敵の攻撃が届く範囲から攻撃をしなければいけない。
もちろん、その場所にいて敵が攻撃してこないはずがない。
巨人は腕を振るい、脚を回し、攻撃を仕掛けてくる。
その動きはさすが巨人と言えるだけ遅く、予備動作を見てからでも十分よけることができるほどである。
だからって、油断はできない。
その予備動作さえ見逃してしまえば、ひとたびかなりの攻撃力があるであろう腕や足が襲い掛かってくる。
そのおかげで、ただただ撃ち続けるだけで敵の体力ゲージは減っていく。
「敵の動きが変わるまで、このまま攻撃!」
「了解!」
とりあえず今は、このまま攻撃を続けることにした。
「敵変化、発見!」
敵に近づいていたルーピンから、そういう報告を受ける。
敵の姿を凝視すると、その変化は見えた。
あの攻撃を受け止めていた土の体が、次々に剥がれ落ちていく。
「一時退避、離れろ!」
それを聞き取ったルーピンは、返事をする時間すらも惜しんで逃げていく。
それは明らかな変化。
敵の行動パターンが変わるであろう明確な兆しだった。
現在敵体力ゲージは1/4を切ったところ。
パターンが変わるとしたら、十分あり得るタイミングだ。
「モンスター名に変化あり!」
「何っ!?」
ルーピンに言われてウインドウを見ると、確かに変わっていた。
「[増幅された憎みの化身]?」
ウインドウにあった名前を見る。
そして、そのモンスターも、変化を終えた。
「巨大ロボットだぁ!?」
現れたのは、巨大な金属の塊、否、生物。
「違います。多分、フルプレートアーマーです」
「だとしても、また半端じゃない敵が出て来たな」
「そうですね」
フルプレートアーマー。
つまり、守りの隙がどこにもない防具。
しいて言えば、視界を確保するために目の場所が透明になっていて、そこが少し弱いと言うだけ。
種別が『巨人類』になっている以上、これが機械ではなく生物扱いなのは確か。
少し希望が見えてきた。
もちろん、防具なのだから耐久値はある。だが、こんなものの耐久値をゼロにすると言えば、まず不可能だろう。もしかすると、自動回復するかもしれないのだし。
とはいえ、これはいったいどれだけの金属を使っているのだろうか。
優に装甲車を二、三台は作れそうだ。
ではそのものすごく重い金属を身にまとっているこの巨人(化身?)の筋力値は、きっと、通常のものより一ケタ、いや、二ケタ上かもしれない。中の敵だけが出てきて、対抗しようと出てきた戦車が持ち上げられ、壊されていくのを想像すると、ぞっとする。
「タカシくん! 何か出てきます!」
そう一人で想像して震えているタカシを、ルーピンの叫びが現実に引き戻した。
ぶらりと下ろす巨人の右腕の下方に、無数の光り輝くポリゴンが集まってきている。
それは上下に伸びる棒のように集まり……表面がでこぼこしたバットのようなものが出来上がった。
この世界では〔棍〕か〔ハンマー〕の部類に入るであろうそれは、俗にいう『金棒』だった。実際、武器名にしっかり〔金棒〕と書かれている。
巨人はそれをしっかりつかむと、まるでその強度を試すかのように、思いっきり地面に撃ちつけた。
雨にぬれ少しぬかるんでいる地面に、突如として地震――否、揺れが発生した。
ただでさえ強い巨人が、その力をもって振り下ろしても壊れないほどの武器を手に入れた。『鬼に金棒』とは、まさにこのことを言うのだろう。
「ルーピン! 一度距離をとって策せ――――」
「その必要はありません」
巨人の様子に慌てたタカシは、しかし、その言葉はルーピンの発した声に物理的ではない力で消されてしまった。
何を思ったのか、先ほどまでタカシの隣にいたルーピンは一気に巨人との距離を詰めていった。行く先の巨人は、それを見てかどうかは分からないが、攻撃をしようと腕を振り上げている。
レベルの高いルーピンと言えど、さすがにあの攻撃を受けて無事でいられるはずがない。
それなのに、ルーピンはそれに気づいているのかいないのか、逃げるどころかそこで止まって銃を構えている。
「逃げ――――っ⁉」
相棒が攻撃を受けそうになって、黙っているタカシではない。
だがその叫びもまた、物理的ではない力――驚きで止めてしまった。
一つの発砲が聞こえたかと思えば、全身に電気を流したかのように、巨人の体が震えたのである。思いっきり振り上げられた右腕は、力なくゆっくり下ろされていく。
体力ゲージを見ると、多くはないが、でも確実に減っていた。
攻撃が通ったのだ。
「タカシくーん!」
驚きで体が固まっていたタカシ。それがルーピンの声で我を取り戻した様で、すぐに声の方向へと走って行った。
タカシを見てかは分からないが、また巨人は腕を振り上げる。
そして腕の動きが止まったと同時に銃声が鳴る。
降りしきる雨の中、ルーピンの構える〔AK-74〕の銃口から煙が出ていた。
巨人はと言うと、先ほど同様体を震わせると腕を下ろした。
「ようやく本領発揮か?」
気を緩めると、タカシから声がかけられた。
ルーピンは真剣そのものだった顔をほころばせ、明るい笑顔で振り向く。
「さすがタカシくん! 分かったんですね!」
「当たり前だ。でもそれにしては口調は変わらないな?」
「気持ちはまだうまく切り替わっていませんから……」
うつむくルーピン。
それを見て肩に手を置こうとしたタカシは、その前に巨人がまた腕を振り上げていることに気付く。
タカシは気持ちを入れ替え、すぐさま銃を構えた。
その様子に気付いたルーピンは顔を上げる。
「要は、こう言うことだろっ?」
タカシが引き金を引いた。
〔AK-47〕から放たれた弾丸は、胴を撃つには高すぎる方向に飛んでいき、顔に――――ではなくそのすぐ横に来ていた肘のわずかに開いた隙間に、吸い込まれるようにして入って行った。
直後、巨人が三度目の痙攣をし、腕を下ろす。
「そこまでわかっていたなんて、やっぱりタカシくんはすごいです!」
「それを言えば、この場所を見つけ出したお前の方がすごいだろ?」
「僕の場合は、ただスキルが教えてくれただけですので」
「 ⁅隙察知⁆ だろ? ありゃモンスター相手じゃ反則だろ……」
特殊スキル、 ⁅隙察知⁆ 。
その名の通り相手の隙を教えてくれるこのスキルは、今現在ルーピンの持つ唯一の特殊スキルだ。
パソコンゲーム時代初めて手に入れた特殊スキルであり、特殊スキルはひとつしか所有できなかった当時、その後も何度か替えられるタイミングはあったが自分が突撃型であるのともう一つの理由からこのままにしている。
メリオダスの持つ ⁅弱点特定⁆ と被るような効果だが、攻撃を当てなければ分からない ⁅弱点特定⁆ に比べ、隙があれば教えてくれる ⁅隙察知⁆ の方が効果が出るのは早いと言える。
ただその隙が必ずしも弱点と言うわけではなく、あくまで隙なだけで『実はその場所の防御力が一番高いから気を抜いていただけ』と言うこともたまにある。ちなみにこの巨人の弱点は顔の目付近であり、視野を確保するための透明な部分はすぐに壊れ、そのあと対物ライフルを一度その場所に撃つだけで倒すことができる。もっとも、そんな場所を攻撃できないメリオダスでは ⁅弱点特定⁆ のスキル効果が出ることはないが。
また、隊プレイヤー戦においてはその効果を逆に使われてしまうこともあるのだ。タカシが『モンスター相手じゃ』と言ったのはそう言った理由からだ。
この二つのどちらが使い易いかと言うのは、そのプレイヤー次第なのである。
もっとも、ルーピンがこのスキルを ⁅弱点特定⁆ に替えられるタイミングはまだ訪れていないので、ルーピンがどちらを使い易いというかは分からない。でもきっと、『突撃型だから』ではないもう一つの理由から、もしそれが可能でも替えることはないと思われる。
その理由と言うのは、ルーピンの胸の奥にしまってある秘密のことである。
「それならタカシくんの――――」
「悪いルーピン。話は一旦これで終わりだ」
何やら真剣そうに巨人を見つめるタカシ。
その目には、ポリゴンが集まってできた、も(・)う(・)一つ(・)の(・)金棒が映っていた。
金棒の二刀流、いや、二棒流。
そんな言葉は聞いたこともないが、でも実際目の前の巨人がそれを成そうとしているのだ。
「……」
「……」
一瞬だが、アイコンタクトで会話した2人。
VRだからこそできるその行動で交わされたのは、『向こうへ行く』『了解』の一度だけ。
それもでも十分に伝わっていた。
あんな重そうなものを一体どうやって……と言いたくなるように、巨人が両腕を振り上げる。
その隙を逃さないと言うように、巨人を挟んで両端で構えた二人が発砲する。
今度はただ攻撃を止めるのではなくこちらから攻撃してやると、いつの間にか替えられたセレクターはフルオートを指していた。
近距離から断続的に放たれた弾丸は、そのほぼすべてがわずかにできた隙間に入っていく。
わずかな隙間と言ったって、それは巨人に対してであり、普通の人間にしてみれば子供と変わらないほど大きなものだ。同距離でそのサイズの敵を連射を使わず撃てる二人にとっては、何の障害にもならなかった。
その後は言うがまでもなく、一方的な攻撃がなされた。
時々巨人がその攻撃に抗おうと腕を振るうが、もとから素早さを高めた二人にその攻撃が届くはずもなく、唯一体力の回復スピードが速いという点で苦しみかけたが、そこは量にものを言わせ、すぐに倒してしまった。
ぽーん。
『最終試験終了。試験は 合格です』
パンッ、と雨が降っているにもかかわらず乾いた音が鳴った。
それは、二人の手によって生まれた音である。
ぽーん。
『部隊チュートリアルに移動します』
音の生みの親である二人は、体を光に包まれて、次なる場所へと移動した。
なんかもうごちゃごちゃ……
幕間チュートリアル編は次回で終了
次回予告
幕間 チュートリアル編7 ロッテル、チュートリアルを罵倒する
いつも編集を頼んでいる人に書いてもらったのに加筆修正したものです。
(三日後、2016,1/12 7:00予定)
お楽しみに。




