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operation flags  作者: k.はる
二章 -開始(Start)-
47/52

幕間 チュートリアル編 5 タカシ&ルーピン 懐かしき思い出 2  ――始まるテスト――

ついに一時間3600字ペース。


腕が痛い。

 幕間 チュートリアル編 ㈤

   タカシ&ルーピン 懐かしき思い出 二

          ――始まるテスト――

「大丈夫か? 少年!」

 俺はそう言って、今まで銃を向けられていた一人若いのプレイヤーに近寄る。パソコンゲームだから実際の年齢などわかるはずもないが、自分の中で勝手にそう決めつけて声をかけた。

『…………』

 そのプレイヤーは、動くことは無かった。

 何かしらの反応はしているのだろうが、それを画面の中のキャラクターを動かして表現はしていない。

「うっ」

 海の方を見て、また新手がこちらに向かっていることに気付く。

「しゃあねえな」

 持っている自動小銃、〔AK-47〕のマガジンを抜き取り、ポケットに入れる。今は緊急時だからとはいえ、まだ半分以上弾が残っているマガジンを捨てるわけにはいかないし、たとえ空でも入れ物さえあれば割引してもらえる。長年やっているが課金はしていない、タカシなりの知恵である。

 俺らに向かう敵は軽く二ケタいる。

 対して、こちらは俺のみ攻撃ができる状況。

 少年は怯えて使い物にならないが、そもそも銃が破壊されているようだった。

 ポケットから新しいマガジンを取り出すと、すぐに銃につける。

そして、そのまま敵に向かって突っ込んでいく。〔AK-47〕は突撃銃。その名の通り、突撃するための銃と言うわけだ。

 敵のくせに、俺の行動を見て驚いていた。

 だがさすがは兵士と言ったところだろうか。すぐに隊列を組んで撃ち方用意の体勢に入る。見たところ、軽機関銃が三に小銃が二、先頭に刀使いが四と補給が一と言ったところだろう。

 火器担当が準備をする間、刀使いたちが突撃をしてきた。

 それでは同士討ちが起こるだろうと、敵にツッコミを入れながらも対応する。

 相手の囲む作戦にあえて乗り、避けて同士討ちを起こす。もちろん、そこまでうまくいくはずがないので、素早くスキルを使う。

 使うスキルは ⁅銃剣⁆ スキル。

 『柔剣道』と言うものが存在するように、この世界にも ⁅銃剣⁆のスキルがある。

 先端につけた〔6kh2 銃剣〕で、相手を刺していく。

 このイベントでは、刀使いは雑魚中の雑魚。この程度は数回の攻撃で倒すことができる。

 敵の銃の様子を見ながら、頃合を見計らって相手から刀を奪い取る。この剣はこのまま使うことも、戦利品として持ち帰り売ることもできる。銃でも同じことが可能だが、これらは敵が持っているときに比べてスペックが落ちたり、機能がなくなったりする。ただ、こうやって手に入れる武器の中にはレアものも多いのもまた事実。

 今手に入れられたのは売ってもはした金にしかならないような(それでもマガジンなら買えるし、金属としても使うことができる)ものであるが、今使うならば問題はない。

 この後のことを考えると、今はできるだけ弾を消費しない方がいいのだ。

 その刀をとると同時に、〔AK-47〕を砂地に置く。

 戦場で持っている武器を置くなど自殺行為、または降参の行動だが、今はそのどちらでもない。近距離に限り、銃と剣の力の差は逆転することがある。

 刀を両手に持ち、 ⁅剣道・二刀流⁆ スキルを使う。

 これは、アニメなどでありそうな両手攻撃用ではない。聞き手の反対の手で持った剣を盾として使い、相手の攻撃を受けるために持つのである。現実世界同様、かなり筋力を使うが、かっこよさにあこがれてつい習得してしまったのだ。スキル使用中はそのスキルレベルによってステータスも変わる。スキルを使っていないとき、筋力スキルは双方の剣に狙いをつけて振ることができるくらいで、攻撃を受けることはできないが、スキルレベルを半分まで上げている今はその限りではない。

 もともと高い速さ数値を生かし、突撃を仕掛ける。

 相手も撃ってくるが、ほとんど当たらず、ほんの数発掠った程度だ。

 そしてゼロ距離までもってきたらもうこっちのもの。

 素早く手前の軽機関銃使い――マシンガナーを斬り倒す。

 突撃を仕掛けてくる小銃使いを受け流し、俺の後方にいた二体目のマシンガナーにぶつけ、その後ろから左手の刀で串刺しにし、そのまま手を離す。

 三体目のマシンガナーが撃ってこようとしているのに気付き、素早く四体目のマシンガナーを盾にしてそれを防ぐ。

 小銃使いが落した銃剣対付き小銃を持ち、補給へと投げつける。

 三体目のマシンガナーが弾切れを起こしている隙に距離を詰め、刀を突きさす。

 持っていた機関銃を、生き残っていた二体目のマシンガナーに鈍器として殴りつけ、なきものにする。

 気付くと、周りの敵を壊滅させていた。

 だが、同じような小隊があたりに二つ三つある。

 まだ油断はできない。

 落ちていた二つの小銃を持ち、四本の刀をストレージにしまう。

 戦闘中のストレージの出し入れはできないが、少し余裕のある時は別だ。

 この後取り出すことはできないかもしれないが、その時はお金に変えればいい。

 最後に自分の〔AK-47〕を拾って、気を取り戻していた少年のもとにもどる。

「大丈夫か?」

『えっ……あ、はい! ありがとうございます』

 画面の中、否、ネット回線を通じて元気な声が聞こえてきた。

 その声からするに、本当に少年で合っていたようだ。

「戦えるか?」

 この流れで言葉だけ聴けば、あまりに冷たすぎる質問だが、現状、そうはいっていられない状態なのだ。ゲームとはいっても、自分が殺らないと殺られるような、いや、殺っても殺られるかもしれないようなひどい状態だ。

 少しでも戦力が欲しい今、仕方ないことだ。

『でも、武器が……』

 少年の言うことも分かる。

 だから俺は、さっき拾った〔AK-74〕と、そのマガジンを手渡しながら、

「これを使え」

 と言った。

 戦闘が終了していない今、武器の所有権は一切なくなっている。普段ならもっと面倒くさい手順を踏まなければいけないが、このときばかりはその限りではない。

『いいんですか?』

「気にするな。これも、敵から奪ってきたものだ」

 なんとなく、自分が悪いことをしているような感じもしたが、気にしないことにした。

「少年が戦うのなら、何も問題はない」

『僕はルーピンです』

「自己紹介はまたあとでな。今はそんな余裕はない」

 そもそも名前などウインドウで出てくるのだから教え合う必要なんてないのに。

 新人の可能性も考えたが、このイベントに参加している時点でそれはありえないだろう。

 それに、

『わかりました!』

 威勢よく返事をすると、少年は一気に一つの小隊に突っ込んでいった。一見適当にも見えるが、しっかり敵の射程範囲に入らないよう、うまく位置を利用して近づいている。

 そして、相手が撃つ前に自分から攻撃し、しっかり当てている。

(あれはそう考えても素人ではない)

 人は見かけで判断してはいけないが、どう考えてもその様子は素人ではなかった。

「俺もやるか」

 そうつぶやいて、もう一つの小隊に突っ込んでいった。



 この戦闘の少し前のこと。

 俺はイベントのことを知って、情報収集をしていた。

 先方はこの人数なら行けると、ぶっつけ本番で行こうとしているようだが、それでいいことはあまりない。

 こう、しっかり情報を集めていけば、決して悪いことは起こらないのだ。

 そして今回、俺は駆逐艦の情報を入手した。

 それをすぐ、いつもの討伐仲間に知らせ、一気に情報を発信していく。

 危険なことから逃げる。

 現実ならそうかもしれないが、ここはゲームの中。

 危険には立ち向かっていくのが当たり前の奴らがたくさんいる。

 そして、新たな敵となれば、参戦してくる奴も多い。

 今回は見事、戦車を所有している奴まで仲間を集めることができた。

 会場はすでに伝達済み。

 集合は現地だから、俺も早速向かっていた。

 そして、あの地獄を目撃することになった。

 だがその状態もすぐに改善された。

 俺の読んだゲーム仲間が次々にやってきたのだ。

 いつもはこんな簡単なイベントになんて来ないような奴も、駆逐艦を一目見ようとわざわざロケットランチャーやら自走砲やらもってやってきた。

 ここまで見ると、まるで本当に戦争をやっているように感じてしまうほど、色々な兵器が集まっていた。

 突撃である俺がすることはもうない。

 そう思って、その場を後にしようとしたとき、

『あの、ありがとうございました』

 聞いたばかりの声が視界、否、画面に映っていないところから聞こえてきた。

 体を回すと、やはりそこにはあの少年がいた。

「礼なら他の奴に言ってくれ。俺は何もしていない」

 実際仲間を集めているから嘘になるが、そのことをこの少年は知らないはずだ。

『でも……』

「いいか。何事も情報を集めることが一番だ。どんな事態でも、まず情報を集めろ。いいな?」

『……はいっ!』

「うん。若いのはそれでいい」

 もしかすると、年上なのかもしれないのに、俺はそんなことを言っていた。

 少年のことを若いと言ったが、俺も大人からしたら十分若いと言われるだろう。

 何せ俺はまだ中三なのだ。

 ……受験生がそんなことをしていていいかだと?

 問題ない。勉強はしっかりしているし、このままなら推薦で普通に合格できるくらいには成績がいいのだ。

 とにかく俺は、その少年とはもう会わないだろうと、別れを告げたのであった。


    ☬


 それから一か月ほどなくしたころだっただろう。

 まさかあの少年と、しかも学校で再開するとは。

「高志先輩!」

 どこからか、聞いたことのある声がした。

 声の主は、一人の、そうやら後輩であるらしい人物。

 だが、その顔は見たことがなかった。

「ごめん。たぶん人違いだと……」

「いえ。絶対あってます」

 自分は相手のことを知らないのに、相手は自分のことを知っている。

 俺はそんな有名人じゃないから否定したのだが、その人物は胸を張って、自信ありげに絶対宣言をする。

「でも俺の記憶には――――」

「当たり前です」

 ないんだけど。と言おうとして、その前にそれを当然だと言われてしまった。

 いや、その二つ矛盾しちゃうし。

「じゃあなんで――――」

「先輩ですよね? 僕を守ってくれたの」

 僕? と思って考え直してみるが、どうも思い出せない。一人称が僕の、こういう声の人間と話したことがある気がするのだが、その名前やどこで出会ったのかは出てこなかった。

 だが、その疑問をさらに深くするような発言を、その人物はする。

「守る? 俺がそんなことをしたか?」

 さすがにそんなことがあったら覚えているだろう。

 でも、このの人物は見たことがない。

 じゃあまさか――――。

「しましたよ。もっとも、ゲームの中の話ですが」

 自分がまさかと思ったことを、その人物ははっきり肯定した。

「イベントの時、海岸で助けてくれたではないですか」

「イベント……海岸…………、あ、あの少年か!」

「ルーピンです!」

「そうかそうかルーピン君か。それで、何ルーピンって言うんだ?」

「高志先輩じゃありませんし、本名ではありません! 僕の名前は切田ひかるです」

「ひかる君か」

 彼は自分をひかると言った。

 ただ、どうにも引っかかるものがある。

「時にひかる君」

「はい?」

「君は何か、隠し事をしているのではないかい?」

「隠し事……ですか? さあ、していないと思いますが……」

 彼はしていないという。だが、どう考えても違和感を覚える。

「ちょっとひかる! 勝手にどっか消えないでよ」

「あっ、ごめんなさい徳見さん」

 また誰かがやってきた。

 姿を見るに、ボーイッシュな女の子のような男子だ。

 うん。自分でも何を言っているのかが分からなくなった。

「その人は?」

「徳見さんが教えてくれたのではないですか! タカシさんですよ!」

「タカシって、さっき言ってた? ……なるほど、通りでどこかに消えたわけだ」

「通りでってどう言うことですか!」

「いやー、ひかるは夢中になると他のこと考えられないみたいでさー。ほら、今だっていつもとしゃべり方って言うか、性格違うじゃない」

「えっ……あっ…………」

 ひかる君は顔を赤く染めた。

「ほんと、これだからひかるは面白いんだよ」

 さっきの引っかかっていたのはこれだったようだ。

 決して無理をしているわけではないが、普段とは違って繕っているような訃音気が合ったのだ。

 まあ、そんなこんなで、俺と〈ルーピン〉こと『ひかる』は現実世界でも仲良くなって、もちろんその時は〈バーシー〉こと『徳見さん』も一緒に《OF》をするようになった。

 今バーシーが何をしているかはわからない。

 だが、あの人のこと。きっとまたどこかでこのゲームをしているのだろう。


    ☬


「って、そんな懐古をしてる暇なんてない!」

 意識は戦場に戻ってきた。

 今の敵はコブラ――[AH-1S]だ。

「どうかしましたか?」

 そう、首をかしげて訪ねてくるルーピン。

 あれ? そう言えば……

「ルーピンさ、いつもみたいにならないんだな」

「いつもみたい、ですか?」

「ほらあの、なんていうか……強くなる?」

「あれですか? あれは……やっぱり……」

 だんだん声が小さくなって、それと同時にルーピンの首が下を向いていく。

「今はVRではないですか。あの時とは違うんです。今は〈ルーピン〉のキャラクターにはなれません」

 あの時と言うのは、つまりパソコンの時。

 確かに、見た目がほぼ自分で、さらにその体に入って操作しているのだから、現実の自分とキャラを変えることは難しいのかもしれない。

「そんなんで大丈夫か?」

「大丈夫です。きっと」

「きっと、ねえ……」

「それに、タカシくんが付いてますから」

「ああ。そんな冗談が言えるなら問題ねえな」

「冗談なんかじゃないですよぅ……」

 声を聴く限り、本当に拗ねてるように聞こえる。

 こいつ、ほんと演技上手くなったよな。

「ほらはじめんぞ。こいつたぶん、こっちから仕掛けないと動きはじめないみたいだからな」

「そうみたいですね」

「準備はいいか?」

「いつでもどうぞ。持てる限りのマガジンは実体化してあるんで」

「上等だ。そんじゃ、いくぞ?」

「はいっ!」

 突如として、銃声が鳴り響いた。

 そして、重なる金属音。

 排出される空薬莢と、ヘリの装甲への着弾音だ。

 今回重要なのはどれだけ着弾させられたか。

 マガジンの予備は無限で、時間制限がある。

 さらに言えば、いつもは有効な場所を狙って撃つものの、今回はどこに当たっても同じ分しか加算されない。

 つまり、撃って撃って撃ちまくることが、このテストでは重要と言うことだろう。

「予想通り、カウントダウン開始!」

 ルーピンから声が飛ぶ。

 その様子だと、だんだん本調子になってきているようだ。

「敵の攻撃に気をつけろ! 予兆があったらすぐさま退避!」

「了解!」

 このテストでの自分たちの被弾に関してどういった判定をされるか分からないが、なら、いっそのことそのような状態を作らなければいい。

 第一優先はひたすら弾を当て続けることだが、それよりも攻撃を受けないことが重要かもしれない。

 そう考えているうちに、もう二つ目のマガジンが終わる。

 今回使われているマガジンは、どちらも30発のものだった。

 そして、俺の使う〔AK-47〕も、ルーピンの使う〔AK-74〕も、発射速度は同じ600発/分である。

 つまり一秒十発。

 ともにフルオートで撃っている今は、3秒でひとつのマガジンが尽きる。

「銃口に損傷の様子なし!」

「どうやら耐久値とかはなさそうだな」

 パソコンの時はあった耐久値。これは、連続使用したり長期間使っていたりすると尽きるもので、それより前に整備すれば耐久値は復活し、尽きたものはもう使えない。

 一番消耗するのはやはり銃口。フルオートで撃っていると、熱をもって変形しやすいのだ。

 まあそれは現実の話であって、それを再現したからその耐久値があるということなのだが、それがないとなればいくらでも撃ち続けられるということだ。

「今のうちにどんどん撃ち込め!」

 ボタン一つでマガジンが替えられる訳ではなく、一回一回手動で替えなければいけない。

 そうすると、どうしても時間のロスが生まれてくるのだが、それは現実世界で磨いてきたので、高速替えもなかなか様になっている。

 既に表示は500を超えた。

 今のところミスはなし。パーフェクト中だ。

「敵、行動開始!」

「攻撃続けろ!」

 ついに敵が動き始めた。

 ずっと同じ位置でホバリングしていたのが、高度は同じで位置を動かしている。

 時間にして開始からちょうど一分経過した後だった。

「予測、残り三分で敵攻撃開始!」

「了解!」

 自分の考えを相棒に伝える。

 相手は動くが、それを少し先読みして銃口をずらせばいい。

 それはルーピンも同じようで、もう少しで着弾数が三ケタになろうとしているのに、いまだミスはゼロだった。

 これなら!

 そう気を抜こうとした瞬間、タイマーが残り三分を告げた。

「回避用意!」

 そして、予想通り相手の攻撃が始まった。

 はじめの攻撃は機体についた機銃ではなく、その乗員の持つ小銃か機関銃かわからないが、とにかくフルオートで連射してくる武器だった。

 それなら避けるのは簡単と、回避運動に入る。

 上空での連射はなかなか難しく、動く的を追うのもさらに難しい。

 だから、ある程度不規則に走っていればまず当たらない。

「敵を狙え!」

 敵とは、[AH-1S]のことではないのか。それならもう攻撃しているではないか。

 長く一緒にやってきたルーピンだから、この指示の意味は分かった。

 つまり、今武器を操っている敵を狙えと言うことだ。

 機体の中に居られたら何もできないが、向こうが攻撃してくるということはこちらも攻撃できるということだ。

 弾の発射地点に向かって弾を撃ち込んでいく。

 結局どこに撃っても同じなのだから、それならより効果のある場所へ。

 いつもの考えに戻っただけだ。

「よし!」

 敵からの銃撃が止み、大きな銃が落ちていくのが見える。

「っ! 残り二分。第二次攻撃警戒!」

「了解!」

 くそっ。思ったより時間がかかってしまった。

 気付いたら次になっていた。

 コブラが上空で動くのをやめ、向きだけ変えている。

 俺の方を向いてきた。

「やばっ!」

 それに気づいて、急いでその場から逃げる。

 ほんの少しして、さっき俺がいた場所へ機銃でものすごい数の弾丸が撃ち込められていく。

 そして、しばらくして攻撃が止み、また向きを変え始めた。

「攻撃方法は今の通り! 回避!」

 敵がルーピンの方を向いたので、素早く指示を出す。

 今回もまたうまく指示が通り、ルーピンは行動に移る。

 避けてすぐ、また機銃の掃射が行われた。

 これをあと四〇秒は耐えないといけない。

 でも、それより強いのが残り一分で来ることを考えると……。

「機銃を壊せ!」

 そこからか、いや、間違えなく俺からなんだが、無意識のうちにそう叫んでいた。

 そして自分も、避けながら狙いを機銃へと向けていく。

 当てていればそのうち、壊れるはずだ。

 撃っては避け、撃ってはマガジンを変え、撃ってはまた避ける。

 そうこうしているうちに……。

「残り一分。敵注意!」

「了解!」

 何が始まるかわからない、残り一分になっていた。

 敵はと言うと、少し位置を変え、俺でもルーピンでもない方を向いている。

 そして機銃を回し始め、薙ぎ払うように掃射を始めた。

「回避!」

 こうなっては、もう後ろに飛び退くしかない。

 俺たち二人は敵から離れる。

 その足の前を、掃射の線が通ってゆく。

「回避!」

 そして休む間もなく、二回目の攻撃が――――

「ルーピン!」

 それを避けようとして、ルーピンが転んだ。

 なぜかその場所だけ、草が結ばれていたのだ。

「このっ!」

 ひたすら機銃を撃っていく。

 あと少しでルーピンに当たる。

 瞬間。

 鈍い爆発音を鳴らし、向かって右側の機銃は壊れた。

 そして、左の機銃もルーピンの当たるギリギリのところで止まった。

 そのあとすぐに左の機銃も壊し、俺らは何とか、無傷でテストを乗り越えたのだった。

次回予告


幕間 チュートリアル編6 タカシ&ルーピン 懐かしき思い出3 ――試験の結末――


(3日後、2016,1/9予定)

お楽しみに。

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