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operation flags  作者: k.はる
二章 -開始(Start)-
45/52

幕間 チュートリアル編03. ディオの試験無双・下

半日ぶりです。


そして、もう少しで2015年が終わる……。

(内容とは関係ありません)

 気が付くと、テスト前に自分がいた空間に、俺はいた。直立で立っており、右手だけで〔M14 DMR〕を持っている状況。ふと、左腕の違和感に気付いた。狙撃された跡が全く残っていなかった。痛みはなく、難は過ぎ去ったと思えた。

「(さすがゲーム。スゴイな……)」

 すると、頭上からウインドウが降りてきた。そこには『Toking Now』と書いてあった。

『いや~、おめでとう! まさかあれをクリアしてしまうとは…。正直、スナイパーじゃないほうが良いんじゃないの?』

「(こいつ、何言ってやがるんだ……?)」

 しかし確かにそうかもしれない。あんなに近接的な戦闘はしたことが……いや、つい最近したばかりだったが、でもあの時以前は味方がいたのもあってそもそも接近戦すらしていなかった。そう考えれば、遠距離よりも近距離のほうが向いているのか、俺……。

 あっ、でもそもそも――

「おまえ誰だよ!」

『酷いな~、初対面の人におまえなんて呼ぶなんて。今のでついに一万回目突破だよ』

「結構言われてんじゃねえか!」

『まぁ、冗談はほどほどにしておいて……。僕は、まあGM、ゲームマスターみたいなものだと思っていいよ』

「はぁ……」

 俺はあきれてものも言えなかった。

『それは置いといて。今のテスト……って言うか、このチュートリアル全部なんだけど、スナイパーライフル系のチュートリアルで一番難しいのが君に当たっちゃったってわけよ』

 なんか運いいのか悪いのか分かんねえな。まあたぶん悪いんだとは思うが……。

『それで面白半分見物しに来たら、まさかテストクリアしちゃったわけよ。本当ならこのテストはクリアできないはずなんだけどね』

「それって、チュートリアル終わらねえじゃんかよ」

『その点については問題ないよ。五回連続でテストを失敗すると、もう一回ランダムでチュートリアルが割り振られるんだ。その時に失敗したチュートリアルはそのランダムの中からなくなっているから、同じチュートリアルにまた当たることはない。もう一つ言うと、プレイヤーが諦めてチュートリアルをリタイアしてやり直せばもう一度ランダムで選ばれるんだよね。まあその時は前に失敗したのも入っているから、ものすごく運の悪い人ならまた同じのが当たる、なんてこともあるだろうけど』

「まあ、チュートリアル全部が全部こんなんだったら訴えてやるしな」

『それでね、そんな不可能に近いテストをクリアした君に、僕から練習免除のプレゼント!』

「いいのか? そんなことして」

『もちろん。だってそもそもこのチュートリアルに練習なんてないから』

 じゃあそれプレゼントじゃなくてもとからの仕様じゃんか。

 まあ、そう言うことで。演習がなくなった。

『でも最終試験だって大変だよ? まあ、接近戦でやられなかった君の能力と、スナイパーライフルにしては弾数が多い〔M14 DMR〕があればそうでもないのかもしれないけど』

 そうか。この愛銃――〔M14 DMR〕には二十発箱型弾倉がついていたんだ。現実じゃ費用気にしてむやみに撃てないから気にも留めてなかったが、結構これが効いてんだな。

『じゃあ奥にある扉を引いて開けくれ。そこが最終試験会場だから。楽しませてくれよ? 試験中にじゃまする気はないが、興奮して思わず声かけちゃったらごめんよ』

 ひとつ前のテストでは扉を押しあけたのに、この試験では扉は引くのかよ……、じゃなくて。演習がなくなったことは良かったのだが、最終試験も難しいって……。少なくともさっきのテスト以上なんだろうな。

「まぁ、いいか……」

 そう一言つぶやいて、扉を引くのだった。



 目の前に現れたのは、暗黒。自分がどこにいるかすら分からないほど暗かった。この暗さに慣れるため、色々なところを見渡していると、


 ボッ


 自分の横にあった石の灯篭のようなものにいきなり火が灯った。


 ボォ――ッ


 その火のついた石の灯篭から延びた導火線らしき紐に火が移ると、走っても追いつけないスピードで火が進んでいった。その導火線によって部屋の奥までの灯篭に火が灯り、明るい空間になった。岩壁で包まれているが今にも崩れそう……という感覚はなく、床はしっかりと舗装されていた。

 ぽーん。

『これから最終試験を開始します。今から出てくるモンスターを狙撃してください。※ただし、狙撃以外の一切の攻撃(拡散弾含む)は無効化されます』

 拡散弾が使えないとなると、相手は超早いか超小さいかのどちらかになる、と判断した。

 あの自称GM、またどっかで楽しんでいるんだろうな……。ま、そう考えても仕方ない。あっと驚かせてやるぜ!

『10秒後にモンスターが出現します』

 そのウインドウが浮き出てきて、

『……3……2……1……』

 テストの時と同じように数字が減っていく。

『0』

 スナイパーライフルを構えたが、全くというほど相手の姿が見えない。今のウインドウが間違いだとは思えないから、相手がゆっくりと現れているのか来ているのに気が付いていないかのどちらかだ。とりあえず〔M14 DMR〕を下ろした。

 次の瞬間。


 ビュンッ!


 耳の傍を何かがとてつもないスピード通った。

 その音は波動となり、耳を圧迫した。

「なっ……!」

 慌てて、下ろしていた愛銃を持ち上げ、スコープを覗く。スコープ内には何も映っていなかったが、目を閉じ、精神を統一させてスコープから外した目を見開くと、虫の様なものが飛んでいた。パッと見だから確かではないが、俗にいうハエだった。体の形、足の数等記憶が正しければ本当にハエだった。ただ、その速さは通常のハエを優に超えていた。見た目がハエというだけに、その名前も《ライトニング・フライ》と、つまりはハエだった。まさか、予想していた三つが重なるなんて……。超早くて超小さい。そしてやっぱりハエだった。

 目で存在をとらえられない速さで飛んでいる的に、単三電池よりも細い長い弾丸を当てるなんて…。ムリな設定かもしれないが、この空間はあまり広いものではない。横:7m、縦:15m、高さ:3m(推測)と、大きくはない。それが故、適当に撃ちっぱなしていればきっと当たるだろう。

「そうなれば……」

 スコープを覗き、自分の適当な感覚でトリガーを引く。銃の発射音だけが、むなしく鳴り響き、反響し、やがて静まる。無論当たるはずもなく、また耳の横で羽が振動する音がした。

「チッ」

 そんなこんなで十数回。適当に発砲していた。当たる可能性なんてスズメの涙ほどもないのだから連射するほかない。正しく数えてはいないが、発射回数が20回目くらいで何かがきらめいた。マップから敵を表すマークが消えていた。

 ぽーん。

『おめでとう! とりあえず狙撃できたっぽいね。なかなか乱射していたらしいけど…まぁ撃てたことは撃てたから、合格だね』

「終わったのか……」

『と、いうわけで、第一関門はクリアしたわけだ』

「第一関門? まさか……」

『ハッ八ッハッハ! さすが天才スナイパー君だね、察しがいいや。そのま・さ・か、二部構成なんだよね、これ』

 終わった…………。


    ☬


『じゃ、第二関門開始、ということで。頑張ってね~!』

 無責任にも程があるくらいの口調であの声は消えた。だが、しばらく待っていても何もくる気配がない。ナレーションのひとつや二つぐらいあっていいだろうと思ったが、それすら聞こえてくる気配がない。

「……全く……」

 呆れかえって座り込んだとき、違和感に気が付いた。あの虫を狙撃するときは、全然気づかなかったが、床が動いている。普通に歩いていたら気づくことはなかっただろうと思うほどだが、わずかながら動いている。

 その時、


 ドンッ ドンッ ドンッ!


 何かが近づいてきているような足音がした。それを目視できたとき、俺は驚いた。

「で、でけぇー……」

 ぽーん。

『これから最終試験その二を開始します。モンスターを倒してください』

 改めてみてみると、この空間を埋めてしまうくらいの大きさがある。全身が岩のようなもので包まれており、両腕に岩でできた盾を持っている。パッと見、攻撃用の武器は持っておらず、防御力と体力が取り柄、といったところだろうか……。名前は《デストロイ・ゴーレム》。どこが「デストロイ」なのかは分からないが、まさか攻撃力まで高いのだろうか……。


 ゴゴォォォォォッ!


 岩を切断するときに出る音にも思える雄叫びを上げ、戦闘態勢に入った。

 ヤツはやたらデカい体をしているから、素早さでは確実に人間のほうが早い、はずだ。それに、デカい分狙う必要もない。だから狙撃の体勢で構えず、地面から浮かせた状態の両手持ちで撃つトリガーを引く。確実にあたった音を確認してから、相手の体力ゲージを確認する。

 だが、

「おい、嘘だろ……?」

 体力は、一切減っていなかった。この距離でスナイパーライフルを撃ったはずなのに、だ。

「……くそっ!」

 やけになって、ただ我武者羅に撃ち続ける。狙いは盾からはみ出た部分。頭、足、胸……。だが、敵の体力ゲージは微塵も動かない。

 すると、ふと相手が体を守るのをやめた。両腕で持った盾を、横からそのまま後方へと回して地面につけて体を支える。そして、肩の部分の表面が板のようになって縦にスライドし始めた。そこからはミサイルハッチのようなものが、否、完全な、完璧な、整備に何の緩みもないミサイルハッチが現れた。

「……え? デスト――ッ!」

 『デストロイってこういうことなのか?』と、思いを口に発する前に、1つの肩から5本ずつ、計10本のミサイルが飛び出してきた。幸いにも、その一本一本はかなり小さく直線に進むミサイルだったが、とはいえ爆発すればとんでもないことになる。加えて、この空間自体が狭く、避ける難しい。爆風のダメージを受け、体力の4分の1を失った。

 爆発も収まり、また撃ち込まれるのか……と思い構えたが、スライドしていた肩部が元の位置に戻ったのを機に相手は全く動かなくなった。ミサイルを撃ち放った態勢のまま。

 さすがに連射されるのは大変なことになるのでやめてもらってよかったのだが、全く動かなくなってしまうと攻撃する部位に困る。

 その時、ふとヤツの右腕の盾の裏にある何やら光るものが視界に入った。それは宝石――ルビーのような、真っ赤に染まっていて、きれいに切られた表面で光が見事な反射をしていた。大きさは、握りこぶしより少し小さいくらいだと思う。

「バレバレな弱点だろ、あれ」

 しかし、撃ってみないことには弱点とは決められない。ヤツは動かないため、体勢を立て直してスコープを覗く。宝石をスコープの中心にとらえた時、ヤツが再び動き出してしまった。

「(なるほど。ミサイルを撃たれた後、すぐにアレを狙って正確に撃たなければならないのか。それも、ミサイルをすべて避けたうえで……)」

 ヤツの攻撃は、どうやらミサイルだけのようだ。そして、どれだけの敬遠の弾を撃っても守ること以外はしないようだ。

 するともう、また肩部が動き始めた。

「へっ……、ドンと来い!」

 だが、開いた肩部から出てきたミサイルハッチには、一本だけしかなかった。それがすぐに発射されたが、先ほどに比べるとスピードを全くと言っていいほど感じない。

 つまり。

「追尾型ミサイル、か……」

 避けてもどうせ追尾される。でも、たどり着くまでに時間があるのならば、その前に撃てばいいのだ。

 急いでスコープを覗くが、ミサイルが来ているため銃を地面に固定することができず、だからと言って動いている地面の上で立って照準を合わせるのは難しい。

「(集中するんだ。何だってやってきたじゃないか! このチャンスを逃すんじゃない!)」

 そう自分に言い聞かせて、時の運に照準を任せながら、俺はトリガーを引いた。


 カンッ


「なっ……」

 弾は見事に命中。そして、見事にはじき返された。

「まさか、あれは弱点じゃねえのか!」

 そう思ったのも束の間。そこに弾が当たってちょうど五秒たった時、一瞬ヤツの全身から赤い光が放射された。

 そして、その赤い光の線で体が斬れ、ただの岩のようになってヤツの体は崩れ落ちた。

「あっ……!」

 敵を倒したことを喜も、目の前に迫ったミサイルを見て、俺の意識は現実に引き戻された。

 ぽーん。

『最終試験終了。結果は 合格 です』

『いや~、クリアしたようだね。おめでとう! ……と言いたいところなんだけど、大丈夫? まさかミサイル避けないなんて。一応終わっていたしダメージは入らないけど、それでも痛覚は残っているんだよ? 君もツイてないね……。ま、とりあえず……おめでとう!』

 そんなウインドウと自称GMの声は露知らず、顔面からミサイルを受けた俺は鈍器で頭を殴られたような衝撃で頭蓋骨が振動し、そのまま後方へ吹き飛ばされていた。

 それをあいつは分かっているのか知らないが、話し続けていた。

 俺の体と意識が地面に着地する前に、光に包まれて、転移した。

年内投稿はこれが最後なので、一応お礼を。

今年一年間(半年?)ありがとうございました。

おかげさまで閲覧回数が増えております。

もっとも、ポイントは増えていませんが・・・・・・。

ブックマークしてくれている皆さんには特に感謝です。


この作品、内容的にはまだまだ先まで考えておりますが、いつ投稿できなくなるかがわかりません。

ですが、とりあえず来年も投稿を続けるので、今後ともよろしくお願いします。


さて、そんな来年一発目の投稿は・・・・・・


幕間 チュートリアル編04. タカシ&ルーピン 懐かしき思い出 1 ――二人の出会い――


題が長い件w

(3日後、2016,1/3予定)


お楽しみに。

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