幕間 チュートリアル編02. ディオの試験無双・上
大晦日です。
(内容とは関係ありません)
幕間なのに、長すぎる……
前に言っていた、
この小説をノートに書いていた時一緒に書いていた人
が書いたものを加筆修正したものです。
書き癖が違うと思います。
幕間 チュートリアル編 ㈡
ディオの試験無双
「まったく……」
俺は一つ大きなため息をつき、浮かんでいるウインドウを見て、もう一度読む。
そのウインドウには、これから行われるチュートリアルの説明が書いてあった。
テストを行うらしい。俺が読み取れたのはそれだけだ。否、俺が正しければ『テストをやる』ということしかあのウインドウに書いていない。
何度読み返しても、ほかのウインドウは浮かんでこない。
「(ふざけてやがる……)」
その時、自分の目に映っているウインドウの奥に、扉のようなものを見つけた。ウインドウをくぐりその扉へ向かうと、途中で小さなウインドウがまた出てくる。それは、自分の銃種を選ぶ、簡易なものだった。アサルトライフル・SMG・LMG・ロケットランチャー・ナイフ等々――――。
『スナイパーライフル』という9文字を探すのに苦労した。それを選ぶと初期の状態でもらえるスナイパーライフルが数種類出てきた。
俺が使うのは愛用の〔M14 DMR〕だ。
ようやく見つけてそれを選ぶと、確認用ウインドウが元から出ていたウインドウに重なるように出てきた。わざわざ確認しなくとも間違えないだろう、と思いながら、俺は『OK』のボタンを押した。横にスライドアウトしていったウインドウを目で追うこともなく、奥の扉に向けて進む。
扉を押しあけると、新たな空間があった。
一言でいえば『廃墟』。人のいる気配はなく、砂埃が舞っている。
俺がいるのはビルの屋上………だと思う場所。あまり広くはなく、きれいな四角形となっている。
「……」
ぽーん。
『これよりテストを開始します』
いきなり鳴った電子音に少し驚きながら、浮かんできたウインドウを読む。
『このエリア内には、今から15の生命体が現れます。しかし、この生命体は人間ではなくモンスターです。このエリア内に現れる15体のモンスターをできる限り早く倒してください』
つまり、『15体のモンスターをいかに早くスナイプするか』がテストらしい。だが、大体、タネがあることぐらいはお見通しだ。きっと、超早かったり、向こうも銃を使ったり、集団で15体が動いていたりするのだろう。
「はぁ……」
『10秒後に開始します』
準備は整っていたため、その10秒は無駄にすぎなかった。
『9……8……7……』
ウインドウの『10』の数字がだんだん減っていく。
『2……1……0』
表示が『0』になった瞬間に、自分を囲むように15体のモンスターが現れた。
「なっ……。これってぜってえスナイパー向けのテストじゃねぇよ……なっ!」
ヤツらのふりぬく棍棒を、銃も持たずに避ける。それを繰り返している。武器を選択した瞬間に腰が急に軽くなったことを考えると、ナイフもグレネードも持っていないのは明らかだ。さらに、ビルの屋上は決して広くないためよけるのも一筋縄にはいかない。
こいつらは何だ!? と、思い、名前を見る。そこには《リザード・ウォーリア》とかいてあった。背丈は俺に比べたら、20センチほど小さい。体格もいいとは言えない。だが、速い。足腰が強靭すぎるためタックルをしてもほとんど動かない。そして、甘く見ていた棍棒の攻撃力が意外とあった。とはいえ、一見裸にも思えるほど防具が少ないから、この距離なら一発でも喰らわせれば倒せるだろう。
しかし、手が伸びない。それに、こんな至近距離でライフルを構えても1体か2体が限界。だったら――。
意を決し、俺は愛銃――〔M14 DMR〕を抱える。
そして、一体の敵に向かって突撃。
その敵は堂々と正面から受け止めようと構える。
だがその行動は俺の思う壺。
敵が構えようとしたのを見計らった俺は、体をひねり敵の脇を抜ける。
そして、そのスピードのまま、俺は屋上のへりを飛び越える。
俺は意図して屋上から飛び降りた。あとは運に身を任せるのみ。
俺の体は地面へと吸い込まれていった。
☬
気が付くと、俺は仰向けに倒れていた。体力ゲージを見ると4分の1ほど削られていた。いつまでも倒れていたらヤツらが来るかもしれない。そう思い、愛銃を抱え上げて今までいたビルの隣の隣、オフィスビルだったと思われる廃屋から狙うことにした。
階段を駆け上がり、デスクとデスクの間をすり抜け、愛銃を構える。偶然にもこのオフィスビルが高かったため、敵のいるビルの屋上までに遮るものはなく、窓も割れていて狙いやすかった。
「(いける……!)」
スコープを覗いて、ふと異変に気が付いた。15体いたはずの敵が、10体しかいない。
まさか逃げられたか。
だが、今は目の前の10体に集中することにした。俺を見失って、挙動不審な行動をとる獲物を狙うことほど簡単なことは無い。狙いを定めて、トリガーを引く。偶然ながら貫通に成功した。仲間が撃たれてさらに落ち着きを失った敵集団は、非常に滑稽だ。もし今みたいな状況でなかったら、かわいいとも思ってしまうだろう。一体目を倒してほどなく、ビルの屋上にいるヤツらは全滅。
残り、5体。
「さて、残りのヤツらはどこに行った……?」
新たなマガジンを詰め込み、空になったマガジンをポケットに入れる。すると、
ぽーん。
『テスト開始から、10分が経過ました』
また電子音が鳴り、浮かんできたウインドウが時間の経過を告げた。そういえばこのテストはタイムアタックだった。敵の総攻撃を避けていたため、時間のことをすっかりと忘れてしまっていた。
「しまった……。かなり時間喰ったな……」
そんな後悔も気にしない、俺の『狩らなければ』という衝動が俺の体を動かした。愛銃を抱えてオフィスビルを降りる。しかし、早く倒したくともヤツらがどこにいるのか見当もつかない。下手に動いてすれ違うより、どこかで待っていたほうが効率は断然いい。
俺はビルを出てすぐ上を見上げ、できるだけ高いビルを探す。ビルの多い廃墟街なだけあって、普通のビルではほかのビルで視界が遮られることぐらい分かっている。そう考えると、あのオフィスビルか――とも思う。今の俺に迷っている暇はない。すぐさま今来た道に振り返り、ビルの入り口に走っていく。だが、
パァーン!
自分の目の前に、弾丸が降ってきた。しかも、大型スナイパーライフル用の。大きな弾丸は、地面のコンクリートをえぐり、大きな音を立てながら穴をあけた。
自分でも不思議に思う。敵が撃ち込んできたことに――ではなく、それを察知して、自分が一歩後ろに下がったことだ。確かに油断していたのだが、急に殺気が感じられたのだ。何故だ、何故なんだ……。
ぽーん。
『特殊スキルを入手しました』
急に鳴った電子音と、それと同時に浮き出てきたウインドウの内容は、すぐには理解できなかった。しかし、ほんの今起こった出来事を思い出すと、分からなかったことがだんだん分かってきた。
「なるほど……。そういうことだったのか」
ウインドウを見ながら、感動を隠せない。どうやら俺に『察知』の能力が宿ったらしい。
『自分が敵を認識していなくても勘のような感覚で敵の攻撃が分かり、反射のように避けることができる』というのがこのスキルの効果らしい。ただし、自分が相手の存在に気が付けば、または相手が意図して自分に攻撃していなかった場合(相手も認識していなかった場合)、このスキルは無効化される。
スナイパーにはもってこいのスキルだと、俺は思う。
しかし、このスキルにも問題もある。たとえ一撃目を避けられても、どこに敵がいるのかは分からないということだ。そのため、たとえ相手の狙撃の一撃目を躱せても、その時に敵の位置を見つけないと、次の攻撃で撃たれることになる。たとえ一撃目からの警戒で次撃を認識して避けようとしても無傷で避けきるのは至難の技だろう。
そして今、俺はその『一撃目で敵の位置を見つけられなかった』状態に面している。
だから俺はとりあえずその場から逃げるという選択した。
ビルの間をすり抜けて、細い路地に入った。
するとそこには、なぜか武器が散乱していた。拳銃から対物ランチャー、爆薬や剣などの刃物などが、一種類に一つずつくらいあった。
しかし、どこを探してもスナイパーライフル、狙撃銃だけは見つからない。さっき撃ってきたヤツは、きっとここからスナイパーライフルを持ち出したのだろう。予備のマガジンも欲しかったが、ない物ねだりをしても意味はない。仕方なくナイフ、グレネードだけは頂戴することにした。が、
「なっ、動かねえ」
つかんだその二つは、持ち上げることはおろか動かすことすらできなかった。
「畜生、これはただの背景オブジェクトっつうことか。ふん、これだからゲームは」
少し悪態をつきながらも、その二つを持っていくことは諦め、立ち上がった。
そして路地を進み、少し先から光がさし込んでいる。
出口が近い。
「よしっ」
俺は駆け出した。
それは出口を見つけた喜びからではなく、もし敵が身を隠して待ち伏せていた場合に攻撃を受ける前に逃げられるようにだ。
「ま、所詮はモンスターの頭脳だ。たとえそれがゲームのモンスターで電脳だったとしても、さすがにチュートリアルでそんなのはねえよな」
そうつぶやいて、飛び出した。
次の瞬間。
「いッてぇなぁ! 何だよ!」
俺は何かにぶつかった。
そして目線を上げて、凍りついた。
ぶつかったのが敵だからだ。
向こうも固まっていた。そしてすぐに動き出したが時すでに遅し。敵に向いた俺の銃口が、棍棒を振り上げようとしている敵に火を噴いた。倒れて霧散する敵。そして俺はこう思う。
「……きっとこんな風に殺されたくなかっただろうな……。申し訳ねぇな」と。
手を合わせ、冥福を祈る。
残り、4体。
そして、なんだかんだと残り1体となった。
「残っているのは、スナイパーライフルを持ったヤツだけ、か……」
ヤツにオフィスビル前で撃たれて以来、弾丸は飛んでこなかった。だが、機会を待っているのかもしれない。しかしどうするべきか、下手に動いてやられても困る。大型の弾丸だから、頭以外でも大ダメージになるのだろう。俺の体力も多いわけではない。回復もしているようだが、ずっと動いているから目に見えて回復はしていない。それでも、最後に攻撃を受けたときより体力が増えているから回復はしているのだろう。だが、受けられても2回が限界と見る。
「…………よし」
パァーン!
「俺はここだ! 狙えるモンなら、狙ってみろ!」
〔M14 DMR〕を近くの瓦礫にバイポットを立てて構え、灰色の空に向けて弾丸を放つ。初期装備だから、愛銃とは違ってサイレンサーなんていいものは付いていない。そんないちいちでかい音の鳴る銃を撃ちながら、大声で叫んだ。
自分がスナイパーである上で、ご法度であることなど百も承知だ。
「どうした! 怖気づいたか? 早く狙ってみろ!」
しかし、相手の位置を確定するためには撃たせるのが一番である。銃声のなった方角と弾丸の軌道を見て、発射地点にお返しと弾丸を撃ち放つ。これはスキルなどではない、俺自身の、言うなれば特技だ。
「(来た!)」
銃声が聞こえた時点で後方へと跳ぶ。撃たれた弾丸は俺のいた空を切り、コンクリートにめり込む。
その方向を見て、俺は横たわり〔M14 DMR〕を構える。スコープを覗いて飛んできた軌道に合わせ、傾ける。
パパァーン!
トリガーは引いたが、銃声はほぼ同時。若干俺の方が速かったと見る。
見えない相手への遠距離射撃だから倒した感触はないし、そもそも当たったかどうかも分からない。だが確実に言えることは、敵の弾は俺に当たったということだ。左肩に一撃、重い弾丸が撃ち込まれた感覚があった。
「くそっ……。やべえな……」
痛みに嘆いているのも束の間、目の前のビルの間から青緑の体をした敵が棍棒を振り回しながら走ってくる。体力ゲージを見ると、ほんの少し減っているようだが、あの減り方はどう見ても今の弾が当たった時のではない。
「チッ…、やるっきゃねぇか……!」
左腕をかばいながら、愛銃片手に立ち上がる。
カキィィィッッ!
銃と棍棒がぶつかり合い、甲高い音を響かせた。しかし、棍棒を振り回すスピードのほうが圧倒的に早い。そもそも銃剣をつけていない銃で(と言うよりスナイパーライフルに銃剣をつける発想を聞いたことがないが)近接の打撃戦をするのがどうかと思う。それも、向こうは持ちやすい棍棒で、こっちは無駄に重く振り回しにくい銃なのだ。
「しまっ……!」
この状態でどうなるかはわかったようなもの。
俺の予想通り、愛銃は打ち飛ばされてしまった。
「(……落ち着け…。何ができる……?)」
辺りを見回す。撃ち飛ばされた〔M14 DMR〕。なぜかは知らないが、それに目立った損傷は見られない。
次に落ちている小石や岩。
なぜか転がっている爆発物だと思われる球体。
振りかぶっている敵のがら空きな腰――。
「それだッ!」
振り下ろされる棍棒を直前で避け、道路に向かって走り出す。俺の愛銃に向かって。
この判断に至ったのは、たった一つの理由がある。ゲームだからだ。ゲームだったから、たとえ片手で撃っても、痛みを感じないと考えたのだ。現実で片手なんかで撃ったら、余裕で肩が外れるか、腕がちぎれるかのどちらかだろう。
しかし、これはゲームだ。大丈夫のはずだ……多分。
そう自分に言い聞かせて、路上に滑り込み右手でつかんだ愛銃の銃口を敵に向ける。スコープには青い体がはみ出さんほどに映っていた。
「これで…、勝ちだ……ッ!」
銃口が火を噴いた。と、同時に再び棍棒が振り下ろされた。
相討ちだ。
そう思ったが結果は違った。ゲームだと思って油断していた反動が、実はあったのだ。
俺は撃った瞬間、右肩が体もろとも後ろに吹き飛んだ。
視界がフェイドアウトしていく……。
いま目に映るのは、頭から血を噴きだしながら倒れていく敵のみ。
そして完全に見えなくなる寸前、敵は小さなポリゴンの集合体となり、霧散した。
次回予告
幕間 チュートリアル編03.ディオの試験無双・下
分けてしまったので、
12時間後、今日(2015,12/31)の午後7時(19時)に
この続きを投稿します。




