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operation flags  作者: k.はる
二章 -開始(Start)-
43/52

幕間 チュートリアル編01. シュリンプ、チュートリアルを罵倒する

これは自分が書きました。

一晩で書き上げたので、おかしなところがあるかもしれません。


約6000字です。

 幕間 チュートリアル編 ㈠

   シュリンプ、暴走チュートリアル

「ちょっと、何よそれ⁉ そんなの無理に決まってんじゃない‼」

 折野春菜こと〈シュリンプ〉は一人、地平線の先まで広がる草原の中で、怒りの感情をこめて叫んだ。

 事の発端は、今からほんの少し前のこと。

 運悪く、彼女の性格には相性の悪いチュートリアルに当たったところからなる。

 彼女にとっては、このアカウントで《OF》をすること自体、不服なのかもしれないが。


    ☬


「折野、お前にピッタリな部隊をつくることになったんだが、どうだ? 入らないか?」

 その話を持ってきたのはトカレフ――当時はまだ西園寺と呼ばれていた頃の話だ。

「あなた見慣れない顔だけど……まさか新人? 新人がなんで私を誘うのよ」

「いや、俺は新人ではない。資料を見た限りでは、俺の方が先輩になる」

「っ! すいません! 先輩!」

「いや、先輩はやめてくれ。それはただふざけてみただけだ。それに、入ったのこそ先だが位としてはほぼ同じ位置にある」

 折野はもちろん、西園寺だってあのイタい制服は着ていない。その代り、もっとかしこまった、それぞれ違う作りの制服を着ている。

「それを早く教えてちょうだいよ。まったく……」

 西園寺が先輩と言うのを耳にした境、背筋を伸ばして急にかしこまったが、その次を聞いて、その緊張感はすぐに消え失せた。

「それで、どういうことなの?」

「銃が撃ち放題だ」

「ごめんなさい、もう一回言ってもらえる?」

「だから、銃が、撃ち放題だ」

「……えっ⁉」

 途端に折野は目を輝かし、体を前にして西園寺に近づいた。

「それほんと⁉」

「ああ。本当だとも。……それより、少し離れてはくれないか」

 今となっては普通にタメ口、時に命令口調の西園寺(トカレフ)だが、このときの二人は実は初対面。さすがに相手が女性と言うこともあり、少しかしこまった口調になっている。

「お前も知っているだろ? あの計画が日本でもあるのを」

「あの計画……?」

「《OF》のことだ。しばらく先だが、日本でも行われる」

「《OF》ね。……あれ? でもそれって……」

 折野は一瞬納得したような表情をするが、再び険しい顔をする。

「問題ない。それが行われるのはまだまだ先のことだ。今はまだ試験段階であって、何も危険はない」

「そう。それならいいのだけれど……」

 下っ端である折野だが、噂である話を聞いていた。もちろんその真偽は不確かであったが、今の西園寺の反応を見るにそれは本当のことだったのであろう。

「話しを進めるぞ。この期に際して、ここの支部からも部隊を作ることになった」

「それが、あなたの言っていたことなのね」

「まあ、そう言うことだ」

「でもそしたらなぜ、銃が撃ち放題なんてことになるのかしら」

 《OF》と言うのは、あることをするためのテストであり、準備であるというのが先ほど出た噂の内容である。それが正しいと言ったのは西園寺だったはずだ。それなのにどういうことなのだろう。

 そう、折野は思っていた。

「《OF》はゲームだ。ゲームでは実際に人を傷つける能力は武器に存在しないし、ゲーム世界では法も何も存在しない。最低限のシステム以外はほとんど自由ってわけだ」

 ただ、西園寺のそれを聞いて思い直した。先ほどの言葉は噂が真実だと言っているのかと思っていたが、それは食い違いの結果であってきっとそうではないのだろうと。

 折野は性格こそ荒っぽいから一種の問題児扱いをされているが、冷静な時の頭の回転は速い。その分短気であり、目の前のことしか見えなくなってしまうこともしばしばある。

「つまり、その部隊に入れって言っているのね」

「いや、そこまで強制しているつもりはない。ただ単に、入らないかって誘っているだけだ」

「そうは言っても、そんな誘い方したら私が断らないことぐらいわかっているのでしょう?」

「どういうことだ?」

「……あなたは何も知らないのね。まあいいわ。嘘はついていないようだし」

「おまえはいったい何を一人で話しているんだ?」

「いいわ、知らないなら。聞かなかったことにしておいてちょうだい」

 二人が初対面なことは先ほど話したが、それに加えてもう一つ、折野と西園寺は配属先が違っていた。それもあり、折野の噂など知らず、知っているのは資料に書かれていたことだけだ。資料には良いところと普通のところ、注意すべきところや経歴などは書いてあったが、当然、その人を進めるのに悪評などが書いてあるはずもなく、西園寺はそのことを知る由もなかった。

「まあ、時間もそうないからそうすることにするが……」

 知らないからこそ気になるのではあるが、西園寺はしぶしぶと言った様子で引き下がった。

「折野は入隊を希望する、でいいな?」

「もちろんよ」

 間髪入れず、折野は即答した。それも、なぜか自信満々に。

「それともう一つ、すでにある程度成長しているアカウントとそうでないアカウントとがあるんだが……」

「どう違うの?」

「一言で言えば、はじめから強いかそうでないか。もちろん、強い方が使える武器も多いし攻撃力なども増す」

「じゃあそっちでお願い」

「成長済みの方だな。了解した。それだと武器の選択の方もあるのだが、それは……」

「私が使ってるのくらい、知っているでしょう?」

「軽機関銃、でよかったよな?」

 そのことに関しては、資料に書いてあった。それからするに、あまり器用ではないのだろうと、西園寺は予想している。

「その通りよ」

「では今日のところは以上だ。基地が出来次第、連絡する。ではな」

「ちょっと待ってちょうだい」

 話しも終わったことだし、さっさと帰ろうと回れ右をしようとして、西園寺は折野に呼び止められた。特にこの後急ぎの予定の無い西園寺は、特に何も考えずに折野の顔を見る。

「その様子だと、あなたがリーダーってことになるわよね?」

「今はな。《OF》の中では本部から経験者が配属されるらしい」

「りょーかい」

「それだけか?」

「ええ。ほとんど情報の無い今じゃ、質問しようにもできないもの」

「それもそうだな。あとで資料を届けておく」

「ありがとう」

「それじゃ、俺は行くぞ」

 折野に背を向けて、西園寺は歩いていった。


    ☬


「それがどうしてこんなことになるのよ!」

 そう叫びながらも、曲に合わせて体を動かす。

 このシュリンプ、今日この体操をするのはこれで二回目である。

 ログインする前から、シュリンプはただただ撃ちっ放したくそわそわしていた。

 そしてやっと始まったかと思えば、武器を使わないチュートリアル。

 少し煩わしいとも思ったが、それよりも銃への期待が勝り、それが表立って彼女が感じることはなかった。

 ただそれも、二回目となれば話は変わってくる。

 煩わしいという気持ちが、面倒くさいという気持ちが、早く銃を撃ちたいという気持ちが、彼女をイラつかせた。

 やっと体操が終わって、少し先のところまで移動しろと表示が出るから歩いたが、なぜか元の場所に飛ばされた。最初はそれにすら気づかなかったが、いくら歩いてもたどり着かないことに違和感を覚えた。もしかしたら目的地が移動しているのかも、と思ってよく観察したら、自分が戻されていることに気付いた。

 表示を見て初めて時間制限に気付くが、この時すでにラストチャンスである五回目で、しかもすでに十数秒たっている。その時から走っても間に合うことはなく、結果として体操をやり直す羽目になったのだ。

「まったく。なんでゲームの中でこんなことしなきゃいけないのよ……」

 (ひと)()ちるが、体は動かす。

 なぜか第三まである体操を、二回目であるから特に難もなくこなしてゆく。

 ぽーん。

『チュートリアル『個人』を開始します。先の印のあるところまで移動してください』

「もうやり直しなんかしないんだからっ!」

 シュリンプは全力で走る。

 あんなことを二回させられら屈辱と、いろんなものが詰まったイラつきが、どんどん彼女の速度を上げていく。

 ぽーん。

『試験は成功です。個人チュートリアルに入ります』

「はぁ……やっと……はじまる……のね……」

 ウインドウの時間こそ見ていなかったから正しくは分からないが、制限時間をかなり残しての成功だった。

「それに……しても……なんで……こんなに……疲れるのよ……」

 それは、シュリンプの加速が速すぎてスタミナがゼロになったからにすぎないのだが、それを教えてくれる人物は、今この場には存在しない。

 ぽーん。

『チュートリアル『個人』を開始します』

 そのウインドウが出た直後、どさっとシュリンプの体に重みがかかった。

「これ……、機関銃!」

 シュリンプは喜びの声を上げた。

 やっとはじまった。やっと撃てるようになった。

 はしゃいで、飛び跳ねて、声を上げる。

 ただ、その喜びで次に出てきたウインドウを見損ねていた。

「あれは、的?」

 少したって落ち着きを取り戻したシュリンプは、少し先にある的のような丸い板を見つけた。

「あれを撃てばいいのね!」

 テンションが上がって、シュリンプの機嫌はかなり良くなっている。

 ちょっとやそっとのことで、それは悪くなることはない。

 でもこれから起こることは、その『ちょっとやそっと』の範疇を超えていたのだった。

「そんなこと、機関銃なら朝飯前よ!」

 彼女はもっぱら機関銃使いだったが、西園寺からの勧誘の後、一通り他の種類の武器も使い慣れろと訓練する機会があった。だからこそ、集中力が必要な狙撃銃ではなく、引き金を引けば数えることのできない速さと数で弾が飛んでいく機関銃なら、こんなこと楽勝と思っていたのだ。

「いっけぇーい!」

 いろんな単語が混ざった不思議な言葉を口から放つと同時に、銃口からも弾が放たれていく。

 シュリンプが今使っている機関銃は〔M249〕、通称〔FN ミニミ〕の改良型である。使う弾はロッテルの〔SR-25〕やディオの〔M14 DMR〕と同じ【7.62×51mm NATO弾】であり、それがベルトリンク式で給弾される軽機関銃だ。陸上自衛隊でも使われていたこの軽機関銃は有効射程が700m、最大射程はまさかの3600mもあるため、狙撃眼鏡――スナイパースコープをつけることで狙撃用武器としてもつかわれる。

それもそのはず。狙撃銃分類である〔SR-25〕の有効射程800mと100mしか違わないのだ。使う弾は同じなのだから、この差は銃の性能の差であろう。とはいえ、実戦となればその差も大きくなるかもしれないが、ゲームである以上そうでもないと思われるし、そもそもそれが連射できるのだから、問題があるどころか逆によすぎるくらいなのだ。

 発射速度は分間730発と、軽機関銃としては決して悪くはない数。

 それを一秒以上も撃ち続けたのだから、放たれた弾の数は20に近い。放たれた弾は弾幕となり的に襲い掛かるが、心のほか的が小さく着弾することはなかった。

 だが、問題はそこではない。

「的が……消えた⁉」

 一瞬撃ち壊せたのかと思ったが、的を立てていた杭もなくなっている。さすがに機関銃とは言えどそこまでの破壊力はない。

 だから、シュリンプは的が消えたと判断したのだ。

「っ⁉」

 癖のような感じで周りを見ると、もともと的があったところからシュリンプに対して100度ほど右に的があった。そのまま一周見渡すが、それ以外に的は存在していない。

 それを確認すると、すぐに手持ちの機関銃を構えて銃撃を開始する。

「またっ⁉」

 そして再び、的が消えた。

 先ほど同様着弾はゼロ。

「まさか⁉」

 周りを見る。

 今度は今消えた的からちょうど反対側に新しい、否、移動(・・)した(・・)的が存在していた。

「どういうこと⁉」

 シュリンプに、だんだん落ち着きがなくなってくる。しかし、当てらないことに怒りは覚えず、ただ混乱しているだけなのはこのチュートリアルを運営しているシステムにとっては救いであっただろう。

「そういえば……!」

 二度目の的が消えたとき、ウインドウを見つけていた。混乱していてよく読まなかったが、確か見たことのないことが書かれていたはずだ。

 そう思って、シュリンプはウインドウを見る。

『テストを開始します』

 ウインドウの上部に大きく題(?)書かれていて、

『テスト:的を撃て』

 その下に、題より少し小さくなった文字で内容が書かれていた。

「撃ったじゃない、的!」

 ウインドウに向かって文句を言うが、生物どころか映像だけで、存在のしないウインドウが返事をするはずもなく。

 ただ、行動を起こす前にあるものを見つけて、静かになるシュリンプ。

『的はある一定の半径を持った円上のどこかに出現します。弾が的に当たらず、なおかつ的から1mの範囲内に一発でも弾が通った時点で、的は移動します。また、このテスト中は地面の印から外に出ることはできません』

 地面の印とは、先ほどの試験の時の目印だと思われたもので、大体寝そべっても範囲から出ない直径2mほどの円のことだ。

「ちょっと、何よそれ⁉ そんなの無理に決まってんじゃない‼」

 こうして、この話の最初に戻る。

 『無理』というのは二重の意味での話だが、今回の場合は一つしか当てはまらない。

 まず機関銃の特性の話だ。

 『連射性』を極めた銃こそが機関銃であり、それに『正確さ』を加えるのは難しい。とはいえ、この〔FN ミニミ〕にはこの『正確さ』が備わっているからこの問題は解決したといっていいだろう。

 そして二つ目の、解決しない問題はシュリンプの性格の話だ。

 悪評があったように、シュリンプは気が荒い。こういった精密射撃というのは苦手も苦手。このチュートリアルとの相性は最悪なのだ。

 だからと言って、シュリンプはやるしかない。成し遂げるほか道はない。

 シュリンプは知らない。チュートリアルを変えることができることを。

 そして、テストに失敗など存在しないこともまた事実。

 そのせいで、テストをクリアする道一つ以外どこにも道は存在しないのだ。

「まあでも、やってやろうじゃない! 上等よ!」

 幸い、今のシュリンプは銃が撃ち放題と機嫌がいい。こんな無茶ぶりをしてくるチュートリアルに対しても、乗り気であった。

「私は待ったのよ。それが、やっとできるのよ。こんなことで、あきらめるわけないじゃない!」

 シュリンプは軽機関銃を構え、そして、薙ぎ払うように掃射を始めた。

 彼女自身、狙撃はできないと悟っている。

 だから、無茶ぶりには無茶をする考えで、たまたま(・・・・)、的に弾丸が当たることを狙ったのだ。

 この作戦は不可能に近い。でも彼女が狙撃を成功させることに比べれば、まだ望みがあった。

 轟音に近い発射音と、空薬莢が飛び散る音が、この限りなく広い草原に響き渡る。

 撃ちまくれる快感と、興奮と、そして無茶をして狂ってしまったシュリンプには短く感じた。だが実際、弾が的に当たったのは時計の長い針が一周した後のことだった。

この幕間の続きはありません。

(要望次第では書くかもしれませんが)


次回予告

 幕間 チュートリアル編02.ディオの試験無双・上


うまい区切れがなかったので、内容省略。

長いため半分に分けました。


(3日後、2015,12/31予定)

お楽しみに。

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