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operation flags  作者: k.はる
二章 -開始(Start)-
41/52

二章・5-7

ここ数回よりは長いですが、

いつもよりは短めの約4000字です。

ついに二章・5が書き終りましたが、

wordでまさかの25ページ、

計22744字という、おかしな数字になりました。


最近、三人称で書くのにはまっています。


「で、また振りだ――」

「いや、それさっきの俺のセリフだし! そもそもその場所から逃げてきたんだし!」

 ロッテルがふざけるのを俺が全力で止めにかかる。

「それもそうだな」

「なんだかんだ言って余裕だよねー。ロッテルは」

「そうでもしないとやってらんねえんだよ、こんなこと」

「だからってふざけなくていいじゃん!」

「別に害ねえだろ? 時間だっていっぺえあるんだし」

「それに関しては、俺たちが他の人たちを待たせてる可能性だってあるんだけど……」

「それは……、そうだな」

 ロッテルを何とか説得できたようだ。

「半数以上の人が新人じゃないんだし、遅れ取るんだよ?」

「分かったって。――――っ⁉ 何事だ⁉」

 突然轟音と、それに伴って地響きが発生した。

 それは地震とも、また地割れとも思えるが、さっきのことを経験している俺たちにとっては、あの[スコック・ピローン]が出てくるときの現象が頭に浮かぶ。

「まさか、あれがもう一体…………。メリ、なんでお前はそんな平気な顔してんだ?」

 そんなこと、決まっているじゃないか。

「お、おい。まさかお前、これの原因知ってる……いや、お前が原因じゃないだろうな」

 ロッテル君。お見事。大正解!

「いったい何したらこんなことになるんだ! 説明しろ!」

「いやまだ俺一言もしゃべってないんですけど⁉」

 心の中で思っていることが、俺の知らないうちにロッテルに伝わるはずがない。幼馴染であっても双子ではないし、一卵性双生児なんてもってのほかだ。

 ――――双子(または一卵性双生児)であっても、無言で意思疎通なんてできるとは思わないが。

「でもお前の仕業なんだろ?」

「まあ……うん」

 だからと言って、まったく意思が伝わらなくもない。いや、この場合は隠しきれないと言った方が適切かもしれないが。

 幼馴染とは怖いものだ。今回は別に隠そうとしていなかったのだが、それでも何も言わなくてもそれが正か否かくらいは伝わってしまうのだ。

「なにしたんだっつうの」

「別に、さっきの仕掛けを準備しといただけだけど?」

「『さっきの』? ……あの【手榴弾】のか?」

「そうだけど?」

「にしては威力がありすぎだろ。あんなよええののわけがねえ」

「ほんとだよ? まあ、隠す必要もないからものすごく大量に使わせてもらったけど」

「おまえの大量っつうのはどれくらいかわかんねえが……。くそ、残数無限のせいで使った数が分からん!」

「まあ、仕掛け自体は10も作ってないし。あとは近くにばらまいといただけ」

「だからあんなに長く爆発が続いてたわけか」

 もう爆発音は止んでいるが、20秒くらいは続いていたと思われる。

 敵を見ようとするが、依然としてその煙は晴れていなかった。

「そんなことより、ロッテル」

「『そんなこと』ってなんだよ。大事なことじゃんか」

「弱点分かったよ」

「……ほんとか!」

「ほんとだよ。ね、『そんなこと』より大事なことでしょ?」

「まあ…………まあ、な」

 今だ煙は晴れていないが、模擬戦の時に俺はある機能を見つけた。

 それは、一度視認した敵(または味方)のシルエットをウインドウで出せることだ。

 本来、見方や敵がどこを負傷しているかや現在どのような状況にあるのかを知るためにある。だが、俺の特殊スキル⁅弱点特定⁆を使うと、そのシルエットの弱点の場所に同じような赤の蛍光色の印が付くのだ。

 今の爆発の仕掛けは攻撃のためと言うよりかは、どちらかと言うとこの⁅弱点特定⁆スキルを使うためであった。

 もしシルエットが一方行からだけの場合は分からないが、今は前後左右の四方向から見られるのでしっかり弱点が分かった。ちなみに見る方向は設定で変えられるらしく、任意の一方向からのものやウインドウをスライドすることで見る方向を変えられるもの、空間に立体のホロウ画像として映しだすこともできるらしい。

「で、どこなんだ? その『弱点』ってのは」

「まあ、予想通りっていうか……」

「もったいぶってねえで早く教えてくれよ!」

「うん。その……『節』だ」

「『節』って……あの『節』か?」

 ようやく煙が収まり始め、うっすらと見えてきた敵の脚の節を指さすロッテル。

「んーと、それ以外にどこがあるのかわからないんだけど」

「だがよ、あれどう見ても他んとこより硬そうじゃねえか」

「まあ見た目はそうなんだけど……」

 普通に見た場合、節の外側には盾ともいえる硬いものが付いているように見える。

「でも結構弱いんだよねー。あの場所」

 しかし、実はもげ易かったりする。その部分は細くなっていて、動く分堅くても硬くはなっていない。ただ本体に比べてかなり小さいので、まさかそんなことはあるまいと無視していたのだ。

 まあ、『弱点は難しいところにあるもの』と考えれば、かなりいい場所なのかもしれないが。

「そこを俺が狙えば良いっつうことか?」

「いや、それはロッテルの仕事じゃないよ。さすがに狙撃は無理あるって」

 さっきも言った通りその場所はかなり小さく、そして何より狙いにくいのだ。

 一見すると同じ意味にも思えるがそうではない。正面から狙いにくく、できれば内側から狙いたい場所のためはっきり言って狙撃銃の意味がない。それなら、いっそのこと俺が斬りに行った方が早いということだ。

「節への攻撃は俺がする。だからロッテルはその間動かないように引きつけるか、口にでも攻撃してて」

「いや、そっちの方がスナイパー向きじゃねえと思うんだが……。それに、口だって硬いだろ」

「でも、さっきロッテルが口に攻撃したとき、体力結構減ってたよ?」

「まあ、他の場所よりは効くだろうがよ」

「それで十分だって! 俺なんか斬りつけてもびくともしなかったんだから」

「それは俺でどうかと思うが……」

「じゃあお願いね!」

 そう言い残して、俺は敵に向かって突っ込んでいった。



「ったく、無責任にもほどがあるだろ。あいつ……」

 ロッテルもメリオダス同様走っていた。だが、メリオダスが敵の後方へと走って行くのに対し、ロッテルは敵の前方へと走っている。

「こっち向け! でけえのっ!」

 敵に向けて数発撃つ。狙いは走っているので儘ならないが、注意をひくためならそれだけで十分だ。

 マガジンの予備だって、【手榴弾】と同じく無限だ。ケチる必要なってまったくない。

 だから撃ちまくる。

 〔SR-25〕はセミオートだから引き金引きっぱなしの連射こそできないが、セミでもオートであることには変わりない。狙撃中の威力でリロードがオートなのだから、引き金を引く度に撃つことができるのだ。

「そういやこいつ、さっきから動かねえよな……」

 試しに体力ゲージを見てみると、いつの間にか1/4も減っていた。

「ったくメリの奴、一体どんだけ爆弾仕掛けたんだっつうの」

 腹部が弱点でないことは確認済みなので、『弱点を攻撃したから』大ダメージを与えられたというわけではないということは分かっている。

 にもかかわらず、それだけの体力を威力弱めの【手榴弾】で削ったのだから、相当な数仕掛けたのであろう。そもそも半径3mそこらの爆発しか起こらない爆弾のはずなのに、100mをも超える巨体の持ち主である敵をすっぽり包む爆発が起こったのだ。爆弾の数など、考えなくとも常識を超えて多いことが分かる。

 そんな爆発に包まれたとは言え、さすがに体力が減り過ぎだと思う。

「そういやあいつ、弱点が節だっつってたよな……」

 よくよく考えてみると、その爆発の中に脛ももちろん入っている。だとすれば、弱点を攻撃できたわけだが、

「にしたって、さすがにこれは減り過ぎだろう」

 思考と同じく、体も進んでいく。

 もう十分、節が狙える位置に来ていた。

「ま、一発くれえいいだろ」

 メリオダスには口を狙えと言われていたが、ロッテルの中でどうしても弱点――節を攻撃したいという気持ちがあった。

 敵の頭部まではまだ距離があるし、それをほぼ正面から攻撃しないと口は狙えないから目標とする地点まではまだまだ距離がある。

 その時間つぶしに、少し狙ってみることにしたのだ。

 ⁅遠視⁆のおかげでスコープを覗かなくとも十分あてられる位置に、それはある。

 走りながらも揺れを抑えて、狙いを定める。

「っ!」

 走りながらの精密狙撃には、やはり負荷がかかった。銃が下がって、肩に反動が伝わってくる。

 だが、そんなことよりも気が言ったのは銃弾の方だ。何も聞こえてこないのはもちろん、敵が反応する様子もない。体力ゲージを見ても変わっていないように見える。

「やっぱあいつの仕掛けた爆弾の量が……」

 そう言いながら体の向きをかえかけて、視界の端に何か光るものを見つけた。

「なんだ?」

 さすがに小さく、この距離でもスキルだけではよく見えない。でも気になってしまう。

 仕方なく、走るのをやめてスコープを覗いた。

「おい……、嘘だろ…………」

 誰もその言葉に否定はしない。そして実際、それは本当のことだった。

 ロッテルが見たのは落ちてゆく銃弾。もちろんそれは、ロッテル本人が撃ったもの。

 それは、今の攻撃が弾かれ、防がれたことを意味していた。

 確かに弱点を守るものは固いというのは常識だ。だからと言って、近距離から放った狙撃銃の弾を弾き返すほどの硬さは非常識だ。

「こりゃやっぱり、あいつが常識外れだったのか。それとも――――」

 あいつの予想が正しかったのか。

 爆弾が常識外れに多かったのは確かだが、それだけでは今の現象の説明はできない。

 そうすると、やっぱり『内側からじゃないと攻撃が効かない』と言っていたメリオダスが正しかったと認めるしかない。

「ったく、理科関係だけはあいつに負けんだよな……」

 『霧野』はそんな言葉を漏らした。

 霧野が子供のころひたすら家で漫画やらゲームやらをしていたとき、メリオダス――――向井はひたすら外ではしゃいでいた。しきりに俺に誘い掛け、断られてもなお一人で走り回っていた。それでなぜ体力で霧野が勝つのかはわからないが、確実にそう言った知識の量は向井に軍配が上がるのだ。

「っし、今回の主人公(ヒーロー)はあいつに譲ってやるっ!」

 叫んで闘志を上げる。

 ロッテルは自分の役目を果たそうと、持ち場へと走って行った。


次回予告 二章・5-8 (二章・5ラスト)


「ああやって、格好つけては見たものの……」

 作戦自体、ほとんど白紙に近かった。


メリオダスの逆襲(?)です。

一体、どうやって倒すのでしょうか。


(三日後、2015,12/25予定)


お楽しみに。

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