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operation flags  作者: k.はる
二章 -開始(Start)-
32/52

二章・4-3

「メリ! すまん、一体取り逃がしたっ!!」

 俺はそう叫んだ。

(畜生、左右同時とか無理あるだろ!)

 そう。いま[コノル・ビータス]は俺のいる岩を挟んで左右両方を進んでいる。

 俺はメリの反対側――走ってくる敵を正面に左側に来た敵を撃っていた。その数3。近場の敵はすぐ撃てるから銃で倒して遠い奴は【手榴弾】投げて一体ずつ確実に葬る。

 何せ【手榴弾】は本当の意味で無限にある。メニュー操作で手のひらの中に出せるから、メニューさえ開きっぱなしなら使い放題だ。

 マガジンも無限だから銃を乱射してもいいのだが、攻撃範囲が狭く命中率も細かく狙う余裕がない分ダメージを与えにくい。また、一つのマガジンは20発分でセミオート方式だから連射も可能だが、付け替えの時間を考えたらこっちの方が効率的だ。

 まあ、そもそも俺の〔SR-25〕はスナイパーライフルだから近距離で連射するのはどうかとも思うが、前にも言ったように自衛用にも使えるのだ。そこまで問題はないだろう。

 それは置いておいて、この〔SR-25〕を足元に置いた状態で俺は走り去ろうとする[コノル・ビータス]に【手榴弾】を投げていた。

 そんなとき、ふと目に入ってきたのだ。後ろから走り去っていく敵の姿を。

 ただ、自分が倒すべき敵は目の前に一体残っているし、他にも10以上後から来るのだ。もしここで二体とも追った場合、どちらも倒せないだけではなくあとから来る敵も逃してしまうだろう。

 一番初めの群れだからか走るペースはゆっくりで数も少ない。そんな状態で逃しているようじゃ後が思いやられる。

だからこそ俺はメリを呼んだのだ。

 今メリの方に向かっていく敵の姿はない。だから、少し追いかけても問題は無いはずだった。

 メリ自身も、それが伝わったようで走り出している。

「よし、これで何とかなる」

 そうつぶやいて、ふと思った。

(いや、俺の武器スナイパーライフルなんだから別に離れてても狙撃できんじゃねえか!)

 まだ敵とメリとの距離はあまり縮まっていない。もしかすると追いつけないかもしれない。なら、俺が倒すべきだ。

 とはいえすぐには実行できない。

まずは目の前の敵だ。

 俺は戦法を変えることにした。

 今までの戦法は通り過ぎていく敵を撃って、投げて倒していた。

それをこちらから撃っていく方法に変えるのだ。

 俺は〔SR-25〕を手に取って、構える。

 そして、スコープを覗いて大体位置を合わせると、そのまま連射を始めた。

 10体の敵は大きく4体と6体に分かれている。

 まずは距離があまり離れていない6体の方。

 狙いがあっていたのだろう。付け替えたばかりのマガジンの一発目――曳光弾が敵の先頭に当たった。それだけでは致命傷にはならなかったが、今は連射をしているのだ。そこまで狙いがあっていれば他の弾も必然と当たる。他の敵がない以上防御態勢をとる必要がないし、周りへの警戒も不要だ。もちろんそれは今だけだと分かっているが、今は仕方がないことだと思う。

 銃口から撃ち放たれた【7.62×51mm NATO弾】が、吸い込まれるように次々敵に命中していく。それも、この敵に対しては過剰すぎるというほど。

弾を撃ち切りマガジンが空になるころには6体すべて、血を流して倒れている、または倒れ始めている状態だった。

 残しても捨てるだけの弾なのだ。せいぜい気を晴らそうと、俺はマガジンひとつ分の弾を撃ち切った。

 素早くマガジンを抜き捨て、新しいものをメニューのアイテムから具現化し、装着する。

 残りの4体の方を見ると、まるで逃した一体を追うように走っていた。

 まるで、その場所を走ればやられないとばかりに。

 ただいまは違う。俺がしっかり狙いを定めているのだ。

 さっきの6体と違って50m以上……80m位離れている。

 レベルの問題か熟練度の問題かは分からないが、今はかなり命中率が低い。最初の遠距離狙撃だってあれほど群れになっていたからこそ、それでもたまたま一撃で倒せたのであって、近場でもないのに一体を狙うなんて今の俺にはできない。

 だからさっきみたいな連射作戦はあまり使えないのだ。

 今度はしっかりスコープを見て、動く敵に合わせるため伏せはしないものの、それでもずれないようにできるだけ体を地面に固定した状態で構える。

 俺の特殊スキル、⁅遠視⁆を使えば良いとも思うが、あれはあくまではじめだけだ。大体位置が分かれば、後はスコープを使えばさらにはっきり、精密に狙うことができる。

 目で狙いが付いたって、銃口の狙いが定まらなければ意味がないからな。

 狙いが付いたところで俺は発砲を始める。

 さっきと違いあまりむやみには撃たず、できるだけ正確に。

 先頭の頭に狙いをつけていた一発目に向かって撃った弾は、その腹に風穴を明けた。

 そして、その衝撃で体を揺らし、倒れた。

 敵、しかもプログラミングされたモンスターのくせに、その様子を見た後ろの3体が少し走るスピードを緩めた。

 警戒しているのだろうが、しかしそれは俺に的にしてくれと言っているようなもの。

 銃口をずらしてそいつらに向け、そのまま立て続けに連射しながら銃口を動かしていく。

 弾道と言う名の刃で敵を横薙ぎにするがの如く、銃弾を撃ちつけ、瞬く間に残りの3体を撃ち伏せた。

「っし!」

 メリの追う一体を残して敵すべて倒したことにガッツポーズをとりながら、第二群の距離を確認した。

 残り800m。

 細やかな疑問だが、一体この群れはどこから来ているのだろうか。なぜもこんなに多量に、しかも一度に走って移動しているのだろうか。それと、一体最後の群れは今どれくらい離れているのだろうか。

 いや、今そんなことは考えている余裕はない。敵に集中しなくては。

 すでに300m以上離れた残りの一体を倒すべく、俺は今いる岩の上で伏せ、仕舞っていたバイポッドを再び出し、岩に固定。⁅遠視⁆で向きを合わせてからスコープを覗く。

「確実に一撃で倒してやるっ!」

 スコープに敵――[コノル・ビータス]の姿が入った。

 俺はそれを外さないように追いかけ、そして引き金に指をやる。

 そして、引き金を引きだした。

 その時。

「メリっ!?」

 スコープに入ってきた仲間の姿に驚き、少し向きをずらしてしまった。

 ただ時すでに遅し。指は引き金を引ききっていた。

 幸いと言えば、大きくずれる前に撃てたことだろう。

 俺はスキルを使って撃った先を見る。

 すると、弾が当たったのだろうか。前に倒れていくのが見えた、後ろの追う方の影が。



「うわ……」

 俺はたまたま振り返った時に見たロッテルの攻撃に対し、そう漏らした。

 あまりに残虐と言うか、残酷と言うか。

 ロッテルの乗った岩の近くを通った敵が大量の弾丸が撃ち込まれて、血飛沫を飛ばしながら次々に倒れていく6体の亡骸。酷いものだと地面に体がつく前にポリゴンとなって霧散している。もしこの世界でロッテルを怒らせたら自分がああなるのではないかと、背筋に悪寒が走った。

 だが再び前を見て、その思考はどこかへ吹き飛ぶ。

 今は敵を追いかけているのだ。

 ロッテルがあんなに頑張っているのだ。自分がこうしてはいられない。

 敵との距離は、もう10mを切った。最後のひと踏ん張りだ。

 遠くで再び銃声が鳴りだした。ロッテルが残りの敵を殲滅しているのだろう。あの攻撃の仕方はこの言い方があっていると思う。

 5mを切った。

 銃声が鳴りやんだ。倒し切ったのだろう。

 つまり、これを倒せば最初の群れを全滅させられるということだ。その機会、逃さない。

 残り3m。

 斬りかかりの態勢に入った。

 右の腰にさがった鞘から〔ジャックナイフ〕を引き抜き、右手で構える。

 一撃さえ決まればいい。あとは勝手に血を流して倒れていくだけだ。

 右手を振りかかって、斬りかかろうとした。

 その時、銃声が聞こえた。

 だが、集中している俺の耳には入ってこない。

 しかし、その銃声はこちらに向かって弾を撃った時のもののようで。

 ドンッ

 飛びかかるために踏み切ろうとした足のほんの少し先に弾が命中。

 もちろん、弾の存在など知らなかった俺はバランスを崩し、混乱状態に陥った。

「無駄になってたまるか!」

 勢いよく、でもバランスを崩しながら前方に飛んでいる自分の体は少しずつ地面に、そして敵に近づいていく。

「はっっ!」

 そして、敵から体が離れ始めたとき、勢いよく目の前にある敵の足を斬りつけた。

 うまくいかないかもしれない。

そう思ったが、俺が地面に腹から倒れ込むのと同時に、敵――[コノル・ビータス]も、斬りつけた足から崩れるように倒れ込んでいった。

 その足は、現実世界にはない、赤の蛍光色が灯っていた。


テスト前書き溜めが尽きた―!

……大丈夫です。何とかできました。

3日ごとの更新はこのまま続けます。


次回予告 5-1


「えっ……」

 倒れていく俺、そして敵。

 俺の斬りつけた足から崩れるように倒れ、動かなくなった。

 死んだわけではない。だが、足が使えなくなり、走ることができなくなったのだ。

 そして、そのあとの体力の減り方が凄まじいようで、もうほとんど残っていない。

 倒れてわずか5秒なくして、敵は霧散した。


(3日後 11/28に更新したい……できます。たぶん)

お楽しみに。




作品は変わりますが、明日明後日と

《ウォーターガン》

《愛を知りたい》

の更新をします。

大変お待たせしました。

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