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operation flags  作者: k.はる
二章 -開始(Start)-
31/52

二章・4-2

近状報告。

もともと二章にするはずだった第一回部隊大会(大会名考え中)の部分を三章に変更したのも少し前のこと。

ノートでこの《OF》を作っていた時に一緒に書いていた人と話し合った結果、この部分がついに四章になることが決まりました。

かなり先まで内容が決まっていて喜ぶべきなのか、四章までに一か月しか進まない(話の内容が)と悲しむべきなのか……。

(すいません、前書きが長くなりました)

※'15,10/20現在の話です。

今回は結構長めです。

「多っ」

「言ったろ? 50だって」

「にしても……」

「俺は攻撃はじめるぞ。話しかけるなよ」

「はーい」

(ったく、どこまで気が抜けてんだか……)

 そう思いながら、俺は岩をよじ登って狙撃銃――〔SR-25〕のバイポッドを出して岩上に設置、【7.62×51mm NATO弾×20発 マガジン】をメニュー画面操作で呼びを含めて二つ取り出し、一つは装着し、もう一つは銃の隣に置いた。

 ちなみに、今だからこそメニュー画面から取り出せるが、試合中などでそれが行えなくなるという制限がある。また、戦闘中に画面に意識を向けることは難しいので普段は予備の分はメニューから出しておくのが基本だ。

 装填、と言うが、普通は装着するものをもってボタンを押すだけ。手動でした方がいい人もいるため手動でも可能だが、方法が分からない、または慣れていない人のためにこのシステムがある。もっとも、メニュー同様戦闘中に手動に比べてボタン操作は難を極めるのだが。

 俺の特殊スキル、⁅遠視⁆の機能で群れがあと1㎞まで近づいたことが分かる。

 もともとこのスキルは遠距離狙撃の保護スキルで、道具を使わなくてもある程度の距離なら道具なしでも正確に狙え、それ以上でも普通に見るよりは正確に見える。

 その副機能で、距離を測ることができる。とはいえ、あくまで射程と比べるための物だから、そこまで便利ではない。

 もちろんだが、⁅遠視⁆であり、『透視』ではないため目標が何か物の陰にあったら見ることはできない。

 残り800m。

 まだ射程に入らない。

 この〔SR-25〕の有効射程は600m。だから当てることを気にしなければ今撃っても届くかもしれないのだが、それでは何の意味もない。

「っと、あれを忘れてたぜ」

 俺はメニューを操作して【手榴弾】を5つほどだし、予備のマガジンと同じところに置く。

 そして、俺は構える。

 まだ射程の外だが、その前にしておきたいことがあった。それは、曳光弾の発射だ。

 とりあえずどこまでなら狙えるか、そして、風の影響をどれだけ受けるかを知りたかった。

 今は少しながら風が吹いている。それこそもっと大きいものや近いところを狙えば何も問題ない程度だが、これぐらい射程があると試し撃ちなしで当てるのは難しいだろう。

 いや、そもそも動いているから一匹に狙いを定めることはできない。それでも、群れの中に撃ち込めるかどうかという問題があった。

 残り700m。

 それが表示されるかされないかというときに俺は曳光弾を発射した。

 光を発しながら弾が飛んでいく。

 (たぶん)朝日が逆光になって射しているので光(弾)を追うのは難しいが、⁅遠視⁆のある俺なら目で追っていれば見失うことはなかった。

 俺はその弾の着いた位置の近くにある岩をマーク。それを超えたら狙撃を始めるつもりだ。

「ロッテル! やっぱり殲滅手伝ってよ!」

「だから話しかけるなって言っただろ!」

 そうは言いながら、俺はメニューを操作してマガジンをもう一つ出した。

 忘れていたのだが、この〔SR-25〕はその装弾数の多さから緊急時の自衛用にも使えるという。

 つまりは、近距離にも使うことがあるということだ。

 装填がセミオートであるため、他のスナイパーライフルに比べ短い間隔で連射もできる。

 それこそ、メリオダスの言う殲滅も手伝うこともできる。

 それを思い出した俺はそれ用にもう一つマガジンを出したのだ。

 次の群れまでは間隔がある。最悪すべて使い果たしても、それを準備する時間は余裕と言っていいほどある。俺は近距離攻撃もすることにしたのだ。

 と言うところまで考えが言ったとき、残り600mを切った。マークした岩まで10mもない。

「(そう言えば、メリの奴に爆弾使えって言ってなかったな)」

 そうつぶやいたとき、群れはマークを超えた。

 俺は先頭を狙って撃つ。

 ドォンッ

 鈍い音が聞こえた。

 弾は見事に先頭に命中、一発で体力をすべて削り取ったらしい。

 その時はいった情報だが、あのモンスターの名は[コノル・ビータス]と言うらしく、体力が極端に少ない。レベル1の始めたばかりの俺たちの体力の1/4以下だ。

 これなら全滅させることもできるかもしれない。

 とはいえ、俺には一発でうまくいっても二体ほどしか倒せない。

 後は手榴弾とメリ次第だな。



「さすがはき……ロッテル。無理だって言ってたのに一発で仕留めてるじゃん!」

 俺はロッテルの腕に驚いた。

 ロッテルには見えているようだが、俺にはまだよく見えないからステータスが確認できない。でも、この様子を見るとあのモンスターの体力は少なそうだ。

 まあ、俺の比較はあの[ドルベア]だから、群れを成している以上月とスッポンくらいの差がありそうだけど。

 そんなことより爆弾だ。

 ロッテルはあるって言っていたけど、どこ探しても見つからない。

 そもそも単なる『爆弾』ってあるのかな? わからないけど。

「もしかして、これ?」

 見つけたのはアイテムの中の【手榴弾】の文字。

 うん。きっとこれだ。

 さっきからひたすら武器の項目の中を探していたから見つからなかったが、アイテムのところを探すと見つかった。他にも回復系と思われるアイテムもあったが、やはり《OF》、『ポーション』とかのゲームじみたものではなく、『――薬』とか栄養補給剤とかだった。

「おぉ……」

 『手榴弾』の文字を押すと、手の中に【手榴弾】が現れた。学校の教科書やテレビでは見たことがあったが、現物は触ったことはおろか見たことすらなかった。

 もちろんここはゲーム内だから実際触っているわけではないが、それなりの感触が伝わってくる。

「でもなんで ∞(むげん)?」

 そう。画面には『手榴弾 : ∞』と表示されていた。たぶんこれがロッテルの言う補助なのだろう。

「なんか真面目に戦ってた自分が馬鹿に思える……」

 だが、後にトカレフにこのことを話した(正確には現実世界で霧野にばらされた)ら、短剣など特攻や近距離のチュートリアルには爆弾がなかったようだ。と言うよりも、実はある方が少なく霧野が狙撃だったからあったそうだ。

 コンビチュートリアルの時は武器やアイテムが共有されるから俺も使えたらしい。

「メリ! もう来るぞ!」

「りょうかーい!」

 別にふざけてはいない。かむのが怖くて早口に言えないだけだ。

 ロッテルは岩の上に膝立ちしていた。あれは痛そうだ。

 ……ってそうじゃなくて、近距離攻撃の態勢に入ったということだ。

 前を見るともう50mを切っていた。

 俺はもう一つ【手榴弾】をだし左手で持つ。いや、両手投げするわけじゃないんだけど。

 このままだとピンが抜けないことに気付き、左手のをポケットに入れた。

 そして右手の【手榴弾】のピンを抜いて群れに向かって投げる。もちろん、個人チュートリアルの時の反省を生かして空中で移動しているときの時間を計算して、爆発するのが群れの中央のモンスターの頭より少し高い空になるようにした。

 俺はそれが爆発するのを見届けず、次の【手榴弾】を構える。

 爆発音を耳にして群れを見ると爆発したと思われるところの下にいた一匹が即死していた。だが、それもたった一匹で爆発したところにいた敵のほとんどが半分以上の体力が残っていて、それどころかまったくダメージを受けていないのもいる。

 さすがは【手榴弾】、それも初期の補助用。威力が弱い。

 敵の体力が少なかったから(一匹だが)倒せたものの、あれを俺が受けたって大して脅威にはならないだろう。もちろん触れるほど近いところで爆発したら1/3くらい体力が削られるだろうが、あれだけ範囲が狭いなら余裕で避けられそうだ。それを意識できていればの話だが。いや、それでも継続ダメージやら即死やらがあるから、それこそ投げ損ねとかで間近で爆発したら生き残れないかもしれない。

 すでに群れまで10mを切っている。【手榴弾】を取り出している余裕はなさそうだ。

 マップを見ると、群れは始めより20匹以上数を減らしていた。

 俺が(二つの)爆弾で倒したのは5匹だから、15匹以上ロッテルが倒したことになる。

 ロッテルすごい。

 ……って、感心している余裕はない。

 俺は〔ジャックナイフ〕を構えて突撃する。

 それにしてもあの角は危険そうだ。

 体力が少ないから攻撃力も少ないとは思うけど、でもあの角はなんか嫌な予感がする。

「やーっ!」

 俺は声を上げて気持ちを切り替える。少しも油断はできなさそうだ。

 よく見ると、さっきまでロッテルの居る岩に向かって走っていたモンスターが、今は俺に向かって走っている。

 武器をもって突撃していく様子を見て敵判定されたのだろう。

「[コノル・ビータス]……」

 俺は表示を見てつぶやいた。

 さっき体力ゲージを見ることのできた時点で名前を見ることができたが、気にしていなかった。今俺は初めて目の前のモンスターの名前を知ったのである。

「もしかして、ほんとにヌー?」

 それは見た目からも言えることだが、俺が一番そう思ったのは名前だ。

『ヌー』、正式名称は『オグロヌー』または『オジロヌー』であり、名前の通り黒と白の個体がいる。今目の前にいるのは黒っぽいから『オグロヌー』だろう。そして、この『オグロヌー』の学名は『Connochaetes taurinus』で、異名に『ウィルビースト』と言うものがある。この二つを混ぜると、なんとなくこの[コノル・ビータス]の名前になる。

 たぶんこの推理はあっていると思う。

 そうすると、この群れの頭数も頷ける。『オグロヌー』は大体10頭から数百頭の群れをつくるのだ。本来なら他の群れと一緒にいることが多いが、それは今がゲームだからだろう。もしかすると、チュートリアルだからかもしれない。

 そして、これが当たっているともう一ついいことがある。

 それは、この群れに統制がないということになるからだ。

 リーダー格がいないのはもちろん、一緒に行動しているだけで協力しているわけではない。だから単体で襲ってきても、仲間が攻撃を受けているから助けないと、とはならないはずなのだ。どちらかと言うと、まずい、逃げろ、となる。

まあ、今の場合はこっちの方が厄介なのだが。

 何でこんなに詳しいかって?

 それは俺が理系で生物やっていたのもあるけど、ただ単に子供のころから動物が好きでいろいろ調べたり読んだりしていたからだ。その時目に入った密猟とかの話で少し武器のことを覚えたくらいで。実は部隊に入ることになる前まではほとんど知らなかったりする。

 と、長い解説を一人心の中でしているのは悲しいからやめる。

 なんか途中から回想になったけど……今はそんな状況じゃない。

 手を伸ばしたら届くところに[コノル・ビータス]が……。

「って、あぶな!」

 俺は慌てて右手に持った〔ジャックナイフ〕を振る。

「!?」

 斬りかかった瞬間、俺の体が動いた。正しく言えば、ナイフが[コノル・ビータス]の皮膚の表面に当たった瞬間はじかれたのだ。

 幸いその先に他の[コノル・ビータス]はいなかったため、ダメージは負わなかった。

 それにしても固い。いや、速い。

 今走り去っていく俺の切り付けた奴はそこから血を流し、どんどん体力を減らしている。何もせずとも倒すことができるだろう。

 だから、決して固いわけではないと思う。

 ではなぜはじかれたのか。

 答えは簡単。速いからだ。

 走ってくる[コノル・ビータス]の運動を受け止めきれず、たとえ斬ることができてもその運動ではじかれたり流されたりする。これではいちいちバランスを崩してしまい、効率的ではない。それに、もしその先に他の[コノル・ビータス]がいると、それで自分がダメージを食らい、下手をしたら死んでしまう。

 チュートリアルだから武器へのダメージはない、と言うことはロッテルから聞いた通りだが、あくまでそれは武器や防具(そもそも普通の服しか身に着けていないけど)の話。プレイヤー、すなわち人はこの保護はなく、ダメージを受ける。もしチュートリアルで体力を全損して死んでしまったらどうなるかは聞いていないが、きっと恐ろしいことになるだろう(後で聞いたら、『チュートリアルを最初からやり直し』と言われた)。

 立ち上がって周りを見ると、さらに数を減らした[コノル・ビータス]が俺に向かって走ってきていた。

ロッテルは速いのを撃ちながら手榴弾を投げている。はっきり言って、それを同時にこなすのはすごいと思う。

「あとどれくらい?」

「20切ったとこだ。一群目は遅いから今んとこ取り逃がしてない」

「了解っ」

 確認をした俺は再び突撃する。今度は二体だ。さっきみたいに受け流されるとダメージを食らう可能性がある。

俺は迫撃、いや搏撃しようと試み接近しながらそんなことを考えていた。

速さ的には十分後ろから追いかけて攻撃することも可能だ。その方が、こちらがダメージを食らうことも少ない(実際は後ろ蹴りがあるからまったくダメージを食らう心配がないというわけではない)。これは一見いい案にも思えるのだが、数値的スタミナがある以上これでは効率が悪い。もしスタミナ切れを起こしている状態で攻撃されると、避けることもままならないのだ。そもそも、休まず追い続けたら五体と倒せずスタミナが切れ、回復するまでにもう追えないところまで逃げられてしまうのだ。

 とはいえ、ただ真正面から突撃してもダメージを負うだけ。

 だから俺が今やろうとしている作戦はこうだ。

 まず突撃していき注意をひきつけ、もう少し二体の間を狭くする。

 そして、うまくその間に入り込んで両方切り付ける。

 後は何もしない。きっとさっきと同じように継続ダメージで倒すことができるから。

 さて、作戦はうまくたてられたが、問題はそれをうまく実現できるかどうか。

 でも、それは運に賭けるしかない。

 すでに手を伸ばせば角を切り付けられる距離。

「うおっ」

 もう一体よりも少し速い[コノル・ビータス]が頭をふるい、角を突き付けてきた。

 俺は体を曲げてしゃがむように回避。

そしてそのままそいつの腹を切り裂く。

 ザッ

 〔ジャックナイフ〕を右手で持ち、それを左手で支え両腕で体に固定。そしてここまで走ってきた勢いをそのままに足を浮かして切り付けた。刃をあまりたてないようにして切り付けたため、腕がとられることもない。

 勢いが切り付けたときの反動でうまく相殺され、俺の体は前進をやめた。その場に足が着いた瞬間、支えていた左手を離し、振り返りながら右手を素早く後ろに振ってもう一体に切り付ける。

 [コノル・ビータス]を追うように動く俺の右手に握られたナイフは、尻尾を両断し、腰から脇腹にかけて一本の赤き線を生み出した。

「メリ! すまん、一体取り逃がしたっ!!」

 作戦が成功してほっとしている余裕もなく、ロッテルの声が聞こえてきた。

 顔を上げると、一匹の[コノル・ビータス]が俺の後方に走り去っていくのが見える。

 第二群はまだまだ遠くにいるが、あれを追いかけるほどスタミナは使いたくはない。だが、ロッテルの今の言葉は倒してくれと言うことだろう。

「まだ射程内じゃん……」

 そもそも射程の外だったら走っても間に合わないし、その間に次の群れが来るだろう。

「仕方ないか」

 俺は走り出した。距離からすれば50mは離れていると思う。それが現在進行形で猛突進(いや、それほどでもないけど)、走っているのである。ただ、前にではなく横に50mなのですぐに追いつけるだろう。

 俺はロッテルのことを忘れて、ひたすら残り


次回予告 二章・4-3


「メリ! すまん、一体取り逃がしたっ!!」


(3日後 11/25更新)

お楽しみに。

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