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operation flags  作者: k.はる
一章 ―新世界(new world)―
2/52

一章・1

主人公たちが基地に入るまでのシーンです。


※'15.11/4 読みやすいように編集しました。

※'16.1/19 言い回し等編集しました。

       メリオダスの一人称を僕に変更しました。

    1

 僕がこのゲームを知ったのはちょうど一年前、日本サーバーオープンの2週間ほど前だった――――。



「このゲーム面白いみたいだぜ!」

 このゲームを勧めてきたのは、幼馴染の霧野だった。

 リアルバトルゲーム《operation(オペレーション ・) flags(フラッグス)》、通称《OF》。

 現在では全世界ユーザー数が三千万人をも超えるとも言われているこのゲーム。近年開発されたVR技術によって制作されている。その割にはクオリティーが高く、ゲームの世界とは思えないほどリアルである。また、ほとんどの武器やアイテムなどのものが(ゲーム的要素はあるものの)現実世界に存在するもので、他にも現実世界とサイズ(人間との比)が同じ惑星や、町のつくりなどもできるだけ再現されている。

 このゲームが他のものと違うところは、まずVRワールド内の戦闘ゲームであること。そして、チームや軍(他のゲームでいうギルド)単位のトーナメントがあること。普段はチームでやっていてもトーナメントになると個人戦になることの多いこの種のゲームでは、もとからチーム全員が決まっているというのは珍しいことだ。

「しかし物騒だよな。人と人とが撃ち合うなんて……」

 霧野がそんなことを言う。僕は肯定も否定もせずにただうつむく─―。

 そのころはまだ興味はなかった。確かにVRというものには前から興味があったし、銃もそれなりに知っている。ただそれを実際に使うとなると話は別である。それにあくまでゲームの中ではあるがそれでもリアルに近いVRワールドで、である。撃つのが怖いというのもあるが、撃たれることを考えると恐ろしくてたまらない。それにそもそもそれを買うお金がない。ただでさえお金がないのにそんなものを買って、さらにはまってでもしまったら、生活していけるかもわからない。お金が手に入るってことなら別だが、そんないい話のわけが……。

「そういえば知ってるか? このゲーム、リアルなお金が手に入るらしいぜ」

「どういうこと?」

「言葉の通り」

「ゲームの通貨が【Z】とか【G】じゃなくて【¥】や【$】ってこと?」

「全然違うな。ゲームの単価は【G】だ。だがその【G】を【¥】や【$】に換金できるシステムがあるみたいなんだ。レートはかなり低いがバイト暮らしの俺たちにとっては魅力的な話だよな!」

「…………」

「いや、別に問題ないからな。変なところの金とかじゃないから……たぶん。ちょっと待ってろ、今調べるから」

「………………」

「ほら」

 霧野が持っていた携帯型パソコンを見せてきた。 

 そこにはゲームのルールやシステムの説明などがあり、最後の方にお金のことが書いてあった。要は課金者のためのものらしい。課金者が大量に課金してくれて、またゲーム内のお金も重要だからそんなにいっぱい換金する人がいない、と読んでいるらしい。

「そのうち破産するな……」

「そう……だね」

 その後二人とも黙り込んでしまった。



「君たち、《OF》を知っているようだな。それなら我が隊に入隊しないか?」

 その沈黙を破ったのは僕達二人のどちらでもなく、ぼろマントをはおり、高級そうな機関銃を腰に下げた長身の男だった。

 「へ?」  「は?」

 僕と霧野の声が重なる。

「すまない。私はトカレフ……じゃなかった、西園寺裕也だ。そして我が部隊の名は《スペツナツズ》」

「どこかで聞いたような……」

 そう霧野が言う。

「先ほど話をしていた《OF》で、一番強いと言われている軍、《タスクフォース》の派遣隊だ。本軍はアメリカサーバーにあるのだが、このたびここ日本でもサーバーが開くということで派遣隊を作ることになった。もちろん全員元の軍のものでもよかったのだが、せっかく派遣隊を作るのだから新入りも入れた方がいいとの参謀命令のため隊員を集めているのだが……どうだ、二人は入ってみないか?」

「えっと……」

 僕は迷った。入隊して軍に入るか、それとも個人でやるか、そもそもやらないか。

(それにしても恐そうだな……。軍、隊だよな。それに、腰の機関銃……)

 そう思って機関銃を見てみると、

「おお、怖がらなくていいぞ。これもあくまでモデルだからな。こんなところに物騒なもの持ってくるわけないだろ? それに軍ってのもあくまでゲーム内の話だからな」

「はぁ……」

 霧野がため息をつく。そこに、どこか残念そうな気持が入っていることを、僕は気づいてしまった。

 どうやら怖がる心配はなさそうだけど、でも怪しい。ゲームでこんなに真剣になるだろうか。それにそこまで根っからそのゲームに入るなどあり得るのだろうか。それに……。

「入ろうぜ! 面白そうじゃん」

(えっ……『入ろう(・・・)ぜ(・)』?)

「2人とも、協力に感謝する」

「ちょっ……」

 なぜだか、半ば強制的に部隊に入ることになってしまった。まあ、興味もあったし、それにまだ就職先が決まってないバイト生活だったから少しぐらい時間が無くなっても……と思わなくもない。でも、ゲーム機は? 確か《OF》って対応ハードがなくてソフトの入ったハードを買わないといけなかったはずだ。かなり高いみたいだし、それに自分の身長並みの大きさがあるって、さっき興奮気味の霧野に教わったばかりだった。

「……で、どうすればいいんですか?」

「この週末に我が基地に案内する」

「「基地~!?」」

「まだ言ってなかったな。我が軍は今回のように隊員募集をしている代わりに、待遇を良くすることにした。その中に、ゲーム機の援助と言うものがあり、ゲーム機はこちらで用意することになっている。たださすがに持ち帰られては管理ができなくなるから、ゲームをするための基地を用意している。他にも普段の生活の自由を少し奪ってしまうため、いろいろな援助がある。その一つに、現金支援がある。わずかだが、給料みたいなものだな」

「「給料!?」」

「そうだ。まあ、賞金の分配がほとんどだから、人によっては一人でした方が稼げるかもしれないがな」

「一人でやって賞金もらえる順位には入れると思えねぇ……」

「だよね……」

「まあそういうことだから。あともう一つ、基地内で泊まることができる」

「泊まる、というのはホテルのような意味合いですか?」

「いや、隊員の中には基地が家ってやつもいるぐらいだ。強制ではないから個人の家から通ってもらっても構わない。ただゲーム機の移動はできないから泊まった方が楽ってわけだ」

「今は十分です。なっ?」

「えっ……、はい。今は遠慮しておきますが、慣れてきたら使わせてもらおうと思います」

「よし。すまないな、食事中にこんなに時間を奪ってしまって」

「いえ、急いでなかったので。ねっ、霧野っ!」

「はい。バイト帰りだったので」

「君たちはバイト暮らしだったのか。なら話は早い。すまないがそのバイト、辞めてはもらえないか?」

「「えっ?」」

「生活費は出す。ただ色々あるから、出来ることならこっちに専念してもらった方がいい。どうだろうか?」

「明日聞いてみます」

「霧野⁉ ……僕も聞いてみます」

「協力に感謝する」

「それで、僕達はこれからどうすれば……」

「この週末……土曜日の午前9時にあの駅に来てほしい。そこからは案内する」

 そういうと、トカレフは店の外、すぐ前の駅を指さして言った。

「「わかりました」」

 こうして、《OF》を始めるきっかけとなった一日が終わった。

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