一章・8-2
1000PV突破しましたー!
ということで、今回はかなり長めです。
(はっきり言ってPV数関係ないですが……)
※'15.11/5 読みやすいように編集しました。
「状況は?」
「わからん。ただ、不審な人物が三人ほどいることは分かっている」
「三人か……」
トカレフは合流したディオとシュリンプに現状を話した。
「武装は?」
「それもわからない。少なくとも、確認した時は一人がナイフを持っていた。あとの二人は大きなカバンを背負っていただけで武装はしていなかった。無論、カバンの中身はわからない」
「場所はどこなの?」
「ここから800mほど離れた森の中だ」
「それで、どうする?」
「あまり近づかれないうちに捕獲する」
「わかった」
「俺は事情により行けないから、二人とも、頼んだぞ」
「ああ」
「ならもう行きましょう。できるだけ早くいった方がいいんでしょう?」
「そうだな」
「よし。出撃だな」
「くれぐれもやりすぎるなよ」
「わかってるって。いくぞ」
「ええ」
「ここから行ってくれ。正面は監視されている可能性がある」
「了解」
そういうと、二人はトカレフが示した裏口から《美空》を出て、そのまま茂みの中へ走って行った。
「すまないな、二人とも。力になれなくて」
二人の姿がかろうじてまだ見えているとき、トカレフはそのように呟いた。
「作戦はどうするの?」
《美空》に向かって走っている最中、真奈美は根木に問いかけた。
「もう少ししたら、真奈美はそれを仕掛けてくれ。それで注目を集めている間に奇襲する」
「わかったわ」
「正哉はその仕掛けの準備。遅延二分、できるか?」
「やってみます」
正哉はカバンを前に持ってくると、中から導火線と小さな電気雷管、導線、そして改造した発破器を取り出した。雷管は導線で発破器とつなげる。次に、雷管に導火線を巻くようにしてつける。そして、発破器についたタイマーを、指示通り2分でセット。あとはボタンを押せばカウントダウンが始まる。
「できました」
「よし。この辺でいいな。二人とも、止まれ」
森を抜け、《美空》との距離が500mを切ったところで、根木は停止を命じた。
「真奈美、打ち上げ式のを3本頼む」
「わかったわ」
「正哉、導火線を三本に……」
「もうやってます」
「はい。結構目立つやつよ」
「連発か……単発のほうがいいんだが」
「そうなの? じゃあ、はいこれ」
「うん。これならいいだろう」
根木は、真奈美から打ち上げ式のそれを三つ、それも大きいのをもらった。
「正哉、これにつなげてくれ」
「了解です、先輩!」
「真奈美はここから俺らと距離をとってついてきてくれ」
「もう戦う気なの?」
「万が一だ。それと、さっきの連発の。すぐ打てるようにしとけ」
「まあ。あれをそんな風に使うの?」
「できるだろ?」
「それはそうかもしれないけど……ほんと、むちゃくちゃね」
「仕方ないだろ。それぐらいしか攻撃手段がないんだ」
「設置完了しました」
「よし。正哉、例の爆弾は持っているな?」
「ああ、あの手作りの爆弾ですね? ありますよ」
「それをいつでも投げられる状態にしとけ」
「わかりました」
手作り爆弾とは、組織で作っている瓶を使った爆弾のことだ。第二次世界大戦で使われた支流団の一種、【モロトフ爆弾】の仕組みを応用したもので、瓶の中にはガソリンのほかに火薬など違うものも入っている。
【モロトフ爆弾】とは、ガラス瓶でできた爆弾で、瓶の中に濃硫酸とガソリンを混入し、外側に塩素酸カリウムを塗った紙片を張り付け、瓶が壊れたときに濃硫酸と塩素酸カリウムが接触して発火するようになっている。
今回正哉が持ってきた手作り爆弾は組織の中では『モロトフ2』と呼ばれているものであり、後ろについている数字が大きくなるほど威力が強いことを示している。『2』と言えば、そこまで強くはないものの、1m以内で爆発すれば、大きなやけどを負い、後遺症が出るか出ないかのレベルである。
「根木! 敵発見よ‼」
「開戦かっ⁉」
「いや、まだ十分に距離はあるわ。向こうはまだ気づいていないみたい」
「そうか……よし。正哉、スイッチを押せ」
「了解」
「俺と正哉はこっちへ、真奈美は向こうへ行ってくれ。挟み込むぞ!」
「わかったわ」
そういうと、真奈美は根木達のいる反対方向に走って行った。
「こっちも行くぞ」
「はい、先輩!」
「声は小さくな」
「……わかりました」
こうして、襲撃隊は攻撃態勢に移った。
「この辺か?」
「そうね、向こうの移動ペースが変わってないとするとここら辺だと思うわ」
「見当たらない……ってことは、向こうはまだここにきてないのか?」
「いえ、それだけとは言えないわ。隠れてる可能性だってあるもの」
「あり得るな。よし、ここからは慎重にいくぞ」
「了解」
二人は話すのをやめ、十分周りを警戒しながら進んでいった。
(それにしても、なんでこんなところを残しておくのかしらね。襲われやすくなるだけなのに)
シュリンプは考えていた。なぜこの森を残しているのかと。建物を建てないとしても、木を切って野原にしておけば敵は隠れにくくなり、結果として襲撃されにくくなると考えていたのだ。
実は、このことを基地設置の時、会議で相談していた。その結果が残すということ。理由は、まず大型兵器での襲撃を防ぐため、野原のような場所を作ってしまうとそこに敵基地を作られてしまう可能性があるため、そして隠れにくくなるということだった。このことは基地として重要なことで、反対意見もあったが残す方針で決定した。
(まあ、今は関係ないことよね)
シュリンプは考えるのをやめ、再び周りを警戒し始める。
その時。
ボンッ シュ―――
「何の音かしら?」
ドッ ヒュ――――
目の前で光る丸いものが、音を出して空へ打ち上がった。
その丸いものは一つではなく、全部で三つほどある。それが鳴りやむ様子はなく、また打ちあがったものが落ちてくる様子もない。
「何っ⁉」
最初はあっけにとられていたシュリンプだったが、すぐ平常心に戻り、警戒を始める。
ヒュ―― ドンッ!
その丸いものが鳴りやんだ瞬間、上空で爆発した。
「花火っ⁉」
木々の間に、鮮やかな光の花が咲く。
「いまだ、投げろっ!」
「はいっ」
そして、花火に目を奪われているうちに、正哉が瓶を投げてきた。
だが、動揺しているシュリンプはその瓶の位置がわからず、動くことができない。
「よしっ」
根木は命中を確信した。命中すれば一撃で無力化できる。目視では敵は二人だったという記憶を思い出し、もう一人を探し始めた。
ドッ――バンッッ
だが、根木が思ったようにはいかなかった。正哉の投げた瓶は、シュリンプに当たる前になぜか割れて爆発したのだ。
「なんだと⁉」
「っ! そうだわ、今は戦闘中よね」
その隙に、シュリンプは気を戻した。
「正哉、もう一回」
「はいっ!」
根木は正哉にもう一度投げるように指示、正哉はそのままシュリンプに向かて瓶を投げる。
「今度こそっ」
「甘いわ」
ドッドッドッドッバンッ
シュリンプはその瓶に向かって手持ちの機関銃、〔FN MAG〕を発射。先ほどよりも遠い位置で爆発、その爆破で飛んだガラス片が正哉の腕を切る。
「くそっ」
「私に任せてっ」
真奈美は、作戦が失敗して悔しがっている根木に一声かけると、手に持った細めの連発の打ち上げ花火の束、その数7個に火をつけた。
ジャッ――――
火がついた導火線は見る見るうちに短くなっていく。
「そうはさせないわ」
シュリンプはすぐにそれに気づき、木の陰に隠れる。
「いっけーっ‼」
ドッドドドッドッドドッドドッド――――――
一本30発連射の打ち上げ花火七本分、210発もの花火が、拳銃と比べれられないほど早いペースで打たれていく。
「うぐっ」
ただ、その衝撃はとても強く、並み以上はあるがそこまで力のない真奈美はなかなか照準を合わせることができない。
「う、うわーっ」
それどころか、その流れ弾が味方である正哉や根木のもとまで届いている。
「正哉っ、木の陰に隠れろっ!」
「は、はい‼」
そこら中で、花火が爆発した火花が上がり、その火花が木の枝や葉に当たって焦げ目を作っている。
「こりゃちょっとやりすぎだな……」
「そうですね」
打ち始めて約三十秒後、ようやくすべての花火が打ち終わった。
その森は、青々としていたはずなのに、今は黒や茶色が目立っている。
「終わったか?」
今の間、ずっと草むらの中に身をひそめていたディオは、攻撃が止まったのを見て、体を起こす。
「まずは、あれからだな」
そして、倒しておいた〔MOM M5〕を起こし、正哉の持っていたカバンを狙った。
「あんだけ離れてりゃ大丈夫だろ」
実は、この前にもカバンを狙っていた。だが、その中に爆弾があると知り撃つのをためらったのだ。たとえ敵だろうと殺す必要はない。それが彼らの考えだった。
ドッ――ボンッ
ディオの撃った弾は見事に命中、爆発を起こした。
「カバンがっ⁉」
その様子を見ていた正哉は衝撃を隠せない。ディオが撃ったところまでは見ていないが、爆発する瞬間を見事に見てしまったのである。
「大丈夫だ。どっちにせよあれを使ったって防がれるだけだからな。それに、お前にはこれがあるだろ?」
カバンは勢いよく燃えている。その様子をずっと見ている正哉の腰から、根木は〔トカレフ〕を抜き、正哉に見せる。
「そう……でしたね」
「ほら、ぼんやりしてるとやられるぞ!」
「はいっ」
根木と正哉はそれぞれ銃を構えて突撃していく。
だから、その時は誰も気づかなかったのだ。カバンから木々に火が燃え移っていることを。
「突撃ですって⁉」
根木と正哉の行動に、シュリンプは驚きを隠せなかった。
「機関銃使い相手に拳銃や自動小銃だけで突撃なんて、本当の殺し合いだったら一瞬で死んでるわよ、あいつら。……だとしても、私はあの二人を殺してはいけない。どうすればっ⁉」
倒すぐらいは簡単だ。ただ、重傷を負わせずに無力化させるのは、この状態では難しいのである。
「今度こそ、発射っ⁉」
ヒューヒュヒューヒュー――――――
ただ、真奈美の攻撃によりその心配はなくなった。
今度の真奈美の攻撃は、ロケット花火にねずみ花火を付けたもの。直撃しても先ほどより被害はないが、ねずみ花火により大量の火花がまき散らかされるため、広範囲の被害が予想された。
「こんなのよけきれるわけないじゃない!」
撃ち落とそうにも数が多すぎて、すべてを無効化するなんて無理、よけようにも範囲が広すぎて不可能に近い。
「それならっ」
シュリンプは突っ込むことに賭けた。
突っ込むことで範囲から外れ、発射を阻止、そして真奈美を確保することの可能性があるからだ。
「あ、熱っ!」
真奈美の攻撃は、もちろん正哉や根木にも被害をもたらした。
「ちょっと真奈美さん⁉」
正哉がそう言ったとき、ロケット花火の飛ぶ音が止んだ。まだ上空でねずみ花火が燃えているため火花は降ってきているが、これ以上威力が増すことはないだろう。
「もう、真奈美さん。やりすぎですってば」
そういって正哉は前を見る。そこには火を止めている真奈美――ではなく、シュリンプの姿があった。
「えっ、どういう……」
その時、ことは起きた。
「正哉、危ないっ」
突如、根木が叫んだ。
「えっ?」
その時、正哉は何も気づいていなかった。
「今すぐそこから動きなさい」
シュリンプも注意する。だが、
「敵の話なんか聞くかよっ」
正哉は聞く耳を持たない。
捨て子だった正哉は、自分を大事に思っている人を傷つけられるのが一番嫌だった。だからこそ、他の人以上に『敵』と言う存在をねたんでいる。
「危ないから動いてっ」
シュリンプが押し倒したせいで倒れていた真奈美が起き上がり、正哉に向かって叫ぶ。
「っ‼」
そこでようやく正哉は気づいた。自分のもとへと倒れようとしている燃えさかる大木に。
「早く動け!」
正哉だって逃げたい。だが、足が動かなかった。
「正哉っ!」
そして、ついにその大木は倒れ始める。
「チッ……」
誰も動かない中、ディオだけが動き出す。武器を外すと、正哉に向かって突っ込んでいったのだ。そして、手にしていた〔MOM M5〕をシュリンプに向かって投げつけた。
「ディオっ⁉」
その様子を見たシュリンプは一瞬驚いたが、意図を察して〔FN MAG〕を捨てるように地面に置くと、うまくキャッチした〔MOM M5〕を構える。
「狙撃は苦手だけど、この距離ならっ」
シュリンプからその大木までは50mもない。
「よし」
ドッ――ドン
シュリンプの撃った弾は見事に大木に当たり、微妙に軌道が正哉からずれる。だが、まだ安全なまで動かせていなく、それどころか今撃ったせいで倒れるスピードが速くなった。
その時、ようやくディオが正哉のもとにたどり着く。
「動けるか?」
「いや……」
「そうか」
正哉の足は、動けないほどにまで竦んでいた。
「しゃあねえ」
そういうと、ディオは正哉に肩を貸し、移動し始めた。
「二人とも、急げっ!」
「わかってるって」
シュリンプは次弾の装填をしている。
真奈美も何やらカバンをあさっている。
唯一何もできないでいる根木が、二人を煽っている。
「あった! これでっ」
真奈美は、カバンの中から何やら大きい打ち上げ花火を取り出し、狙いを定めていく。
「いけっ!」
真奈美は花火ぎりぎりのところの導火線に着火する。
ドッ――――ズ、ボンッ!
真奈美の撃った花火の球は大木に埋まり、そこで爆発した。
その結果、燃える大木は折れた。だが、さらに大木倒れるスピードが増し、よけられる速さを超えてえしまった。
「危ないっ!」
「任せてっ」
シュリンプは装填し終えて照準を合わせながら花火が爆発する様子を見ていた。だからこそ、折れてスピードの増した大木を撃つことができたのだった。
ドンッ
真ん中で折れて軽くなった大木は、弾の威力を受けきれず、そのまま飛ばされていく。
折れた下の方の大木は、重さがなくなったからか、止まっていた。
「そこのお前も手伝え。仲間だろっ」
「なっ⁉ 敵のお前に言われる筋合いはない!」
安全を確認した根木は、すぐにディオと正哉のもとへ走っていく。
「とにかく、今ここにいるのは危険だわ。森を出ましょう」
「そうね。私、少しやりすぎちゃったみたいだものね」
「ほら、行くぞ」
「ちょ、お前に命令されたくはないわ!」
「二人とも、少し早い、です……」
五人の間には、すでに敵意などなかった。それどころか、今の危機のおかげで仲間意識すら芽生えていた。
「ほら、もう少しよ」
もうすぐ目の前に開けた場所がある。そこを少し行ったところが《美空》であった。
「ああ、そうだな」
五人の顔は、まるでどこかに遭難したが、無事に降りてこられたような顔をしていた。
「ずいぶん派手にやってくれたようだな。まあいい、今はそれどころじゃないからな」
《美空》でずっと森の様子を見ていたトカレフは、その火事に気が付いた。
「大ごとになる前に止めないと」
トカレフは《美空》にある内線を使い、基地の消防部隊に連絡。火は五人が森を脱出して20分と経たず消し止められた。
「あとが大変そうだな」
トカレフはこの後自分がやることになるだろう仕事を考え、頭を掻いた。
「まあ、全員無事だったわけだしいいか」
そういうと、トカレフは基地へとつながる階段を下りていった。
P.S.
少し謝罪を……。
やはりこの時の初めての戦闘シーンは下手ですね。
今思うとすごく雑といいますか調子に乗りすぎてるといいますか……。
ノリだけで書いたところなのでまあ……です。
次の戦闘シーン(二章-2以降のチュートリアル)では学校の人に好評化なので……
(それだと期待持たれて駄目だった場合がきつい……)
お楽しみに。
(後日編集時、記述)




