一章・7-1
長めです。
※'15.11/5 読みやすいように編集しました。
7
「追跡から連絡。ターゲットは予想通り《美空》に向かった模様」
「ふっ、やっぱりか」
そこは暗い地下室の中。人は二人。そのほかに機械が数機と3つのモニターがあった。
「つまらん」
「そんなこと言わないで下さいよリーダー。うまくいくのが一番じゃないですか」
「それもそうだが、ここまであっさり行くと面白くないじゃねえか」
「そんなこと言ってると、ほんとに何か問題が……って、言ってるそばから起きてるじゃないですか⁉」
「どうかしたのか?」
「主力の二人ですよ! 予定とは全く違う道を動いてますよ‼」
「別に大したことじゃねえだろ。きっと、何か問題があったんだろうさ」
「いえ、何も問題は発生していません。それに、もし何かあったとしたら何も言わずに予定を変更するわけないじゃないですか⁉」
「それも、そうだな」
戸惑っている表情の男が慌てる一方、もう一人の男はいたって平然としていた。
「今連絡します」
そういって、慌てた様子の男が何やら機械を取り出し、急いで操作をしていく。
「うん?」
その一方、落ち着いた男がモニターを見ていると、主力隊を示す赤のマークがとある森の中に入っていった。
「だめです。つながりません!」
「そうみたいだな」
「なんでそんな落ち着いていられるんです⁉」
「そりゃもう、何したって無駄だからな」
「?」
「ほら、見ろ」
「これは……」
二人でモニターを見つめる。すると、赤いマークが急にはげしく動き出した。それも、スピードが上がっただけでなく、ふらつきながらだった。
「どうやら一本取られたようだな」
「うそだ! どうして⁉」
「どうせ気付かぬうちにハッキングでもされていたのだろう」
「そんな‼ 対策はしたはずなのに⁉」
さらに慌てた男が、繰り返し機械を操作するが、状況が変わることはなかった。
「だめです、つながりません!」
「いっただろ? 何したって無駄だと」
「ですがっ……」
男は頭を抱えて悩み始めた。
「だが、何もしないのもなんだからな」
「何かするんですか?」
「ああ。追跡に援軍を出してそのまま突入してもらおう」
「わかりました。っと、誰をだしますか?」
「そうだな……あの新人二人を出そう」
「波崎と沖野ですね?」
「そうだ」
「了解っ!」
指示を受けた男はそのまま部屋を出ていった。
「ちょっとは楽しませてくれよっ」
部屋に残った男は、深くソファーに腰かけモニターを見ているのだった。
☬
「うまく引っかかったようだな」
「ああ。まさかこんな時に敵が来るとは思わなかったが……それも、あの二人のせいだな」
「だが、それに気づけたのも二人のおかげなのだろう?」
「まあな」
「ならいいではないか」
「それとこれで打消しだな」
そのころ基地の作戦室では、トカレフとローレンスがモニターを見ていた。
「だが、新人にあれを付けるとは、お前もなかなかだな」
「あいつだったからだ。あまり注意していなかったようだし気付かれんと思ってな」
「メリオダス君だったらそうだろう。あれは指導していかなければな」
「後々な。あれはあれで使いやすい」
「おいおい、あの子をそのように扱うのではない。それに、注意不足はこれからの部隊の行動に支障が出る」
「その点においては問題ない。メリはコンビを組んでるからな」
「そういえばそうだったな」
「おっと、そろそろ始まるぞ」
「おお。会話に夢中になっているうちにここまで進んでいたのか」
「それじゃ、殺さない程度に攻撃してやるか」
「ああ……」
トカレフは何やら楽しそうに、ローレンスはあまり浮かない表情で目の前にあった操作ハンドルを握った。
「一向に先が見えてこないが?」
「そりゃそうだろ。結構な回り道になるみたいだしな」
車に乗った二人はその車とは反対に落ち着いていた。
「問題はないだろ」
「そうだな」
その車は順調に進んでいく――《美空》とは反対の方向に。
「いや、地図によればそろそろ見えてきてもいいはずなのだが……」
「あれじゃないか?」
サカが言ったのは、車の前に見えてきた建物だった。
「見るからに基地っぽいな」
「ああ」
「ネキは……まだ見えないようだな」
「大丈夫だ。一応あいつは追跡がメインで攻撃は補助程度。きっとどこかに隠れているのだろう」
「だな」
「よし、攻撃準備開始」
サカが車を止めると、カズが車から降りて後ろの扉を開けた。
「何を使うんだ?」
「あまり目立つわけにはいかない……が、まずはこれだな」
カズが手にしたのは〔FFV M2〕だった。
「マジかよ!」
「マジだ。これを一発お見舞いしてやる」
「目立ちすぎるだろ!」
「いーや、ここは森の中だから一般人に気付かれる心配はないし、それにこれで相手を威嚇することで警戒するだろ? こっちの襲撃には気づいてないようだし」
「そうかもしれないが……」
「ほら、悩んでないでさっさと始めるぞ。準備はできたのか?」
「ああ。準備は終わってる」
サカがした準備と言うのは、〔12.7mm機関銃 M2〕だった。
「お前もなかなか派手なの使うんだな」
「そりゃあ、その装備見たらこっちも奮発したくなるからな」
一つの小屋に対して対戦車用無反動砲に対物機関銃を使うというのはどうかとも思うが、その小屋が基地だとするとその対応も度を過ぎているとは言えないだろう。
「これも忘れるなよ」
カズが示したのは〔P90〕だった。この銃は、サブマシンガンの中では機動性が高く、また装弾数が多いことが特徴だ。
「当たり前だ」
奇襲をかけるにおいて、遠距離武器も重要だが、接近戦用の武器がないのは問題だ。
「よし、始めるぞ」
〔FFV M2〕の発射準備を終えたカズは言った。
「これの発射と同時にお前はそのまま突っ込め」
「了解」
カズはこのために遠距離射撃の練習をかなりしてきた。実弾を撃つのは初めてではあるが、まず外れることはないだろう。
「ま、あの程度の基地だ。一発で壊せるだろう」
カズは照準を合わせ、今すぐにでも撃てる状態にした。
「行くぞ」
「ああ」
この時二人は、その基地に隠された秘密を知ることなんてできるはずもなかった。
☬
「はっはっは……」
男は走っていた。
「急が……ないと……」
その男の名は波崎正哉という。
正哉は、潜んでいる根木のため、この作戦のリーダーである和岡のため、そして自分の身を養ってもらっている組織のために走っていた。
「うわっ!」
ドサッ
「いたたっ……」
正哉は転んだ。木の根につまずいたのだった。ここは森の中。木々が生い茂っている。
そして、正哉の持っていた物がすべて宙に放り出された。
「っ!」
正哉の表情が一気に変わり、放り出された物の中から何かを探すようにしたあと、そのものが地面に落ちる前に全力で拾いにいった。
「ふぅ……」
立ち上がった正哉はため息を吐くと再び走りはじめた。服についた泥が正哉の後方に飛ばされていく。
「……にしても、こんなところに森なんてあったんだな…………」
正哉は初めてこの場所に来た。それどころか、この正哉がこんなにも広大な自然を見るのはこれが初めてだったのだ。
「ちょっと、遅いんじゃない?」
正哉は後ろから声をかけられた。そこに居たのは正哉と同じように多くの荷物を持った女性だった。
「真奈美さん! 速いですね」
「まあね。でも私なんかまだまだよ」
二人は話ながらも変わらない速さで走り続ける。
「それでも僕よりは速いんです!」
「君はまだ一月たってないんだもんね」
「はい」
その組織にとって、組織に入って一ヶ月で任務が出ることはかなり珍しいこと。さらに、正哉のような新人が組織に入って一ヶ月で任務に出されるということは前例を見ないことだった。
「全部真奈美さんのおかげですよ」
「ふふっ、ありがと。でもそれが私の役目なんだもの、当然だわ」
正哉が組織に入ったとき、真奈美は正哉の世話役を命じられた。世話役といっても、実際に身の回りの世話をするわけではない。どちらかと言うと育て役の方が合っているその役目は、組織について教えたり訓練のときに先生役になったり、またその間は一緒にいるという役目である。
「ほら、こんなゆっくりしてる余裕はないわ。早く行きましょっ」
そう言うと、真奈美は正哉を追い抜いて根木のいる場所目指して走って行った。
「僕もこうしちゃいられないっ」
正哉もその姿を追って速さを上げようとしたが、自分の行きが上がっていることに気づき、速さはそのままで真奈美に続いた。
爆発が起こった。
それは、〔FFV M2〕が撃った弾が基地に当たって起きたものだった。
基地の周りには煙か立ち込めている。
その中へ、サカは車を突っ込んでいった。
「どうだっ?」
カズはその煙の中をじっと見つめている。
そして、煙はだんだんと薄まってきて……。
「っんな⁉」
煙が薄れて基地が見えてきた。たとえ小さくても基地は基地、防衛設備があるだろうから、跡形もなく吹き飛んでいることなんて望んではいなく、形がのこっていることぐらいは想像できた。だが、まさかこのようなことは想像していなかっただろう。
「む、無傷だと⁉」
煙から現れた基地には全く損傷がなく、それどころか今そこで爆発が起きたなんてことを感じさせなかった。
「だが、確かにあたったはず……」
爆発が起こったということは、すなわちあたったということ。もし外れた場合、今は少し地面がぬかるんでいることもありそのまま土の中にのめりこめだけだろう。どんな強力な防壁だとしても、少しくらい跡が残るものである。
「なんだ、あの異次元な強さは……」
驚いていたのは、サカも同じだった。
「まあいい。こんな場合のための俺だ」
サカは車を止めず、そのまま突き進んでいく。
「発射ぁっ!」
ズダダダダダダダッ――
それと同時に、〔12.7mm機関銃 M2〕も火を噴かせた。
「ぐっ」
その反動で、ハンドルが重くなる。だが、何とか照準を合わせようとハンドルをきる。
――ダダダダダダダパンッ!
「なっ⁉」
照準が合い基地を撃ったとき、その基地に見えたものは、粉々に崩れ落ちた。
「何が起きた!」
後ろで〔P90〕を構えて走っていたカズの方が驚きは大きかった。何せ、対戦車用の無反動砲の弾で無傷だった基地が、機関銃の弾一発で粉々に砕けてしまったのだ。
その時、頭上で音がした。それはまるで大砲か何かを撃ったような音で……。
ズドンッッッ!
目の前の車が爆発、炎上していた。
「嘘だろ⁉」
そして、その車にはサカが……。
「って、サカ⁉」
カズは、サカの姿を見つけることはできなかった。
「いや、あいつはまだ生きてる。少なくても、死んではいない」
カズには、そんな確信があった。
「もっと派手な爆発にあいつは巻き込まれたことがある。それを無傷で抜け出したやつだ。今回だってうまくやっていることだろう」




