一章・6-2
※'15.11/5 読みやすいように編集しました。
「連絡来たぞ」
車の後部座席に乗った男が言った。
「それでカズ、奴はターゲットがどこに向かったと言っている」
運転席に乗った男が、後部座席に乗った――カズと呼ばれた男に問いかけた。
「みそらと言うところらしい。位置から言って、隣の市との境目らへんだな」
「了解」
運転席に乗った男は、すぐにカーナビで場所を確認する。
「時にサカ、なんであんな子供を追う必要があるんだ」
カズは運転席に乗った――サカと呼ばれた男に聞いた。
「奴らが人員募集してたのは知ってるよな」
「もちろんだ」
「その時、あいつ――トカレフがあの二人に声をかけているところを目撃したという情報が入った」
「それは本当か!」
「ああ。あの方が言ったことだ。ほぼ間違いないだろう」
「あの方が! そうか……」
サカはカーナビの検索機能で《美空》を見つけることはできななかったが、位置情報と地図を頼りに、何とか見つけ出した。
「にしても、店がこれに載ってないってのは……やっぱり怪しいな」
「そうだな」
話をしながらも、二人は次の連絡を待っていた。
「きたっ」
ちょうどそのとき、携帯が鳴った。
「様子はどうだ、ネキ」
『ターゲットは二人とも自転車に乗ってて、とても自分では追いつきません』
携帯の向こうからは、そんな声が聞こえた。
『…………ってか、ネキって言わないでください。僕は根木です!』
ネキと呼ばれた根木は怒っているようだったが、カズとサカは気にする様子がなかった。
「それで?」
『はい。ターゲットは森の中を進んでいます。車の通行はできません。ですが、その分自転車のスピードも落ちているので追跡可能と判断。僕はこのままターゲットを追います。先輩はそのまま目的地に向かってください』
「わかった。見失うなよ」
『了解です』
そういうと、電話は切れた。
「カズ、ネキはどうだって?」
「そのまま追うそうだ。俺らはそのまま目的地――《美空》に向かえと」
「年上に命令してんじゃねえよ、ネキ…………。まあいい、今はあいつに従うしかないもんな」
「ああ」
「そんじゃ、行きますか」
そういってサカは車にエンジンをかけた。
その車の後部座席には、大量の火器があった。
☬
「おっ、見えてきたぞ」
森から抜けてしばらく、《美空》の建物が見えてきた。
「到着ー」
「くそっこいつに負けるなんて……」
俺らは、《美空》見えるとスピードを上げ、全力疾走し始めた。そして、いつの間にか勝負になっていたのだった。
「霧野と違って俺は自転車が唯一の交通手段なんだから」
もちろん電車は使うが、駅まではいつも自転車なのだ。
「霧野はバイクだもんなっ」
「いいだろ。個人の趣味だ」
俺と違って、霧野はバイクの免許を持っていた。俺だってとることくらい可能だが、その時間すら惜しかった。
「ほら、おいてくぞっ」
「っ! ちょっと、霧野⁉」
「早く着いたってそのあと早く動けないんじゃ意味ないぜ」
「…………」
「それに、もう12時だ。俺は朝早かったせいか腹減ってんだよっ」
12時と聞いて驚いた俺は腕時計を見る。すると、まだ家を出て30分ほどしかたっていなかった。それは、基地から家に帰る場合は上り坂となる山道が、行きは下り坂になるのでその分スピードがついたのだ。
俺の家は決して標高の高いところにあるわけではない。いや、こういっては嘘になる。確かに俺の家は標高の高いところにある。が、それは俺の住んでいる市全体に言えることだった。俺の住んでいる市、《岡上市》はその周りの市と山の上に存在している。一方、《美空》のある《海州市》は、文字通り川が運搬してきた砂がたまってできた土地に存在し、海抜は極めて低かった。
ちなみにこの川は、俺の家と《美空》を阻むところにそびえる《城間山》が水源の《逆最川》である。名前の由来は、昔《岡上市》と《海州市》には敵対する武将が城を建てていた。《城間山》は、この様子から。《逆最川》は、この武将の勢力図に反するように流れていたため、このような名前が付けられた。
《美空》は、《海州市》の中でも海抜の高い山瀬にあったが、それでも《岡上市》からすればかなり低いところにある。
《海州市》の海抜が低いのは、港町で海に面しているからだ。
最初にトカレフに会った駅は、このどちらの市でもない。
ちょうどあの時は二人で遊びに行っていたときだたのだ。
「いつまでぼーっとしてるんだ? ほんとにおいてくぞ!」
「あっ、今行くから待って‼」
慌てて俺は自転車から降りて、霧野のいる《美空》の入り口に向かって走っていくのだった。




