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WISH  作者: 国分志市
1章 ヴェアリアス・フィーリング
9/12

8話

遅れてすみません。今回は、少し文字数が少なくなってしまいました。

 2018年5月3日

 PM11:00

 火吹きの竜亭

 

『何がどうしたんだよ、バランド』 

 バランドは玄関のドアから離れない。

 すると、そこから4人のPCが現れた。

『ここが火吹きの竜亭かぁ。』

『いい店じゃんかよぉ、おらぁ!』

『いい店かどうかは分からないわよ、食事してみないと』

『すみません、すみません。エーラーちゃんが失礼なことを』

 いきなり4人組が飛び出してきました。バランドの悩みの種は、この4人組で間違いないだろう。

 4人組の先頭は金髪で金属鎧を着けている。

 威勢のいい男性は、赤い髪にちょっと口調と似合わないローブを見につけている魔法使い系なのだろうか。

 3人目のクールそうな女性は、白い髪に白いローブを身に纏っている。

 最後の謝っていた女の子は、水色の髪に皮の服を着ていた。

 フェデロークは、4人を見回して気付いた。この4人は全員初心者だ。

『ごめんね、フェデローク。ちょっと俺には対応しきれなくて』

『一体何なんだよ。この4人は』

『それは僕が説明します、まずは自己紹介ますね。僕はペンドラゴンです。』

『……何だか分からないけどとりあえず食事にしたらどうだ』

 ラスクがそう言った。

 そこから、ペンドラゴンの説明が始まった。

 赤い髪の男性の魔法使いはヴァイザル。白い髪の女性はエーラー。水色の髪はビトというらしい。

 そもそもなぜバランドが一緒にいるかと言うと。

 バランドは今日もエーレ大平原で狩りをしていたという。エレジアに言われた通り、授業も自分のスキルが上がりやすいのを選んで続けていたらしい。

 そのおかげでエーレ大平原の一番弱いヴィシャスウルフのほかにも鳥の姿をしたハーピーやあまり姿を現さないベビーモールなどの多くのMobを倒せるようになったらしい。

 そんな時、ヴィシャスウルフと戦っている4人組を見かけたらしい。ここにいる4人組だ。

 4人組は、善戦していたが、回復担当だったエーラーが魔力が尽き掛けていた。明らかに劣勢で何より今日初めてこのゲームを始めたということがバランドには分かったらしい。

 他のプレイヤーがMobと戦闘していたばあい、そこに介入してはならないというマナーがある。バランドは、このマナーを知っていたが、いても立ってもいられなくなったらしい。

 バランドは、この戦闘に加わり、ヴィシャスウルフを倒した。そしてそれを感謝された。

 しかし、バランドの不運はここからである。

 ペンドラゴンたちは、バランドが自分たちよりゲームをやっている先輩だと思った。そこで、何故エーレ大平原にいたのか説明し、自分たちに協力してもらおうとした。

 ペンドラゴンたちは、別のコミュニティで出会った4人組である。最近、噂になっている『ヴェアリアス・フィーリング』を4人でやろうという話になって、今日始めたばかりだ。

 どこに行ったらいいかも分からずさまよっているとクエスト受付所にたどりついた。なので、まずはクエストをたくさんやってライザ通貨をためようとした。しかし、いきなりたくさんのクエストをやってもやりきれないとおもったペンドラゴンたちは、おつかい程度のクエストを選択した。

 それが、間違いだった。クエストの内容は、エーレ大平原の南の奥にあるカラトという街まで品物を届けるというものだった。ただ、カラトの街に行くには一つ障害がある。

 カラトの街の目の前でボスのMobがいるのだ。

 初心者は、初めてカラトの街に行くには、そのボスMobを倒さなくてはならない。一旦倒してしまえばあとは出遭うこともなくなり、普通に行けるようになるという。ただ、パーティの中に初めてカラトの街に行くPCがいると、現れるという。

 初心者が初めに倒すボスMobとはいえ、今日ゲームを始めたばかりの初心者では無理だ。

 そうバランドはさとしたが、クエストをキャンセルすると妖魔値が増える。と言ってペンドラゴンたちは聞かないのだ。

 フェデロークはバカな話だと思った。だが初心者にはありそうな間違いだとも思った。

『で、フェデロークに手伝ってもらおうかと思って』

 バランドは言った。

 エレジアに頼めばいいかとも思ったがクエストにもレベルがあって学園でのLVよりも格下のクエストは受けられないのだ。

 フェデロークは黙考した。確かにこの4人組にバランドとフェデロークを合わせればフルメンバーのパーティでボス攻略が出来る。しかし、この4人組は初心者中の初心者だ。まだ、ボス攻略には早いと言えるだろう。

『なあ、ペンドラゴン。ちょっと聞きたいことがあるんだが』

『はい。何でしょう』

『クエストの期限はいつまでなんだ』

『ちょうど1週間ですね』

 1週間ならどうにかギリギリでペンドラゴンたちを成長させることが出来るかもしれないとフェデロークは思った。必要な授業を受けさせれば1週間で戦力になるかもしれない。

『4人のクラスを聞いてもいいかな?』

『私が説明するわ』

 エーラーが答えた。

 ペンドラゴンはメインクラスは《戦車》、サブクラスは《皇帝》。

 ヴァイザルはメインクラスは《隠者》、サブクラスは《悪魔》。

 エーラーはメインクラスは《審判》、サブクラスは《魔術師》。

 ビトはメインクラスは《節制》、サブクラスは《女教皇》。

 フェデロークは、分析した。ペンドラゴンは前線で戦士として攻撃を受けながら戦うタイプ。

 ヴァイザルは《隠者》の特徴である隠密スキルを無視して攻撃魔術スキルに特化し魔法で攻撃するタイプ。 

 エーラーは《審判》の最大の長所、防御魔法の分種スキル、蘇生スキルと回復スキルを駆使するヒーラー。

 ビトは、付与魔法スキルを使用するのと情報分析に優れる支援タイプといった構成だ。

 フェデロークは前線で敵を攻撃する人員が不足していると思った。しかしフェデロークとバランドが入ればバランスがよくなると思った。

『分かったよ、俺もやるよ』

 フェデロークは観念した。

『フェデロークならそう言ってくれると思ったよ!』

 バランドは嬉しそうだ。

『……おい、そっちがまとまったのはいいがこっちはまだまとまってねえぞ』

 ラスクが言った。フェデロークはハッとした。そうだった。火吹きの竜亭のクエストもあったのだった。

『でも、カラトに行くならピエンソが採れるな』

『ピエンソって?』

『根菜だ。カラトの近くに群生しているんだ』

『あのー、よく分からないんですが』

 ペンドラゴンが困った様に言った。

 フェデロークはバランドと4人組に先程の話をした。

『分かりました。協力できることがあったら言ってください』

 ペンドラゴンは言った。

『それでよ。さっきフェデロークが魚料理がいいんじゃないかと言ってたよな?それで考えたんだがザンサの森のちょっと北に行ったところに泉があるんだ。そこにフェインって魚が棲んでるんだがそれも採ってきてくれないか?』

『ザンサの森ですか……』

 ザンサの森は少しMobが強い。初心者にはちょっと辛いところだ。それに魚を釣るには釣りスキルが必要だ。

『大丈夫だ。森の浅いところはあまり魔物が強くないんだ。』

『私一応釣りスキル伸びやすいんですけど……』

 ビトがおずおずと言った。

『分かりました。いつまでがいいですか?』

『6日後位には欲しいな』

『そんなんでいいんですか?』

 そういうところがゲームらしい。

『じゃ、これからどうすればいいですか?フェデローク先輩』

 ペンドラゴンが質問した。

『そうだな。とりあえず今日ボスMobを見に行こう』

『これからかよ!?』

 ヴァイザルが言った。

『一応、ボスがどんな行動パターンか。見ておいた方がいいと思う。その方が本番の時戦いやすいだろ』

『そうですね。これから行きましょう』

 ペンドラゴンが応えた。


*****

 2018年5月3日

 PM11:30

 エーレ大平原


 エーレ大平原は今日も晴れ晴れとしていた。

 今日始めたばかりの4人組はともかくフェデロークもバランドもまだまだ初心者なのでMobに見向きも去れない。

 フェデロークたちは少しずつエーレ大平原を南下していった。

 バランドはペンドラゴンたちと話しながら進んでいる。

『あのよう……』

 ヴァイザルがフェデロークに話かけてきた。

『何だよ?』

『俺が魔法使いでいいと思うか?』

 フェデロークはヴァイザルが何が言いたいのかわからなかった。

『どういう意味だよ』

『……だから俺みたいなキャラが魔法使いの役割でいいと思うかって聞いてんだよ!!』

 どうやら怒らせたみたいだ。

『……自分が魔法使いに向いてないと思うのか?』

『だってさ、魔法使いってクールってイメージだろ。でも俺、短気でカーッとなっちゃうんだよ』

『それでも魔法使いがやりたかったんだろ?』

『……ああ』

『だったらそれでいいじゃないか。別にゲームなんだからやりたいことをやればいいんだよ』

『……そうかな』

『でもヴァイザルは結構センスいいな。メインクラスを攻撃魔法スキルと闇魔法スキルが得意な《隠者》にしてサブクラスも同じ様な《悪魔》にするなんて』

 それはペンドラゴンたち4人全員にいえることだ。クラスの紹介をしてもらった時にも思ったのだが4人とも自分の役割を分かっているようなクラスの選択だ。

『それは……、その』

『?何でそこで口ごもるんだよ』

『それは私が指示したからよ』

 エーラーが話の輪に入ってきた。

『うわっ』

 思わずフェデロークはびっくりして飛びのいた。

『な、何だよ!話聞いてたのかよ!』

 ヴァイザルも混乱している。

『ええ。初めから聞いていたわ』

『初めから!?おいっ!ペンドラゴンとビトには言うなよ!!』

『大丈夫。何も言わないわ』

 エーラーはあくまでクールだった。

『それにしてもエーラーがみんなのクラスを考えたのか?』

『ええ、そうよ。みんなの希望を聞いて、私がこのゲームの情報を収集してアドバイスしたの』

『へえ、そうなんだ』

 フェデロークもこのゲームを始める時、情報を収集した。エーラーとは気が合うかもしれない。

 エーラーは続けた。

『私はね、みんなを護りたいの。リアルでもこのゲームでも』

『護りたい?』

『そう、私はみんなが大切。だから護りたいの』

 4人がどこで知り合ったのかはよく分からないが、そこにエーラーの真意がある気がした。

『お、おいっ!?あんまり恥ずかしいこと言うなよ!?それに女に守られるなんて男がすたるだろっ?』

 ヴァイザルは取り乱している。エーラーは自然に答えた

『そういうのが古臭いのよ、ヴァイザル』

『みなさーん、そろそろボスMobが見える頃ですよー』

 ペンドラゴンが前線から声をかけてきた。

 ペンドラゴンの言うとおり平原の奥に柱が2本とその間に大きな影が見えた。

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