4話
いつも見てくださってありがとうございます。投稿が遅くなってすみません。
2018年4月20日
PM10:50
ガーランド学園ホール
しばらくするとバランドも魔方陣の中からあらわれた。
『いかがでしたか?バランド 』
『うーん、ちょっと難しかったかな』
バランドの話をかいつまんで話すと、体力向上一の内容はパソコンのキーの連打するタイプのミニゲームだったらしい。PCが岩を押して一定距離まで到達する時間を測定するようだ。評価はCだったらしい。
『それでなんか太陽のカードっていうアイテムをもらったんだけど』
『俺もだ。愚者と正義のカードを手に入れた。』
『それが大事なのです。それはPCを成長させるための鍵なのですわ』
エレジアは話し始めた。
どうやらカードは22種類あって、タロットカードの大アルカナと同じ数の種類あるらしい。
カードの使用方法は、大きく分けて3つ。
一つ目はスキルの成長のタイミングである。スキルは該当する行動をすれば少しずつ増えていく。例えば、武器を使ったり、岩をつるはしで壊したりすると筋力スキルは増えていく。ただし、あくまでも少しずつだ。
そんな時、カードを使う。
画面の上の方にSKILLという項目があり、どのスキルがどれだけの数値かが一目で分かる。そのスキル欄で成長させたいスキルを選ぶと、指定のカードが要求される。例えば、筋力スキルは、《皇帝》など。
そして、指定されたカードを使うとスキルが上昇するらしい。
得意なスキルは5、普通並みの適性があるスキルは3ほど上昇する。しかし、苦手なスキルはカードを使っても1しか上がらない。
二つ目の使い方は、アビリティのランクの上昇だ。アビリティにはランクがあり。これを上昇させると技系のアビリティは攻撃力が増えたり、体力などが増えるボーナスアビリティは上げた分だけその数値がボーナスとして増える。アビリティのランクの上昇もスキルの成長と変わらない。画面の上のABILITYの項目を選択し、指定されたカードを使用するだけだ。
三つ目の使い方は、前の二つと違って少し、特殊だ。学園にはリアルの学校と同じ様に学年の概念がある。PCは『ヴェアリアス・フィーリング』を始めた時はレベル1だ。しかし、試験クエストというクエストをクリアするとレベルがアップする。
クエストは、街の人たちが出したりする依頼みたいなものだ。クリアすると報酬がもらえたり、成長出来る。
しかし、試験クエストを受けるためには、条件がある。例えば、レベル2に上がるための試験クエストはどのスキルでもいいから50以上上げることと22種類のカードのうち、5枚を提出すことだ。しかもカードの種類は被ってはいけない。
『とまあ、こんな感じでしょうか。質問はありますか?』
エレジアの説明が終わった。
『はい。質問』
バランドが答えた。
『はい。バランドなんですか?』
『試験クエストってどんなことするの?』
『そうですわね。まず質問に答える問題がありますわ。それから目標を提示されて学園の外に出て目標を達成するというのがどのレベルでも共通ですね。でも大丈夫ですわ。何度失敗してもクエストは受けられます。ただし提出したカードは戻ってきません。それだけは注意が必要ですわ』
『レベルはいくつまであるんだ?それからレベルを上げるメリットはあるのか』
フェデロークは質問した。
『レベルは全部の学園共通でレベル7までですわ。それからレベルを上げるメリットは受けられる授業が増えるのと習得できるアビリティが増えますわ。レベル1では基礎的なアビリティしか覚えられませんの』
フェデロークはエレジアが言ったことが気になった。
『なあ、さっき全部の学園共通って言ってたけど、他にも学園があるのか』
『ええ、全部で7つありますわ。初めはこのガーランド学園から始まりますけど、他の学園に転校することも出来ますの。もちろんこの学園に戻ってくることも出来ますわ。他の学園に転校するとガーランド学園では習得できないアビリティを習得出来るらしいですわ。私は転校したことがないからあまり存じませんけど』
『因みにエレジアは、レベルはいくつなの?』
バランドが聞いた。
『レベル6です。自慢するわけではありませんが、レベル6は全世界に11人しかいないという噂がありますわ。しかもレベル7になれた人は今まで誰一人としていないのですわ』
『そうなんだぁ。すごいね!フェデローク』
『あ、ああ』
フェデロークは驚いていた。そこまでエレジアが成長しているとはおもわなかったのだ。やはりかなり前からこのゲームをやっていたのだろう。おそらく自分たちと出会う前から。
『さて、説明はこの位にして次に行きましょうか。』
『どこに行くの?』
『戦闘の練習です。』
*****
2018年4月20日
PM11:00
エーレ大平原
フェデロークたちはガーランド学園都市市街を南に向かった。
『初めての戦闘ですからMobは強くない方がいいでしょう』とエレジーが言い出したので、初心者でも倒せるMobが多いエーレ大平原に行くことになった。初心者は大体そこで戦闘を学ぶのだそうだ。
Mobとは、モンスターなどの敵のことである。
ガーランド学園都市は、ガーランド学園を基点に作られた都市だ。そのため、ガーランド学園が中心の丘の上に存在し、その周りに街が広がっている。ガーランド学園の北に1番街があり、そこから学園を中心に時計回りに2番街、3番街となっている。因みにに最後は8番街である。
今、フェデロークは5番街にいる。どうやら商業区の一つのようで、町は人であふれかえっている。
『ソードフィッシュの魚肉だよー!今なら半額だよー!』『にぃちゃん、にぃちゃんよっていかないかい。高性能の武器が揃ってるぜ!』『さあさあ、みておいでー。カブラルの葉が立ったの10ライザだよ!』ライザとはこの世界の通貨単位である。
そんな中、フェデロークは違和感を感じた。もちろん街が盛況なのは大変いいことだ。しかし、NPCつまりこの世界の住人があまりにも個性豊かでまるで本当に考えて行動している様なのだ。例えば、肉屋の前を通ると、肉屋のオヤジが出てき自分たちをて客引きをするのである。コンピュータのプログラムだとしてもあまりに高度なAI(人工知能)だとフェデロークは思う。フェデロークは思い切ってエレジアに聞いてみた。
『なあ、NPCがあまりにもリアルじゃないか、まるで……』
『生きてるみたいでしょう』
エレジアがフェデロークの言葉をさえぎって、フェデロークの言いたかったことを先回りした。
『初めのうちは私もびっくりしましたけど、もう慣れましたわ。よほど高度なプログラミングなのでしょう』
『そうだよな、本当に生きてるわけないよな……』
『そりゃそうだよ。何言ってるの、フェデローク』
バランドが言った。
フェデロークは話題を変えることにした。
『でそのエーレ大平原とやらはまだなのか』
『もう着きましたわ』
エーレ大平原はとても広大な平原だった。平原の奥には、雪を被った山々まで見える。フェデロークは牧歌的だと思った。ただ、平原には、狼みたいなMobや猪みたいなMobがかなりの数いた。
『さて、それではヴィシャスウルフを狩ってみましょう』
エレジアは、エーレ大平原に着くなりそう言った。ヴィシャスウルフとは、エーレ大平原に生息している青と白のまだらの狼のことらしい。エレジアがそんなことを言っている間にも、フェデロークの前を1匹のヴィシャスウルフが通り過ぎていった。
『なんか眼中にありませんって感じなんだけど』
『初心者は、Mobに攻撃しない限りあちらからは攻撃してきませんの』
『じゃあ、何でエレジアは大丈夫なの?初心者じゃないでしょ』
バランドが質問した。
『私は【マイティオーラ】というアビリティを持っていて自分より格下のMobは私から攻撃しない限り攻撃してきませんの。さあ、それよりもヴィシャスウルフを倒しましょう。まずはヴィシャスウルフをクリックすれば、ターゲットになりますから。画面の下にATTACKのアイコンがありますでしょう。それで攻撃できます。まずはバランドが近づいて攻撃してフェデロークが少し離れて【リトルウインド】で援護する形でやってみましょうか。ABILITYから【リトルウインド】を選べば自動的に発動します。いいですね?』
フェデロークは、エレジアがまるで先生の様に感じた。
バランドは近くにいたヴィシャスウルフを攻撃した。たちまちヴィシャスウルフは攻撃モードになりバランドを襲ってきた。
フェデロークも【リトルウインド】を放った。どうやら魔法を発動するには時間がかかるらしく、少し時間がかかってから発動した。【リトルウインド】は、追尾機能があるらしくヴィシャスウルフを小さな竜巻が追いかけていく。しかもヴィシャスウルフに当たった瞬間身体をのけぞらせた。追撃のチャンスだとフェデロークは思った。
しかしバランドは、攻撃しているものの、一撃一撃が遅い。バランドのメインクラス《太陽》は攻撃力は高いがその分攻撃するパターンが遅い。だが、それにしてもバランドは遅すぎる。どうやらまだ戦闘に慣れていない様だった。
『落ち着いてバランド!ATTACKのアイコンをタイミングよく押せばコンボになりますわ』
エレジアが言った。コンボとは連続攻撃のことである。
バランドはやっと落ち着いてきた様で、大剣を振り回しながら攻撃し始めた。フェデロークも勘をつかみ、【リトルウインド】を放ったあと、ヴィシャスウルフに武器攻撃をした。《太陽》とは違い《正義》はダメージは低いが素早い攻撃が得意である。フェデロークは華麗に剣を振るった。ヴィシャスウルフは勇敢にも奮戦したが2分足らずで倒れた。
『よく頑張りましたね、二人とも。それではドロップしたアイテムをバッグに入れましょう。もう一度ヴィシャスウルフをクリックしてください』
フェデロークとバランドは、もう一度ヴィシャスウルフをクリックし、『狼の肉』1個ずつを手に入れた。
『さて、戻りましょうか。……あらっ、何かが急接近してくるなんでしょうか……』
フェデロークとバランドはエレジアの見ている方を見た。確かに何かの影が近づいてくる。
『あれは……、オーガ!何でこんなところにっ!?バランド、フェデローク逃げろ!あれはお前らじゃ無理だ』
エレジアが男言葉に戻ったことでフェデロークは緊急事態だと悟った。
オーガは一目散にこちらに向かってきた。どうやら1体だけのようだ。バランド並みの大きさで上半身は裸だ。その身体はとても筋肉がついていて、棍棒のようなものを持っている。
『いやだよっ!?俺たちも戦う!』
バランドが叫んだ。エレジアが逃げろと言う位なのだからそれ位自分たちには手が負えないのだとフェデロークは分かったがバランドが戦うと言ったので、フェデロークは逃げられなかった。
『仕方ないな……、どちらにしてももう逃げられない。フェデローク!【マイナスバランス】ってアビリティがあるだろ。それをオーガに使え。それから【リトルウインド】を連発するんだ!バランドはひたすら武器攻撃!俺が魔法を発動するまで時間を稼いでくれ!』
フェデロークもバランドも即座に動いた。
フェデロークは【マイナスバランス】の効果を知らなかったが、エレジアに言われた通り、オーガに使った。すると、走っていたオーガのスピードが遅くなった。そこにバランドが向かっていった。先程の戦闘で大体分かったのか、先程よりもコンボをバランドは連発していた。しかし、オーガはひるみさえしない。オーガの攻撃が遅いのは【マイナスバランス】の効果だろう。しかし、オーガが棍棒でバランドを殴ると、バランドは倒れた。
『ヤバイ……、体力が一気に削られた……』
フェデロークは一心不乱に【リトルウインド】を放った。少しオーガがひるんだ様な動きをしたがそれも一瞬だった。
バランドが倒される。そう思った時だった。
『エレジアが【アクアジャベリン】を発動しました』
画面の右端にメッセージが出た。
その瞬間オーガの足の方から円錐状の水の柱が現れた。オーガは一撃に倒れた。
『大丈夫でしたか。二人とも』
エレジアは女言葉に戻っていた。フェデロークはエレジアがかなり強いとは思っていたがここまでとは思わなかった。
『大丈夫だけど、体力が……』
バランドが言った。
『【ハイヒーリング】をかけてあげましょう。でも何でこんなところにオーガが……』
『ここには出ないのか?』
『ええ、山岳地帯にしか出ませんの』
フェデロークは何となく胸騒ぎがした。